~厚さ20mmを切る超薄型モバイルノートPC |
エムエスアイコンピュータージャパン(MSI)から登場した「X-Slim X340」シリーズは、最薄部6mm、最厚部でも19.8mmというスリムなボディと、上位モデルでも10万円を切る(99,800円前後)コストパフォーマンスの高さが魅力の1スピンドルノートPCだ。MSIは、自作派にはマザーボードやビデオカードなどのベンダーとして古くから有名であるが、最近ではネットブックの「Wind Netbook」シリーズも販売しており、PCベンダーとしての知名度も上がりつつある。同社は、日本PC市場に本格的に参入することを表明しており、本製品がその第一弾となる製品だ。
「X-Slim X340」シリーズは、CPUとHDDの違いによってX-Slim X340 SuperとX-Slim X340の2モデルが用意されているが、上位モデルのX-Slim X340 Super(以下X340 Super)を試用する機会を得たので、早速レビューしたい。なお、今回試用したのは試作機であり、製品版とは細部が異なる可能性がある。
●薄型軽量ボディにCore 2 Soloを搭載X-340 Superのボディは、四辺がエッジに向かって薄くなっており、スリムさをより強調するデザインとなっている。ボディカラーは、エンジェルホワイトとエンパイアブラックの2色が用意されており、好みに応じて選べる。試用機のボディカラーはエンジェルホワイトであった。本体サイズは330×224×6~19.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.3kgである。最厚部19.8mmというのは、アップルのMacBook Airの19.4mmとほぼ同じで、非常に薄い。13型ワイド液晶搭載モデルとしては重量も軽い部類であり、携帯性も良好だ。本体は薄いが、剛性は十分あり、強度的な不安は感じない。
X340 Superは、CPUとしてCore 2 Solo SU3500(1.40GHz)を搭載。Core 2 Soloは、シングルコアだが、一般的なネットブックに搭載されているAtom N270/N280に比べて、CPU性能はこちらのほうが高い。チップセットとしては、最新のグラフィックス統合型チップセットIntel GS45を搭載しており、ネットブックに搭載されているIntel 945GSEよりも、グラフィックスコアの世代が新しく、描画性能が高い。また、HD動画の再生支援機能も搭載する。メモリは標準で2GB搭載しており、ユーザーによる増設はできない。HDDは2.5インチで、容量は320GBと余裕がある。なお、下位モデルのX340では、CPUがCeleron 723(1.20GHz)になり、HDD容量が250GBとなる。OSは、Windows Vista Home Premium SP1がプリインストールされている。
X340 Superは薄型化を実現するために、ボディの固定に爪のはめ込みが使われており、分解は困難だが、今回は別途分解用のモデルも用意していただいたので、内部の写真を撮ることができた。マザーボードはかなり実装密度が高く、コンパクトにまとまっている。また、ボディを薄くするために、極力部品の上に部品を重ねないように設計されている。
●1,366×768ドット表示液晶を搭載しており、実用性が高い
X340 Superは、ディスプレイとして13型ワイド液晶を搭載する。バックライトは白色LEDを採用しており、高輝度かつ薄型化、低消費電力化を実現している。解像度は1,366×768ドットで、アスペクト比は16:9となり、DVDやBlu-rayなどの16:9で記録されたコンテンツを画面全体に表示できる。ネットブックの場合、液晶解像度は1,024×600ドットまたは1,024×576ドットが主流であり、縦方向の解像度が不足気味だが、X340 Superならそうした不満はなく、快適に利用できる。
一度に画面に表示できる情報量は、1,024×600ドットの約1.7倍、1,024×576ドットの約1.78倍になる。サイズが13型ワイドなので、ドットピッチもそれほど狭くなく、文字も見やすい。ただし、光沢タイプなので、発色は鮮やかでコントラストは高いが、外光は映り込みやすい。液晶上部には、130万画素Webカメラを搭載。ビデオチャットなどに利用できる。Webカメラの左側には、アレイマイクが搭載されており、ビームフォーミングやエコーキャンセルといった機能をサポートする。
キーボードは全91キーで、PgUpキーやPgDnキーなどが独立しているため、キーの数は多い。キーピッチは約19mmと余裕があるが、右側の「む」や「ろ」などのキーピッチはやや狭くなっている。キー配列もほぼ標準的であるが、Enterキーが小さく(縦1段分しかない)、Enterキーの右側にもPgUpキーやPgDnキーなどが配置されているので、違和感を感じる人もいるだろう。また、薄型化のためか、キーボードの剛性がやや低く、中央部を強めに打鍵するとたわむのが気になる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドを搭載。左右のクリックボタンはパッドの手前に配置されているが、左右ボタンが独立しておらず、一体となっている。
●拡張性はネットブックと同程度だが、HDMI出力をサポート
インターフェイスとしては、USB 2.0ポート×2とLAN、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、HDMI出力などを備えている。拡張性は一般的なネットブックと同程度だが、アナログRGBだけでなく、HDMI出力も搭載していることは評価できる。HDMI入力を備えた大画面テレビなどにも気軽に接続が可能だ。メモリカードスロットとしては、SDHCカードスロットを搭載。もちろん、SDメモリーカードやMMCにも対応する。ワイヤレス機能も充実しており、IEEE 802.11b/g/n対応無線LANとBluetooth 2.1+EDRをサポートする。
バッテリには、薄型のリチウムポリマー電池が採用されており、非常にスリムだ。14.8V/2,150mAの4セル仕様で、公称約3.5時間の連続動作が可能だ。バッテリ駆動時間も多くのネットブックと同程度であり、ACコンセントのないところで長時間使いたいという用途には向かない。ACアダプタも比較的コンパクトで、携帯性は良好だ。
