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【特別編】Microsoftが本気で売りにかかるSurface Pro 2

 米国での発売から3日後というタイミングで日本でも発売された新Surface。Windows 8.1のリファレンス機として重要な役割を担うかもしれないMicrosoft純正のハードウェアだ。さっそく、製品版を入手することができたので、そのインプレッションをお届けしたい。

Microsoftだからこそつけられるオマケ

 発売された新Surfaceは、64bit版Windows 8.1 プリインストールの「Surface Pro 2」と、Windows RT 8.1 プリインストールの「Surface 2」だ。ここではSurface Pro 2について見ていくことにしよう。

 初代Surface Proと並べて見ると、まず、見分けがつかない。だが、注意深く観察すると、たとえば、背面のキックスタンドにプリントされているのが、初代では Windows ロゴだったのに対して、今回は、Surface となっている。ここに Microsoft と書かないところに同社の自信が感じられる。

 既報の通り、Windows PC としてのスペックは一般的なもので、プロセッサが、Haswellこと、Core i5-4200Uに置き換わったことが最大の変更点だ。GPS非搭載である点も初代と同様だ。

 パッケージには、本体のほかに、電源アダプタ、スタイラスペンが同梱されている。また、プリインストールのOffice Home and Buisiness 2013のプロダクトキー、2年間のSkyDrive 200GB利用クーポン(16,000円相当)、Skypeの世界61カ国固定電話かけ放題プランとWi-Fi 12カ月無料の特典クーポンが添付されている。

 本体SSDストレージの容量によって3モデルあるが、直販に相当するオンラインのMicrosoft Storeでの価格は128GBモデルの場合、99,800円なので、そこに16,000円相当の200GBオンラインストレージが含まれるというのは、かなりのお買い得感がある。Windows 8.1ではOSにSkyDriveが統合されたので、その使い勝手も高まった。ちなみに、Googleの「Chromebook Pixel」も、3年間分の1TBのGoogle Drive使用権が付いてくる。こちらは、49.99ドル/月なので1,800ドル相当だ。並べて比較するものでもないかもしれないが、Surfaceは、儲けを度外視しないギリギリのところをついているのがわかる。

何も足さない、何もひかないピュアMicrosoft

 Surface Pro 2の重量は、907gと初代と変わらない。凝縮感があり、手に取るとズシリとした重さを感じる点も同じだ。たとえば、ほぼ同じスペックを持つクラムシェルタッチ対応ノートPC、NECのLaVie Z LZ650/NSシリーズは、13.3型スクリーンで965gだが、実使用時に感じる重量は、まるで浮力が発生しているかのような錯覚からか、そちらのほうが軽く感じるくらいだ。

 Surface Pro 2におけるWindowsプリインストール機としての導入プロセスに特に大きなポイントはない。最初にMicrosoftアカウントでログオンするように促されるのも、標準的なWindows 8.1そのものだ。だが、最初にMicrosoftアカウントでログオンすると、個人用フォルダの名称が、勝手につけられてしまうので、おすすめとしては、先にローカルアカウントを作成し、あとでMicrosoftアカウントを関連付けることをお勧めする。

 スタート画面にはWindows 8.1 標準アプリだけが並ぶ。まさに、Windows 8.1をクリーンインストールしたかのようだ。

 Officeについては、プリインストールされてはいるものの、初期状態ではいきなり使うことはできず、スタートスクリーンを経由して、すべてのアプリを表示させ、そこからOfficeアプリアイコンを開き、指示にしたがって同梱のプロダクトキーを入力する必要がある。

 Surface Pro 2は、ただそれだけだ。ここまでのプロセスで、Windows 8.1をクリーンインストールし、そこにOfficeを加えただけの環境ができあがる。それ以上でも以下でもない素っ気なさ、それこそに魅力を感じるユーザーも少なくないだろう。まさに、ピュアMicrosoft体験ともいえる。

