ゲーミングPC Lab.
デル「ALIENWARE Area-51」
~誰もが気になる三角形の秘密を探る
(2015/4/10 06:00)
デル株式会社が昨年(2014年)10月に発売を開始した「ALIENWARE Area-51」は、「ALIENWARE」ブランドにおけるフラッグシップモデルであることだけでなく、「トライアドシャーシ」と呼ばれる三角形の外見でもインパクトのある製品だ。今回、本機の2015年モデルの中から、「ALIENWARE Area-51 プレミアム」を試用する機会が得られたので、レビューをお届けする。
6コアCPUとハイエンドGPUの自由な組み合わせ
「ALIENWARE Area-51」は4つのモデルが用意されており、今回ご紹介する「ALIENWARE Area-51 プレミアム」は上から3番目のモデルとなる。詳しくは下のスペック表をご覧いただきたい。
- | スタンダード | プレミアム | プラチナ | スプレマシー |
---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-5820K | ← | Core i7-5930K | ← |
GPU | AMD Radeon R9 270(2GB) | GeForce GTX 970(4GB) | GeForce GTX 970(4GB)×2 SLI | GeForce GTX 970(4GB)×3 SLI |
メモリ | 8GB DDR4-2133(4GB×2) | ← | 16GB DDR4-2133(4GB×4) | ← |
SSD | 非搭載 | ← | 128GB(6Gbps) | 256GB(6Gbps) |
HDD | 2TB(7,200rpm) | ← | ← | 4TB(6,000rpm) |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチ | ← | BDドライブ | ← |
販売価格(税抜き/配送料込み) | 259,800円 | 289,800円 | 439,800円 | 499,800円 |
CPUは6コア12スレッドの「Core i7-5820K」、GPUは「GeForce GTX 970」を採用している。どちらも究極のハイエンドと言える構成ではないが、コストパフォーマンスのいいところを突いた構成だと思う。上位機種ではCPUが強化されるほか、GPUがSLI構成になる。
共通の仕様として、ゲーム向けの帯域制御が可能なKiller NIC、IEEE 802.11acに対応した「インテル Dual Band Wireless-AC 7260+Bluetooth 4.0」が標準で搭載されている。ただしキーボードやマウスは標準では付属せず、別途用意する必要がある(マウスは500円で追加可能)。
標準構成からのカスタマイズ(パーツ単位のアップグレード)にも対応する。「ALIENWARE Area-51 プレミアム」は標準でSSD非搭載だが、128GBのSSDを13,800円で追加できる。GPUは「GeForce GTX 980」や「GeForce GTX Titan Z」にも変更可能。また4月23日までの期間限定で、GPUを「GeForce GTX 970」を1枚追加したSLI構成に無料で変更できるキャンペーンも実施している。
ちなみに最上位の「スプレマシー」モデルをカスタマイズすると、CPUを8コア16スレッドの「Core i7-5960X」、メインメモリ32GB、GPUを「GeForce GTX TITAN Z」を2枚のSLIという正真正銘のハイエンド構成にもできる。価格は843,400円と現実感のない金額になってしまうが、そんな構成を許してくれる余裕を持った筐体だということはわかる。
本体サイズは、272.71×638.96×569.25mm(幅×奥行き×高さ)だが、独特な形状を考慮してご確認いただきたい。重量は28kgと、一般的なゲーミングPCと比べてかなり重い。運送時の外箱もかなり巨大で、宅配業者が「相当重いので気を付けてください」と言ってくれたほどだ。箱から本体を出す際は、男性でも1人では苦労する。うっかり手を滑らせれば、PCの損傷のみならず自分が大けがをしかねないので、取り扱いは慎重にしつつ、事前に部屋の整理をしておくことをお薦めする。
4Kゲーミングにも対応可能なパフォーマンス
まずは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていきたい。利用したのは、「3DMark v1.4.828」、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」、「バイオハザード6 ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」、「CINEBENCH R15」。
ゲーム系ベンチマークソフトはフルHDでは役不足になりつつある。仮に4K環境でテストしたなら、スコアはおよそ3分の1から4分の1程度になるはずだが、それでも画質を下げることなく快適なラインが保てそうな状態だ。また「3DMark v1.4.828」の結果を見る限り、最新の3Dゲームタイトルでも十分に活用できるはずだ。
ベンチマークテストの結果だけを見ると、スペックなりの順当な結果という印象でしかないが、本機は実際の使用感や筐体のつくりに真の魅力がある。詳しくは後述したい。
- | ALIENWARE Area-51 プレミアム |
---|---|
CPU | Core i7-5820K |
GPU | GeForce GTX 970(4GB) |
メモリ | 8GB DDR4-2133(4GB×2) |
HDD | 2TB(7,200rpm) |
OS | Windows 8.1 Update 64bit |
「3DMark v1.4.828 - Fire Strike」 | |
Score | 9,956 |
Graphics score | 11,297 |
Physics score | 14,226 |
Combined score | 4,255 |
「3DMark v1.4.828 - Sky Diver」 | |
Score | 27,750 |
Graphics score | 36,273 |
