ゲーミングPC Lab.

ASUSTeK「G53Jw」
~R.O.G.ブランドで登場した3D Vision対応ノートPC



ASUSTeK「G53Jw」

発売中
価格:149,800円


 異形とも言うべき外観が目立つノートブックPC「G53Jw」はASUSTeKのマザーボードでお馴染みのゲーマー向けブランド「R.O.G.」シリーズの属する製品だ。国内ではG51Jx 3Dに続く第2弾の製品となるが、前モデル同様NVIDIA 3D Visionにも対応しつつ、今回は専用エミッタを内蔵してひとまわりスッキリとなって登場した。

●ステルス戦闘機をイメージしたという外観は「立体感」も十分

 冒頭で異形と書いたとおり、G53Jwのデザインはインパクトがある。同社によればステルス戦闘機からインスパイアしたということだ。後部にはまさに戦闘機の排気口のような形状のエアインテークを設け、冷却している。とはいえ戦闘機と違い、意外にも静か。いくらゲーマーでも、ジェットエンジンのような爆音を放たれたらゲームどころではないのから、静音仕様は歓迎だ。ちなみにファンは2基搭載している。

 液晶ディスプレイは15.6型ワイドサイズでグレアパネル。解像度は1,366×768ドット。このサイズでは、フルHDに対応するノートも多い中、若干抑えられた解像度であり、標準対応のBlu-rayについては、その性能を完全に発揮するに至らない点に留意したい。

 最大の特徴となるNVIDIA 3D Visionについては、そのエミッタを内蔵してしまったのが大きなポイントだ。エミッタは液晶ベゼルのトップ部分、ウェブカメラの左に仕込まれている。これは、ノートブックという可搬性を損なわない点はもちろん、USBポートが1つ空くという点でもメリットとなる。

 加えて、搭載するHDMI出力はNVIDIA 3D Playに対応しており、市販の3D TVと接続すれば、そちらの大画面でも楽しめる。ただし、3D PlayはNVIDIAサイトに対応TVリストが掲載されているものの、多くは海外モデルで、国内モデルのテレビで楽しめるかどうかは定かではない点に注意が必要だ。

 3D Visionグラスは1個付属。パッケージは単体の市販版3D Visionそのものだが、エミッタ部分が付属しないのは同機能が本体に統合されたためだ。

15.6型ワイドサイズのG53Jw。一般的な15.6型ノートよりも若干大きなサイズで、391×297×20~58mm(幅×奥行き×高さ)。質量も3.7kgとヘビー級だエッジを切り取ったようなステルス風デザインが特徴最厚部58mmの背面。左右2つの排気口の奥には2つのファンが内蔵されている
液晶ディスプレイは120Hz対応で解像度は1,366×768ドット。一般的な解像度ではあるが、ゲーマー向けをうたうノートとしてはやや低めか。ちなみにASUSTeKとしてもゲームを前面に推すというよりはややエンターテインメント性の方をプッシュしている節もある液晶ベゼルのトップにあるウェブカメラ(中央)とその左の3Dロゴ部分に3D Vision用エミッタを内蔵。G51JxのようにUSB接続のエミッタを必要としない同梱されているNVIDIA 3D Visionメガネ。市販の3D Visionキットからエミッタを除いただけだ。3D Visionメガネを追加購入すれば、多人数視聴も可能

●フルキーボードはバックライトや人間工学に基づいたチルト角を採用

 キーボードは15.6型ワイドサイズボディを活かし、10キーを加えた仕様となっている。アイソレーションタイプであるため隣のキーにまたがってタイプミスをする確率も抑えられている。また、バックライトが内蔵されており、薄暗い室内でもキーの判別が可能だ。

 キーボード奥の右側には電源ボタン、左側には3つの独立したファンクションキーが用意されている。左から順にキーボードバックライトのオン/オフ、電源モードの変更、3D Visionのオン/オフ機能に割り当てられている。

 パームレストはラバーコーティングされており、マットな質感が心地良い。また、5度のチルト角が付けられており、これは人間工学に基づくもので手首への負担を和らげる効果があるという。個人的感想として、もう少し緩やかでも構わないのだが、まったくのフラットよりは手首が疲れにくい印象を受けた。

 インターフェイスは前面にカードリーダー、右側面にヘッドフォン/マイクのオーディオ入出力端子とUSB 2.0、USB 3.0、HDMIおよびD-Sub15ピンのディスプレイ出力端子、そしてGigabit Ether、ACアダプタ用ジャックが並ぶ。左側面はBlu-ray DiscドライブとUSB 2.0×2基が並ぶ。なお、背面にはケンジントンロックが2基搭載されており、机などにガッチリ固定することができる。ExpressCardスロットが搭載されていないので、機能拡張はUSB 3.0/2.0に頼ることとなる。

 底面はその半分以上がベイカバーで覆われている。しかし、これを開けるためのネジは見当たらない。ネジが隠れているとすれば三角形のゴム足の内側だろう。デザイン的にはスッキリしている反面、ユーザー自身によるパーツ交換を推奨していないと受け止められる。

