山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

楽天「Kobo Glo HD」

〜300ppiの高解像度ながら12,800円とリーズナブルな6型E Ink端末

「Kobo Glo HD」

 「Kobo Glo HD」は、楽天Koboが販売する6型E Ink電子ペーパー採用の電子書籍端末だ。細かい文字やコミックも高精細で表示できる300ppi(1,080×1,430ドット)の高解像度パネルを採用しつつも、税抜12,800円というリーズナブルな価格を実現していることが特徴だ。

 これまで楽天Koboの電子ペーパー端末と言えば、6.8型のKobo Aura H2O(265ppi)がもっとも高い解像度であり、主力であるKobo Auraは解像度が211ppiでしかなかったため、コミックが中心の日本市場ではやや力不足だった。競合であるAmazon Kindleは、昨年の冬商戦向けに300ppiのハイエンドモデル「Kindle Voyage」を投入しており、Koboについても6型というメインストリームの画面サイズで、高解像度モデルの投入が待望されていた。

 今回のKobo Glo HDは、同社が今年4月に海外で発売した高解像度モデルであり、3カ月遅れての国内への投入と相成った。この間、Amazonが主力モデルであるKindle Paperwhiteの解像度を300ppiへとアップした新モデルを投入したことで、高解像度モデルの争いはいっそう激しくなっている。今回は、同社ストアから購入した国内向けモデルを用い、既存の「Kobo Aura」および「Kobo glo」、さらに競合となるAmazonの「Kindle Paperwhite(2015)」と比較しつつチェックしていく。

カラーバリエーション展開はなくブラック1色のみ。ベゼル下部にKoboのロゴが控えめに印字されている
Kobo Aura H2O以降、それまでのスライド式からプッシュ式に改められた電源ボタンは、サイズが大きくなり、また本体上面の右側から中央に移動した
底面はmicroUSBコネクタとリセット用の穴のみ。メモリカードスロットは機能そのものが省かれた
背面。従来よりシンプルな面構成になった。写真では分かりにくいが中央やや上にKoboロゴがあり、下部にはRakutenロゴがある。全面が滑り止めのラバーで覆われている

メモリカードスロットは廃止へ。フロントライトのボタンも省かれる

まずは製品の比較から。Kobo Auraのほか、旧製品のKobo gloもあわせてチェックする。

Kobo Glo HD Kobo Aura H2O Kobo Aura Kobo glo
発売月 2015年7月 2014年10月 2013年12月 2012年11月
サイズ(幅×奥行き×高さ) 115×157×9.2mm 179×129×9.7mm 114×150×8.1mm 114×157×10mm
重量 約180g 約233g 約174g 約185g
画面サイズ/解像度 6型/1,448×1,072ドット 6.8型/1,080×1,430ドット(265ppi) 6型/758×1,014ドット(211ppi) 6型/758×1,024ドット(212ppi)
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Pearl)
通信方式 IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB) 約2GB(ユーザー使用可能領域:約1GB)
メモリカード - microSDカード
フロントライト 内蔵
防水・防塵機能 - あり(IP67規格準拠) -
バッテリ持続時間※公称値 約1カ月(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) 約7週間(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) 約8週間(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) 約1カ月、約30,000ページ(Wi-Fiオフ)
価格(2015/7/25現在) 12,800円 18,500円 11,000円 -
備考 発売時価格は19,980円 発売時価格は12,800円 発売時価格は7,980円

 製品は300ppiの高解像度でありながら実売12,800円(税抜)という、破格とも言える価格設定が大きな目玉だが、こうして仕様を比較すると、従来のKoboシリーズの大きな特徴がなくなっていることに気づく。それはメモリカードだ。

 従来のモデルはメモリカードスロットを搭載し、内蔵メモリがいっぱいになっても容量を増やせることが、他社製品、中でもKindleに対する大きなアドバンテージになっていた。おそらくコストダウンが理由と見られる今回のカードスロット廃止は、他社と同等になったと言えばそれまでだが、残念に思うユーザーも多いことだろう。自炊データを読むのに使っていたユーザーにとっては、かなり痛手を被る仕様変更だ。

