山田祥平のWindows 7カウントダウン

32か64か、それが問題だ



 Windows 7には、エディション選びとは別に、選択という点で、もう1つ大きな悩みの種がある。それが32bit版を選ぶか、64bit版を選ぶかだ。今回は、その損益分岐点について考えてみよう。

●64bit版なら大容量のメモリをフルに使える

 Windows 7の市販パッケージには、32bit版と64bit版の両方が同梱されていて、購入したユーザーは、そのどちらかをインストールすることができる。つまり、買ってから試してみてどちらを使い続けるかを決めればいい。

 64bitのトレンドは少しずつではあるが、浸透し始めている。たとえば、28日発表されたLet'snoteの最新モデルでは、直販サイトのマイレッツ倶楽部販売向けモデルでは、OSの選択において、Windows 7 Professionalの64bit版だけしか選択肢がない。

 ただし、HDDからのリカバリ時に、32bit版を選択することはできる。また、製品には2枚のリカバリ用DVD-ROMが付属している。1枚はWindows XPへのダウングレード用、もう1枚が、HDDを工場出荷時の状態に戻すためのものだ。

 つまり、マイレッツ倶楽部でLet'snoteを購入したユーザーが、32bit版のWindwos 7を使いたければ、必ず、最初にHDDからのリカバリをする必要がある。HDD内のリカバリエリアを削除してしまった場合には、いったん64bitのリカバリDVDでリカバリする。それによって、HDD内に32bit、64bit双方のリカバリデータが復元されるので、それを使って改めて32bit版をインストールするという手間が必要になるとのことだ。

 64bit版のWindows 7を使う、第一の理由は大容量のメモリをフルに利用できる点だ。今、この原稿を書いているノートPCには、4GBのメモリが実装されているが、コンピュータのプロパティを確認すると、3.4GB使用可能と表示されている。せっかくの4GBのうち、600MBは、無駄にバッテリを消費しているのみの半導体となっているわけだ。

 けっこうな数のアプリケーションを起動したままになっているが、タスクマネージャで確認しても、そうそう3GBを超えるメモリなど使えるものではない。通常の使い方においては、たいてい1.5GB前後を消費しているにすぎない。だが、キャッシュ済みのメモリ量を確認すると、消費しているメモリの量よりも多い。ありったけのメモリをちゃんと使ってくれているという点に注目しよう。これがうまく使われるのなら、たとえ、同時に消費するメモリの量が少なくても、やはり、自由になるメモリの量は多いに越したことはないわけだ。それに、デジカメで撮影したRAW画像を数枚開けば、すぐに1GB程度は消費してしまう。そういう意味ではやはり使えるメモリが多いのは有利だ。

4GBメモリを実装したノートパソコンのメモリ使用状況。3.4GBが使用可能で、このときは1.4GBを使用、それ以外の1.9GBはキャッシュ

●32bitアプリも使える64bit環境

 さらに最近は、64bitに最適化されているアプリケーションも増えてきた。オフィス系アプリケーションはまだまだだが、グラフィックスアプリや、iTunesなどのメディア関連ソフトなどには、64bitをサポートしているものが目立つようになってきている。iTunesなどは、ダウンロードページで「今すぐダウンロード」のボタンをクリックすると、64bit環境が判別され、自動的にiTunes64setup.exeがダウンロードされる。これらの64bitアプリなら、32bit環境で32bit版を稼働させるより、パフォーマンスの向上を見込むことができるはずだ。

 もちろん、64bit環境で従来の32bitアプリケーションが動かないというわけではない。Windows on Windows 64の仕組みによって、完全ではないが、ほとんどの32bitアプリケーションが利用できる。その際にオーバーヘッドが生じるため、若干のパフォーマンス低下はあるはずだが、体感的にそれを感じることはなさそうだ。ATOKのようなIMEも32bitアプリケーションとして普通に使える。

スタートメニューには64bit版のInternet Explorerが見つかるが使うことはなさそうだ。ATOKなどのIMEも普通にインストールできて、普通に使える

 もし困ることがあるとすれば、デバイスドライバだ。64bit版で使えるデバイスドライバには、必ず署名が必要で、32bit版との互換性もない。したがって、使用中の周辺機器に64bit版のドライバが用意されていない限り、それを使うことはできない。手持ちの機器をチェックしてみて、対応しているかどうかを確認しておかないと、いざというときに使えないという結果になってしまう。

