メーカーさん、こんなPC作ってください!

【特別版】3Dプリンタでオリジナルスマホスタンドを作ろう

~第4回「Photoshop」の3D機能を快適に使うためのPC仕様を探る

 PCは実に多くのことができるが、最近ではスマートフォンなどの能力も一気に向上しており、PCでなければできないことは減りつつある。だが、ものづくり、あるいはそこまで行かなくても、自分で編集・作成するオリジナルコンテンツの制作においては、PCに比肩するデバイスはないのが現状だ。

 ただし、何でもできると言っても、実際には、予算上限が決まっているので、いくらでも高性能なパーツを使えるわけではないし、1人が使う用途もある程度限られている。

 本コーナーでは、主にクリエイターやクリエイターを目指すユーザーを想定し、特定の用途において価格性能比の面で最適なPCとはどのようなものかを、その分野に造詣の深い専門家やライターの方、および実際にPCを製造するメーカー、PC Watchの三者が一緒に議論、検討し、実際に製品化する。

 今回の特集のテーマは、3Dプリンタ向けの3Dデータを制作するのに適したPCを作ろうというものだ。ややニッチな用途と思われるかもしれないが、それには理由がある。実は、本コーナーに協力をいただいているパソコン工房が株式会社カブクによる協力の下、一般ユーザーを対象にした3Dプリンタを使ったPCケースデザインコンテストを近日開催する予定になっているのだ。

 前々回は、オートデスクの3D CAD「Autodesk Fusion 360」を快適に動かすためのPCスペックについてミーティングを行ない、前回はそれに基づいて作成されたPCの検証とFusion 360でのスマホスタンドのカスタマイズ方法を紹介したが、今回は、アドビシステムズの「Photoshop」の3D機能を快適に利用するためのPCスペックについて、株式会社グラスプアットジエアーのデザイナーである岩島伊織氏、株式会社グラスプアットジエアーのディレクターである南方祐紀氏、株式会社カブクの横井康秀氏を交えて、ミーティングを行なった。

株式会社グラスプアットジエアーの岩島伊織氏
株式会社グラスプアットジエアーの南方祐紀氏
株式会社カブクの横井康秀氏

Photoshopにも3Dプリンタ向けの3D機能が用意されている

【司会】まず、グラスプアットジエアーさんの業務内容や、特にお二方が普段どのようなことをやられていてこの取り組みに参加されたのか、その経緯をお話しください。

【南方】弊社はもともとデザイン制作会社で、映像もやっています。印刷物やWebサイト、さらにデジタルサイネージなどの開発やデザインもしています。今回、ユニットコムさんのPCブランドのプロジェクトをご一緒させていただいて、グラフィック周りの制作を行ない、3Dプリンタ関連のお話もご相談いただきました。LEVEL∞HUBの演出なども手がけておりまして、Kinectを使ったデジタルサイネージですとか、指向性の強いパラメトリックスピーカーを使った仕込みですとか、そういう電子工作的なものもやっています。これらはLEVEL∞HUBでも体験が可能になっているので、来店の際はご体験いただければと思います。

 それから、弊社は岐阜にもオフィスがありますが、そちらには3Dプリンタも置かれています。3Dプリントは、弊社としても興味のある分野ですので、是非参加させてくださいということになりました。

LEVEL∞HUBのKinectを使ったデジタルサイネージ
同じくLEVEL∞HUBに設置された指向性パラメトリックスピーカー

【司会】今回のテーマである、PhotoShopにも最近3Dプリント向けの機能が追加されたということをご存じない方も多いと思うので、その辺りをご説明いただけないでしょうか。