 製品のサイズ、特に厚みについては、Kobo Auraよりもむしろ先代のKobo gloに近い。Kobo Auraは画面とベゼルの段差がなく、スタイリッシュな見た目を実現していたが、本製品では再び段差のある仕様へと先祖返りしており、ベゼルのぶん本体の厚みはKobo AuraよりもKobo gloに近くなっている。

 一方、重量の差は数g程度と、Kobo Auraと比べても誤差の範囲にとどめられている。実際には本製品の厚みのためか、公称値よりも重量差があるように感じるのだが、後述するKindle Voyageも同じ180gということで、十分に軽い。205gのKindle Paperwhite(2015)と持ち比べると、本製品の軽さを実感する。

 フロントライトを搭載しているのは従来と同じだが、Kobo Aura以前に存在していたライトのオン/オフボタンがなくなり、スクリーン上で明るさを調整する仕組みに一本化されている。防塵防水仕様のKobo Aura H2Oで採用された仕組みがそのまま引き継がれた格好だ。一見すると不便になったようだが、画面左端を上下になぞることで光量を調整するギミックが使いやすいため、実用上はあまり不便を感じない。余談だがこのギミックは、旧モデルのKobo gloでも最新のソフトウェアを適用すれば利用できる。

 新しいデザインのボディについては、光沢のある正面は手の脂が目立ちやすく、またプラスチックの質感は従来のモデルに比べて若干チープな印象を受けるが、背面は滑り止めのラバーが貼られており、手に持った際にしっくり来る。ブラック1色のカラーリング、そしてボディデザインは、従来のKoboシリーズよりもKindleシリーズに近く、遠目に見るとほとんど区別がつかないほどだ。

上段左が本製品、上段右がKobo Aura H2O、下段左がKobo Aura、下段右がKobo glo
Kobo Aura(右)との比較。同じ6型だが上下ベゼルの幅は本製品の方が広い
Kobo Aura(右)はベゼルと画面の間の段差がなかったが、本製品は段差がある
Kobo glo(右)との比較。色は違うがルックス的にはKobo gloにもっとも近い
6.8型のKobo Aura H2O(右)との比較。さすがにサイズの違いは歴然だ
厚みの比較。上から順に、いずれも右側がKobo Aura、Kobo glo、Kobo Aura H2O。ベゼルの段差がないKobo Auraとの厚みの差は相応にある
コンテンツを開いた状態で画面左端を上下にスライドすることでフロントライトの光量調節が可能

仕様はKindle Paperwhite(2015)と酷似。違いは重量、価格、バッテリー持続時間

 続いて、同じ300ppiのKindle2製品とも比べてみよう。

Kobo Glo HD Kindle Paperwhite(2015) Kindle Voyage
楽天Kobo Amazon
2015年7月 2015年7月 2014年11月
サイズ(同) 115×157×9.2mm 169×117×9.1mm 162×117×7.6mm
重量 約180g 約205g 約180g
画面サイズ/解像度 6型/1,072×1,448ドット(300ppi)
ディスプレイ モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta) モノクロ16階調 E Ink電子ペーパー(Carta)
通信方式 IEEE 802.11b/g/n
内蔵ストレージ 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3GB) 約4GB(ユーザー使用可能領域:約3.1GB) 約4GB
メモリカード -
フロントライト 内蔵(手動) 内蔵(自動/手動)
ページめくり タップ、スワイプ タップ、スワイプ、ボタン
バッテリ持続時間※公称値 約2カ月(ライトおよびWi-Fiオフ、約1分/1ページで1日30 ページ読書時) 数週間(明るさ設定10、ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時) 6週間(ワイヤレス接続オフ、1日30分使用時)
価格(2015/7/25現在) 12,800円 14,280円(キャンペーン情報つき)/16,280円(キャンペーン情報なし) 21,480円(キャンペーン情報つき)/23,480円(キャンペーン情報なし)
備考 - 3Gモデルも存在

 メモリカードスロットというKoboシリーズの大きな特徴がなくなったこともあるが、こうして仕様を並べるとおそろしく似ていることが分かる。解像度や画面サイズ、通信方式、ストレージ容量も同じなら、フロントライトを内蔵しているのも同じ。さらにE Inkの世代も同じCartaだ。

