山田祥平のRe:config.sys

GALAXY Tabがもたらすモバイルデバイスの新たなサイズ感




 11月27日の発売日にGALAXY Tabを入手してから約2週間が経過した。スマートフォンより大きく、ノートPCやiPadよりは小さい7型のタブレット。今回は、そのインプレッションを紹介することにしたい。

●運悪く不具合続出

 国内キャリアから各種のスマートフォンが発表、発売されたものの、肝心のオサイフケータイへの対応について、日常的に使っているサービスであるモバイルSuicaが2011年になるなど、ちょっとがっかりして、買う気マンマンだった気持ちが薄らいでいた。メインに使っているキャリアはドコモなので、2011年春には、完全対応の最新バージョンAndroidのSIMフリースマートフォンが出ることを期待しようという気にもなっていた。

 スマートフォン的なデバイスとしては、海外用にAndroid端末としてのNexus Oneを、国内ではiPod touchを使っていたので、こうしたデバイスのガラケーに対するアドバンテージは十分に理解しているつもりだ。でも、手持ちのデバイスに加え、よほど大きな変革がない限りは、これ以上、似たようなデバイスを増やしたくなかったというのもある。Androidについては、かなり勉強もしたつもりだ。

 ただ、2011年春まで待つだけというのは、この商売としてどうかという後ろめたさもあり、手持ちのデバイスにはない手頃なサイズのタブレット形状に食指が動いた。ご存じの通り、GALAXY Tabは、ドコモから提供されるSamsung製の7型液晶タブレットで、手元のデバイスの中では4型前後のスマートフォンと、10.4型iPadの中間に位置する382gの端末だ。Androidがすでに2.2である点もポイントが高い。それにこのサイズであれば、オサイフケータイとして使えなくてもあきらめがつく。ということで購入に踏み切ることにして予約を入れた。

 そして、実は、今、手元にあるGALAXY Tabの個体は3台目だ。11月27日の発売初日にターミナル駅周辺の量販店で入手し、しばらく使っていたのだが、Androidマーケットに存在するはずのアプリケーションが、半分くらい見つからない現象に気がついた。たとえばドコモ謹製の「SPモードメール」が見つからない。本体を初期化して試せばいいのだが、ネットワーク側の問題かもしれないということで、電話でサポートに相談したら、もっとも詳しいスタッフがいる東京・丸の内のドコモ・スマートフォンラウンジを訪ねろというので行ってきた。これが12月1日のことだ。

 朝一番で同ラウンジに入り、スタッフに相談にのってもらう。ただ、先方が試すようなことは、すべて自分でも試しているわけで、こちらから、ラウンジ所有の試用機を初期化して、それにぼくのSIMを装着して試してみたいと申し出た。結果は、それでOKだったので、その場でぼくの個体を初期化、やはり不具合が再現したので、併設のドコモショップで新品交換となった。

 これまたしばらく使ってみたところ、ソフトウェア的には問題はなかったのだが、そのうち、タブレットの額縁部分にキシミが出てきた。本体を支えるために必ず指で触れるところなので、とても気になる。そこで、再びラウンジ併設のドコモショップ窓口へ。そして再び新品交換。これが12月4日のことだ。結局1週間の間に、3度もセットアップをやり直し、すっかり手慣れてしまった。ちなみに製品交換は購入後10日以内だそうで、その後は預かり修理扱いとなるとのこと。ギリギリセーフだったのは不幸中の幸いだ。

 契約は、手元の既存端末の機種変更で、基本使用料1,864円のFOMAタイプSSバリューで、これにパケ・ホーダイダブルの定額料372円と、SPモード300円、そして、モペラのUライトプラン300円を契約した。従来のiモードは解約だ。

 モペラは特に契約する必要はないのだが、SPモードではテザリングが禁止されているので、PCを接続したいときに、別の端末にSIMを移し替えてインターネット接続ができるようにしておくことにした。それに、もし、誰かがこの端末でテザリングを可能にするようなソリューションを書いたときに、モペラでつなげばテザリング禁止の規約に違反せずにすむ。

