ゲーミングPC Lab.

“AMD最強”が魅力の15.6型ゲーミングノート「MSI GX60」

~Enduro Technology対応でシームレスにGPUを切り替え

GX60
12月中旬 発売

価格:オープンプライス

 株式会社マイルストーンから、MSI製のゲーミングノートPC「GX60」が12月中旬頃より発売予定となっている。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は12万円~14万円前後で調整中だ。発売に先立って試作機を入手したので、ゲーム用途においての使い方を中心にレポートをしていきたい。

“AMD最強”が魅力のゲーミングノート

 ニュース記事などで既報の通り、本製品の最大の特徴はなんといってもCPUからGPUまで、AMDのモバイルプラットフォームの最上位構成で構築されている点である。

 AMDのAPUは、APU単体でもノートPC向けとしては十分なグラフィックス性能を持っているため、ディスクリートGPUと組み合わせる形でノートPCに組み込んだ本製品のような構成は珍しい。今回のGX60ではそのGPUとして、モバイル向けGPUで最上位のRadeon HD 7970Mを搭載し、ゲームにおけるグラフィックス性能を追求している。

 APUとして採用されているA10-4600Mも、AMDのモバイル向けAPUでは最上位に位置するモデル。IntelのCore i7シリーズなどと比較すると性能面で見劣りするが、「近年のメインストリーム向けゲームはCPUよりもGPUパワー重視であり、それを見越しての採用」というのが開発のコンセプトとなっている。つまり「AMD最強モバイル向けAPU/GPUの組み合わせがGX60の構成そのもの」になっているわけだ。

 ノートPCでIntel CPU+NVIDIA GPUの最強タッグで組もうとした場合、当然Core i7-3940XM(3GHz)とGeForce GTX 680Mとの組み合わせになる。GX60はmSATAのRAID 0 SSDや750GB HDDなど独自の装備が多いため、同じような構成の製品がなく、なかなか価格を引き合いに出して比較するのは難しいが、最低でも25万円を超えるのが当たり前になってくるのではないだろうか。そこから10万円以上安く、これ以上AMDに求めても存在しない“最強”が、本製品のミソだ。

 AMDのGPUと言えば、多画面出力「Eyefinity」が魅力の1つだが、本製品もミニD-Sub15ピン、Mini DisplayPort、HDMIとバラバラながら3系統の画面出力が可能となっている。コンセプトとなっている3画面でゲームはもちろん楽しめるが、WebデザインやCAD、金融関連のアプリケーションなどでも大いに威力を発揮する設計である。

 また、ベンチマークなどの詳細は後述するものの、6Gbpsに対応したmSATAを2基搭載し、RAID 0構成とすることで最大900MB/secのストレージ転送速度を実現している点や、それに加える形での750GB SATA HDDの搭載、チップセットネイティブでのUSB 3.0ポートを3基搭載する点など、低価格ながらもI/O足回りが充実している点も、AMDプラットフォームのGX60ならではの特徴と言えるだろう。

ひっそり「Enduro Technology」に対応

AMD System Monitorの情報

 本来は外観から製品を見ていきたいところだが、GX60は先述の通り、AMDモバイル最強プラットフォームを中心とした構成のため、普段のノートPCでは見られない特徴もあるので、これを先に紹介したい。

 心臓部となるAPUは先述の通り、A10-4600Mを採用している。CPU側は公式スペック上ではベースクロック2.3GHz、Turbo COREクロックが3.2GHz駆動だ。実際にCPU-Zで動作を確認してみたが、アイドル時は1.4GHzまで低下したものの、負荷時はスレッドを変えてもスペック上限である3.2GHzで動作することがなく、ほぼ2.7GHz前後で動作していた。

 「AMD System Monitor」でTDPの配分状況を見ても、グラフィックスに負荷がかかっていない状態でもクロックは最大2.7GHzである。この傾向はTrinityのベンチマーク時でも見られたものであり、改めて指摘するほどのものでもないかもしれないが、スペック通りの数字が出ていないというのはゲーマーにとって重要なので、頭に入れておいたほうが良いのかもしれない。

 APU内蔵のRadeon HD 7660Gコアは、およそスペック通りで、コアは最大685MHzで動作。SPは384基で、メモリの速度はシステムメモリ依存だ。なお、本機にはDDR3-1600対応のelixer製モジュールが搭載されていた。