 本体のサイズ以外で違いがあるのは重量、価格、バッテリ持続時間だ。重量は本製品 = Kindle Voyage > Kindle Paperwhite(2015)の順に軽く、価格は本製品 > Kindle Paperwhite(2015) > Kindle Voyageの順に安い。バッテリ持続時間は本製品が一見有利に見えるが、本製品はライトオフ、Kindle Paperwhite(2015)はライトオン(明るさ10)での測定値なので、これだけでは優劣は判断できない。

 これ以外の大きな違いとしては、エントリーモデル以外で3GモデルをラインナップしているKindleに比べ、KoboはWi-Fiモデルのみであることが挙げられる。Kindleは3G環境ではコミックがダウンロードできないなど制限はあるものの、やはり外出先でコンテンツをダウンロードしたりストアにアクセスできるのは便利で、その点Koboに3Gモデルがないのは、選択肢としてやや不満を感じる。

左から、本製品、Kindle Paperwhite(2015)、Kindle Voyage。色が同じ、かつ下段ベゼルの中央にロゴが配置されるデザインなど、共通項が多い
厚みについては、上段右のKindle Voyageとの差はそれなりにあるが、下段右のKindle Paperwhite(2015)とはほぼ同等といったところ

セットアップは標準的な流れ。メニューも改善の跡あり

 セットアップの手順は従来と同じで、まずWi-Fiの設定を行なった後、ソフトウェアの更新確認が行なわれ、必要に応じてダウンロードと再起動が実行され、楽天IDとパスワードを用いてログインするという流れだ。今回はソフトウェアの更新が完了した後、なぜかWi-Fiの再設定を求められたほか、正しいパスワードを入力してもエラーが出るという現象が発生したが、流れ自体はとくにおかしなところはない。

パッケージ外観。背面は多言語で記されている
同梱品一覧。ケーブルのほか、かつてパッケージの外側にバンドルされていたスタートアップマニュアル(冊子)や、ヘルプのリーフレット、アプリの案内などが同梱される
パッケージから出した直後の画面。従来と同じく、PCとの有線接続が必須であるかのように誤解しかねない図柄
まずは言語を選択する
セットアップ方法を選択。今回はPCには接続せずWi-Fi経由のセットアップを選択
ネットワークの検索が実行される。SSIDが表示されたらタップしてパスワードを入力。過去の機種と同様、パスワードが合致しているのにエラーが表示される場合がある。無視してリトライすることで先に進める
タイムゾーンが検索され日時が自動設定される。そのまま「次へ」をタップ
恒例のファームウェアアップデート。「1分以内に完了します」とあるが実際には数分かかる。完了すると再起動する
今回は再起動後になぜか再びWi-FiのSSID選択とパスワード入力を求められた。先ほど入力したばかりの設定は消えてしまったようで、少々解せない
楽天会員IDとパスワードを入力してログインする。Kobo Aura H2Oでは文字が細かすぎる問題があったが修正されているようだ
ログインするとホームが表示され、あわせて最近追加または読んだ本5冊がダウンロードされる。以上でセットアップは完了

 個人的に使いにくいと感じるのが、セットアップが完了した時点で、最近追加または読んだ本5冊を自動的にダウンロードすることだ。これまでの環境で読んでいた本の続きをすぐ読めるようにという配慮だろうが、仮にそれが全てコミックだと計200〜400MB程度のダウンロードが発生するため、セットアップ完了後になんらかの操作を試みると、端末がなかなか反応しない状況に陥る。KindleとKoboを使い比べるとKoboが遅く感じられるのは、これが影響しているように思える。せめて直前の環境を復元するか否かを選べるようにして欲しいところだ。

 メニューなどの構成は概ね同様だが、これまでよりも操作が簡略化された箇所がいくつかある。例えばライトを調節する際、これまでは画面右上をタップしてメニューを表示した後ライトをタップしなくてはいけなかったが、今回のモデルではライトアイコンが画面上段にあらかじめ表示されており、これをタップしてすぐに調整のための画面を表示できるようになった。ソフトウェアをバージョンアップした過去のモデルでも採用されているようなので、今後この方式に置き換わっていくものと思われる。

