山田祥平のRe:config.sys
スクリーンサイズが2倍になれば満足度は4倍になる(ただし話半分)
(2013/11/29 06:00)
この秋冬シーズンの各社新製品は、タブレットシーンがすごくおもしろい。iOS、Android、Windows 8.1と、OSのバリエーションはもちろん、重量、パフォーマンス、スクリーンサイズと、もう、よりどりみどりだ。今回は、そのタブレットのスクリーンサイズについて考えてみる。
タブレットとスクリーンサイズ
理論的な裏付けはないのだが、タイトルにある法則はいえるんじゃないかと思う。つまり、スクリーンサイズがn倍になれば、ユーザーが感じる満足度はnの2乗倍になるが、まあ、話半分の感動と考えるのが妥当ということだ。スクリーンサイズが2倍になれば、その2乗、つまり4倍の満足感をかなえるが、まあ、実際にはその半分、2倍程度の満足感程度であるということだ。
仮に、縦横比が16:9だと仮定し、そのスクリーンサイズが2倍になると、スクリーンの面積は4倍になる。単純に考えれば、その情報量は4倍になるわけで、それが満足度につながるわけだ。ただし、スケーリングの影響や、実解像度などの関係もあるので、4倍は話半分で、実感では2倍程度だと考える。2倍より下では、あまりよくなったという感動は覚えないだろう。
まず、普段の生活において、何枚のスクリーンを持ち歩いているかを考えてみよう。ほとんどの場合、スマートフォンはポケットの中にあって、どこに行くにも一緒というパターンが多いのではないか。つまり、肌身離さずというイメージだ。1枚目のスクリーンはスマートフォン。これに異議はないと思う。
このスマートフォンが5型スクリーンだとしよう。5型スクリーンのスマートフォンを持ち歩いているユーザーが、その2倍の満足感を得るためには、10型スクリーンが必要になる。一方、iPhoneのスクリーンは4型なので、8型で満足するといった具合だ。
これを前提に、各社タブレットのスクリーンサイズを見てみよう。
・Nexus 7:7型
・LaVie Tab S:7型
・Kindle Fire HDX 7:7型
・iPad mini:7.9型
・Miix 2 8:8型
・Venue 8 Pro:8型
・Yoga Tablet 8:8型
・Kindle Fire HDX 8.9:8.9型
・iPad Air:9.7型
・Yoga Tablet 10:10.1型
・ARROWS Tab QH55/M:10.1型
・TransBook T100TA:10.1型
・Surface Pro 2:10.6型
・Venue 11 Pro:10.8型
今、Android端末の主流は5型超のスクリーンサイズになってきているが、そのユーザーは、本当なら10型のタブレットがないと満足感がくすぶってしまうということだ。ちょっと妥協するにしても、iPad Airの9.7型程度がほしくなる。5型と8型を比較すると、スクリーンサイズにして、1.6倍。その2乗は2.56。話半分の満足度は1.28となり、大して便利な気がしないというわけだ。
でも、8型前後のデバイスは、その圧倒的な軽さが、いろいろな面を帳消しにもする。10型超のスクリーンを持つデバイスを携行することはためらわれても、8型ならガマンできるかもしれないと、きっと、製品を手に取ったときは思うだろう。そこが悩ましい。実際、レノボの「Miix 2 8」を手に取った時の350gというライトな感じは、かなり魅力を感じてしまった。
携行できるデバイスは2つが限度か
そのMiixの軽量さの魅力は持たなかったことにして目をつぶり、10型を超えるスクリーンを持つデバイスに注目してみよう。そうすると、ピュアタブレットはもちろん、クラムシェルや2-in-1も選択肢に入ってくる。ただ、重量もそれなりなので、せっかくなら、モバイルOS以上のことができてほしいという心理も働いてくるだろう。
例えば、
・ASUS TransBook T100TA:10.1型
・VAIO Duo 11:11.6型
・Let'snote AX:11.6型
・VAIO Duo 13:13.3型
・LaVie Z:13.3型