搭載APUはA10-4600M。最大クロックは2.7GHzのようである
アイドル時は1.4GHzに低下する
Radeon HD 7970Mの最大クロックは850MHzだった

 一方ディスクリートGPUとして搭載されているRadeon HD 7970Mは、デスクトップ向けのRadeon HD 7870 GHz Editionの動作クロックを落とし、モバイル向けにTDPを調整したと言えるモデル。スペック上でのストリームプロセッサ数は1,280基、コアクロックは850MHz、メモリはGDDR5を2GB搭載し、クロックは5GHz、バス幅は256bitとなっている。

 GPU-Zでクロックやスペックなどを確認しようとしたが、正常起動しなかった。そのため「AMD System Monitor」で監視したところ、コアクロックこそリファレンス通りの850MHzだったものの、メモリは4.8GHz駆動だった。メモリクロックに関してはそれほど大きな差ではないので、目くじらを立てるほどでもないだろう。バッテリ駆動時は、バッテリへの負荷に配慮してか、コアクロックが450MHz、メモリクロックが1.2GHzに自動的に低下する仕組みとなっていた。

 さて、APUとGPUのスペックを踏まえた上で、GX60のもう1つの特徴を挙げておかなければならない。それは「Enduro Technology」への対応である。

 Enduro Technologyは、ざっくり言ってしまえばNVIDIAのOptimus Technologyと同じ機能を提供するものである。利用するソフトウェアに応じて動的にGPUを切り替えることで、性能と省電力性の両立を図るものだ。これまでAMDプラットフォームでGPUの切り替えは、マルチプレクサーが必要になるため、設計上高コストになってしまう。EnduroではOptimusと同様、オンデマンドで動的な切り替えを実現するため、このようなデメリットがない。

 試用当初、AMD VISION Engine Control Centerの設定画面で「Switchable Graphics」とだけ書かれていたし、ゲームなどをフルスクリーンで動作させていたため、てっきりソフトウェアが起動すると自動的に表示GPUの切り替えが行なわれる、いわゆる第2世代のスイッチャブルグラフィックスだと勘違いしていた。しかし「Unigine Heaven DX11 Benchmark 3.0」をウィンドウで実行したところ、一瞬画面が暗くなる現象が見られなかった上、設定に応じてその場でGPUが切り替わり、スコアに反映されることを確認できたため、Enduroが有効になっているとようやく気づいたのだった。

 この1~2年はGeForce搭載ノートは多くなったものの、Radeon搭載ノートは市場からかなり少なくなっていたように思う。その一因として、Optimusのような技術の有無が挙げられると思うのだが、AMDのRadeon HD 7000MシリーズでEnduroをサポートしたことにより、この問題が今後解消できそうだと言っていいだろう。しかし先述の通り、「Switchable Graphics」という素っ気ない公式ネーミングは、これまでとなんら変わらないため、消費者にも新しい技術であると伝わりにくい。このあたりのマーケティングはNVIDIAに倣って積極的に打ち出してもらいたいところである。

 さてそのEnduroによる効果である。AMD System Monitorで監視すると、3Dアプリなどが一切起動しないアイドル状態では、Radeon HD 7970Mのコア/メモリクロックがともに0MHzなので、全く動作していないことがわかる。このあたりは謳い文句通りである。この状態でバッテリを抜いて、キーボードバックライトON/液晶輝度を最小にしたところ、消費電力は22W前後だった。

 手持ちのCore i7-3612QM+GeForce GT 650M搭載ノート「NEXTGEAR-NOTE i300」はアイドル時14Wだったので、これと比較するとやや高いが、液晶サイズの差のみならず、2台のSSD、1台のHDD、バックライトキーボードなどの差があるので、単純比較はできない。しかしハイエンドGPUを搭載する15.6型ノートPCとしては、かなり優れた低消費電力と言っていいだろう。

 負荷時はどうかというと、Heaven DX11 Benchmark 3.0で試したところ、APU内蔵のRadeon HD 7660G稼動時でおよそ58~61W、ディスクリートのRadeon HD 7970M動作時で約108W~114Wと、最大で56W、つまりCPU 1個分の消費電力差があった。やはりEnduroをうまく利用し、用途にあったGPUの利用をおすすめしたい。また、Radeon HD 7970M動作時はAPU内蔵の7660Gも少し動作していることがわかる。これは推測なのだが、Optimusと同様、フレームバッファのコピーが内部で行なわれているためだろう。