 GALAXY Tabは、SPモード、モペラ双方のAPNにつながるが、他の端末にSIMを入れても、SPモードへの接続はできない。いったんは接続できるのだが、すぐに切断されてしまう。また、GALAXY TabでモペラUに接続した場合は、パケット通信料が一般扱いとなる。

 この点の振る舞いが不明だったので、最初にサポートに問い合わせた。回答は、接続時に機種を判断するので、この端末を使う限り、モペラU、SPモード、どちらのAPNに接続してもスマートフォン定額扱いになるという回答を得たのだが、そんなはずはないだろうと思っていた。ちょっとだけ試して翌日に、マイドコモで料金を確認したら、しっかり一般扱いのパケットが消費されていた。とりあえず、サポートに連絡したら、問い合わせ時の内容の録音をチェックして、先方が間違った案内をしていたことを認め、お詫びのしるしにQuoカードを送ってくれるとのことだ。

 端末の個体差からサポートまで、まだまだ、かなり混乱していることがよくわかる。

【12月20日追記】

 通信料金について、読者の方から問い合わせをいただいたので、このぶぶんについて追記を書いておく。

 ドコモのスマートフォン利用時にはFOMAパケット通信料が次の2種類に分類される。

・FOMAパケット通信料[一般] 上限10,395円
・FOMAパケット通信料[スマートフォン定額] 上限5,985円

 最低月390円のパケットパケホーダイダブルを契約しておくと、パケット通信料の上限額はスマートフォン定額が5,985円、一般が10,395円となる。スマートフォンでSPモード用のAPN(spmode.ne.jp)だけを使う限りは「スマートフォン定額」が適用されるが、そのSIMを別の端末に装着し、PCなどの外部機器を接続し、モペラUライトで使えるAPN(open.mopera.netなど)で通信すると、その通信は一般パケットとなり、その上限額は10,395円となる。スマートフォン以外の端末からはSPモード用APNが利用できないので、これは避けようがない。

 さらに、たとえ、スマートフォン単体での接続であっても、モペラUライトのAPNを使うと、それはスマートフォンからの接続ではなく、一般扱いのパケットとして計上され、上限はやはり10,395円となる。

 上限が10,395円なのでいわゆるパケ死の心配はないが「スマートフォン定額」ではなくなってしまう点に注意してほしい。

 この点にこだわるのは、SPモードではテザリングが規約で禁止されているからだ。もし、誰かが仮にテザリングを可能にするようなアプリを書いても、それをSPモード用APNで使ってしまうと、たとえ料金が5,985円に収まったとしても規約違反になる。したがって、規約に違反せずにテザリングをするためには、モペラなどのAPNに接続しなければならず、その場合の上限額は10,395円となるわけだ。

【追・追記】

 この端末には、デフォルトで登録されているAPNとしてmpr2.bizho.netがある。現在、パケホーダイに統合されているBizホーダイ(ダブル、シンプル)との互換性を保つために用意されているAPNだ。

 もし、SPモードを契約していない場合は、モペラを契約し、このAPNを使ってスマートフォン定額通信をすることができる。試してみると、このAPNは、他の端末にSIMをセットした場合も接続が可能なのだが、現時点でその場合の課金体系や、その利用規約がドコモサイト内で見つからず、そういうことをしていいのかどうか、テザリングの可、不可などがわからない状態だ。

●絶妙のサイズ感と大容量バッテリの安心感

 380gという重量は、やはりちょっと重い。でも、7型液晶というサイズ感は悪くない。iPod touchや一般的なスマートフォンでは使いづらいアプリケーションも文字が大きく見やすい。特に、地図などはきわめて視認性が高く、もはや手放せないと感じる。それに、この重量をガマンすれば、スマートフォン的な機能を丸1日駆使しても、まったくバッテリの心配をする必要がない。朝出かけるときに100%になっていれば、夜中近くに戻っても40%は余っている。この安心感は何物にも代えがたい。だからこそ、テザリングができてルーターになればどんなにいいかと思う。iPadを最初に使ったときにも、同様の感覚を持ったが、最終的に、持ち歩いて外で使うにはちょっと重く大きいという結論となった。