Physics score | 13,352 |
Combined score | 24,244 |
「3DMark v1.4.828 - Cloud Gate」 | |
Score | 28,715 |
Graphics score | 76,262 |
Physics score | 9,024 |
「3DMark v1.4.828 - Ice Storm Extreme」 | |
Score | 142,894 |
Graphics score | 261,961 |
Physics score | 55,154 |
「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(1,920×1,080ドット/最高品質) | |
- | 14,304 |
「バイオハザード6 ベンチマーク」(1,920×1,080ドット) | |
- | 15,542 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 ver.2.0」(1,920×1,080ドット/簡易設定5) | |
- | 75,064 |
「CINEBENCH R15」 | |
OpenGL | 153.12fps |
CPU | 1,064cb |
CPU(Single Core) | 127cb |
ストレージは東芝製のHDD「DT01ACA200」が使われていた。参考までに「CrystalDiskMark 3.0.3」で測定してみた。
超ヘビー級/三角形ケースのメリット
本機について多くの方が知りたいのは、スペックよりも「その三角形のデザインってどうなの?」ということだろう。実際の使い勝手を、内部も覗き見ながらお話ししていきたい。
最初の印象は先述の通り、とにかく重いので、設置までは一苦労だ。本体を持ち上げる時は、頂点部分を左右から掴んで持ち上げればいい(というかほかに掴むべきところがない)が、何せ30kg近くあるので、腰を痛めないよう注意していただきたい。しかし設置が済んでしまえば、形状的に下の方に重心があるため安定感がある。底面の土台も分厚いゴムで、滑るような感覚は一切なく安心。防振も期待できる。
実際に使用してみると、ゲーミングPCとしては十分に静かな部類だと感じる。稼働中に背面を覗くと、GPUからそれなりの排熱と排気があるのは感じられるが、前面から聞こえる騒音はかなり抑えられている。それでいて前面に手をかざすと、かなりの勢いで吸気しているところに安心感がある。
前面パネルは光学ドライブ、USB端子、ヘッドフォン端子、マイク端子、SDカードスロットというシンプルな構成。右上にあるエイリアンのマークが電源ボタンになっている。リセットボタンはどうやら存在しないようだ。前面が斜めになっていることで、本機を足元に置いて使う際に、各種端子へのアクセスがしやすい(これを机の上に置こうという人も稀だと思うが)。
背面パネルは見慣れたレイアウトで、電源は下部にある(といっても斜め向きだが)。ユニークなのが、左上にある小さな四角いボタンで、これを押すとパネル横のLEDが光って背面が見やすくなる。電源を落としている状態でも使用できるので、ケーブルの抜き差しの時にはありがたい。なおPS/2ポートは非搭載で、キーボードはUSBなど他の方法で接続する必要がある。
そして「ALIENWARE」ならではのLEDのライティングも搭載。本機は前面パネルのラインと電源ボタンとなるロゴマークに加え、左右のサイドパネルに入れられた3方向のラインが光る。色や光り方は「AlienFX」というツールでカスタマイズが可能だ。
続いて本体内部にアクセスしよう。サイドパネルを開けるには、背面上部にあるネジを1本抜いて、ロックを解除する必要がある。その後、ロックの左右にあるフックを引き上げると、サイドパネルが外れる仕組みになっている。
左側のサイドパネルを外すとマザーボード等が見える。CPUは簡易水冷ユニットを使っており、背面上部のファン付きラジエータで冷却している。高負荷時でもファンの騒音が小さく感じられるのはこのおかげだろう。GPUは独立した空冷式。本体前面下部から吸気し、GPU後部から排気するという、空気の流れが見えるようなパーツ配置が美しい。
ちなみに外したサイドパネルは、やたらと重い。内側を見ると、がっしりとした金属板がこれでもかと固定してある。LEDを光らせるための装置があるだけでなく、防振と密封性のために意図的に重くしてあると思われる。
右側のサイドパネルを開けると、ストレージを固定するスペースが用意されている。3.5インチが3つ、2.5インチが重ねて2つ設置できるようだ(本機では3.5インチHDDが1つ設置済み)。固定する向きや位置は、三角形のケースのスペースを何とか取ったようなバラバラさも感じるが、SATAケーブルや電源ケーブルが最初から取り回してあり、すぐにでもHDDやSSDを増設できるようになっている。
左側に戻って見てみると、マザーボード周辺のケーブルがとてもすっきりしているのが分かる。ストレージ関連のケーブルを背面に引き込むようにしてあり、電源ケーブルも必要なものだけを表側に取り回してある。ケースだけでなく配線も丁寧になされているのは安心感がある。
サイドパネルを開けるまでは、外見のインパクト重視で中身に無理があるのではないかと想像したが、実際に見てみると三角形と頂点を合わせた6面をうまく使って空気の流れを作っており、理にかなった設計に見える。前面と背面が斜め上に向いているおかげで使い勝手がいい点も含めて、「これは素直にいいケースだな」と感じた。しかも本機のマザーボードはATXとされているので、その気になれば後々自分でマザーボードから総取り替えもできる。
三角形の外見は最初は強い印象を持つが、色味は黒とシルバーの2色で、LEDのライティングもワンポイント程度で派手さは感じない。実際に使っているとすぐに慣れてしまうのが不思議だ。サイズ的にはゲーミング向けの大型ケースと大差ない。重さだけは相当なものだが、静音性で考えればメリットにもなる。ハイエンドPCとしての性能だけでなく、使い勝手の面でもプラスアルファを求めたいなら、本機は満足度の高い製品になるはずだ。
本機は断じてイロモノではない。豪快な発想と設計による、スペックも実物も超ヘビー級の、実にアメリカ的なPCだ。