山田祥平のWindows 7カウントダウン

1,000円ちょっとで買えるUSBメモリでネットブックにクリーンインストール



 日本HPがWindows 7 Starter Edition搭載モデルを含むネットブック「Mini 110」を発表した。昨年のVivienne Tamモデルを皮切りに始まった同社のデザイナーズモデルの最新版だ。

 こうした最新機種では、Windows 7が最初からプリインストールされているので問題はないが、1年前のネットブックをWindows 7化しようという場合には、自力で何らかの手段を講じる必要がある。ネットブックには光学ドライブが搭載されていないからだ。そこで今回は、1,000円ちょっとで買えて値頃感があるUSBメモリを使ってWindows 7のインストールにチャレンジしてみる。

●光学ドライブなしでインストール
USBメモリはバッファローなどのメーカー品でも、4GBならば千円台で購入できる

 ネットブックは、ハードウェアの進化という点では遅々としている。いろいろ制約が多いため、1年前に購入したものであっても、最新製品とさほど見劣りがしない。多くの製品は、Windows XPをプリインストールしているはずだが、Windows 7はメモリ1GBのAtomでも、それなりに快適に使える。だから、XP環境を7環境にするのは、そんなに悪い選択ではないはずだ。マイクロソフトも、割安のファミリーパックを用意したことだし、ここはひとつ、家中のPCをWindows 7化するという方向でプランを検討したいところだ。

 ただ、ネットブックに新たなOSをインストールしようとすると、光学ドライブを別途用意しなければならないというハードルがある。買えばそれなりに高価なものだし、ネットブックで頻繁に使うようなものでもないので、購入をためらってしまう。

 そこで、うまく活用したいのがUSBメモリだ。ネットブックのような新しい世代のPCなら、ほぼ確実に、USBメモリからのブートができる。条件さえ整えてやれば、Windows 7のインストールが可能だ。また、USBメモリのみならず、SDカードをメモリスロットに装着したり、あるいは、手持ちのメモリカードリーダを使ってインストールできる可能性もある。

 Windows 7の32bit版のDVD-ROMには2GB強のファイルが格納されている。これをすべてコピーするには、2GBでは入りきらないが、4GBあれば余裕で、余った領域に、常用するアプリケーションやドライバなどをコピーしておける。それに、4GBのSDカードなら、USBメモリよりもさらに安く、うまくすれば1,000円以下で入手できるんじゃないだろうか。

 ちなみに、手元のHP Mini 1000 Vivienne Tam Editionで試してみたところ、USBメモリ、SDカードスロットに装着したSDカード、USBカードリーダに装着したSDカード、いずれでもブートが可能で、Windows 7のインストールプロセスが動き始めるようだ。

●USBメモリかSDカードを用意する

 用意するのは、普通にDVD-ROMが読めるWindows PCと、中身が消えてもかまわないUSBメモリかSDカードだ。SDカードを使う場合は、それを読み書きできる必要があるので、リーダが必要となる。

 メモリをPCに装着し、エクスプローラなどで中身を確認し、必要なら内容をバックアップしておこう。内容が削除されてもかまわないようにした上で、まず、念のために、ボリュームを削除した上でフォーマットしておく。

 これらの作業は、スタートメニューからマイコンピュータを右クリックし、ショートカットメニューから「管理」を実行し、記憶域の「ディスクの管理」を使って処理するのが簡単だ。

 「コンピューターの管理」の左ペインで「ディスクの管理」をクリックすると、右側のペインに、そのPCに接続されているディスクがリストアップされる。USB端子にメモリを装着するか、リーダ等にSDカードをセットすると、そのディスクの状態を確認することができる。

 下側ペインにはグラフィカルにディスクの状態が表示されているはずだ。そこで、そのボリュームを右クリックし、ショートカットメニューから、いったんボリュームを削除し、もういちど領域を作成してフォーマットする。

 ただ、これがうまくいかないケースもある。ショートカットメニューにおいて、項目がグレーアウトされているなどで、これらの作業が続行できない場合は、コマンドプロンプトから、diskpartコマンドを使って作業する。

