山田祥平のRe:config.sys

メールもインターネットもいらない。LINEとTwitterとFacebookがあればそれで十分

 踊り場と言われているスマートフォンシーン。日本国民で言えば、その半分にとっては、今やすっかり暮らしのために欠かせない存在になった。そこまでの浸透スピードは圧倒的で、PCの牙城を脅かす勢いだった。ただ、次の5,000万人はどうかと言えばまだ伸びしろはあるとも言えるかもしれない。それでもプレミアム感は薄れ、コモディティになった感は強い。これではまるで、PCのデジャブだ。

アプリあってのコンピュータは時代遅れ?

 コンピュータ的なデバイスにとってアプリケーションの存在は重要だ。もちろんOSも、ハードウェアの能力を引き出す重要な要素ではあるが、普通の人にとっては、やはり、自分のやりたいことができるアプリケーションの有無がものをいう。

 ステージとしては、もう、プラットフォームごとのスマートフォン用アプリの充実度をストアの品揃え何百万本といった数で競う時代ではなくなっているように思う。いわゆる定番アプリは、各プラットフォーム用のものが用意されているし、そもそもユーザー自身が積極的にインストールして使うアプリは限定的なものになりつつもある。

 5年ほど前に、汎用ブラウザの時代は終わりに向かっていることについての考察を書いたことがあるが、それに近いことが起こり、さらに状況が変わりつつある。PCの時代、「メールとインターネットができればそれで十分」という論調があったが、今ならさしずめ「LINEとTwitter、そしてFacebookがあればそれで十分」と言ったところか。どちらの時代においても「ワープロ」や「エディタ」を誰も求めていなかったりするところが興味深い。

 さらには、アプリのプラットフォーム依存もHTML5で書かれたWebアプリの存在が帳消しにしている感もある。Webアプリは汎用ブラウザを専用ブラウザのように振る舞わせるからだ。

 結局のところ、まるで手のひらの上のコンピュータのようだったスマートフォンは、いつのまにか再び電話というコミュニケーションのための道具に回帰しようとしているのではないか。相手が特定されているのではなく、不特定になったりして、交流の機会は増えたけれど、やっていることは、たとえば写真を撮ってSNSに載せて反応を待つといったことくらい。15年前の「写メ」とあまり変わらない。

 スマートフォンが出てきた当初は、さまざまなアプリを使ってスマートフォンをPCのように使うことが是とされたが、今はそういう雰囲気が希薄になっているように思える。これまたPCのパッケージアプリが衰退してしまったことのデジャブのようだ。

 つまり、スマートフォンは、PCが30年近くかけてやってきたことを、その半分以下の時間で一気に駆け抜けようとしているのだろうか。

存在感が増すかもしれないWindows Phone

 そんな状況下、この連載でもたびたび触れているが、電気通信事業法30年に際して、通信の自由化を御旗に総務省がいろいろなことを急いでいる。MVNOビジネスの推進などもその一端だ。もちろん、SIMロック解除の義務化などの話題もある。

 また、今日はFreetelが、「通話料いきなり半額」サービスの提供を発表、1つのボトルネックとなる通話料の削減を実現するサービスの提供を始めることを表明した。30秒10円ということだから、大手キャリアのカケホーダイ等のサービスが2,700円だとすると、同じ金額を支払えば2時間分以上に相当する。これならMVNOに移行してもいいというユーザーは少なくないかもしれない。

 そして、レノボもスマートフォンシーンへの参入を表明したそうだ。デバイス製品はキャリア経由での提供になるのか、自ら販路を開拓するのか、現時点では何も言えないようだが、これでまたステージに役者が増えることになる。ただ、スマートフォンに限ったことではないが、キャリアが扱う、扱わないで、デバイスの売れ方は格段に違うという。キャリア抜きにはビジネスが成り立たないといってもいいのが今の状況だ。だからこそ、レノボがどのような動きをするのかには注目しておきたい。

 その一方で、ここのところWindows Phoneへの参入を発表するベンダーが出てきている。次のWindows Phoneは、Windows 10のカーネルが稼働することから、PhoneのようなプラットフォームにおいてもWindowsユニバーサルアプリの実行が可能になり、Windows Phoneにおけるアプリ不足のネックがちょっとずつ解消していくかもしれない。

 ユーザーが使うアプリの種類が少なくなってきていること、そして、企業などにおいては、エンドユーザーが勝手にアプリを入れられては困るといった事情も、逆にこのプラットフォームを後押しすることになりそうだ。PCにおいても勝手なアプリのインストールは禁止、プロキシやファイアウォールによる参照できるサイトの制限など、ITにおいてはさまざまな足かせを強いられる企業のエンドユーザーだが、もし、完全なコントロールを管理者が望むなら、Windows 10は、これ以上ないOSであるといえるかもしれない。

 ただしBYODのトレンドもある。従業員が私物のデバイスを会社に持ち込み、組織内外でそのデバイスを、メールの読み書きやインスタントメッセージング、業務アプリの実行にも使うというBYODだが、日本の場合、デバイスの普及率ではiPhoneの存在感が顕著だ。そのiPhoneの挙動をどうにかして抑制しなければ企業の知財は守れない。そこがシステム管理者の腕の見せ所でもあるわけだが、それが一筋縄ではいかない。

 Windows PhoneならBYODはOKだが、他のOSはダメということになれば、従業員はiPhoneやAndroidスマートフォンからWindows Phoneに乗り換えるのだろうか。

 ちょっと前なら一笑に付されただろうが、LINEもTwitterもFacebookもアプリが提供され、特別な使い方を求めない限りは、特に不便を感じないことが周知されれば、そう動くエンドユーザーも出てきそうな気もする。Ingressができないスマートフォンなんて、スマートフォンじゃないといった声がどこかから聞こえてきそうだが、ユニバーサルアプリの時代にはその事情も変わっていくだろう。

やっぱり未来はおもしろいほうがいい

 ぼくが今メインで使っているスマートフォンは、あと半年ほどで2年の縛りが解ける。要するに1年半も同じデバイスを使っているわけで、この業界で仕事をしているわりには古い端末を使っている。代金は購入時に一括で支払っているので、毎月の課金から月々サポート分が差し引かれているが、それがなくなればまた高くなってしまう。金額にして1,785円。大きい。だからきっと半年後の適当なタイミングで端末を買い替えることになるのだろう。

 スマートフォンそのものは、ご多分に漏れず、かつてほど大量のアプリをインストールするわけでもない。さすがにアプリ探しは日課でもあるが、入れてみてつまらなかったらその場でアンインストールするといったことは日常茶飯事だ。以前のように、ホーム画面がアプリでいっぱいで探すのも大変といった様相ではない。はっきり言って、買い換えを急ぎたいほどの不便を感じてもいないという気持ちもある。それに、Lolipopや最新iOSの検証用端末は別にある。

 PCのキラーアプリがなくなったのと同じようなことが、スマートフォンでも起こりつつあるということか。ハイエンドスマートフォンよりも、次の10億人のためのミッドレンジスマートフォン、1,000円/月ちょっとで維持したい人のための格安スマートフォンが闊歩し始めようとしている。それでもあまり不満を感じない状況のジレンマ。ここをなんとかしないと、スマートフォンの未来がちょっとつまらないものになってしまいそうで心配だ。やっぱり、面白いことはたくさんあった方がいい。

(山田 祥平)