 またその隣に表示されているWi-Fiのアイコンについても、これまではタップするといったんメニューが表示されていたのが、小さな設定画面がポップアップ表示されるようになり、タップの回数が1回少なくて済むようになった。細かな変更だが、使い勝手を向上させる改良ということで評価したい。

右上の明るさアイコンをタップすると、これまではメニューの一覧が表示されていたのが、今回は明るさの設定画面が直接表示されるようになった
Wi-Fiアイコンも同様で、メニューの一覧を経由せずにすぐ設定画面が表示されるようになり、接続のオンオフも切り替えやすくなった
メニューの一覧。画面右上の3本線のアイコンをタップすると表示される。ここは従来と変わりはない
画面のリフレッシュ間隔は、章単位という選択肢がなくなり、1〜6ページの間で選べるようになった。通常は6ページで問題ないだろう
体験版アプリは、従来はブラウザ以外にチェス、スケッチブック、ナンプレ、脱出ゲームなどが用意されていたが、今回はブラウザのみ

解像度は従来モデルとの差が一目瞭然。全体のトーンはやや淡目

 ではここからは、本製品の特徴を順にチェックしていこう。まずは解像度。300ppiという解像度は、Kindle VoyageやKindle Paperwhite(2015)と並び、E Ink端末としては最高クラスの高解像度となる。E InkのパネルはいずれもCartaということで表示の傾向はそっくり……と言いたいが、実際は見え方はかなり違う。具体的に見ていこう。

 以下の比較画像(テキストおよびコミック)は、いずれも上段左が本製品、右がKobo Aura、下段左がKindle Voyage、右がKindle Paperwhite(2015)という順番で並べたものだ。解像度の違いについては、上段右のKobo Aura(211ppi)と比べれば分かるように、やはり300ppiとの解像度との違いは歴然だ。これは異論のないところだろう。

 しかし300ppiの端末同士、すなわち本製品(上段左)とKindle2製品(下段)をよく見比べると、かなり見え方が違っているのが分かる。とくにコミックを見ると顕著に感じるのは、頬の斜線や首元の影など、中間調の色がKoboはかなり薄いということだ。頬の斜線のように、Kindleでははっきりした線として表現されているのが、Koboでは消えかかっている場合すらある。フロントライトをオンにすると中間調がさらに薄く見えることを考慮すると、やや全体のトーンが薄すぎる印象だ。

テキストコンテンツ(太宰治著「グッド・バイ」)を、最小サイズで表示した状態でクオリティを比較した画像。上段左が本製品(300ppi)、上段右がKobo Aura(212ppi)、下段左がKindle Voyage(300ppi)、下段右がKindle Paperwhite(2015)(300ppi)。解像度の違いは顕著だ
コミック(うめ著「大東京トイボックス 10巻」)のクオリティを比較した画像。上段左が本製品(300ppi)、上段右がKobo Aura(212ppi)、下段左がKindle Voyage(300ppi)、下段右がKindle Paperwhite(2015)(300ppi)。こちらも解像度の向上でディティールが大幅に向上しているが、下段のKindle2製品に比べると、中間調がやや薄い

 Koboは本製品までも、やや全体のトーンが薄く、結果としてシャープネスがやや不足しているような絵作りが特徴だったのだが、解像度が高くなってもそれを受け継いでいるようだ。テキストのもう少し広い範囲を比較した下記の画像だと、さらにその傾向が顕著に出る。下の画像は文庫本とほぼ同じフォントサイズで比較したものだが、左右のどちらが読みやすいと感じるだろうか。おそらく多くの人が、文字が極力大きく、細部のディティールがしっかりしている「右」を選ぶのではないだろうか。ちなみに右がKindle Voyage、左が本製品で、同じ300ppiでも随分と見え方が違っていることが分かる。

左が本製品、右がKindle Voyage。フォントサイズを文庫本とほぼ同じ(Kindleで言うと下から2つ目のサイズ)に合わせて比較したものだが、細い線の描写など、右の方がより読みやすいよう最適化されていることが分かる。ルビのサイズの違いも顕著だ
これは本製品で洋書を表示した場合だが、アルファベットの「a」がどれも線の一部が途切れてしまっているのが分かる。フォントを別の種類に切り替えれば解決するが、標準のフォントで、かつそれほど極端にサイズを小さくしていない状態でこれというのは、やや問題ありだろう

