山田祥平のRe:config.sys

iPad miniとMEDIAS TAB ULが示す軽さは正義




 Appleから「iPad mini」が発表された。事前のリーク内容に近いものだったが、期待のタブレットがまた登場し、選択肢が増えたことは喜ばしい。しかも、格安タブレットとして、Amazonの「kindle Fire」までも日本で発売が開始された。まさに7型フィーバーだ。ここでは、7型スクリーンの領域について、もう少し考えてみることにしよう。

●別次元の軽さを誇るNECのMEDIAS TAB UL N-08D

 ピュアGoogleタブレットである「Nexus 7」が絶好調で、品薄が続いているそうだ。個人的にこの端末はとても気に入ってはいるものの、いくつかの点で不満が残り、常用には至っていない。

 まず、背面カメラがないこと。この端末で写真を積極的に撮ろうとはあまり思わないのだが、バーコードを読み取らせたいようなときに不便だし、ちょっとした画像をSNSにアップロードしたいときにも、この端末だけで完結しない。最近は文字を読み取って翻訳するようなソリューションも出てきている。

 そして、何よりも、携帯電話ネットワークを使った単体通信ができないのは、思った以上に不便だ。

 最近、機会をいただき、しばらくドコモ端末であるNECの「MEDIAS TAB UL N-08D」を使わせてもらっているのだが、これが想像以上にいい。なんといってもその軽さは別次元だ。7型端末で249gというのはかなり軽いし、実際手にとるとびっくりするくらいだ。カーボンファイバーによるボディが功を奏しているようで、このくらい軽いと、ストラップホールつきというのもうれしくなる。ストラップをつけて首からぶらさげても負担にならないのだ。

 しかも、LTEデータ通信ができるのはもちろん、音声通話もサポートしている。さらには、単なるバイブレートではなく、ハプティクステクノロジーによる振動は、本体からの音に連動させることができるし、通常のバイブのようにも使える。個人的には、Nexus 7に感じている不満がすべて解消されている端末としてイチオシだ。

 ただし、手放しで褒め称えるわけではない。まず、軽さの犠牲になったのがバッテリ容量で、普通に使っていると、まるでスマートフォンのような勢いでバッテリを消費する。朝、持ち出して、夕方には不安になる感じだ。

 また、ドコモ回線を利用するMVNOで、テザリングができないのは、ドコモ端末のお約束で、これを気にするユーザーも少なくないだろう。同じドコモ端末でも、アプリを使えばそれを可能にできるものもあるので、ここはちょっとくやしいところだ。

 そして、これは言っても仕方がないことかもしれないが、Android 4.1のNexus 7を使ってしまった以上、4.0のままというのがくやしい。そろそろ4.1以上でないと動かないアプリも出てきているので、これから新しく入手する端末については、4.1のものを選びたいとも思う。

●7型スクリーンの魅力と驚異的なバッテリ運用時間

 最初に使った7型タブレットはSamsungの初代「GALAXY Tab」だった。これは、3Gのみのサポートだったこともあり、バッテリは驚くほど持った。使っていて不安を感じることはまずなかった。ぼくは、この端末で7型スクリーンの魅力を知った。

 スマートフォンのように小さすぎることもなく、かといってiPadのように大きく重いわけでもない。手の延長としては大きいのだが、スマートデバイスで情報を消費するという点では、最適なサイズではないかと思う。iPadを含め、10型前後を超えるタブレットは、立ったまま使うにも大仰だ。

 特に、旅先や出張先などで、見知らぬ地域を訪れたときには、地図や周辺情報のチェックなどにフル活用できるし、そういう用途には7型スクリーンは最適だ。もし、それで足りないのであれば、カバンからノートPCを取り出す。結局は、スマートフォンとタブレット、そしてノートPCを常時携帯しているわけで、そういう環境では249gのMEDIAS TAB UL N-08Dは、実に重宝する。

