■ゲーミングPC Lab.■
11.6型ワイドというコンパクトなボディにNVIDIA GPUを搭載し、「宇宙最強のゲーム用11型ノートパソコン」を謳う「Alienware M11x」が6月に、Calpellaプラットフォームにリフレッシュした。
従来モデルはCore 2 Duo SU7300(1.3GHz)を中心にIntel GS45 Expressが内蔵するGMA4500HDおよびGeForce GT 335Mを搭載した構成だった。これに対し新モデルは、Core i3/i5/i7プロセッサに内蔵されたIntel HD Graphics、およびGeForce GT 335Mという構成になる。しかもCore i3プロセッサを搭載したプレミアムパッケージモデルは89,980円(執筆時点)と、従来モデルよりも1万円ほど価格を下げて投入された。今回入手したのはこのCore i3搭載モデル。Alienware M11xとしては最廉価ではあるが、どれだけのパフォーマンスを秘めているのか検証していこう。
Alienwareモデルはパッケージからコンセプトを統一 | プレミアモデルだけあって本体はカバーに包まれている |
●Alienware M11x新モデルはCore i7も搭載可能
まずはAlienware M11x新モデルの概要から紹介していこう。新モデルが搭載可能なCPUは冒頭で紹介しているが、詳しくはCore i3-330UM(1.2GHz)、Core i5-520UM(1.06GHz)、Core i7-640UM(1.2GHz)という3つから選べる。型番末尾に「UM」とあるとおり従来の超低電圧版に相当し、TDPはどれも18Wである。この値には統合されたグラフィック機能のTDPも含まれている。Alienware M11xシリーズはこの3種類のCPUに加え、執筆時点では従来のCore 2 Duo SU7300モデルもまだ掲載されており、全4種類から選択できることとなる。
従来のCore 2ベースからCore iプロセッサベースに進化を遂げた | 合わせてキャッシュ構造も変更されている。評価機はCore i3を搭載していたためL3キャッシュが3MBとなっている。Core 2 Duo SU7300の場合、3MBなのはL2キャッシュ |
CPUのスペックをさらに深く見てみよう。最廉価となるのはCore i3-330UMで、TurboBoostテクノロジには対応しないため、動作クロックは1.2GHz固定。中位モデルがCore i5-520UM。定格クロックは低く抑えられているが、TurboBoostに対応しており、最大1.86GHzまで引き上げられる。上位はCore i7-640UM。TurboBoostの上限は2GHzを超える2.26GHzに設定されている。また、この3つのCPUはすべてデュアルコアであることに加え、Hyper-Threadingもサポートしており4スレッドまでが同時実行可能だ。そのほか、Core i7のみ、他のモデルよりもL3キャッシュ容量が1MB多い4MBとなる。
組み合わせるチップセットはIntel QS57 Express。他の5シリーズチップセットよりも実装面積を小さくしたモデルだ。特徴としてvProやAMT、AT(Anti-Theft Technology)にも対応しているが、Alienware M11xはコンシューマ向け製品であるため説明は省略する。
ディスクリートグラフィックス機能は引き続きNVIDIA GeForce GT 335M(1GB)が採用されている。変わったのは統合グラフィックス側だ。従来モデルではチップセットに統合されたIntel GMA4500HDから、新モデルではCPUに統合されたIntel HD Graphicsが利用されることとなる。DirectXのサポートとしてはどちらも同じだが、3D性能は高まり、ビデオ再生支援機能も強化されている。この統合グラフィックの強化は、Alienware M11xユーザーとしては主に「普段使い」に影響を与えると思われる。
それよりも大きなグラフィックス機能のトピックは、NVIDIA Optimus Technologyへの対応だ。Optimusは、ドライバの情報に基づき、起動したアプリケーションがGPUパフォーマンスを求めるような際に、自動的に外部GPUへと切り替える機能だ。ドライバに情報が無いが、強制的に外部GPUを使いたいというような場合を除き、普段の使用では2つのGPUを意識せず、消費電力とグラフィックパフォーマンスのバランスがとれるわけだ。
●デザインは従来モデルとほぼ同じだがD-Sub15ピン出力がついにお役御免今回借用したのはCore i3-335Mを搭載したプレミアムパッケージに相当するモデルだ。外装のカラーリングはグレーのルナ・シャドウ。記憶する限り、従来モデルとほとんど変わらない色味である。別色としてステルス・ブラックも選択可能だが、従来モデルではコスミック・ブラックだったため、こちらは新旧モデルに若干の違いがあるものと思われる。
デザインは新旧モデルとも基本的に同じ。上位モデルであるAlienware M15x/M17xの流れを汲み、スラッシュカットされたフロント、ほぼフラットと言えるボディに、各種の発光ギミックを備えている。発光ギミックはAlienFXユーティリティから設定変更可能。上位モデルよりも設定項目が若干少ない点も、従来モデル同様だ。
インターフェイスは左右にまとめられており、左側面にはDisplayPort、HDMI、USB 2.0。Ethernet、メモリカードスロット、IEEE 1394aを備える。右側面は音声入出力とUSB 2.0×2。新旧モデルを比較すると左側面が大きく異なる。新モデルではアナログディスプレイ出力が廃止された。これに合わせて端子の並びも変更されており、位置が変わらなかったのはメモリカードスロットとIEEE1394aくらいである。
キーボード面も新旧モデルに違いはない印象だ。今回英語配列キーボードだったため直接の比較はできないものの、キーピッチに関しても変わりは無いように思える。キーボード上部中央の電源ボタンのリトルグレイマークも健在。ただし、パームレストが従来モデルではラバーにも似た質感だったと記憶しているが、新モデルでは凹凸が深くギラついたイメージになっている。