 まとめると、文庫本より大きいフォントサイズで読むぶんにはKindleとそう差はないが、フォントサイズを小さくして読む場合はKindleの方が細い線もしっかりと表示できる、という結論になる。またコミックについても、Kindleではきっちりと出るディテールが、Koboではかすれ気味になる場合がある。紙の単行本と比較しても、Kindleの方がよりオリジナルの濃淡に近いようだ。これだけの理由で本製品よりもKindleを選ぶほどの極端な差ではないが、ほかの要因と合わせて、製品選択の際の参考にしてもらえればと思う。

 なお、話がKindleとの比較中心になってしまったが、Kobo Auraとの比較という点においては、本製品との価格差がわずか1,800円であることを考えると、Kobo Auraを選ぶ必然性は皆無と言っていい。テキストが中心のユーザーも、コミックしか読まないというユーザーも、本製品をチョイスするべきであり、Kobo Auraのユーザーが本製品に買い替える価値も十分にあるだろう。

「あとで読む」を実現するPocket機能だが、一部機能に制限あり

 さて、今回の製品は解像度のほかに、目玉とされている機能が2つある。1つはPocketとの連携、もう1つは辞書機能だ。順に見ていこう。

 まずPocketとの連携。いわゆる「あとで読む」サービスの代表格である「Pocket」と連携することで、PCで表示していたテキストをPocket経由で本製品に送信し、じっくりと読むことができる。広告やインデックスのせいで読みにくいWebページの記事も、本文だけを抽出してこちらに転送すれば、読書の感覚でじっくり読めるというわけだ。

 またWebページが削除されてしまった場合や、電波状況が悪いところでも、本サービスを使えばキャッシュされているため、問題なく読めるのも利点だ。PocketはiOSやAndroid用のアプリが存在するが、本製品はこのPocketアプリが最初からプリインストールされているものと考えれば良い。既にアカウントを所有していれば、本製品からPocketにログインするだけで、Pocketに送信したテキストをすぐに読めるようになる。

「Pocket」。Kobo Glo HD側から新規アカウントを登録することも可能だが、PCなどで前もって登録しておいた方が、後の作業がスムーズに行なえる
Kobo Glo HDで記事を読むためにはアプリを連携させる必要がある。まずは「ログイン」をクリック
メールアドレスとパスワードでログインする
アプリの認証画面が表示されるので「認可」をクリック。以上で記事を受信する準備が整った
Pocket経由で読みたい記事を送信する。Impress Watchだと記事ヘッダに「Pocket」と書かれたボタンがあるのでそれをクリックするだけで送信できる。ボタンがない場合はブラウザの拡張機能などを使って送信を実行する
Kobo Glo HDホーム画面左下の「ライブラリ」→「Pocket」の記事をタップ
先ほど送信した記事のサムネイルが表示されているのでタップして開く
記事が表示された。ページをスワイプして読み進めることができる。なお文字組の方向は横書きのみとなる
フォントオプションなど、本とほぼ同じ表示設定が可能
Facebookなどでのシェアにも対応する
最終ページまで到達すると、削除や保管、お気に入りに追加といったメニューが表示される。なお保管した記事を端末から自動削除するか否かは別途設定できる
削除や保管、お気に入りへの追加はサムネイルの一覧画面からも実行可能
送ったはずの記事が表示されていない場合は「更新」を、Wi-Fi環境のないところで読む場合は「すべてダウンロード」をクリックする

 ちなみにKindleでこれに対応する機能が「Kindleパーソナル・ドキュメントサービス」だ。端末ごとに用意されるSend-to-Kindle EメールアドレスにPDFやWordなどのファイルを添付して送信することで、Kindleでの閲覧が行なえる。サードパーティ製のブラウザ拡張機能を使えばWebページも転送できるので、機能的にはほぼ同じことができる。