【岩島】実際に、Photoshopで作ってみた3Dデータを紹介します。これはスマートフォンのケースですね。ケース自体は配布されているデータがあったのでそれを使っています。僕が作ったのはこのロゴの部分とこのマークの押し出されている部分、レリーフみたいになっている部分ですが、これらのデータはもともとは2Dのパスのデータ、Photoshopを使っている人は、Illustratorも使える人が多いと思いますが、これはIllustratorで作ったベクトルのデータですね。これを押し出します。それだけだとただの箱みたいになるので、それに対してテーパー角をつけたりというのをPhotoshopで設定して、欲しい形を作っていくことができます。

 また、表面にテクスチャをつける機能もあります。3Dプリントには反映されませんが。3Dモデルの上にペイントして、ライティングも行なって、最終的にそれをレンダリングすることもできます。Photoshopの3D機能は、ロゴデータのひな形を作る場合などによく使われています。

Photoshopで作成した3Dデータ。スマートフォンケースのデータは既存のものをインポートし、それにPhotoshopでオリジナルの模様とロゴを加えてある

【パソコン工房】いきなり、スペックの話になりますが、その作業はMacBook AirなどのノートPCでもかなり重い状態なのでしょうか?

【岩島】この程度でしたら全然余裕ですが、オブジェクトの数が10個とか20個とか増えていくと、どんどん重くなっていきます。ただし、モデリングよりも、Photoshopの3Dから直接3Dプリンタで出力できるSTL形式に書き出すことができますが、そのSTL書き出しやレンダリングは、MacBook Airだとかなり重いですね。例えば、これはDMMさんのプリセットを使っていますが、3Dプリンタでどの材質で出すのかを選んで、積層ピッチとか、そういうのを指定して、STLデータに書き出すことができます。ここが結構、マシンパワーを必要とするところで、MacBook Airだと時間がかかってしまいますが、弊社には、ユニットコムさんのゲーミングPC「LEVEL∞」のCクラスのPCがありまして、それだとすぐに終わります。

【パソコン工房】その辺の演算にはGPUを使っているのですか、それともCPUを使っているのでしょうか?

【岩島】PCのタスクマネージャーで負荷を見比べてましたが、CPUに負荷がかかっているようでした。

PhotoshopのOBJ形式での出力は汎用性が低い

【司会】最初の3Dデータの時点では、ケースはグレーで、ロゴは赤とかオレンジとか色がついていますが、これは3Dプリントには反映されるわけではないのですよね?

【岩島】はい。3Dプリントする時は、3Dプリンタで使われる材料の色に依存します。

【司会】カラー出力に対応した3Dプリンタを使えば、Photoshopで色の指定もできるのでしょうか? パーツ単位でこっちは赤でとか、こっちは白でみたいなことは可能ですか?

【岩島】現時点ではPhotoshopではできないと思います。

【横井】カラー出力ですが、3Dプリント向けのカラーも保存できるOBJという形式があり、Photoshopでも出力が可能です。ですが、こちらでいろいろ試したところ、Photoshopが出力したOBJ形式は、非常に汎用性が低いことが分かりました。OBJ形式で書き出す時に、テクスチャマッピングのためのMTL形式のデータも一緒に出力されるのですが、その記述内容の可搬性が低く、ほかのソフトでは全然再現できないMTLデータになっています。基本的にはPhotoshop上でしか再現できないOBJ形式になってしまうというのが、弊社の検証結果です。

 ですから、ちょっとケースデザインコンテストの目線になってしまいますが、基本的には色がないSTL形式で楽しんでいただければと思います。ただ、普段からPhotoshopを使い慣れているお客さんだと、色へのこだわりみたいなものがあるかなあと思います。そうした方は、3Dにカラーペインティングができるフリーソフトがいくつかありますので、二度手間になってしまいますが、そちらの方が圧倒的に安定していて、フルカラー石膏3Dプリンタとかでも利用できるような汎用性の高い形式で書き出せます。カラーを使いたい方はそうした方が良いと思います。

【司会】今見せていただいた感じだと、Photoshopでは、平面のベクトルデータから押し出して奥行きを持たせて3Dにするという感じのようですが、もう少し凝った3Dモデリングもできますか? 例えばスマートフォンケースの3Dデータとかは、押し出しだけでできるものなのでしょうか?

