山田祥平のRe:config.sys

11型ZENBOOKのモビリティ




 ここのところ、ずっと各社のUltrabookの評価を続けているが、モバイル用途にノートPCを使うのであれば、13.3型は少し大きすぎるというのが正直な感想だ。そこで、今回は、それよりも一回り小さい、11.6型のUltrabookとしてASUSのZENBOOKを試してみた。

●MacBook Air キラーとしてのZENBOOK

 ASUSのZENBOOKには、UX21EとUX31Eの2つのモデルがある。UX31Eは13.3型で解像度は1,600×900だ。前回前々回にレビューした日本HPのFolio13や東芝のdynabook R631とスクリーンサイズは同じだが、解像度が少し高い。それに対してUX21Eは、11.6型のスクリーンサイズで、13.3型スクリーンのFolioやdynabookと同様の解像度1,366×768を持つ。

 UX21Eの解像度とスクリーンサイズの組み合わせは、おそらくはよく比較の対象になるであろうMacBook Airの11型と同じだ。ただし、重量の点ではMBAの1.08kgに対して、ZENBOOKは1.1kgと、ちょっとだけ重い。重量だけを考えれば、dynabookが1.12kgだったのは本当にすごいことだ。

 カタログ値におけるバッテリ駆動時間は5.5時間となっている。話半分として2〜3時間といったところだろうか。バッテリを交換することはできないので、電源アダプタなしで持ち出した場合、バッテリが切れたらそれでおしまいだ。それで十分だというユーザーもいるだろうし、それでは無理と思うユーザーもいるだろう。個人的には記者会見を1つこなして、その行き帰りにちょっとした用を足すという1日ならこのくらいでも不安はないが、記者会見2件とか日帰りの地方出張、1時間を超えるインタビューといった用途では難しいと思う。

 ボディはヘアライン仕上げの金属で、それなりの高級感がある。見た目が華奢なので、実際に手に取ったときのズシリ感が強い。1.1kgという重さをうたがってしまうくらいだ。でも、カバンの中に入れてしまえば、正味の1.1kgだ。きっと筐体の密度感が高いのだろう。その密度のおかげかどうか、筐体の剛性もあり、見た目は華奢なのに頼もしいイメージも受ける。

 シリーズにはInstant onというASUS独自の機能が搭載されている。詳細については明らかにされてはいないが、スリープからの復帰を3ステージに分けてコントロールするための回路をチップとして搭載しているという。

 この機能によって、プロセッサへの給電再開、各デバイスへの給電再開、ドライバの再読込などが最適化され、長時間のスリープ後にも約2秒で復帰することができるという。また、このメモリへの給電を可能な限り最小にでき、通常よりも長時間にわたってスリープ状態を意地できているのだそうだ。

 Windowsは、スリープさせてから1時間程度で復帰させる分にはいいのだが、たとえば一晩スリープさせたような場合には復帰に少しもたつく。ハイブリッドスリープしていたわけでもなく、スリープと休止状態の中間に相当する状態があるようだが、Instant onを有効にしておくと、そのようなことはなく、いつでも瞬時に復帰するようだ。いずれにしてもスリープからの復帰で待たされる印象は皆無といっていい。

●入力デバイスに難あり

 モバイルPCの評価に際しては、評価対象マシンを普段使っているノートPCとほぼ同じコンフィギュレーションにした上で、実際に持ち歩いてみて試す。アプリケーションについても、普段の原稿書きに使っている秀丸エディタを入れ、キーアサインも自分の常用のものに入れ替える。そして、原則としてそのPCを使ってレビュー原稿を書く。ほとんどの場合はそうしているのだが、今回は、ちょっと挫折しかけた。

 まず、タッチパッドが大きい。大きい分にはいいのだが、キーを叩く手のひらが触れてしまい予期せぬタイミングでポインタが飛んでしまうのだ。ASUSではこのタッチパッドを「指検出パッド」と呼んでいて、こうした誤動作を防止するために、ASUS SmartSenceという機能を用意している。この機能を有効にしておくことで、キーボードで文字を入力している間はパッドが無効になり、あらかじめ指定したパッド上のエリアで指を動かすとパッドが有効になる。有効になるエリアもサイズ、位置ともに自由に調整できる。ただ、これを調整するのだが、有効になるまでのタイムラグがもどかしく、そしてその範囲に手が触れてポインタが飛ぶなどで、ストレスがたまる。