ディスクの管理では、ボリュームなどの削除がグレーアウト状態で作業ができない場合がある

 diskpartコマンドを実行するために、最初にコマンドプロンプトのウィンドウを開くのだが、このとき、管理者として実行しないと必要な作業を正常に完了できない。スタートメニューのアクセサリからコマンドプロンプトを右クリックし、管理者として実行してほしい。UACの確認後、コマンドプロンプトのウィンドウが開く。

 ここで、diskpartコマンドを実行すると、プロンプトが表示される。プロンプトに対して、

DISKPART> list disk

と入力すると、ディスクの一覧が表示されるので、その中から目的のディスクを特定する。特定するディスクを間違えてしまうと重要なHDDの内容を削除してしまうことになりかねないので細心の注意が必要だ。

 目的のディスクにフォーカスを移すために、次のコマンドを実行する。diskとディスク番号の間にはスペースが必要だ。この場合はディスク8番を選ぼうとしている。

DISKPART> select disk 8

 ディスク8番にフォーカスが移った。そして、このディスクをクリーンな状態にする。

DISKPART> clean
DISKPART> exit

diskpartコマンドを使ってディスクを選択し、クリーンな状態にする

 ここまでをコマンドラインでやっておけば、あとは、「コンピュータの管理」のGUIを使って作業を進めることができるはずだ。クリーンになったディスクは、「コンピュータの管理」上では「未割り当て」という状態になっているはずだ。

クリーンな状態にしたディスクは未割り当ての状態になる

 GUIで、ディスクの未割り当て部分を右クリックし、ショートカットメニューから「新しいシンプルボリューム」を実行すると、ウィザードが起動し、フォーマットまでの作業をナビゲートしてくれる。フォーマットはFAT32のクイックフォーマットでいい。

未割り当てのディスクにシンプルボリュームを作成する
FAT32でクイックフォーマットを指示する
容量は最大容量のままでOK
ドライブ名は任意のものを割り当てる
フォーマットができたらDVDの内容をそっくりコピーしておく

●ブートセクタの書き込みでできあがり

 フォーマットが完了したところで、Windows 7のDVDから、フォルダ構造そのままで、すべてのフォルダとファイルをコピーする。そして、最後の作業が、ブートセクタの書き込みだ。書き込みユーティリティのbootsect.exeは、Windows 7のDVD-ROMに収録されている。

 先のコマンドプロンプトのウィンドウで、次のようなコマンドを実行し、ブートセクタを書き込む。ここでは、DドライブがWindows 7のディスクが入った光学ドライブ、EドライブがUSBメモリ、または、カードリーダ内のSDカードだ。

C:\Windows\System32> d:\boot\bootsect /nt60 e:

これが無事に書き込めれば作業は終了で、ブート可能なUSBメモリまたはSDカードのできあがりだ。ちなみに、/nt60は、Vista形式のブートセクタの書き込みを指示するオプションだ。

最後に /nt60オプションつきでbootsectユーティリティを使ってブートセクタを書き込む。bootsect.exeは、Windows 7のDVDのbootフォルダに収録されている

 できあがったメモリをネットブックに装着し、BIOS等で、ブートの優先順位を指定し、そこから起動するように設定すると、光学ドライブを使わずにセットアップができる。なお、インストールプロセスでは、光学ドライブと異なり、ファイルをコピーしてしたあとの最初の再起動時に、USBメモリやSDカードを抜くようにしないと、永遠にブートが繰り返されることになる。注意するのはそれだけだ。

 この方法の欠点は、作業のために光学ドライブ付きのPCが別途必要であるという点だ。だが、それは友人に頼むなり、場合によってはネット喫茶でやるなり、なんらかの方法を探してみてほしい。

 クリーンインストールのみならず、WindowsをセットアップできるUSBメモリに、エディタやIMEなど、常用ユーティリティなどをコピーして携行していると、モバイルユーザーは、いつかきっと役に立つ日が来るかもしれない(本当は来ない方がいい)。持参したPCが外国で故障したような場合も、新しいPCをショップで調達し、短時間で自分の環境を作れる。手元では、もう、何十回も、光学ドライブのないPCに、Windows 7をインストールしているが、USBメモリのおかげで作業の負担は大きく軽減されている。