大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

VAIOの次期新製品は、2015年初頭か?

 VAIO株式会社が、2014年7月1日にスタートした。日本産業パートナーズへのPC事業の譲渡により発足した新会社は、1,100人規模で事業を運営してきたソニーのVAIO事業を、240人体制へと縮小。「選択と集中」を進めながら事業を展開することになる。

 ソニーとして展開してきた2013年度には560万台の年間出荷規模を誇ったが、VAIO株式会社の2014年度の出荷計画は、30〜35万台規模。16分の1にまで事業規模を縮小させる。

 まずは、取り扱い製品を「VAIO Pro 11/13」および「VAIO Fit 15E」に限定し、国内だけの展開に留める。VAIO株式会社が扱う製品には、ディスプレイ下部の「SONY」のロゴを、「VAIO」に変更して出荷することになる。

 一方で、VAIO株式会社としての新製品は、「年内には難しいかもれしないが、年度内には必ず出荷する。一点突破のVAIOらしい製品を投入する」(VAIO 赤羽良介執行役員副社長)と意気込む。

 ソニーとして提供してきた純正アクセサリも一度生産停止とし、今後、事業の拡大に合わせて、VAIO株式会社が新たなラインアップとして取り揃えることになるという。

 この点からも、まさに選択と集中の中からスタートさせることになるのが分かるだろう。

会見に参加した3名の首脳陣
選択と集中
まずは既存の「VAIO Pro 11/13」および「VAIO Fit 15E」を販売する

法人販売比率を大幅に引き上げる

 そうした中でも、ソニーのVAIOから、VAIO株式会社のVAIOに変わることで、大きく変化するのが販路だ。

 対外的には、引き続き、ソニー100%子会社のソニーマーケティングと販売総代理店契約を結び、この流通ルートを利用するという点では変化がないように見える。しかし、ソニーマーケティングとの取引形態はこれまでとは大きく異なる。

 その大きな変化が、ソニーマーケティングは「卸売り」を行なわないという点だ。言い方を変えれば、ソニーマーケティングは「VAIOの在庫を一切持たない」ということになる。

 ソニーマーケティングからの流通ルートは、法人向けと個人向けに分かれる。

 法人向けルートは、ソニーマーケティングが持つ法人営業部門を通じた直販と、大塚商会、シネックスインフォテック、ソフトバンクコマース&サービス、ダイワボウ情報システムの4社のディストリビュータを通じた販売となる。ここでは3,000社の2次店での販売が可能になるというが、あくまでも法人向け販売であり、量販店などに流通するものではない。つまり、ダイワボウ情報システムなどを通じた量販店向けの流通は行なわれない。

法人向け販路

 また、法人ビジネスだけに、受注発注の仕組みが中心となり、ディストリビュータ各社も、基本的には在庫を持たない形での商談になる。販売店からの注文を得てから、VAIOを仕入れる仕組みだ。もちろん、ソニーマーケティングの法人営業部門も自ら在庫を持つということはない。

 VAIO株式会社では、法人ルートの販売比率などの計画値は明らかにしていないが、これまではVAIO全体の約1割が法人向けの販売と見られる。これを半分ぐらいにまで引き上げる狙いがあるようだ。

 「法人向け商談は時間がかかるため、まずは個人向けの販売比率が高まるだろうが、これまで以上に法人ルートの販売を高めていくことになるのは確か」と、VAIO 執行役員 マーケティング・セールス/商品企画担当の花里隆志氏は語る。流通在庫が生まれにくい法人ルートの構成比を高めることで、収益面の安定化を図る狙いがあると言えよう。

量販店では在庫を持たない仕組みに

 そして今回、VAIO株式会社が明らかにした個人向け販売ルートは、インターネット直販サイトと、銀座、名古屋、大阪のソニーストア直営店舗、そして、地域系列販売店の「e-ソニーショップ」と、一部の量販店だ。こうした発表だけを聞くと、やはり従来と同じような仕組みに見えるが、ソニーストア直営店舗でも、基本的には製品の在庫は持たず、ネットを通じた販売となる。

 また、e-ソニーショップと、一部の量販店においても、会見での説明の際に「ソニーストアと提携」という一文を入れたように、直販サイトであるソニーストアと提携した形での販売が前提となる。

個人向け販路

 これはいわば「VAIO・OWNER・MADE」の仕組みと一緒であり、量販店店頭においても、店頭在庫を持たずに、その場からネットで注文を行ない、VAIOを購入する仕組みを採用するという意味なのだ。

 つまり、量販店店頭でVAIOを購入しても、量販店ではこれまでのように製品を在庫して販売するという手法は用いられないため、その場で家に持ち帰ることはできない。後日、製品が届くことになる。

 同社では「量販店店頭からは持ち帰れないが、それほど期間を置かずにお客様の手元に届くような仕組みの構築を考えている」とする。

 そして、一部量販店というのは、基本的にはこれまでVAIO・OWNER・MADEを、ショップ・イン・ショップ形態で展開してきた大手量販店ということになりそうだ。花里執行役員は、「VAIO・OWNER・MADEという名称は変更する可能性が高い。だが、これまでVAIO・OWNER・MADEを展開していただいた量販店の方々には、引き続き取り扱いをお願いしたいと考えている。なんとか、2桁の店舗で取り扱いを開始したい」と語る。

 この契約については、ソニーマーケティングが、直接、量販店と新たな契約を結び、売り場を設置するということになる。だが、4月20日時点で、VAIO・OWNER・MADEの取引を終了。それに伴い、一度量販店店頭からは、VAIO・OWNER・MADEコーナーが撤収されており、新たに場所を確保するという点でもハードルが高いのは事実だ。

大手量販店では、ショップ・イン・ショップの形態でVAIO・OWNER・MADEコーナーを設置していた

 一方で、将来的には、他社が行なっているように、仕様を限定した製品を、即納モデルとして、量販店店頭に在庫するといったことも考えられるが、「最初から規模を拡大することを優先するわけではない。すぐに即納モデルを用意することは考えていない」という。

 PCメーカー各社の業績悪化の要因の1つが、個人向けPCの流通在庫であるのは明らかだ。VAIO株式会社は、流通在庫を発生させない仕組みを構築することで、収益確保を図る狙いがある。だが、その代わりに、量販店店頭ですぐに手に入れるということはできなくなる。

(大河原 克行)