Switchable Graphicsの設定画面

 Enduroの設定は、先述の通りAMD VISION Engine Control CenterのSwitchable Graphicsのタブで行なう。上のペインは最近実行したアプリケーションで、下のペインが自ら追加したアプリケーション。Catalystが当初からプロファイルを持っている場合は、「Power Saving」か「High Performace」が選択されているが、持っていない場合は「Not Assign」となっているので、ここをクリックすれば動作GPUを切り替えられる。

 標準で提供されているドライバのこの設定画面でやや不親切なのは、アプリケーションをユーザー自身が指定した場合で、設定は記憶されているものの再起動するとリストに表示されなくなる。このため「当初はHigh Performaceで動作させていたが、今はPower Savingで動かしたい」といった場面では、いちからショートカットやexeファイルを探すハメになってしまう。現在提供中のCatalyst 12.11 betaではどうやら改善されているようだが、ノートプラットフォームにおけるベータ版で不具合が未知数のため、今回は導入しなかった。今後はMSIによるこの新しいドライバの正式提供が待ち遠しいところだ。

ゲーミングノートらしい外観

ゲーミングノートらしいパッケージ

 さて、主立った特徴を紹介したところで、外観を見ていきたい。本体は比較的大型のパッケージに収納されており、それもゲーミングノートらしい赤い攻撃的なデザインのハンドル付きパッケージだ。店頭で購入した場合持ち帰りは是非そのままで……と言いたいところだが、パッケージはゆうに4kgを超えており、そのまま手に持って帰るのはなかなか根気がいる。今回は試作機のためか、本体とACアダプタのほかに、付属品はDVD、簡易マニュアルのみと至ってシンプルだった。

 まずご対面となる天板だが、盾をモチーフとした山のラインが入っており、ゲーミングノートらしい意匠が見られる。天板は光沢仕上げで細かいラメが入ったブラック。指紋やホコリがつきやすく、このあたりはデザインとトレードオフになっているといったところか。真ん中にはMSIのロゴが入っており、動作中は液晶のバックライトから透ける光で、白く光るようになっている。

 天板を開いて液晶やキーボード回りを見ると、液晶枠の八角形やスピーカーの菱形、電源ボタンの五角形など、多くの斜線が入ったスタイリッシュなデザインとなっている。パームレストや枠は曲線も取り入れられており、このあたりは好みが一番分かれる部分だと思うが、個人的には全体を直線的なデザインに統一したほうが良かったように思う。

GX60本体
意匠の入ったゲーミングノートらしい天板
天板のロゴは動作中光る仕組み

 右側面は、手前側からヘッドフォン出力、マイク入力、ライン入力、ライン出力、USB 2.0、光学ドライブの並びだ。左側面はUSB 3.0、マルチカードリーダ、USB 3.0×2、排気口となっている。一方後部には、向かって左からDC入力、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン、Mini DisplayPort、HDMI、排気口となっている。ディスプレイ出力が多い以外は、過不足なく一通り揃えたといった印象である。

右側面のインターフェイス
左側面のインターフェイス
背面はディスプレイインターフェイスとGigabit Ethernetポートを備える

 底面パネルは、はがすと保証が切れる封印シールの下を含む合計7つのネジによって固く止めされている。封印シールがあるため今回内部を拝見できなかったが、スリットから覗くとメモリにelixer製モジュールを2枚搭載している点、CPUとGPUが別系統のヒートパイプで放熱されている点、それとHDDにWD製が採用されていることがわかる。できれば特徴にもなっているSSDモジュールを見たかったのだが、これはデバイスマネージャーなどで解析することにした。

本体底面
elixer製のメモリモジュール
WD製7,200rpmの750GB HDD

 続いては液晶を見ていきたい。1,920×1,080ドット(フルHD)表示対応の15.6型とされているが、筆者としても久々に見るノングレア液晶であり、比較的明るいオフィスにおいても反射が少ないため非常に見やすい印象だ。開発者によれば、近年のゲーマーは見やすさという観点でノングレア液晶への回帰が進んでおり、本機もそのトレンドに則って採用したというのだが、これは正しい方針として評価したい。