 今回発表されたiPad miniを強引に7型スクリーン仲間として考えてみると、これも絶妙にバランスがとれた端末だと考えることができる。

 個人的にはWi-Fi+Cellularモデルにしか興味はない。単独でデータ通信ができるかどうかも大事だし、いまどき、GPSのない端末は考えられないからだ。そして、その重量が312gだという。MEDIAS TAB UL N-08Dの249gに対して63gも重い。そして、それは外装の違いもあるが、内蔵されているバッテリの容量のせいでもある。

 Appleによれば、携帯電話データネットワークでのインターネット利用で最大9時間のバッテリ駆動が可能とされている。これは、iPad 2、新しいiPad、そして、さらに新しいiPad Retinaディスプレイモデルと同等だ。iPad Retinaのバッテリが42.5Whで、iPad miniが16.3Whとされているので、容量的には38%分しかないが、それで同じだけの時間使えるという。

 ちなみに、手持ちの新しいiPadで、バッテリに関して心配をすることはほとんどない。ぼくの新しいiPadは、米国のAppleストアで購入したVerizon版なのだが、実際に、米国内でLTE通信をさせ、本体のインターネット共有、すなわちテザリングをオンにしたまま、常識的な頻度で本体を丸1日使っても、バッテリは半分以上残っていたりもするのだ。感覚的には24時間くらいもつんじゃないかといっても大げさじゃない。そういう実績がある。

 ぼくとしては16時間、こういう使い方ができれば御の字だ。なぜなら、1日のうち、残りの8時間は寝ているからだろうし、そうでなくとも、確実に充電ができるロケーションにいるはずだ。

 iPadのインターネット共有をオンにしているとき、ポケットの中のスマートフォンは、Wi-Fi経由でiPadにぶらさがっていて通信を続けている。スマートフォンのバッテリは、普通なら、夕方にはバッテリが不安になるのだが、データ通信をiPadのテザリングにゆだねることで、運用時間は3倍くらいに伸びる。つまり、スマートフォンそのもののバッテリの心配もしなくて済むようになるのだ。

 もし、iPad miniが、それと同様の環境を312gで提供してくれるのなら、手軽に使えるタブレットとして、インターネットが目で見えるモバイルルータとして、実に便利に使えそうだ。まさに、スマートルータだ。

 これから出てくる各種のデバイスは、Ultrabookなど、Wi-Fi以外の通信手段を持たないものが少なくない。だからこそ、外部に通信手段を頼らなければならないわけで、これ以上、バッテリの心配が必要なデバイスを増やしたくないという気持ちも強い。

 iPad miniは、MEDIAS TAB ULよりも63g重いわけだが、ぼくは、スマートフォンのために日常的に予備バッテリを持ち歩いていて、こちらが38gある。スマートフォンのバッテリの心配をしなくてすむようになれば、予備バッテリを持ち歩かなくてもよくなる可能性だってある。つまり、iPad miniがデータ通信のハブになることで、結果として、スマートフォンの省電力にも貢献し、それで荷物が38g減るのなら、312gはガマンできそうだということだ。もちろん、カバンの中に忍ばせている充電器やケーブル類の重さまで考慮すれば、ほとんど相殺されてしまうだろう。312gのiPad miniを持つことで、予備バッテリと充電器類を捨てられるかもしれない。

●MVNOとiPad

 iPad miniは、日本ではKDDIとソフトバンクモバイルから発売されるという。iPhone 5でのLTEネットワーク対応を見ると、理屈だけをきいている限り、今の時点ではKDDIで使いたいとは思う。もちろん、提案される通信プランとコストにもよるし、海外SIMを装着したときの挙動も気になる。それによっては、また、アメリカでVerizon版を購入したり、Expansysのような業者を経由してSIMロックフリー版を輸入し、それを日本で使うようなことも考えなくてはなるまい。

 ただ、Verizon版や、香港等で入手できるSIMロックフリー版が、日本の事業者のSIMを装着したときに、LTEを有効にできるかどうかがわかるまでは、安易に動くことはできない。このあたりは、十分な情報集めが必要だ。場合によっては3Gでガマンするという選択肢しか選べないということもある。また、今回は、nano SIMなので、どうやって、このサイズのSIMを調達するかという問題も残る。