 充電にはそれなりの時間がかかる。ただ、ぼくの使い方では丸1日使っても空になることはまずないので、就寝時に接続しておけば朝には充電が完了している。

 添付の電源アダプタは2A仕様で、ケーブルも専用だ。アダプタのUSB端子に専用ケーブルを接続し、本体下部の専用コネクタに接続すると、使いながらの充電が可能だ。秋葉原で2Aの電源アダプタを2種類探してきて専用ケーブルを接続してみたが、これでは使いながらの充電ができない。どうやら、アダプタそのものにシカケがあるようだ。仕方がないので、純正のアダプタ2,100円と、ケーブル1,365円を入手した。このアダプタにマイクロUSBケーブルを接続し、海外用に購入した手元のAndroid端末Nexus Oneを充電すると、AC接続として認識される。シカケは共通のようだ。

 ハードウェアとしての出来はNexus Oneに比べると明らかにいい。Nexus Oneではタッチしたつもりなのにタッチできなかったりといったことで、イライラさせられることが少なくないのだが、この端末ではそれがない。ただ、同じAndroid端末なのに、下部に並ぶ4つのボタンの並び順が異なるのはどうかと思う。具体的にはリファレンス機であるはずのNexus Oneでは左から「戻る、メニュー、ホーム、検索」なのだが、この端末は「メニュー、ホーム、戻る、検索」と並ぶ。ちなみに新しいリファレンスであるNexus Sは「戻る、メニュー、検索、ホーム」だ。同じメーカーのGalaxy Sとも違うのだから、どういうポリシーなのかまったく理解できない。しかも、ボタンのアイコンがバックライトで照らされるのだが、操作がないと5秒程度で消えてしまい、暗いところでの操作に迷う。ボタンの順序くらいは、Androidのガイドラインとして共通化してもいいんじゃないかと思う。

●モバイルのスタイルを変える7型タブレット

 Androidとして、他機種との差別化は、ハードウェア的な面と、ソフトウェア的な面で行なわれるわけだが、たとえば、Samsungの端末なら共通になるというわけではない。似ているけれども違うというのが現実で、複数のAndroid端末を併用するのは大変だ。

 もちろん、使い勝手が良くなっているところもある。たとえば、GALAXY Tabではアプリを格納するために本体のユーザーメモリが12.55GB使える。これだけの容量があれば今のところは不自由を感じることはなさそうだ。これで何も心配することなく、いろいろなアプリが試せる。

 個人的には2台目のAndroid端末ということになり、ガラケーとの併用だが、約2週間使ってみて、モバイルのスタイルは大きく変わったように思う。

 そもそも電車の中で立ったままノートPCを開くことがなくなった。カバンの中にはあいかわらずノートPCが常に入っているのだが、たとえ座れたとしても電車の中で取り出して使うことがほとんどなくなってしまった。もちろん、メールにちょっと長めの返事を書いたり、各種アプリの添付ファイルを確認したりといった場合にはノートPCは必須だし、出先で原稿を書いたり、記者会見でメモをとるといった用途にはノートPCを使う。これらはキーボードが必須の場面だ。GALAXY Tabにキーボードをつなぐかというと、そういう気にはなれない。PCの圧倒的なパフォーマンスと、カスタマイズしたキーアサインを含めて思い通りに操れる文字入力の使い勝手は何物にも代えがたい。

 だが、多くの場面では、このタブレットでことが足りることようになった。ブラウザの画面も、このサイズならギリギリで実用になる。700gのiPadをノートPCといっしょに持ち運ぶのはつらいが、380gのこのタブレットならガマンの圏内だ。もちろん、もう少し軽ければという願いはある。