 ちなみに、身の回りの機器で、64bit対応していないものを探してみたところ、ニコンのフィルムスキャナが対応していなかった。個人的に困るとすれば、そのくらいで、あとは特に問題なさそうだ。いかに標準的なデバイスしか使っていないのかということがよくわかる。Windows 7は、さすがに、Vistaのマイナーバージョンアップだけあって、最初からパッケージに含まれるインボックスドライバ、そして、Windows Updateで入手できる最新ドライバが充実しているため、途方に暮れるようなことは、そう起こらないかもしれない。とはいうものの、メーカー製のPCなどで、TVチューナーカードなどが装備されている場合など、いろいろなケースがあるので、とにかく、情報収集が必須だ。

●ブラウザは32bitを使い続けるしかなさそうだ

 とりあえず、手元のノートPC、デルのXPS M1330に64bit版のWindows 7をインストールして、その挙動を確かめてみた。メモリを3GBしか搭載していないので、64bit版にする意味はないのだが、ある程度の検証には十分な環境だ。

 驚くのは、インストールの過程において、64bit版をインストールしていることがわからない点だ。インストール完了後、コンピュータのプロパティを確認し、そこで、初めて64bit版であることがわかる。冒頭で新しいLet's noteについて言及したが、ユーザーは何も言われなければ64bitだということに気がつかないのではないかと思うくらいだ。

コンピュータのプロパティでシステムの種類に64bitオペレーティングシステムと表示される。もしかしたら気がつかないユーザーも多いのではないか

 Windows Updateを起動すると、そこで開くのは32bit版のInternet Explorerだ。つまり、デフォルトブラウザは32bit版のIEに設定されている。スタートメニューにはInternet ExplorerとInternet Explorer(64bit)という2つの項目が表示されている。このように、64bit版のIEも用意されているのだが、それを使わなければならない機会はまずないだろう。というのも、ほとんどのプラグイン、Active Xコントロールは32bit版なので、64bit版のIEでは機能しないからだ。

 たとえば、IE64で、Flashを使ったページを開くと、一応、プラグインをインストールしようとするのだが、インストールが成功したように見えて、実は、64bit IEでは機能せず、32bit IEを起動すると、インストールが完了しているといった具合だ。また、マイクロソフトご自慢のSilverlightも、インストールしようとすると、64bit版には対応していないというメッセージが表示され、そのやる気のなさを目の当たりにすることができる。

 気を取り直して、Windows 7の64bit版をインストールしたシステムドライブのルートを確認してみると、通常のProgram Filesとは別に、Program Files(x86)という名前のフォルダが用意されていることがわかる。32bitアプリケーションをインストールしようとすると、それが検出され、このフォルダにインストールされるようになっている。

システムドライブのルートに(x86)として32bitアプリケーション用のProgram Filesフォルダが用意される

 ユーザーは、どちらのProgram Filesにアプリケーションをインストールしようかと意識する必要はないし、実行する場合も、それが32bitアプリなのか、64bitアプリなのかを考える必要はないわけだ。

 もちろん、すべての32bitアプリが不具合なく実行できることが保証されているわけではない。日常的に使っているアプリケーションを試していけば、うまく実行できないものも見つかるかもしれない。こればかりはやってみるしかないというしかない。

 ただ、いろいろと試してみる限りは、特に、不自由は感じない。正確なベンチマークをとったわけではないのだが、Windows 7がより軽く感じられるのだ。OSに、数字には表れないサラリとした肌触りが感じられる。Windows 7には、PCの処理性能とは無関係に、、ユーザーに不愉快に感じる挙動をできるだけ感じさせないような、おもてなしを意図している面があるようだが、その傾向に拍車がかかったような振る舞いが、64bit版には感じられる。

 今後、新たに発売されるデバイス類が64bit版のドライバを持たないのは少ないだろう。手元の機器がすべてOKだということがわかっていて、かつ、4GB以上のメモリを搭載しているPCなら64bit版を選んでも失敗にはつながらないのではないか。あるいは、現状のメモリの価格を考えれば、メモリを追加して有効活用させるというのも悪くはない選択だ。現状で、クリーンインストールを考えているユーザーは、一度は64bit版を試す価値はあるということだ。

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