【岩島】このスマートフォンケースのデータはおそらく、Photoshop上で作られたものではないと思います。STLデータとして配布されていたものを、Photoshopで読み込んで、そのまま書き出されたものですね。

【司会】やはり、基本は2Dの図形というか、パスデータから押し出して作るという感じですね。汎用の3D CADだと、直接プリミティブを選んで、円錐とか球とかを作れますし、Tスプラインで粘土みたいに引っぱったりとかできますが、そうした高度な3D機能はさすがにPhotoshopにはないと考えていいでしょうか?

【岩島】そうですね。パスデータを元に押し出しとか回転体とか、そういうものはできますが、この上で、直接複雑な立体を作るというイメージではないのかなぁというのが、触ってみての感触ですね。

普段2Dソフトを使い慣れている人には直感的で使いやすい

【司会】やはり、Photoshopはもともと2Dの写真や画像をレタッチするのがメインのソフトですよね。

【岩島】私のように、普段2Dを扱っているものからすると、普段使っているパスデータを元にそれを組み合わせて、押し出しと回転体とで形を作っていく。積み木とかレゴみたいな感覚ですが、結構直感的で、それはそれですごく分かりやすいなとは思っています。

【司会】確かに複数組み合わせれば、結構複雑なものが作れますよね。

【岩島】そうですね。先ほど、元になっているパスデータをお見せしましたが、そのIllustratorで作ったパスデータに戻ってきて、パスを編集して保存すると、それがこっちのPhotoshopの方に即座に反映されるので、私としては使いやすいと思っています。

【司会】むしろ、複雑なモデリングができない分、例えば今回だと、スマホスタンドの台座のひな形データは用意されているSTLデータを取り込んで、そこにカスタマイズというか、自分なりのオリジナリティを出すという意味で、名前のロゴや模様を作って、アクセントにするといった用途にはむしろ向いているという考え方もできますよね。

【岩島】そうですね。私としては、それがすごくやりやすくて、このロゴデータもIllustratorで作られたものを直接持ってきてますので、普段からIllustratorとPhotoshopを扱っているならとても使いやすいです。

【南方】特に、普段グラフィックをやっている人にとっては、取っつきやすいです。

【岩島】僕もFusion 360も扱ってはみたのですが、パスの描き方がなかなか難しかったので。

【横井】Fusion 360は、完全に製図という感覚ですよね。

【岩島】そうですね。僕の思った角度になかなかならないみたいな。こういったちょっとしたものを作るだけでしたら、Photoshopが好きです。

【司会】ちなみに、Illustratorから直接3Dプリンタ用のデータを書き出すことはできず、Photoshopが絶対に必要という理解でいいでしょうか。

【横井】IllustratorにはSTL形式で書き出す機能はなかったと思います。3Dで表示する機能はありますが。

【司会】今のロゴデータみたいなベクトルデータを作るのも、やろうと思えばPhotoshopだけでもできるのでしょうか?

【岩島】Photoshopにもパスを引く機能はありますので、Photoshopだけでも完結できます。ただ、Illustratorの方がやはりやりやすいですね。IllustratorとPhotoshopは行き来しやすい作りになっていますので、まずIllustratorで基本の形を作った上で、Photoshopに持ってきて押し出しの調整をして、Illustratorにまた戻って調整をして、というようなやり方がやりやすいのではないかと。

今回はメモリ容量が鍵になりそう

【司会】それでは、スペックの話に入りましょう。先ほどのスマートフォン用ケースぐらいのデータだと、やろうと思えばMacBook AirくらいのノートPCなどでも、そんなに不自由なく編集ができる感じでしょうか?

【岩島】そうですね。これくらいのデータであれば。

【司会】そんなにハイスペックはいらなそうだけども、ただ、STL出力には結構時間がかかって、そこにCPUが使われているということですよね。

【岩島】そうです。

【司会】そうすると、やっぱりCPUクロックとスレッド数が効いてくるのでしょうか?

