山田祥平のRe:config.sys
サムネールサイズストレージに人生を無劣化凝縮
(2014/3/7 06:00)
SanDiskの日本法人がコンシューマ向けの新製品を一気に発表した。クラウドサービスの充実によって微妙な立ち位置にあるローカルストレージだが、同社の新製品群を見ながら、これからのストレージについて考えてみたい。
世界最大容量のmicroSDカード登場
128GBのmicroSDXCカードが発表された。世界最大容量となるそうだ。そんなのとっくに出ていなかったかと思って調べてみたら、すでに並行輸入の同社製品がリストアップされた。実際には、すでに海外で発売されている「Ultra microSDXC UHS-I」ではなく、「ウルトラ プラス(Ultra PLUS) microSDXC UHS-I カード」が日本では発売されるそうで、リード速度がさらに高速になっている製品だ。
SanDiskによれば、デバイス1台あたりの平均ストレージ容量は現在約14GBだそうだが、これが2016年には28GBになるだろうと予測している。つまり、2年後には現在の2倍になるわけだ。特に、スマートフォンのユーザーは「常にオン」が前提で、大容量を必要とし、追加できる容量を求めているという。そのニーズに応え、サムネールサイズの極小ストレージであるmicroSDカードの容量は、最初の128MBから、今回の128GBまで10年かかって1,000倍になった。ゼロが3つ増えれば単位が繰り上がる。MBからGBになったのだ。
スマートフォンのヘビーユーザーにスマートフォンに大容量のストレージが欲しいかどうかを聞くと、極端に考えが2分される印象がある。
片方はクラウドサービスがあるのでローカルストレージはそんなにいらないというし、もう片方はガラケー時代からの写真が全て入っているので余裕がある大容量は大歓迎という。
今や、スマートフォンで撮影した途端に、そのファイルはクラウドにアップロードされる。ぼくの場合、アプリの推奨として言われるままにデフォルト設定していたら、Facebook、Google、Dropbox、OneDriveと、写真が4カ所にアップロードされるようになっていて、本当にこんなに必要なのかと思っているくらいだが、それはそれで安心なので、そのままにしてある。
スマートフォンのカメラ機能に圧倒され、もはや青息吐息のように見えるコンパクトデジカメも、Wi-Fi(無線LAN)機能を持つ製品が増えてきた。これによって、撮影画像はスマートフォンに飛び、さらにその画像はクラウドへとアップロードされる。
PCのローカルストレージは減るのがトレンド
スマートフォン以外のデバイスとしてPCはどうだろう。
こちらはこちらで、ピュアタブレットなどでは、以前ならWindows PCを実用的に運用できるとはとても思えないような容量の製品が簡単に見つかるようになった。しかも、先日のMWCでは16GBのストレージしかないハードウェアのサポートが始まるアナウンスもあった。
実際、クラウドにストレージを頼れば、一般的に携行するノートPCは、さすがに16GBではちょっと心許ないにしても、32GBあれば十分という印象だ。PCがインターネットに接続できない環境ではお手上げになってしまうが、その時はさっさと諦める。
実際、インターネットに繋がっていないデバイスは、ひどく退屈に感じるようになり、最近は、飛行機の中でPCを開くことはほとんどなくなってしまった。仕事の上でも、絶対に必要だと分かっているファイルはあらかじめキャッシュしておくようにすることで致命的な失敗は回避できている。
そんなぼくでも、先日調達した「iPad」は128GBストレージのものを選んだ。iPadは音楽再生に使うことが多く、しかも、飛行機の中など、オフラインで使うことも多いので、できるだけたくさんの楽曲を入れておきたいからだ。それに、iPadはリムーバブルのストレージを追加できない。現時点での自分のiTunesを調べてみると、約32,000曲、約140GBの楽曲がライブラリにあって、128GBのiPadにも入り切らないのが残念だ。
だから、今回の世界最大容量という128GB microSDカードの発売を聞いたときにも、これが256GBだったら良かったのにと思ったものだ。それだけあればiTunesフォルダを丸ごと入れて持ち運べるからだ。
日常的に携行するPCには、それほど大容量のストレージはいらないといった舌の根も乾かないうちに、やっぱり大容量があるなら安心というわけだが、大容量のmicroSDカードなどは、リムーバブルであることが重要で、TPOに併せていろいろなデバイスを往来できて、たとえインターネットから切り離されていたとしても、まるでクラウドのキャッシュとして利用できる。今後は、そのユーザビリティをもっとしっかりしたものにしていく必要がありそうだ。
そうなれば、セキュリティを確保することを前提に、例えば、OneDriveフォルダをSDカードに逃がすようにすれば、16GBローカルストレージのWindows機でも、日常使用には十分かもしれない。
つまり、ローカルストレージの容量が減り、リムーバブルストレージの容量が増えるというトレンドが生まれるかもしれない。
128GBあれば当分大丈夫、一杯になるころには128TB
ストレージ製品は難しい。1,000円のA社製品と10,000円のB社製品が同じスペックだった場合、どちらを選ぶかが悩ましい。格安バルクから、ノーブランド製品、一流メーカーのパッケージ製品と、個人的にいろいろなベンダーの製品を使ってきた中で、いろいろと残念なトラブルも経験してきた。
でも、少なくともぼくが使ってきたSanDiskの製品は、過去において1度も事故がない。正確に言うと、1度だけ、UHS-Iが出たばかりの頃、あるベンダーのPCに装着したSanDiskのSDカードがエラーを起こし、使えなくなってしまったことはあるのだが、調べてもらったら、Windows用のデバイスドライバが犯人だったというオチまである。悪いのはPC側だったわけだ。
かつて、海外旅行にでかける年配の方は、スーツケースの片面にびっしりと「写ルンです」を詰めて旅行に挑んだという。最も多い撮影失敗であるフィルムを装填するときのミスを回避するための自己防衛だ。
時代は変わり、デジカメの全盛期には、画像で一杯になったメモリカードからPCなどにデータを移すのではなく、メモリカードはそのまま保管しておき、新たなメモリカードを追加購入するという手段に打って出る。たぶん、購入したカードの容量が一杯になる頃には、同じ値段で倍の容量が購入できるようになっているだろうし、高画素化するカメラの性能にも十分対応できるわけだ。まさにフィルムがメモリカードに代わっただけで、ライトワンスとして使っている。
人それぞれ、いろんな理由があるし、スキルのレベルもいろいろと違う。でも、高速で大容量のストレージを重宝するのは同じだ。かつては、こうしたストレージは、データの在処として唯一無二のものになってしまう可能性があり、考えようによってはとても危険だったのだが、クラウドサービスの充実によって、そのあたりの事情の背景にも変化が起こりつつある。
SanDiskが言うように10年で1,000倍になったmicroSDカードは、同じペースで進化するとしたら、あと10年で128TB。その容量が爪先サイズにというのは想像しただけでも楽しい。考えようによっては持ち主の人生がそこに凝縮されているようなものだ。データの置き場としてであれ、キャッシュとしてであれ、大容量で高速なストレージは、だからこそ、これからも求められ続けるだろう。SanDiskのような業界を代表するベンダーには、その声にしっかりと応えていってほしいものだ。