 そのほかバッテリは75Wh/5,200mAhのかなり大きめなものが付属する。エンターテインメント向けノートということで可搬性はあまり重視されないと思われるが、それでも公称値で約2.8時間のバッテリ駆動が可能とされる。ACアダプタも据え置きノート用のものよりもやや大きめといった印象。とはいえ、一昔前のゲーミングノートPCにありがちな130Wクラスアダプタと比べれば小さい。

10キーを備えたフルキーボードを搭載。メインキーと10キーとの境目は狭いものの、一応他のキー間よりは若干広めにとられているキーボードの下にはバックライトが仕込まれている。明るさはオフ~最大輝度まで4段階で調節可能キーボードバックライト、電源モード、3D立体視の各切り替え用ボタンを装備
タッチパッドもステルス風デザインを取り込んでいる。またパームレスト部は全体的に滑りにくいマット塗装が施されている主なインターフェイスは右側面に集中配置。USB 3.0×1基もここにある。なおUSB 3.0コントローラはFresco Logic製左側面はUSB 2.0とBlu-ray Discドライブ
底面はその半分以上をベイカバーが占めている。ただしこのカバーを開けるためのネジは見当たらないバッテリとACアダプタ。ACアダプタはいわゆる据え置きノート用のサイズより若干大きな印象。バッテリも比較的大きく、サイズだけでなく容量もモバイルノートの大容量バッテリ2個分ほど

●CPUはCore i5-460M、GPUはDirectX 11対応のGeForce GTX 460M

 内部スペックは、CPUがCore i5-460M、GPUがGeForce GTX 460Mを搭載するという構成だ。狙ったものか偶然か、CPUとGPUどちらも460Mという型番である。

 まずCPUだが、Sandy Bridgeが登場した今となっては、やや見劣りするArrandale。とはいえHyper-Threadingに対応したデュアルコアCPUであり、定格クロックが2.53GHz、TurboBoost時の最大クロックは2.8GHzに達する。ノートブックPCとして見れば十分なパフォーマンスを持つと言って良いだろう。

 GPUのGeForce GTX 460は、ノートブック向けとはいえ「GTX」に区分されたハイエンド向け製品だ。CUDAコアは192基でグラフィックメモリは256bit接続、1.5GBのGDDR5メモリを搭載する。コアクロックは675MHz、メモリクロックは2,500MHzだ。

 メインメモリは4GB。CPU-Zの情報からは2GBモジュール×2枚の構成で、DDR3-1333動作をしていることが分かる。ちなみに、評価機に搭載されていたのは、ASint Technology製のモジュール。ASint Technologyは、SiSの下から分かれたDRAMメーカーとのことで古くからのPCユーザーにとってはその点も興味深い。

 評価機に搭載されていたHDDは、WesternDigital製2.5型のWD6400BEVT。容量640GBで回転数は5,400rpm、キャッシュ容量は8MBとなっている。G53Jwではこれをシステムドライブに150GB、データドライブとして425GB、と2つのパーティションに分割して利用している。これに加え、ASUSTeK製ノートブックPCではお馴染みのオンラインストレージ「ASUS WebStorage」も組み込み済みで、エクスプローラから活用できる。

 光学ドライブはパナソニック製Blu-ray DiscドライブのUJ240AS。3D Visionと組み合わせることでBlu-ray 3Dも楽しめる。そのほかのハードウェアとしては、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11n対応の無線LANなどを搭載している。

CPU-Zから。CPUはCore i5-460Mを採用。いわゆるArrandaleだチップセットはIntel HM55 ExpressメモリはDDR3-1333 2GB×2
メモリモジュールはASint Technology製。DDR-1333以上のSPDも登録されているようだGPU-Zから。GPUはGeForce GTX 460Mを採用。グラフィックメモリはGDDR5で1.5GBOSはWindows 7 Home Premiumの64bit版
HDDは640GBで、システムとデータ、2つのパーティションに分割されているネットワーク機能としてRealtekの1000BASE-T対応有線LAN、Atherosの802.11n対応無線LANを内蔵

●エミッタ内蔵だから好きな場所で立体視

 3D立体視機能の楽しみ方を紹介しよう。評価機では同機能は標準でオンとなっていたが、オフとなっていた場合はNVIDIA Control Panelからオンに切り替えるか、あるいはキーボード左上のボタンでオンにする。次は3D Visionグラスを装着の上、左フレームにあるボタンを押してエミッタとの同期をとる。あとは3D立体視対応ソフトを起動するだけだ。

 立体視対応のBlu-ray再生ソフトとしてバンドルされていたのはRoxio CinePlayer。手持ちのBlu-ray 3Dタイトルはバッチリ立体視が楽しめたものの、サイド・バイ・サイド方式の3Dタイトルでは左右の映像が横並びに表示されるだけだった。なお、3DMarkなどでは立体視オン/オフの状態を自動認識し、オンであれば120Hz立体視モードで起動した。そのほか立体視写真のための静止画ビューワソフトや、Blu-ray以外の立体視映像を観るための再生ソフトウェアなど、NVIDIA自体が用意しているツール類も付属する。