といったあたりの製品は、重量的にはピュアタブレットと同列で検討してもよさそうだ。ピュアタブレットに外付けキーボードというスタイルもある。ただ、外付けキーボードは、やはりそれなりの重量があり、それなりの打鍵感を期待できるものは、軽くても200gを超えてしまう。ピュアタブレットにその重量を合わせれば、パフォーマンス的にもう1つ上のノートPCとあまり変わらなくなったりもするわけだ。それに、ぼくらのような仕事だと、とにかく膝の上で安定して使えないと意味がないということもある。だから、このあたりは、すごく悩む。でも、こうして悩むのは楽しい。
このところ、いろんなスクリーンサイズの組み合わせを持ち歩いてみるようにして、何が便利で何が不便かを身をもって確かめようとしてきた。それで感じたのは、やはり、3種類のデバイスを持ち歩くのは、どうしても、重複感が強く、せっかく持ち出しても、どれか1つはほとんど使わないことさえあるということだ。
とにかくスマートフォンに何をプラスすれば出先でのコンテンツ消費、コンテンツ生産が快適なものになるのかは、最終的に普段使っているスマートフォンのスクリーンサイズに強く依存するだろうということがわかってきた。こうして冒頭の法則を思いついたわけだ。
GPSがないデバイスはモバイルデバイスとしてありえない
いろんな意味でつぶしがきき、バリエーションも豊富で、期待に応えてくれるという点で、Windowsタブレットは悪くない。だが、モバイルデバイスなのに、GPSを持たないものが少なくない点に注意が必要だ。購入時にはそこをきちんとチェックした方がいい。個人的には、これからのデバイスにGPSがついていないというのはありえないと思う。その点、Android機は、かなりの低価格機でも、ちゃんとGPSを装備しているのはすばらしい。WindowsやiOSは、Wi-Fiを使った位置情報を使って、かなり正確な位置情報を割り出すが、その恩恵を得られるのは市街地にいる場合だけで、クルマで郊外にドライブといったケースでは、ほとんど役に立たない。これは、iPadにもいえることで、Wi-FiモデルはGPSを装備しない点に注意が必要だ。
スマートフォンには必ずといっていいほどGPSが搭載されているので、それをWindowsからBluetooth経由などで拝借するというソリューションもあるが、それはそれで面倒くさい。やはり内蔵していてほしいのだ。
さらに、GPSがあったとしても、それを活かせるはずのWindows 8.1の地図アプリがGoogleマップと比べたとき、機能的に不満を感じるという面もある。にもかかわらず、期待を担うGoogleマップやChromeブラウザが、Windows 8以降のタッチ操作対応が、まだ不完全であるといった点が気になるかもしれない。だからといって、GPSを搭載しないというのはないと思う。アプリに関しては、これからまだまだ増えるだろうし、環境も整っていくことが期待できるからだ。
例えば、3台のデバイスを持ち歩く覚悟があるのなら、Androidの10型超タブレットを持ち、8型の軽量Windowsタブレットをリモートデスクトップで使うといった選択肢も悪くない。これで、10型スクリーンでAndroidとWindowsの両方を謳歌でき、電車の中で立ったまま使うなど、10型スクリーンを取り出すのをはばかられる場所では、8型スクリーンを駆使できる。だが、8型タブレットのWindowsの多くは無印Windows 8で、Proではないので、リモートデスクトップをサポートしないというジレンマもある。
いずれにしても、普通の人が、ごく普通にスマートフォン以外のモバイルデバイスを持ち歩くようになっている。これは実にうれしいことだ。だからこそ、バリエーションもどんどん増えていく。スマートフォンでできることは格段に増えたとしても、コンテンツ消費の快適さにはスクリーンサイズが影響し、ちょっと大きなスクリーンのタブレットが欲しくなる。そして、大きなスクリーンのタブレットを持ち歩くなら、キーボードを併用して、より生産的なことがしたくなる。行き着く先は、やっぱり、タッチ対応WindowsノートPCということになってしまうのか。
このホリデーシーズン、新製品は目白押しだ。価格的にもすごいことになっている。ちょっとベンダー各社の行く末が心配になるくらいだ。本当は、さらにここに、WAN通信という付加価値が加わることを望みたいところだが、それは、もう少し先の話になりそうのがちょっと残念だ。