 TN液晶のため、上下の視野角はやや狭いという印象だが、左右の視野角は一般的なノートのTNと比較して広く見やすい。近年よくみられる「青っぽさ」の傾向も少なく、比較的正しい色である。ただ高輝度表示では、やや早い段階で白飛びが確認できる。このあたりはせっかくのRadeonを使用しており、VISION Engine Control Centerで比較的容易に色のカスタマイズができるため、これを活用してユーザー自身がカスタマイズできると思う。個人的には、フルHD/ノングレア/広視野角の液晶を搭載しているだけで、120点を差し上げたいところである。

液晶は発色がよく見やすい。視野角も比較的広く、特に左右に広いため複数人で楽しめる

 続いてはSteelSeriesと共同開発したゲーミング向けのキーボードだが、アイソレーションで比較的ミスタイプしにくく、ストロークが適度にあり反応も良いというのは、さすがゲーム用ブランドを標榜しているだけのことはある。-/^/\キーに加え、,/./スラッシュ/バックスラッシュキーなど一部狭くなっているものの、それ以外は19.5mmフルピッチを確保しており、タッチタイプも可能だ。

 個人的に操作でやや戸惑ったのは、Windowsキーの位置、それからカーソルの位置、Deleteキーの位置である。Windowsキーはゲーマーにとって邪魔でしかないので、この位置になっているのは仕方ないにしても、カーソルキーがテンキー部分に入っているのはなかなか慣れにくいし、DeleteキーもWindowsでよく使うため、BackSpaceの上に持ってきて欲しかったというのが正直なところである。

 タッチパッドはスペースバーの下にあるため、やや左寄りとなっている。液晶解像度から想像するほどサイズが大きくなく、ボタンも1枚板のシーソー式である。このあたりはコストダウンが見られなくもないが、一般的なゲーマーは外付けのマウスを取り付けてしまうため、大きな問題にはならないだろう。

 内側でやや気になったのはパームレスト部。金属のヘアライン仕上げで非常に質感が高いものの、使用中の指紋や汗の跡がべったりついてしまう。実用性を考えて次期モデルでは梨地仕上げ、もしくはラバーのパームレストを採用していただきたいところだ。

 このほか、キーボード上部にはタッチパネル式のショートカットキーが用意されている。ユーザーが自分で動作を指定できる「P1」のほか、ファンを全開にするボタン、キーボードバックライトをON/OFFするボタン、無線LANのON/OFFボタン、ディスプレイをOFFにするボタン、それから光学ドライブをイジェクトするボタンとなっている。その右にはCaps LockとNum Lockの状況を表示するLEDを備えている。

SteelSeriesと共同開発したというキーボード。配列は比較的ゆったりとしている
LEDバックライト付きのキーボード
電源ボタン周辺のタッチパネル式ショートカットキー
八角形に型どられたタッチパッド
パームレストは金属で、指紋や汗の跡がやや気になる

 駆動時の騒音は、アイドル時でも動作しているのがよく分かる程度にある。しかしこれはファンより発せられた騒音ではなく、WDの7,200rpm HDD「WD7500BPKT」から発せられているように思うので、ファンの設計は比較的優秀だ。負荷時はそれなりの騒音がするが、それでもファン全開にはならないので、約110Wのゲーミングノートとしては抑えられているほうではないかと思う。なお、ファン全開時の騒音はかなり気になるだろう。

 このように冷却機構が強力なため、パームレスト部の熱とは無縁である。また筐体設計もがっしりしているため、7,200rpmのHDDの振動やファンの振動もなく、このあたりは安心できる作りだ。

 付属のACアダプタは巨大だが、モビリティ重視の製品ではないため気にならない。19V/9.5A出力で合計180Wという強力なACアダプタだ。先述の通りバッテリを抜いた状態で負荷時は約110Wあったが、バッテリを充電するとなるとさらなる負荷がかかるため、このような大容量のものが付属しているのだろう。しかしそれでも要求スペックからはかなり余裕があるはずで、このあたりは安定性や寿命の面で心強い。

 バッテリは11.1V出力で7,800mAh、すなわち87Whの容量を持つ大容量モデル。切り替え式とは言えユーザーが意図的にRadeon HD 7970Mを使うことを考えると、この程度の容量が必要ということだろう。