 また、立体視やオンラインストレージ以外にも、いくつかのソフトウェアがバンドルされている。その多くはASUSTeKのオリジナルソフトウェアだ。電源管理を簡単かつ、より詳細に設定できるPower4Gear Hybridや、ガンマ調節など映像の高画質化機能となるSplendid、ウェブカメラを活用するLifeFrameやSmartLogonなどアプリケーションというよりはツール中心である。印象としてはショップブランドPCと国内ブランドPCの中間といったところだ。

電源管理を行なうPower4Gear。Windowsの電源管理ウィンドウにも統合されるSplendidはガンマ調節などを行なう映像の高画質化機能ウェブカメラを使ったアプリも搭載
PCの輝度や音量などを調節できるControlDeckデスクトップとWirelessControl

●マザーボードのR.O.G.シリーズとはコンセプトが異なる?

 最後にパフォーマンスをチェックしておこう。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark Vantage Build 1.0.2.0」、「PCMark 05 Build 1.2.0」、「3DMark Vantage Build 1.0.2」、「3DMark06 Build 1.2.0」および、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】」、「バイオハザード5ベンチマーク」、「ロストプラネット2ベンチマーク」。3DMarkは各バージョンの標準解像度で計測しており、1,366×768ドットを超えるテストはHDMI経由で外部のWUXGAディスプレイに接続して計測している。また、立体視はオフの状態である。

【表】ベンチマーク結果
PCMark Vantage Build 1.0.2.0
PCMarks6421
Memories4840
TV and Movies3951
Gaming5803
Music6244
Communications5404
Productivity4280
HDD3405
PCMark 05 Build 1.2.0
PCMarks8441
CPU7840
Memory5806
Graphics12127
HDD5437
3DMark Vantage Build 1.0.2 1,280×1,024ドット
3DMark Score6973
Graphics Score6637
CPU Score8221
3DMark06 Build 1.2.0 1,024×768ドット
3DMarks13849
SM2.0 Score6119
HDR/SM3.0 Score6728
CPU Score3113
Windows エクスペリエンスインデックス
プロセッサ6.9
メモリ(RAM)5.9
グラフィックス7.0
ゲーム用グラフィックス7.0
プライマリハードディスク5.9
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】
1,280×720ドット7467
1,920×1,080ドット3565
バイオハザード5ベンチマーク DX10
1,280×720ドットベンチマークテストA66.0
ベンチマークテストB61.1
1,920×1,080ドットベンチマークテストA38.4
ベンチマークテストB43.1
ロストプラネット2ベンチマーク DX11
1,280×800ドットベンチマークテストA24.2
ベンチマークテストB17.5
1,920×1,200ドットベンチマークテストA16.4
ベンチマークテストB11.6

 CPU/GPUともに強力なだけに、Windowsエクスペリエンスインデックス値の最低値はメモリとHDDの5.9となっている。もちろん5.9という数値は十分なパフォーマンスと言えるが、プロセッサは6.9、グラフィックはともに7.0とさらに強力だ。

 PCMarkを見ると、Core i5-460Mの内蔵GPUを利用するノートと比べGPUを搭載する分、総合点は高めのスコア。Sandy Bridgeでない点は残念だが、普段使いで困るということはまず無いだろう。

 加えて、GeForce GTX 460Mを搭載することで3D性能ノートブックとしては高い。実際のゲームタイトルによるベンチマークスコアで見ると、DirectX 9/10タイトルの1,366×768ドット以下の解像度ではスムーズで十分に快適に楽しめるスコアとフレームレート。ただし、HDMI経由で高解像度ディスプレイに出力した際のフレームレートはやや心許ない。また、DirectX 11でかつ比較的ヘビーなロストプラネット2では低解像度でも30fpsを上回ることができなかった。

 こうした結果から、ゲームを楽しむのであればDirectX 9/10ベースのタイトルを搭載ディスプレイの解像度内で、DirectX 11タイトルは比較的ライトなものでという印象で、3Dについて過度の期待はできない。G53Jwは1製品のみで展開されるが、個人的には1つ上のグレードのGPUを用意するか、あるいはBTOに対応してより高性能なGPUへの換装に対応してくれると、周辺の潜在能力を活かせるのではないかと思う。

 とはいえ、G53JwのASUSTeKの公式なセールスキャッチは「新次元エンタテインメントノート」だ。R.O.G.シリーズのノートだけにゲーム性能にフォーカスしがちになるが、本製品は立体視を含めたトータルでの3Dエンターテインメント性のバランスを重視している。とくにR.O.G.シリーズマザーボードをお使いの方は、同じシリーズでもこの点で方向性が少し違うという点を念頭に置き、検討したい。

 店頭価格も15万円前後と、ノートブックPCの売れ筋価格帯からはやや上だ。ただし、システムトータルで計算してみれば、自作PCで3D立体視対応システムを組むのとさほど大きくは変わらない。そうした視点から見ればワンパッケージで導入できる点がG53Jwのメリットと言えるだろう。

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(2011年 3月 8日)

[Text by 石川 ひさよし]