大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

Windows 7発売1カ月、トップシェアは東芝に
~PC市場は前月比23%増。64bit版が36%を占める



 2009年10月22日に、Windows 7が発売となって、ちょうど1カ月が経過した。Windows 7発売後のPCの販売は好調な売れ行きを見せている。

 BCNによると、2009年10月22日~11月21日までの31日間におけるPCの販売台数は、前年同期比23.4%増、販売金額でも8.1%増だった。

 内訳を見ても、デスクトップPCは、販売台数ベースで21.5%増、販売金額ベースでは16.8%増。ノートPCは台数ベースで23.9%増、金額ベースでは5.3%増となり、デスクトップPC、ノートPCともに販売台数では20%台の高い成長率を記録した。

【表1】PC販売台数・金額前年同期比

デスクトップノートPC全体(デスク+ノート)
販売金額116.8販売金額105.3販売金額108.1
販売台数121.5販売台数123.9販売台数123.4

 また、Windows Vistaと比較しても出足は好調だ。Windows Vistaが発売された2007年1月30日~3月1日までの31日間の販売実績をベースに比較すると、2009年10月22日~11月21日までのPCの販売台数は22%増、パッケージの販売本数は96%増となった。

 マイクロソフトの堂山昌司副社長は、「Windows 7は、これまでのOSの販売記録を更新して、過去最高の出足を見せている。年度内には国内のコンシューマPC市場全体では、700万台前後の出荷台数が見込めるだろう」と、この出足の良さをテコに、コンシューマPCの普及を加速させたい考えだ。

 また、同社コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部コンシューマーWindows本部エグゼクティブプロダクトマネージヤャーの森洋孝氏も、「単に販売数量が好調であるという点だけに限らず、なにかしらの課題を残してのローンチではなかったこと、さらにWindows 7導入後において高い評価が多く、顧客満足度も高いものになったと判断している。その点では、大成功という判断が社内にはある」とする。

Windows 7搭載機店頭の様子

●単価上昇でPCメーカーも好調に

 PCメーカー側もWindows 7効果については、異口同音に好調ぶりをコメントする。

 NECパーソナルプロダクツの取締役執行役員常務兼PC事業本部長の高塚栄氏は、「対前年同期比で10~15%増。平均単価も1万円上昇するなど、出足は好調。なかでもタッチ機能を搭載したデスクトップPCの構成比が高まっている」とした。富士通のパーソナルビジネス本部本部長の齋藤邦彰氏も、「Windows 7発売以降は、対前年同期比19%増。タッチ機能搭載のデスクトップPCであるDESKPOWER Fシリーズは品薄の状況になっている」と、やはり高機能モデルの動きが好調であるとした。

 販売単価の上昇は、BCNのデータからも明らかだ。Windows 7発売前1カ月のPC全体の平均単価は、78,300円。これに対して、発売後1カ月の平均単価は89,000円。1万円以上も平均単価が上昇している。中でも、タッチ機能搭載モデルが数多くラインアップされたデスクトップPCでは18.4%も平均単価が上昇して94,400円から111,800円に、ノートPCでも75,000円から83,000円に、とやはり1割以上も単価が上昇している。

【表2】PCタイプ別平均単価比較(単位:千円)

Windows 7発売前Windows 7発売後
デスクトップ94.4デスクトップ111.8
ノート75ノート83
PC全体78.3PC全体89

 Windows 7の好調さが、業界全体を活性化させている。さらに、BCNのデータから、Windows 7に関する動きを捉えてみよう。

東芝のマーケティング施策

 Windows 7を搭載したPCをメーカー別シェアで見たところ、10月22日~11月21日までのWindows 7発売1カ月間で首位となったのが東芝。22.2%のシェアを獲得した。

 Windows 7が発売される直前1カ月(2009年9月21日~10月21日)のメーカー別シェアでも、東芝が19.7%とトップシェア。発売後はシェアを引き上げながらトップシェアを維持した格好だ。

【表3】PCメーカー別販売台数シェア(%)