タブレットとしてのSurface

 10.6型スクリーンを持つピュアタブレットとしてのSurface Pro 2だが、このサイズはAndroidなどのモバイルOSではポピュラーでも、フルスペックPCではあまり見かけない。かろうじて、ソニーの「VAIO Pro 11」あたりが相当するが、あちらはクラムシェルタイプだ。だが、これを超えると大きすぎるし、7〜8型スクリーンでは小さすぎて、Windowsデスクトップを使うには不便だと思うユーザーには、まさにぴったりのサイズ感だ。別の言い方をすれば、競合が不在であるということもできる。OEMがやりたがらないプラットフォームだということなのだろうか。Surfaceはあくまでもタブレットであることを主張したがっているように見える。

 10.6型でフルHDというのは、表示されるオブジェクトサイズが小さすぎて視認性が悪い。Windows 8.1では、スケーリングをスクリーンごとに指定できるようになり、本体スクリーンでは、大/中/小の3段階から選択できる。Surface Pro 2の既定値は「大」となっていて、その拡大率は150%だ。また、すべてのディスプレイで同じ拡大率を使用することで、任意の拡大率も指定できる。

 ぼくは、この設定を使って、拡大率を184%に設定した。この値は対角線ピクセル数から求めたdpi値をもとにWindowsデフォルトの96dpiに換算したときの必要拡大率を割り出し、それを15%縮小した値だ。216%まで拡大することでデフォルトサイズでの表示となるが、比較的目から近い位置で使うタブレットでは、そこまで大きくする必要はないため、15%縮小した184%で使っている。この方法で、さまざまなサイズのスクリーンを持つモバイルPCでの表示を統一することができる。

クラムシェルとしてのSurface

 Haswell搭載によって、バッテリ駆動時間は飛躍的に伸びた。Microsoftでは、バッテリ駆動時間を公表していないが、75%もの延長が実現されているという。実際、初代を使っていると、2〜3時間でバッテリの残り容量が不安になり、外出時に持ち出す気にはなれなかったのだが、新Surfaceでは、そのような印象はない。まだ、入手して間もないので、詳細ベンチマークはとれないが、一般的な1日の外出なら、特に不便を感じることはなさそうだ。

 個人的にはすでに、電源アダプタをPCといっしょに持ち歩くという習慣はなくなってしまっているので、ここは、大きな強化ポイントだ。また、特に設定することなく、スリープ時にもUSBポートからの電源供給が可能で、緊急時にスマホを充電するためにも利用できる。ただし、この機能をオフにすることはできないようだ。

 タブレット形状ではあるが、Microsoftでは、Windowsにキーボードは必須であると考えているようで、Surfaceには、純正オプションとして2種類のキーボード付きカバーが用意される。1万円超のそれなりの価格が設定されているので、欲をいえば同梱して欲しいくらいだ。今回は、タッチカバーと呼ばれる打鍵感のない薄型キーボード機能付きのカバーを使ってみた。

 キーはバックライトで照らされ暗所でもキーの位置がよく分かる。JとFのキー位置にはわずかなくぼみがあり、試してみたらタッチタイプも可能だった。もちろんタッチタイプのしやすさという点ではストロークが確保されたタイプカバーが優れているし、場合によっては外付けの任意のキーボードをBluetooth接続した方がいいかもしれない。だが、タッチカバーでも、トレーニング次第で、かなりのスピードでタイプができそうなことに、ちょっとした驚きを感じている。

 タッチカバーは、薄いわりには強度があり、強力なマグネットで本体下部に吸着する。本体にはキックスタンドと呼ばれるスタンドが装備され、これを開くことで本体を自立させることができる。キックスタンドは24度と40度の2段階でラッチする。使う場所によって、どうしても天井の照明が映り込んでしまうような場合にも柔軟に対応できるのはうれしい。

 ラップトップスタイル、すなわち、膝の上で使うことも想定されている。膝の上で使う場合は、デスクやテーブルに置いて使うときよりも、高い位置からスクリーンを眺めることになるが、より深く本体を倒せるようになったために、その際の視認性も高まっている。個人的には、記者会見会場などでテーブルがない席でメモをとるような場合、あるいは、電車の座席に腰掛けて使うような場合には、ラップトップスタイルで使わざるをえないので、この仕様は大歓迎だ。一般的な使い方でも、リビングルームでソファに腰掛けてタイプするというニーズも少なくないはずだ。