 もっともPocketでは、複数ページに分かれた記事を全文一括で送信できるが、Kindleパーソナル・ドキュメントサービスでは(少なくともサードパーティ製のブラウザ拡張機能では)1ページずつしか送信されないことも多く、ばらばらに送信しなくてはならず手間がかかる。全文を転送したつもりが1ページしか保存されておらず、続きを読もうにもWi-Fi接続できない環境にいてどうにもならない場合もしばしばだ。

 また最近では弊誌を始め、Pocketの送信ボタンを埋め込んだWebページも多く、それらはクリック一発で送信できる。さらに(これが意外と大きい要因なのだが)Kindleではパーソナルドキュメント1つ1つがコンテンツとして扱われるため、ライブラリに本とパーソナルドキュメントが混在して探しにくくなるのに対し、本製品ではPocketの記事はコンテンツと明確に分かれているので探しやすい。Webページを読む用途なら、汎用性の高さと機能の豊富さ、そして使い勝手で、Pocketに軍配が上がりそうだ。

 ただ本製品は、Pocketに保存した全てのページを読めるわけではなく、「インターネット上の記事のみ」に限定されている。また試した限りでは弊誌の記事でもKobo Glo HDから見られるものと見られないものがあるなど、不安定さが目立つ。どうやらページに動画を含むか否かが関係しているようなのだが、含まれていても支障なく読める場合があるなど、実際に試すまで分からないのが厄介だ。この制限はヘルプページに記載してあるのだが、もう少し分かりやすい方法で記載されるべきだろう。Pocketの全機能が使えると思って本製品を購入すると、がっかりすることもありそうだ。

 なお記事をダウンロードするタイミングだが、Kindleでは端末を起動すると自動ダウンロードが始まるのに対して、本製品も起動してWi-Fiに接続するとすぐにダウンロードが行なわれる。本来なら3Gモデルがあってどこでもダウンロードできるのが理想だが、少なくとも外出前にいったん起動さえすれば、わざわざダウンロードの操作を行なわなくても、オフライン環境で問題なく読めるよう配慮されているのは、評価して良いだろう。

辞書機能は単体で呼び出しやすいものの、使い勝手は今一歩

 もう1つ辞書機能の充実も、本製品の売りとして挙げられている。具体的には、従来のジーニアス英和辞典に加えてプログレッシブ英和中辞典を搭載し、コンテンツ内の英単語の意味をすばやく調べられるほか、辞書単体としての利用も可能というものだ。

 もっとも、プログレッシブ英和中辞典はKindleでも搭載されており、本製品だけの付加価値というわけではない。Kindleでも単体での検索は問題なく行なえるので、本製品ならではの利点は、「辞書単体で呼び出しやすい」および「複数の辞書を切り替えて検索が行なえる」の2点に絞られる。

 実際、本製品ではトップページのメニューから「辞書」を選べば、検索のためのウィンドウが表示されるので、単体での検索がしやすい。Kindleでは辞書も1コンテンツとして保存されているので、単体で利用する際はライブラリから探さなくてはいけない。従って、未知の単語をすばやく調べたいなら、本製品の方が便利だ。タップするだけでプログレッシブからジーニアスへと切り替えることもできるので、両者の解説文の比較も容易だ。

 ただし、Kindleの場合、辞書の文中に貼られたリンクから関連語にジャンプしたり、辞書文中の単語を範囲選択してさらに意味を調べたり、ハイライトやメモを付与できるほか、いったん選択した単語は自動的に「単語帳」に登録されるので、後から検索履歴として活用できるが、本製品は単語の意味を調べるだけで、検索の履歴すら保持されない。できることと言えば複数の辞書の切り替えだけだ。

 またKindleは、こうした辞書連携から一歩先に進んだ「Word Wise」という機能を搭載している。これをオンにしていると、難しい英単語の上に簡単な英単語で意味が表示されるので、洋書を使っての語学学習に役立つというわけである。つまり、単語の意味をただ調べるだけなら本製品が上かもしれないが、英単語を効果的に覚える、洋書をサクサク読むという目的ベースで考えると、Kindleの方が一歩先を行っているイメージだ。