もう1つ変更されている点を見つけた。それはACアダプタだ。評価機のみという可能性も否定できないが、今回付属していたのは最近のデルのPCでよく採用されるようになったスリムタイプのACアダプタだ。従来モデルをレビューした際には、ごく一般的なかたちのACアダプタが同梱されており、これと比べると新モデルのほうが若干カバンへの収まりが良い。とくにコンセント直挿しのL字型プラグを併用すれば、かなり持ち運びが快適になる。バッテリ容量は、63Whと相変わらずの大容量だ。少々設定が違うために従来モデルとの比較が難しいが、電源設定をバランスに、液晶輝度を50%程度、無線LANをオン、キーバインドとウェブ巡回をオンというかなり実運用環境に近い状態でBBench 1.01を計測したところ、約4時間動作した。ゲーミングPCと言う観点では優秀と言っていいだろう。
●Core i3モデルのパフォーマンスはC2Dモデルとほぼ互角Alienware M11xとはいえ、最廉価モデルのCore i3-330UMの性能はどのくらいだろうと興味ある方も多いことだろう。そこで、前回計測した従来モデルのデータに新モデルのデータを照らし合わせてみた。
PCMark 05で見る限り、Core i3-330UMは、1.3GHz駆動のCore 2 Duo SU7300のCPUスコアを上回っている。CPUアーキテクチャの改善が100MHz分のクロック差を上回ったと言えるだろう。ただし、Overallには注意が必要で、PCMark05の場合、デフォルトではNVIDIA Optimusに登録されていないため、Intel HDが利用される。結果、グラフィックスコアが半分以下となり、Overallにもこれが影響することとなった。
PCMarkVantageは各テストで従来モデルのほうが優位に立っているのだが、Overallでは、ほぼ互角という結果となっている。ベンチマークでスコアを第一に考えるのであればOptimusに登録してしまえば良いのだが、普段使うアプリケーションに関してはケースバイケースだろう。一部にDirectXを利用するアプリケーションというのはなかなか悩ましいところだ。
3D関連のテストに関しては、およそ従来モデルと同等の結果が出ている。GPU(この場合はGeForce GT 335M)に変わりは無いため、妥当と言えるだろう。ただ、若干CPUの影響はある。3DMark 06は全般的に新モデルが上回るスコアだが、やはり大きな要因はCPUスコアだ。また、3DMark VantageではGraphicスコアも上昇しているが、なかなか判断が難しい状況だ。CPUスコアは新モデルが従来モデルと比べ1000ほどスコアを上げていることから、CPUのボトルネックが解消されたとも考えられるが、1,024×768ドットと1,280×720ドットとではピクセル数もそこまで変わらないため、同時に従来モデル側でなんらかの(ドライババージョン等で)問題があったのだろうと見ることもできる。
従来モデルと比べると、プロセッサは4.1から4.3へ、メモリも4.8から5.1へと、概ねスコアが上昇している。ただしHDDに関しては、5.9から5.3に落ちているので、ここはBTOでパフォーマンスを上げたいところ。グラフィックスに関しては、新モデルの場合、「グラフィックス」がIntel HDを利用していると思われる3.7(ここも従来モデルでは3.2だった)。ゲーム用グラフィックスはGeForce GT 335Mを利用していると思われる6.2というスコアで、従来モデルの6.5から低下しているが、この理由は不明。
新M11x | 旧M11x | ||
PCMark 05 | PCMark | 3143 | 3847 |
CPU | 3299 | 3114 | |
Memory | 3299 | 3115 | |
Graphics | 2264 | 6007 | |
HDD | 4236 | 5838 | |
PCMarkVantage | PCMarks | 2924 | 2933 |
Memories | 1875 | 2459 | |
TV and Movies | 2155 | 2020 | |
Gaming | 2055 | 2503 | |
Music | 2783 | 3311 | |
Communications | 2451 | 2652 | |
Productivity | 2476 | 2285 | |
HDD | 2261 | 3971 | |
3DMark06 | 3DMark06 | 5839 | 5630 |
1,280x720 | 5713 | 5541 | |
1,366x768 | 5614 | 5491 | |
3DMarkVantage Graphics Score | 1,024x768 | 4093 | 4030 |
1,280x720 | 3672 | 2582 | |
1,366x768 | 3299 | 2352 | |
World in Conflict(Low) | 1,024x768 | 41 | 41 |
1,280x720 | 41 | 40 | |
1,366x768 | 37 | 38 | |
World in Conflict(VeryLow) | 1,024x768 | 59 | 61 |
1,280x720 | 58 | 63 | |
1,366x768 | 55 | 62 | |
THE LAST REMNANT | 1,024x768 | 56.06 | 47.17 |
1,280x720 | 48.69 | 44.42 | |
1,366x768 | 44.83 | 43.44 | |
ストリートファイター4(高) | 1,024x768 | 66.39 | 66.25 |
1,280x720 | 63.36 | 65.88 | |
1,366x768 | 60.72 | 65.29 |
Windowsエクスペリエンスインデックスの結果 |
なお、すでに述べたとおり、今回の機材はあくまで最廉価なCore i3-330UM搭載モデルだが、それでも従来モデルとほぼ同等の性能となっている。CPUだけとってもこの上にCore i5/i7があり、さらにSSDのように性能にもバッテリ駆動時間にも貢献するデバイスがBTOで選択できる。従来モデルを上回る、さらなるモバイルゲーミングPCに進化していると言っていいだろう。
(2010年 7月 6日)
[Text by 石川 ひさよし]