付属のACアダプタ。合計180Wの出力が可能
本体も巨大だが、ACアダプタも巨大である
87Whの容量を持つバッテリ

高速なSSDやKiller E2200など、そのほかの特徴のポイントを押さえる

 さて、APUやGPUがAMD最強であることは何度も繰り返し述べてきた通りだが、本製品のそのほかの特徴も押さえていく。

BIOSで確認する限り、使われているSSDはSanDiskの「U100」のようである(1となっているのは文字が途切れているためとみられる)

 まず、SSDは独自の「Super RAID」と呼ばれる構成になっている。仕組みは単純で、AMDのハードウェアRAID機能を利用して、2つのmSATAモジュールをRAID 0構成とすることで高速化を図っている。BIOSで見る限り、mSATAドライブはSanDiskの「U100」が利用されているようである。U100は公称でシーケンシャルリード480MB/sec、シーケンシャルライト380MB/secを謳っており、このため製品説明会のスライドでは「最大900MB/sec」などと高速性が謳われている。

 実際にCrystalDiskMarkを利用して0fillのテストデータで計測したところ、シーケンシャルリードが456.9MB/sec、同ライトにいたっては70.74MB/secで頭打ちになってしまった。そこで、公称数値が比較的出やすい「ATTO Disk Benchmark」でテストしたところ、転送サイズが2MB前後のデータにおいて、確かに840MB/secを確認できた。また、32KB以上、256KB/512KBを除くのデータサイズにおいてはすべて700MB/sec超となっており、条件が限定されるものの、ひとまず公称通りの速度が出ているとみて間違いなさそうである。

 ただし書き込み性能はやや振るわず、このあたりはAMDのドライバとの相性なども考えられる。ゲーマーにとって最も重要なのはリード性能であるため、問題にはならないと思う。よく遊ぶゲームについては、内蔵HDDではなく、SSDにインストールしたほうが快適にプレイできるだろう。

内蔵SSDのCrystalDiskMark結果。公称値が発揮されていない
ATTO Disk Benchmarkでは公称値に近い840MB/secを記録した
内蔵HDDのベンチマーク。7,200rpmのため、比較的良好なスコアを示した
デバイスマネージャーで見たネットワークコントローラ

 Gigabit Ethernetコントローラは、Qualcomm Atheros、元Bigfoot Networksブランドの「Killer E2200」を搭載する。Killer E2200を搭載する製品としては、GIGABYTEのG1.Sniper 2が挙げられるが、従来のPowerPCベースのプロセッサ+DDR2メモリでネットワーク処理していた「Killer E2100」から大幅に実装の簡素化が図られているチップとなる。

 設定画面はKiller E2100と共通なので、機能面もほぼ共通だ。アプリケーションごとの通信の優先順位を設定できる点や、CPU/ネットワークの利用状況の監視ができる。アプリケーションごとに通信の優先順位を設けることでPINGの高速化をする機能は、以前NVIDIAのチップセットに装備された「FirstPacket」や、ASRockのマザーで備えている「XFast LAN」とほぼ同じ仕組みであろう。

Killer E2200を搭載。従来のE2100と設定はほぼ共通のようで、インターネットプロバイダの速度、アプリケーションごとの優先度などを設定できる

 「MSI Audio Boost」は、ヘッドフォン出力端子のみに装備されるアンプ機能のことを指す。専用アンプ回路を設けることで、出力を30%増強し、低ノイズ/低歪率を実現するという。というわけで実際、Etymotic Researchの「ER-4S」で試聴し、実際にその実力を試してみた。試聴の際には、プリインストールされている高音質化ソフトウェア「THX TruStudio Pro」をOFFにしてある。

 確かにMSIの謳い文句どおり、音量をそれほど上げなくても十分な音量が得られるし、ホワイトノイズ、マウス移動やHDDアクセスなどのノイズ源とは無縁な、クリアな音が得られた。普段聞いている「NEXTGEAR-NOTE i300」のライン出力と比較しても、S/N比がやや高く、あまり低音向きではないER-4Sでも、低音の迫力が増したように感じられ、ゲームにおける砲撃などのシーンで十分迫力が得られた。ゲーミングノートとしては素晴らしい出力だ。