 ちなみに、新しいiPadだが、iOS 6以降で、ちょっとした朗報がある。というのも、iOS 5の時代には、SIMロックフリー版の新しいiPadでドコモ回線のMVNOのSIMを装着しても、テザリングができなかったのだが、iOS 6にアップデート後、構成プロファイルを手動でインストールすることで、それができるようになったからだ。

 構成プロファイルは、iPhone構成ユーティリティを使って自作する。ここで作成するのは、接続すべきAPNとそのユーザー名、パスワードだけを記述した簡単なものだ。このユーティリティを使って作成した内容を .mobileprofileファイルとして書き出し、メールに添付して自分宛てに送り、iPadでそれを開けば簡単にインストールすることができる。また、MVNOによっては、自社サイトでこの構成プロファイルを配布している場合もある。

 先日、いろいろ気になることもあったので、いくつかのMVNOで挙動を試してみた。各社が配布しているプロファイルだけではなく、同内容のものを自作してインストールし、iPadで試してみた。

 試したSIMは4種類で、すべてドコモをMNOとするMVNOだ。結果として、

・ドコモXi音声SIM
 構成プロファイルをインストールしてテザリングが可能となった。APNはmopera.netで、ユーザー名はxxx-mopera@docomoの形式のものを使った。
・日本通信 b-mobileSIM(イオン専用)
 構成プロファイルをインストールしてテザリングが可能になった。プロファイルは同社サイトでも配布されている
・IIJ mio 高速モバイル/D ミニマムスタート128プラン
 構成プロファイルをインストールしてテザリングが可能になった。プロファイルは同社サイトでも配布されている
・BIGLOBE LTE
 構成プロファイルを自作してインストールし、「インターネット共有を設定」という項目をタップすると「このアカウントで“インターネット共有”をオンにするには、Carrierに問い合わせてください」というメッセージが表示されて、テザリングできない。

 各社に取材したところ、新しいiPadでは、装着されたSIMの事業者コード(PLMN)を検知し、内部にテーブルとして持っている通信事業者別の設定ファイルにより、事業者ごとに許された設定項目を有効化するという。ドコモおよび、ドコモのMVNOは、この通信事業者のテーブルに登録されていないため、unknown.bundle、つまり、その他事業者用の設定ファイルがロードされるのだという。

 unknown.bundle用の設定ファイルでは、テザリングは禁止され、また、LTEも無効化されているという。だから、通常の手順でAPNを設定しても、テザリングができず、LTEでの通信もできないということらしい。

 ただ、すべてドコモのSIMなのにBIGLOBE LTEだけが異なる挙動を示すのが腑に落ちない。MVNO側で、テザリングの許可をiPadに伝える制御を動的に伝える仕組みも用意されていないという。

 ただ、エラーメッセージの「このアカウントで〜」というのが気になった。他の3社と異なるのはユーザー名に@以下があるかどうかだけだ。そこで、試しに、BIGLOBE LTEのユーザー名を、指定された「user」から「user@biglobe」にしてみたところ、他のMVNOと同じ挙動を示すようになり、テザリングができるようになった。@以下の有無で、なぜ挙動が変わるのか、それがiOS 6のバグなのか仕様なのか理由はわからない。それでも結果はオーライであり、めでたしめでたしだ。

 こうした経緯もあり、新しく発売されるiPad miniでのテザリング活用が気になり始めたわけだ。現行のiPhone設定ユーティリティで作成できる構成プロファイルにはLTEを有効にする項目は見当たらないが、将来のバージョンで可能になるかもしれない。また、.mobileprofileは、xmlファイルなので、LTEを有効化するための記述方法が見つかる可能性もある。そうすれば、コストの安いドコモMVNOでiPadを運用することができるようになるのもうれしい。そして、それが今回のiPad miniでもかなうなら……。装着されているSIMの事業者によって、ハードウェアの能力を最大限に活かせないというのは、実に、理不尽なことでもある。

 というわけで、どのiPad miniをどこから購入しようかと、すっかりその気になっている次第だ。ぼくとしては、このデバイスは「らくらくiPhone」でもあるのだなとも思っている。