 このキーボードカバーは、初代Surfaceとも互換性があり、既存ユーザーも利用することができる。デバイス的にはHIDキーボードデバイスであると同時に、Surface Touch Cover Filter DeviceとしてWindowsに認識されている。内部的な接続はUSBだ。手元に、初代タイプカバーのUSレイアウト版があるので、試しに装着してみたところ、そのレイアウトがきちんと認識された。USレイアウトのカバーを装着すればレイアウトはUS配列になり、日本語レイアウトのカバーを装着すればレイアウトが日本語配列になる。

セパレートスタイルで使うSurface

 興味深いアクセサリとして、キーボードカバー用ワイヤレスアダプタが用意される。これは、カバーに装着して使うBluetoothアダプタで、バッテリを内蔵し、Micro USBケーブルを接続して充電できるようになっている。このアダプタをキーボードカバーにマグネット装着することで、カバーを本体を分離した状態での利用が可能になる。

 これなら、リビングルームのテーブルに本体だけを立て、本人はキーボードだけをラップトップスタイルで利用するといった使い方ができるわけだ。このスタイルは、クラムシェルノートPCでは不可能だ。通常はタッチ操作だけで使っている場合、裏に折り返せるキーボードカバーが邪魔に感じることもあるのだが、カバーを分離させることで、使うときだけキーボードを出せるという運用が可能になる。Windowsにはキーボードが必須だと考えるMicrosoftらしいといえばらしいアクセサリだ。

 ただし、Bluetooth接続時には直接装着したときのように、US、日本語配列の判別は機能しない。これは相変わらずだ。

SurfaceはピュアMicrosoft体験の提供を担わない

 最新のハードウェアに最新のWindowsをプリインストールし、まさに、Microsoftの集大成であるかのようにデビューしたSurface Pro 2だが、残念ながらInstantGoには対応していない。Skypeをバックグラウンド動作させた状態でスリープさせ、他の環境から呼び出してみたが、その通知はない。また、アラームを設定しても、設定時刻になってもアラームが鳴ることはない。アラームの追加時に「アラームを鳴らすには、PCを起動しておく必要があります」という警告が表示される。これが、InstantGo対応かどうかを見分けるもっとも簡単な方法だ。

 InstantGoは、今後、とても重要な機能になっていく。現時点でのWindows 8.1は、鳴り物入りで登場したOS統合のSkyDriveでさえInstantGoには対応していないので、使い道がないといえばないのだが、それをどう活用していくかのデモショーケース的に使えるプラットフォームを提供することが、Microsoftには求められると思う。Surfaceは、Windows用ソフトウェア、ハードウェアのエコシステムにおけるリードデバイスの役割を担うべきだとも思うからだ。本当なら、OEM各社ではコスト的に見合わないようなことにもチャレンジしてほしいところだが、それではOEM各社が許さないという大人の事情があるのかもしれない。

 InstantGoを何に使うか、果たして本当に必要なのかどうかといった議論とは別に、それを実装してWindowsの仕様通りに動くプラットフォームを提供するのは、OSベンダーとしてのMicrosoftの義務に近いものじゃないかとも思う。GPSはもちろん、WANモジュールや指紋センサーなど、Windows 8.1に実装された機能をフルに活かせる全部入りのプラットフォームも用意するべきだ。そうすることで、開発者はもちろん、ユーザーもまた、混ざりもののない、いわゆるピュアMicrosoftを体験することができるはずだ。それで動かなければ話にならないというリファレンスにもなる。

 にもかかわらず、MicrosoftがSarfaceにGoogleのNexusシリーズのようなリードデバイスの役割を担わせようとしないのは、Microsoftがデバイス&サービス カンパニーとして、本気でこのデバイスでビジネスを成立させようとしているからなのかもしれない。

(山田 祥平)