 一方、内蔵されるスピーカーは、それほどハウジングがないためか、このサイズとしてはやや高音よりの痩せ細ったサウンドといった印象だ。それでも手持ちの11.6型のいずれのノートよりも大きい音量が得られるし、THX TruStudio ProをONにした時は、11.6型にはない低音が得られたので、THX TruStudio ProがONという前提であれば、まずまずの完成度と言っていいだろう。

ライン入出力のほかに、ヘッドフォン出力とマイク入力が独立している
付属の高音質化ソフトウェア「THX TruStudio Pro」

 最後にバックライト付きのキーボードについてだ。バックライトのON/OFFは先述の通り、キーボード上部のタッチセンサーで、OFF/全キー白く光る/左手の主要キーのみ白く光るという3パターンで設定可能だ。

 一方、Windows上では「KLM」と呼ばれるユーティリティで、さらに詳しく設定できる。具体的には、左、中央、右の3つの部分にわけて、それぞれ28色の中から選べる。そして発光パターンは、常時すべて点灯する「Normal」のほか、左手の主要キーのみを設定する「Gaming」、息吹くようにゆっくりと点滅する「Breathing」、波打つように左から右まで点滅する「Wave」、そして全体を指定した2色でグラデーション推移する「Dual Color」の5種類から選ぶことができる。すべて組み合わせれば、1,000種類以上のパターンが用意されることとなるので、このあたりはユーザーが好みにあわせてじっくり設定すると良いだろう。

 いずれの機能や特徴もゲーミングノートとして必須項目ではないが、ゲーミングノートらしさをアピールするのに十分な訴求力がある。大手デルの「Alienware」シリーズと比較しても、決して引けをとらない装備は十分称賛に値する。

Windows上のKLMユーティリティでキーボードバックライトの発光をカスタマイズできる
設定を反映したところ

グラフィクス性能はRadeon HD 7850と7870の間か

 機能は特徴面の紹介でかなり長くなってしまったが、いよいよベンチマークテストに移りたい。と言ってもあらかじめお断りしなければならないのは、今回システムベンチマークとしてPCMark 7しか走らせていないのだが、かなりの低スコアになってしまった。

 手持ちのNEXTGEAR-NOTE i300でも、GeForce GT 650MがONになっているとスコアが大幅に低下したので、PCMark 7がそもそもOptimusやEnduroのようなスイッチャブルグラフィックスに対応していない可能性が最も大きいのだが、それでもComputationやEntertainmentスコアがあまりにも低下している。これは今後改善される可能性もあるので、あくまでも参考としてもらいたい。

【表】ベンチマーク結果

GX60NEXTGEAR-NOTE i300
CPUA10-4600M(2.3GHz)Core i7-3612QM(2.1GHz)
メモリ8GB(DDR3-1600)8GB(DDR3L-1600)
OSWindows 8(64bit)Windows 7 Home Premium(64bit)
GPURadeon HD 7970MRadeon HD 7660GGeForce GT 650MIntel HD Graphics 4000
PCMark 7
PCMark-61236785056
Lightweight-347639294415
Productivity-383435384073
Creativity-496642497645
Entertainment-53033334089
Computation-31326011740
System storage-436950815037
FinalFantasy XI Official Benchmark 3
High--40374855
Low--64776870
3DMark 11
Performance431913382398740
Graphics563912522235631
Physics2575252556406447
Combined248311301829721
Extreme1792404--
Graphics1692365--
Physics26162541--
Combined2141418--
DiRT3(1,920×1,080ドット)
No MSAA48.8212.83--
4x MSAA48.2912.84--
Heaven DX11 Benchmark(1,920×1,080ドット)
FPS50.910.3--
Score1282260--
Bbench
単位:時間-2.92-3.52

 3DMark 11の結果を見ると、確かにMSIの謳い文句どおり良いスコアが出ている。PerformaceプリセットでGraphis Scoreが5639、Extremeプリセットで同スコアが1692というのは、デスクトップで言えばちょうどRadeon HD 7870とRadeon HD 7850の間のスコアである。Radeon HD 7870のSP構成をそのままに低クロック化しているので、むしろ至極まっとうな結果と言える。ここまでスコアが高ければ、ハイミドルレンジのゲームも快適に動作するだろう。

