■平澤寿康の周辺機器レビュー■
以前、Samsung製SSD「MMDOE56G5MXP-0VB」を取り上げた時に、Intel製SSD「X25-M Mainstream SATA SSD」の書き込み速度が大きく低下するという現象が発生した。これは、その時に利用した個体のみの問題ではなく、継続して利用していると高確率で発生するようで、ネットで調べてみても、多くの人が速度低下を報告していることがわかる。
そのX25-Mの性能を改善する新ファームウェアをIntelが公開した。このファームウェアを適用することで、SSDのパフォーマンスを最大限に引き出せるようになるとされており、速度低下の現象も改善される可能性が高い。そこで、実際に速度の低下したX25-Mに新ファームウェアを適用し、パフォーマンスの変化をチェックしてみた。
●アップデート時にはいくつか注意すべきポイントがある 公開された新ファームウェアは、Intelのホームページにアップロードされており、こちらからダウンロード可能だ。新ファームウェアの対応SSDは、MLCタイプNANDフラッシュメモリを搭載する「X18-M Mainstream SATA SSD」および「X25-M Mainstream SATA SSD」の容量80GB/160GBの全4モデルとなる。
新ファームウェアは、Intelのホームページからダウンロード可能だ |
公開されているファームウェアのアップデートツールは、ブータブルCD-ROMのISOイメージファイルで配布されており、利用時にはCD-Rなどの光学メディアに書き込んだ上で、そこからブートして行なう必要がある。
ところで、ファームウェアのアップデートツールは、Safariではダウンロードできない。とくに、Macintoshを利用している人は要注意だ。Internet ExplorerやFirefoxでダウンロードするようにしよう。
また、アップデートツールを利用するシステムにも制約がある。アップデートツールは、Windows、Linux、Mac OSが動作するシステムで利用できるとされているが、Macを含むNVIDIA製チップセット採用システムでは正常に動作しない。その場合には、システムからSSDを取り出し、他のシステムでファームウェアのアップデートを行なう必要がある。
その他の動作に問題のないシステムでも、SSDを接続してるSATAポートが「AHCI」や「RAID」モードになっている場合には、アップデートツールが正常に動作しない。もし、AHCIモードやRAIDモードで利用している場合には、アップデート前にマザーボードBIOSを起動し、SATAモードを「Compatibility」や「Legacy」などIDE互換モードに変更する必要がある。
これらに注意するとともに、ファームウェアのアップデートを行なう前に、SSDに保存されている内容をバックアップしておくことも不可欠だ。今回試した限りでは、ファームウェアをアップデートしても保存しているデータが失われることはなかったものの、アップデートに失敗したら、SSDへのアクセスが不能となり、保存データも失われることになる。万が一のトラブルを避けるためにも、必ずバックアップを取った上でアップデートするようにしよう。
●アップデート自体は非常に簡単いくつかの注意点に気を付けていれば、ファームウェアのアップデート自体は非常に簡単だ。アップデートツールを書き込んだ光学式メディアでマシンを起動すると、ディスク内のREAD ME.TXTの内容を確認したかどうか(こちらでも確認できる)、使用条件を承諾するかどうか尋ねられるので、双方とも「y」を押して先に進む。
次に、マシンに接続されているSSDがサーチされ、製品のモデルナンバーとシリアルナンバー、ファームウェアのバージョンが表示され、その見つかったドライブに対して新ファームウェアを適用するかどうか尋ねられるので、ここでも「y」を押して先に進む。
すると、画面にファームウェアのアップデートでドライブにアクセスできなくなる可能性があること、ドライブに保存されているデータは保証されないことなどの警告が表示され、ファームウェアのアップデートを行ないますかと尋ねられるので、作業を進めるなら「y」を押す。ここで「n」を押せば、ファームウェアのアップデートは行なわれないので、バックアップがまだの場合には、一度ツールを終了させてデータのバックアップを行なった後で再度作業を進めるようにしよう。
yを押すとファームウェアのアップデートが行なわれるが、これは一瞬で終了する。あとは、アップデートツールを書き込んだ光学式メディアを取り出し、マシンを再起動すればいい。再起動後、SATAの設定を変更している場合には、BIOSを起動して設定を元に戻せば作業は完了となる。
●書き込み時の速度のブレが減少し、速度が回復
では、ファームウェアのアップデートによってパフォーマンスが変化するかチェックしていこう。パフォーマンスチェックには、「CrystalDiskMark 2.2.0」と、「HD Tune Pro 3.50」の2種類のベンチマークソフトを利用した。HD Tune Pro 3.50ではランダムアクセスも含めてリードとライトを計測するとともに、それぞれブロックサイズを64KB、512KB、8MBの3種類に変更して計測した。テスト環境は以下に示すとおりだ。また、今回利用したSSDは、X25-Mの容量80GBモデルで、先日Samsung製SSDを取り上げた時に利用した個体だ。
【テスト環境】
CPU: Core 2 Quad Q8200
メモリ: PC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB
マザーボード: GIGABYTE EP45-UD3R
ビデオカード: Radeon HD 2400 Pro
OS: Windows Vista Ultimate SP1
まず、CrystalDiskMark 2.2.0の結果を見ると、シーケンシャルライトで40MB/secほどにまで落ち込んでいた速度が、73~75MB/secに回復した。また、ランダムライトの結果も、512KB/4KB双方ともに大きく回復していることがわかる。
CrystalDiskMark 100MB(アップデート前) |
CrystalDiskMark 1,000MB(アップデート前) |
CrystalDiskMark 100MB(アップデート後) |
CrystalDiskMark 1,000MB(アップデート後) |
HD Tune Pro 3.50では、さらに顕著な結果が得られている。ファームウェアのアップデート前では、書き込み速度が大きくふらつくとともに、速度もかなり低い方に振れていた。新ファームウェアでは、所々で大きく速度が落ちている部分があるのは気になるものの、ほぼ70~75MB/sec付近で終始している。同様に、ランダムアクセステストの結果も、IOPSが大きく向上していることがわかる。
それに対し、読み出し速度の方は、ファームウェアのアップデート前後で大きな変化は見られない。この点から考えると、今回提供された新ファームウェアでは、書き込み時のアルゴリズムを中心に改善を施したものと考えていいだろう。
今回は、これらベンチマークテストを利用し、ファームウェアのアップデート前後での速度を検証しただけで、新ファームウェアでも、長時間使用することで速度が低下する可能性がないとは言い切れないが、ある程度の時間使った限りでは速度低下は起こらなかった。また、落ち込んでいた速度が改善することは今回の検証からも明らかなので、実際に利用している人は、すぐにでもファームウェアのアップデートを行なうことをお勧めしたい。
(2009年 4月 20日)