大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

次期Surface、Windows 8.1、そしてクラウド戦略はどうなるのか?

日本マイクロソフトの樋口社長に聞く

樋口泰行社長

 日本マイクロソフトが、2013年7月から新年度に入った。「デバイス&サービスカンパニー」への転換を標榜する同社にとって、Surfaceおよびクラウド事業は重要な柱となる。7月8日から米テキサス州ヒューストンで開催されたパートナー向けイベント「Microsoft Worldwide Partner Conference 2013」の基調講演では、Windows部門のCFO兼CMOであるタミ・レラー氏がWindows 8.1のRTMを8月末までにOEMベンダーに提供すると発表。年末商戦に向けて、各社からWindows 8.1を搭載したPCが投入される体制が整ってきた。

 年末に向けて日本マイクロソフトの取り組みはどうなるのか。そして、Surfaceの今後の展開や、クラウドへの取り組みをどう加速させるのか。Microsoft Worldwide Partner Conference 2013に参加していた日本マイクロソフトの樋口泰行社長を、ヒューストン現地で直撃した。

Windows 8.1で年末商戦は回復基調を期待

−−2013年7月から日本マイクロソフトの2014年度がスタートしました。PCおよびタブレット市場での取り組みはどうなりますか。

樋口 国内のPC市場を俯瞰すると、コマーシャル需要は堅調ですが、コンシューマPCの売れ行きが非常に悪化している。前年比2桁減という状況が続いています。だが、これがいつまでも続いているわけではない。年末に向けてコンシューマPC市場は回復傾向を辿るとみています。その理由の1つが、Windows XPのサポート期限を迎えることです。すでに、大手企業や中堅企業では、Windows XPからの移行作業が進んでいますが、中小企業やコンシューマユーザーは、ぎりぎりになってからの移行が進むことになります。今年(2013年の)年末から来年(2014年)にかけて、コンシューマPCの新OSへの移行需要が生まれることになります。

 2つ目にはタブレットが新たなフェーズに入ることです。一度タブレットを購入した人たちが、買ってはみたものの、タブレットでできることが少ないことに不満を感じ始めています。Surfaceに対する需要が高まっているのもそうした理由が背景にあります。Surfaceに関していえば、予想以上の売れ行きに強い手応えを感じています。これは「行けるな」、「モメンタムを作れるな」という感触を得ています。

 3つ目には、Windows 8.1、そしてIntelのHaswellといった新たなOSやCPUによって、新たな製品が投入され、需要が喚起されるという点です。Windows 8.1は、OEMメーカーに対するRTM版の供給が8月末までには開始されますし、Haswellとの組み合わせによって、さまざまなフォームファクタを持った製品がかなり出てくることになるでしょう。小型スクリーンの製品ラインアップも広がりそうですし、洗練された形のデバイスも登場するでしょう。

 私自身、今年の年末から来年春に向けては、OEMメーカーから登場するPCやタブレットにかなり期待をしているんです。最終的には、現行のSurface RT並の重量や、バッテリ駆動を実現しながら、PCのフルファンクションを搭載した製品も登場することも期待しています。これはかなりの競争力を持った製品になると思います。

次期Surfaceの市場投入は?

Surface RT

−−一方でSurfaceはどうなりますか。新たな製品投入も気になるところですが。

樋口 Surfaceの動きは、さらに活発化するでしょう。一般論ではありますが、1年前に登場した製品が、そのまま進化しないということは考えにくいですし、Surfaceが今後も継続的に製品が投入されるものであることを踏まえれば、適切なタイミングで「次」があるのは明らかです。社内でもかなり情報を統制しており、どんなものになるのかは私も知りませんが、Windows 8.1の投入、CPUの進化、アクセサリーの充実、さらにはチャネルの整備ということでも、Surfaceが次のステップに行くということは想定できるのではないでしょうか。もちろん、Appleからも同様に、新たな製品が投入されることになるでしょう。それに対しても負けない製品が登場することを期待しています。

−−Surfaceの法人向け展開が、第1四半期(7月〜9月)にかけて、日本をはじめとする28カ国で開始されることが、Microsoft Worldwide Partner Conference 2013で発表されましたが。

樋口 日本でもSurfaceの法人向け市場への展開は、重要な取り組みの1つになります。現時点では、具体的に何月からスタートして、何社が取り扱うということはまでは公表できません。しかし、こうしてみると、今後の国内PC市場は、コンシューマおよびコマーシャル市場においても、上向きの要素が数多くあるといえますね。