 DirectX 11のテッセレーションを多用するGPUベンチマーク、Heaven DX11 Benchmark 3.0でも、1,920×1,080ドットフルスクリーンで平均50.9fpsをマークし、なかなかの実力を発揮した。DirectX 8ベースのFinal Fantasy XIオフィシャルベンチマーク3は、残念ながら動作しなかった。

 また、レーシングアクションゲーム「DiRT3」のベンチマークも走らせてみたが、MSAAなしで48.82fps、4xのMSAAをかけても48.29fpsとわずかな低下にとどまり(とは言え、このベンチマークの結果はランダムなので、あくまでも参考程度だが)、目視でもかなりスムーズだった。ハイエンドGPUだけあって、軽いゲームであればアンチエイリアシング処理を積極的に適用してもよさそうである。

 一方、APU内蔵のRadeon HD 7660Gの性能だが、ざっくり言って「Intel HD Graphics 4000の2倍、GeForce GT 650Mの半分」といったところに落ち着いている。システムメモリとバンド幅を共有しながらこれだけの性能が出せるというのは、なかなかではないだろうか。

 ではせっかくなので、実際のゲームではどうなのかといったところで、「Steam」を利用して、個人が購入した最新のアクションゲーム「Assassin's Creed III」、FPSゲーム「Metro 2033」、「S.T.A.L.K.E.R.:Shadow of Chemobyl」をインストールしてみた。

 まずAssassin's Creed IIIだが、マルチコアCPUへの対応が大きく謳われているタイトルではないが、シングルスレッドの負荷がかなり高いようで、CPUのコアあたりの性能がかなり試されるタイトルであるようだ。そのためRadeon HD 7970Mの力を持ってしても、フルHDの解像度で快適に動いているとは言いがたく、最もシンプルなシーンでも目視で20fps、キャラクターが多数登場する戦争のシーンでは10fpsを切っている。

 続いてMetro 2033だが、このタイトルは特にPhysXが必須というわけではないはずなのだが、なぜかPhysXloader.dllがないというダイアログが表示されて実行できなかった。このあたりはWindows 8との互換性の問題などもありそうである。最後にS.T.A.L.K.E.R.:Shadow of Chemobylだが、起動ロゴまで辿りつけたものの、そこから先はすぐに落ちてしまった。

 どういったところが問題で起動できないのか、今回時間の問題で突き止められなかったが、Windows 8を選択すると互換性問題のあるタイトルが存在する可能性がある、またいくらAMD最強とは言え、CPUがCore i7ほど高速ではないため、快適に遊べないタイトルが存在する可能性があるということは、頭の隅に入れておいたほうがよさそうだ。

 BBenchを用いたバッテリのテストだが、テキスト入力をONにした状態でおよそ3時間の駆動が可能だった。Windows 8ではWeb巡回の機能がうまくテストしていないため、実際の環境ではおよそ2時間少々と言ったところだろうか。全体的に消費電力が比較的高いAMDプラットフォーム、しかも15.6型フルHD液晶、7,200rpmのHDDを搭載しながら、この駆動時間を実現しているのは、評価して良いだろう。

AMDが提示する低価格ゲーミングプラットフォーム

 以上、GX60の機能や特徴、性能について詳しく分析してきた。AMD最高のモバイル向けGPUを搭載しているだけのことはあり、3DMark 11やDiRT3の結果は素晴らしいものである。本機の開発コンセプト通りに「ハマる」ゲームであれば、間違いなく快適にプレイできる。その一方でマルチコアCPUや、コアあたりの性能に重視し、Intel CPUに最適化されたタイトルでは、性能が発揮できない可能性もある。つまりゲーミングプラットフォームとして見た場合、「ゲームを選ぶゲーミングノート」ということになりそうだ。

 当然、本製品はゲーミングに注力したデザインやパーツを採用していることには変わりはないのだが、裏を返せば、通常の用途においは、十分すぎるほどの機能と性能、そして信頼性が得られるということだ。特にノングレアのフルHD液晶、3画面のディスプレイ出力、高いオーディオ性能と有線ネットワーク性能、ストレージ性能、グラフィックス性能などは、一般用途においての体験も高めてくれる。「一般的なPCとしてブラウジングや文書作成、フォトレタッチなどにおける使用は多いけど、たまに息抜きでゲームもやる」といったメインストリームユーザーにとって、1台で応えられるノートPCになるのではないだろうか。

(劉 尭)