辞書機能を単体で使いたい場合は、ホーム画面で「その他」→「辞書」を選択
検索フォームが表示されるのでキーボードから単語を入力するとインクリメンタルサーチで候補語が表示される。辞書はプルダウンで選択可能
意味が表示された。複数のページに分かれている場合はめくって次のページへ進める
辞書を切り替えて表示することもできる
こちらはKindleの場合。辞書を単体で使うには、コンテンツとして保存されている辞書を探して起動する
プログレッシブ英和中辞典が起動した。右上の虫眼鏡アイコンをタップして検索フォームを呼び出す
検索フォームが表示されるのでキーボードから単語を入力するとインクリメンタルサーチで候補語が表示される
意味が表示された。複数のページに分かれている場合はめくって次のページへ進める。また文中の単語を範囲指定してさらに検索することも可能
辞書を切り替えることもできる
ハイライトやメモの追加、Facebook/Twitterでのシェアなども可能
一度検索した単語は自動的に「単語帳」に登録され意味を見返すことが可能
Kindle独自の「Word Wise」機能。難しい英単語の上に簡単な英単語で意味を表示されるので読解に役立つ

 では辞書単体で使うのではなく、コンテンツ本文中で英単語を長押しして意味を検索する場合はどうかというと、こちらもKindleの方が有利だ。本製品では辞書の切り替えに加えて、本の中/Google/Wikipediaでの検索、Facebookでの共有、ハイライトやメモの追加が可能であるのに対して、Kindleでは辞書の切り替えに加えて本の中/端末の全テキスト/Kindleストア/Wikipediaでの検索、ハイライトやメモの追加、Facebook/Twitterでの共有、辞書へのジャンプが可能で、さらに前述の単語帳での自動登録およびWord Wise機能もあり、Google検索がないのを除けばKindleの方がはるかに高機能である。

 以上のように、単体で呼び出しやすいこと、また複数辞書を切り替えやすい点を除けば、本製品の電子辞書機能はあまり利点を感じない。例えKindleと比較しなかったとしても、検索履歴が残らず、画面を閉じるとすぐ最初の検索フォームに戻ってしまう点など、単純に電子辞書として使いづらい。「電子辞書機能の充実」をアピールするのであれば、もう一工夫が必要だろう。

洋書本文から意味を調べる場合、辞書切り替えやハイライト、コメント追加、WikipediaやGoogleでの検索などのオプションが利用可能
Kindleでもほぼ同じ機能が使える。Googleでの検索はできないが端末内の全テキストやKindleストアを対象とした検索機能が用意される

付加機能の実用性には疑問だが、この解像度でこの価格は高評価

 以上ざっと使ってみた。Pocket連携および電子辞書という付加機能はツッコミどころが多いのだが、本製品の柱になる部分、つまり解像度の高さと、さらに実売価格を12,800円に抑えたことについては高く評価できる。ライトのオン/オフボタン、そしてメモリカードスロットがなくなったことで、Koboならではの個性が失われているのは事実だが、Kobo Aura H2Oのような特定層にしか受けない製品とは違い、王道を行く製品として完成度は高い。用途を選ばず使える、いい意味で無難な製品という評価になるだろう。

 解像度の割に細かい線の表現があまり得意でないのはマイナスだが、さすがにKobo Aura以前の製品と比較すると段違いに優秀であり、致命的というわけではない。それゆえ、かつてのKobo TouchやKobo gloで未だに頑張っているユーザーはもちろん、Kobo Auraでコミックの表示品質に不満があるユーザーも、買い換える価値は高いだろう。ただし前述のように付加機能の実用性はやや疑問符が付くので、今後のブラッシュアップを待ちたい。特にPocket連携は、端末の活用方法をさらに広げる機能だけに、今後に期待したいところである。

 個人的に気になったのは、セットアップのパスワード入力で正しい操作をしているのにエラーを返したり、また操作中に「お待ちください」という表示は出たものの、その裏で処理が続いているのか、それともフリーズしているのか判断がつかない挙動も、頻度は低いものの依然見られることだ(実際にフリーズしていたこともあった)。こうしたユーザーを戸惑わせる挙動の見直しのほか、1ページあたりの情報量が少なく、また並び順やカテゴリ分けが理解しにくいストアの表示なども、1ユーザーとして改善を願いたいところだ。

(山口 真弘)