クラウドビジネス成長の柱は品質向上に

−−もう1つの柱であるクウラドビジネスに関しては、日本マイクロソフトは“チャレンジャー”であるという表現をしていますね。

樋口 クラウドビジネスをドライブする要素は、やはり信頼だといえます。2014年度には、日本のデータセンターをきっちりと立ち上げて、日本のお客様のニーズにきめ細かく応えていくことが大切だと考えています。

 例えば、クラウドはどんどん進化するが、中には進化しないで欲しいというお客様もいる。クラウドと何かのシステムとを連動させて使用している場合、クラウドが進化すると、その都度システムとの連携を検証しなくてはならないということが発生する。そうした場合にも、現在、使用しているWebブラウザとクラウドサービスとの相性といったことを含めて、細かくサポートすることも大切な要素だと考えています。

 コンシューマ系の会社ではそこまでケアしない場合がありますが、日本マイクロソフトの場合は、Internet Explorerでしっかりとした形でサポートしていくこともできます。

 IaaSにしても、SaaSにしても出発点は遅いが、長い目でみると、日本マイクロソフトは、責任を持ってクラウドに取り組んでいる企業であるという点で、先行するクラウドサービスの企業との間に差が生まれると考えています。

 また、オンプレミスとの連携もマイクロソフトのクラウドサービスの大きな特徴です。オンプレミスとクラウドのハイブリッド型の提供も可能ですし、クラウド同士のハイブリッド、パートナーが展開しているクラウドサービスとのハイブリッド提案も可能になります。

 現在我々には、Office 365、Azure、Yammer、CRM Online、Intuneなど、さまざまなクラウドサービスがあります。中には分母が小さなサービスがありますから、前年比で何倍にもなるといった大きな成長が計画に盛り込まれるものもあります。日本法人においても、大きな目標に取り組んでいくことになります。日本法人は、2年連続での2桁成長を遂げていますが、クラウド事業、デバイス事業を含めて、これを維持していきたいですね。

−−7月1日付けで、クラウド事業推進室を新設しました。5人体制という少ない人数でのスタートには意味がありますか。

樋口 確かに5人という人数は少なく見えますが、日本マイクロソフトの各組織にはクラウドを関わる人材を数多く擁しています。新設したクラウド事業推進室は、バーチャル的に全体を管理する組織であり、品質問題を始めとして、クラウドに関するありとあらゆる課題に対応したり、将来のロードマップについても提示したり、あるいはクラウドに関する新たなオファリングにも対応していくことになります。

 もう少し人数は増やしたいですが、まずは長期的な視点からみて、やらなくてはならないとものに取り組みたいと考えています。具体的には、クラウドビジネスにおいて、米本社との太いパイプを作るということが、最初の取り組みになるでしょう。

米国本社に品質向上のために社員を常駐

−−クラウドサービスの品質を向上させるために、日本法人から社員を1人常駐させることになるようですね。

樋口 日本のユーザーは品質に対する要求が高く、限りなく障害をゼロにすることを求めています。これまでは、CQO(チーフクオリティオフィサー)の越川(=越川慎司氏)が、日本から毎月のように本社に通って品質問題の向上に取り組んできましたが、日本法人から米国本社に社員を1人派遣して、越川と連携しながら、クラウドサービスにおける日本品質の実現に取り組んでいきます。

 こうした体制にしたのは、常駐によってきめ細かく品質を追求するとともに、日本のお客様の最新の状況や要望を、米国側に訴えるためです。本社側との交渉は、強いパッションを持っていないとできません。お客様の悩みを我がことのように感じる姿勢を持っていることが大切です。

 ただ、私の経験からもわかるのですが、向こうに駐在していると、そのパッションが徐々に薄れていくのです。馴染んでしまって、「お前はどっち側の人間だ」という話になる場合もある(笑)。だから本当は、行ったり来たりが一番いいですし、常駐する社員もたまには日本に帰ってきて、お客様の声を直接聞くということが必要だと考えています。また、こうしたことが起こらないように、常駐する日本法人の社員は定期的に入れ替えていきます。

−−ところで、Windows Phoneの日本での投入はどうなるでしょうか。ソフトバンクによる米スプリントの買収完了によって、スプリントが扱うWindows Phone端末が日本に上陸するといったことはないでしょうか。

樋口 米スプリントはMicrosoftにとっても重要なお客様であるのは事実です。そして、個人的にも、これをきっかけに日本でもWindows Phone搭載のスマートフォンが登場すれば良いと感じています。しかし、現時点では何も決まっているものがありません。日本でのWindows Phone投入に向けて努力をしていく姿勢は、これまで同様に変わりません。

(大河原 克行)