左側面には、アナログRGB(ミニD-Sub15ピン)とLAN、HDMI出力、SDHCカードスロットが用意されている | 右側面には、USB 2.0ポート×2が用意されている |
X340 Superのバッテリ。薄型のリチウムポリマー電池を採用している | バッテリは、14.8V/2,150mAhの4セル仕様で、公称約3.5時間の連続動作が可能 | CDケース(左)とバッテリのサイズ比較 |
ACアダプタも比較的コンパクトだ | ただし、ACケーブルのコネクタがメガネプラグではなく、3ピンのミッキープラグになっている | CDケース(左)とACアダプタのサイズ比較 |
本体と同色の光学式マウスとプロテクションカバーが付属していることも嬉しい。マウスは、ケーブルとUSBコネクタが本体に収納できるようになっており、持ち運びに便利だ。プロテクションカバーは合皮製で、X340 Super本体がすっぽり入るようになっている。また、オプションとして本体色と揃えた外付けBlu-ray Discドライブも用意されている。
本体と同色のプロテクションカバーも付属する | プロテクションカバーにX340 Superを入れたところ | プロテクションカバーにX340 Superを入れてもそれほど厚くならないので、鞄に気軽に入れられる |
●Atom搭載ネットブックに比べて高いパフォーマンスを実現
参考のためにベンチマークを計測してみた。利用したベンチマークプログラムは「PCMark05」、「3DMark03」、「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」、「ストリーム出力テスト for 地デジ」で、比較対照用として、デル「Inspiron Mini 10」、デル「Inspiron MIni 9」、GIGA-BYTE「M912X」のスコアも掲載する。
結果は表にまとめた通りで、Atom N270やAtom Z530を搭載したネットブックに比べて、Core 2 Solo SU3500を搭載したX340 Superは、PCMark05のCPU Scoreが約1.65倍になっているほか、Graphics Scoreも2倍以上となっている。また、3DMark03やFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3のスコアも、1.5~2倍以上である。もちろん、デュアルコアのCore 2 Duoなどを搭載したA4ノートPCに比べればパフォーマンスは劣るが、重さ1.5kg未満のモバイルノートPCとしては十分な性能であり、メモリも2GB装備しているので、Vistaも実用的な速度で動作する。
X-Slim X340 Super | Inspiron Mini 10 | Inspiron Mini 9 | M912X | |
CPU | Core 2 Solo SU3500(1.4GHz) | Atom Z530(1.6GHz) | Atom N270(1.6GHz) | Atom N270(1.6GHz) |
ビデオチップ | Intel GS45内蔵コア | US15W内蔵コア | Intel 945GSE内蔵コア | Intel 945GSE内蔵コア |
PCMark05 | ||||
PCMarks | 2101 | N/A | N/A | 1483 |
CPU Score | 2435 | 1469 | 1484 | 1472 |
Memory Score | 3338 | 2233 | 2358 | 2339 |
Graphics Score | 1108 | N/A | N/A | 536 |
HDD Score | 5086 | 3819 | 2843 | 4639 |
3DMark03 | ||||
1024×768ドット32ビットカラー(3Dmarks) | 1552 | 計測不可 | N/A(1,024×600ドットでは628) | 684 |
CPU Score | 492 | N/A(1,024×576ドットでは121) | N/A(1,024×600ドットでは232) | 236 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 | ||||
HIGH | 1427 | N/A | N/A | 998 |
LOW | 2094 | N/A | 1426 | 1438 |
ストリーム出力テスト for 地デジ | ||||
DP | 68.1 | 6.23 | 37.9 | 未計測 |
HP | 99.97 | 10.4 | 94.47 | 未計測 |
SP/LP | 100 | 99.53 | 99.97 | 未計測 |
LLP | 100 | 99.93 | 99.97 | 未計測 |
DP(CPU負荷) | 100 | 50 | 65 | 未計測 |
HP(CPU負荷) | 61 | 47 | 64 | 未計測 |
SP/LP(CPU負荷) | 35 | 37 | 33 | 未計測 |
LLP(CPU負荷) | 28 | 26 | 21 | 未計測 |
●一台目としても使えるコストパフォーマンスの高い製品
X340 Superは、スリムで軽い1スピンドルノートPCであり、5万円前後のネットブックと10円台後半のモバイルノートPCのちょうど間に位置する製品だ。スペック的には、10万円台後半のモバイルノートPCに近いが、価格は10万円未満であり、コストパフォーマンスの点でも優秀だ。キーボードの剛性がやや低いことが気になるが(製品版では改善される可能性もある)、1,366×768ドット表示可能な液晶や320GB HDDを搭載しているので、ネットブックとは異なり、メインマシンとしても実用的だ。バッテリ駆動時間が短いので、バリバリのモバイラー向けではないが、重量も約1.3kgと軽いので、学校などに持って行く携帯性の高いモバイルノートPCが欲しいという人や、居間などで気軽に使えるノートPCが欲しいという人にお勧めだ。
(2009年 5月 12日)
[Text by 石井 英男]