 タブレットのブラウザで見ていて、あとで、ちゃんと読みたいページなら、「つんどく」などのユーティリティでURLをクラウドにスタックしておき、落ち着いたところでPCを開けばいい。同様に、GoogleのToDoリストや、Catchのメモなど、クラウドサービスを使って、複数の端末でデータを同期できるので、TPOに応じて同じ内容のデータを異なる端末で自在に参照できる。ぼくのiPadはWi-Fi版なので、カメラやGPSが内蔵されていないため、これらを活用するアプリケーションが使えないでくやしい思いをすることもあったが、この端末はフルスペックなので、そういうこともない。カレンダーやメールについても、すべての端末で状態を同期できるので、どれで読んでも返事を書いてもかまわない。既読をうまく管理できずに困っているのはTwitterクライアントだけだ。動作対象外であるが、日本語入力のATOKトライアルだってちゃんと使えている。

 面白いのは、BluetoothのHIDデバイスがそのまま使えてしまうことだ。例えば、マウスを接続すると、それを使ってある程度の操作ができる。マウス右ボタンは「戻る」に割り当てられ、ホイールの回転で項目間移動が行なわれ、ページの構成によっては、うまくスクロールもしてくれる。テーブルの上にうまく立てかけられるようなセッティングができれば、マウスでの操作もありかもしれない。もっとも、テーブルがあるようなところではノートPCを開くだろうし、この端末とマウスをいっしょに持ち運ぶということもあるまい。

 ぼくの理想はカバンのポケットにタブレット、パンツのポケットにiPod touchだ。iPadがコンパクトになって350gになるなら逆でもいい。なかなか思い通りのカップリングにならないところが過渡期ということなんだろう。

 もし、この端末が3Gルーターになれば、混雑する電車の中ではiPod touchを使い、ゆとりがあるときにはこの端末を使うという運用ができる。もちろん、もう1台が別のAndroidでもいい。ノートPCを接続するときにも便利だ。だからこそ、Android 2.2で実装されたWi-Fiアクセスポイントの機能を、使えるようにすることを検討してほしい。専用のユーティリティとアクセスポイントを用意し、それを使って接続した場合は、一般パケットとして扱い、ガラケーでの接続同様に上限10,395円にすればいいのだ。コストは跳ね上がるが、現状でのガラケー接続と同額ならガマンできる。将来的な値下げを期待するだけだ。

●共通のプラットフォームとは何か

 この端末を手にして、身の回りのさまざまなものとサイズ感を比べてみたときに、意外に文庫本というのは大きかったんだなということに気がつく。この端末は新書よりもひと回り大きいのだが、額縁部分があるので、液晶面は新書よりも小さく、また、文庫本よりもほんの少し小さい。でも、自炊したPDFを読もうというなら、文庫や新書はほぼ実物大感覚で読める。音楽プレーヤーとしてのiPodの役割も担わせてしまうことで、外出時に持ち運ぶガジェットの数を少なくできる。そして、そのことで、それぞれのガジェットの充電の手間も省ける。

 今は、過渡期なので、個人的には音楽プレーヤー、オサイフケータイ、電子書籍端末などを全部持ち歩く羽目になっていて、外出時の荷物はどうしようもない状態になっているが、しばらくはこれをガマンしながら将来的にどうなるのかを模索していきたいと思う。少なくとも、これ1台ですべてを兼ね備えるということではなく、デバイス間連携がカギになるだろう。デバイス相互のスマートな連携がこれからの重要なテーマだと思う。

 GALAXY Tabは、個人的に2台目のAndroid端末ということで、特に戸惑うこともなかったが、やはり、思うのは「ココが違う」を競うときに、ハードウェアベンダーにはプラットフォームが共通であることを無視しないでほしいということだ。

 どうせなら「同じなのにイイ」を目指してほしい。そうでなければAndroidを名乗るべきではない。この端末のメールやカレンダーは、Nexus Oneと異なる。使いやすさでいえばNexus Oneのものよりいいのだが、Android標準のものも残しておいてほしかった。ちょうど、どんなWindowsにもメモ帳が標準で用意されているようにだ。

 シェルが異なり、標準アプリも違うのでは困ることもある。このままでは、Windows 3.x のときに、PCベンダー各社が独自のシェルを実装したあのときの混乱と同じ失敗を繰り返してしまうことになりかねない。