メーカー名台数シェア
東芝22.2
NEC21.4
ソニー20.3
富士通18.9
日本エイサー4.8

 東芝のPC&ネットワーク社PC第一事業部PCマーケティング部マーケティング担当グループ長の荻野孝広氏は、「ネットブックに加えて、ネットノートを新たにラインアップし、これがユーザーの選択肢を増やすことにつながっているのが好調の要因。前年同期比で20~25%増で推移しており、ネットノートに絞り込んだTV CMの効果や、1,300店舗で行なったdynabookキャンペーンの成果など、積極的なマーケティング戦略も寄与している。32bitと64bitを選べるという点でも、ユーザーの選択肢を広げる意味で効果があったのではないか」と自己分析する。

 BCNの調査結果からは、国内の競合他社よりも販売単価が低く、ネットブックなどの低価格モデルの販売がシェア拡大を下支えしているともいえるが、Windows 7の発売を前後して東芝が引き続き国内トップシェアを維持しているのは紛れもない事実だ。

 なお、2位以下は、NECが21.4%、ソニーが20.3%、富士通が18.9%と国内メーカーが先行。上位4社で82.8%という高い構成比となった。5位は大きく離れて日本エイサーの4.8%。Windows 7の発売前となる9月21日~10月21日の集計では、2位以下が、富士通の16.3%、NECの15.8%、ソニーの14.4%、日本エイサーの5.2%となっていた。

【表4】Windows7搭載PC、メーカー別販売台数シェア(2009年10月22日~11月21日 )

デスクトップノート
順位メーカー名台数
シェア(%)
順位メーカー名台数
シェア(%)
1NEC29.51東芝29.6
2ソニー26.12富士通18.7
3富士通19.53NEC18.7
4Gateway7.84ソニー18.4
5HP6.85日本エイサー4.9

●Windows 7はどう売れている?

Windows 7

 Windows搭載PCにおけるエディションごとの構成比を見てみよう。やはり最も多いのがHome Premiumの32bit版で56.5%、続いて、Home Premiumの64bit版で28.3%。64bit版の構成比の高さはソニーがすべての製品を64bit OSで提供していることなどが影響している。また、東芝が提供しているHome Premiumの32bit/64bitハイブリッド版は7.6%となった。そのほか、Professionalの32bit版が2.4%、同64bit版が0.1%、Starter Editionが5.1%という構成比だ。

 Home Premiumの32bit/64bitハイブリッド版を64bitとして集計すると、64bit版の出荷構成比は36.0%となり、なんと3分の1以上を占めているということになる。
 一方、パッケージ版のエディション別構成比を見てみると、Home Premiumが63.2%、Professionalが21.6%、Ultimateが15.3%となり、Ultimateが意外にも存在感を発揮しているのがわかる。

 マイクロソフトの森洋孝氏は、「初期購入者にパワーユーザーが多いことや、高機能モデルに人気が集まるという日本の市場特性を考えても、ここまで64bitやUltimateの構成比が高いとは思わなかった。とくにパッケージ版のUltimateの場合、優待キャンペーンを利用すれば、Professionalでは約5,000円安くなるなど、ProfessionalおよびHome Premiumの買い得感が大きくなるため、Ultimateは、1桁台の構成比だと見ていた」とする。

 この点では、マイクロソフトの予測を上回る高機能製品への集中ぶりになっている。そこで、気になるのは、Windows 7発売後のWindows XP搭載モデルや、Windows Vista搭載モデルなどの売れ行きである。

 2009年10月22日~11月21日までの集計では、Windows 7搭載PCの構成比は44.4%。デスクトップPCでは53.9%をWindows 7搭載PCが占めており、着実に移行が進んでいることを示している。

 一方、処分価格で販売されているWindows Vista搭載PCは、PC全体で30.3%、ノートPCでは32.6%と3分の1を占めている。そして、Windows XP搭載PCだが、PC全体では19.1%、ノートPCでは21.4%と、Windows 7発売後も5台に1台を依然として占める結果となった。

 ちなみに、Windows 7発売前日にiMacなどを発売したアップルは、デスクトップPCでは14.0%のシェアとなり、存在感を示している。いずれにしろ、Windows 7発売以降の国内PC市場は順調な動きを見せている。

 2桁の成長は業界の読み通り推移しており、日本経済全体が緩やかなデフレ傾向と言われる中、PCの平均単価がこの1カ月間で大きく上昇したことは特筆できる。この勢いをいかに持続させることができるかが、これからの課題だ。