 きっと、これには個人差があると思うのだが、普段使っているノートPCがLet'snoteだというのも大きい。ぼくとしてはLet'snoteの丸いタッチパッドはあまり意味がないと思ってきた。だから指を円周に沿ってクルクルと回転させてスクロールさせるような機能はオフにして、右端を縦になぞったときだけスクロールするようにして使ってきた。でも、丸いタッチパッドは、矩形のものよりも狭く、さわってしまいにくい。だから予期せぬポインタの移動が起こりにくいという副作用をもたらしていたようだ。だから、つい親指の付け根が無防備な状態でタイプするクセがついてしまっているようだ。

 あまりにもストレスがたまるので、ロジクールのCubeを接続し、ポインティングデバイスとしてはそちらを使うようにしてみた。外部にポインティングデバイスを接続したときにはタッチパッドが無効になるように設定したわけだ。いっしょに持ち歩くにも、このくらいのサイズなら気にならない。ただ、レシーバを装着しているだけでCubeの電源がオフでも外部ポインティングデバイス接続済みと判断されてしまうのは残念だ。

 これで誤動作はなくなった。だが、今度はキーボードだ。ストロークは浅い。でも、浅いわりにしっかりと打鍵しないとキー入力をこぼしてしまう。だから、タイプミスが頻発する。特にスペースキーでかな漢字変換操作を行なう際に、ぼくは右手の親指でスペースキーを叩くのだが、位置的にスペースキーの右端を叩くことになる。そのときにもきちんと叩けないで変換が行なわれなかったりする。

 そんなわけで、ポインティングデバイスに泣かされ、キーボードに泣かされで、原稿書きを挫折しそうになったというわけだ。でも、何とか書き終えることができた。

 キーボードの扱いは個人差が多いだろうから、誰にも使いにくいとはいえないが、もし購入を検討しているなら、必ず実機を操作して試してほしい。

 そのほか、電源ボタンがBackspaceキーの真上、Deleteキーの右側に、通常のキーと同じキートップを持つスイッチとして装備されている点も気になる。つい、これらのキーを使うときに間違えてしまうのだ。

 ただ、電源ボタンの押し下げでは、コントロールパネルの設定で「何もしない」に設定しておかない限り、必ずダイアログが表示されて、スリープするのか休止状態に移行するのかを尋ねてくるので、いきなり電源断ということにはならない。でも、それもわずらわしいなら、このボタンはコントロールパネルの電源オプションで無効にしておいたほうがいいかもしれない。

●モバイルPCが手頃な価格で手に入る

 使いたいときにカバンからサッと取り出し、液晶を開くと瞬時にスリープから復帰する。そして、パスワードを入れればすぐに使えるようになる。11.6型というスクリーンサイズも悪くない。これならモバイルPCとして十分に実用になるという印象を持った。多くの作業をスマートフォンでこなせるようになっているので、カタログスペックで5.5時間というバッテリ駆動時間も許容範囲とするユーザーも少なくないと思う。ちなみにこの原稿を書きながら、たまにWebでスペック等を確かめるためにWi-Fiでモバイルルータに接続しっぱなしにしている状態では、1時間に25%程度のバッテリを消費するようだ。4時間はもたないが、3時間程度は大丈夫と考えてよさそうだ。

 弱点であるキーボード入力も、たとえばATOKを入れることで、ミスタイプをある程度カバーできる。少なくともスマートフォンで長文を入力するよりはずっと効率はいい。

 高価で手を出しにくかったモバイルノートPCだが、ZENBOOK UX21Eは、ちょっと探すと、安い店では8万円を切る価格で売られているようだ。パフォーマンス的にも大きな不満はない。また、日本HPのFolioがそうだったように、電源アダプタが巨大ということもなく、十分にコンパクトなものとなっている。11.6型というと他社のUltrabookにはないサイズは貴重な存在だ。第1世代のUltrabookとしては、ここまでといったところだろうか。毎日持ち歩く気になるモバイルノートPCの選択肢の1つとして候補にしてみてほしい。