【パソコン工房】実際、MacBook Airだと、Core i5やCore i7の省電力CPUが使われていて、デュアルコアですよね。それで、Intel HD Graphics 6000が統合されていますよね。メモリは最大で8GB。

【横井】Photoshopだとレンダリング機能もありますが、レンダリングにはかなりパワーが必要です。

【パソコン工房】ですから、コアの数が足りないのかなというのが正直なところです。実際に作業をしていて、なんかもたつきがあるとか、押し出しをかけた時に一瞬止まるとか、そういったストレスになるようなところはあるのでしょうか?

【岩島】先ほどくらいのデータならまずなりませんが、極端なことをやろうとするとなります。例えば、押し出しの長さをばっと滅茶苦茶に延ばすとか、テーパーの角度をいきなり百数%つけるみたいなことをしますと、そのモデリングが画面に反映されるまでちょっと時間がかかります。画面に反映されてから、そのモデルをグリグリ回転させたりという時には全然もたつかないのですが、パラメータを変更する時に、ちょっと描画に時間がかかることがありました。それがオブジェクトの数をどんどんどんどん増やしていったり、複雑なパスデータ、漢字のテキストをパスに変換したようなものになると、もっと時間がかかってくるようになります。

極端に押し出しを行なった例

【司会】デスクトップPCでも試してみたという話がありましたが、その時のデスクトップPCの構成はどれくらいのスペックのものですか?

【岩島】LEVEL∞のCクラスなんですが、もともとゲームをやってみようということで購入したので、GPUも結構いいものになっています。

【司会】それだともう全然負荷を感じずにサクサク動くのでしょうか。

【岩島】そうですね。ただ、やはり極端なというか、ものすごく細かいパスになってくると、さすがにこちらのマシンでも描画するまでにちょっと時間がかかったりしますね。

【パソコン工房】:STL書き出しの時間はあまり変わらないのでしょうか?

【岩島】STLの方はそこまでは差がない感じですね。レンダリングの方でえらく時間がかかります。

【パソコン工房】レンダリングについては明らかにコアでしょうね。ちなみに、作っている間に結構な頻度でレンダリングを実行しますか? 出来上がりの感じを確かめる時には使うと思いますが。

既存のパソコン工房のデスクトップPC(Core i7-4790+GeForce GTX 980)とMacBook Air(Core i7-4650U)とで、Photoshopの3DデータのSTL書き出しとレンダリングにかかった時間の比較(グラスプアットジエアーにて計測)

【岩島】あまり使わないですね。私はもともとちょっとした3Dモデルを作って、それを3Dプリントするのを趣味でやっていました。その時もレンダリングはしていなかったので、むしろ皆さんどういう用途でこのPhotoshopのレンダリング機能を使っているのかなと。

【横井】YouTubeなどに公開されているオンラインチュートリアルを見ると、例えば、インテリアの写真に名札みたいなものをPhotoshop上で作って写真上に配置して、インテリアのイメージ図をカッコ良く作るとか、あとはペットボトルとか、パッケージデザインとかだと思うのですが……その辺に一緒に貼り付けるとか。そういう割とCG要素みたいなことに使われるケースが多いのかなと思います。

【岩島】そうですね。やはり、最終的に画像としてアウトプットするものは見栄えが大事です。なので、それがどういう見た目になっているのかは、結構レンダリングで確認しながら作っています。3Dプリント用だと作っている時点で、イメージしながら作業をしていますから、レンダリングはそんなに必要ないです。

【パソコン工房】Photoshopはメモリをものすごく必要とする印象があります。3Dもそうと思いますが、いかがでしょうか。

【岩島】このデスクトップPCは8GBですが、さっき試しに極端なモデリングをしてみました。たくさんテキストがあるものを無理矢理押し出しして、それをさらにいろんなパラメータを与えて複雑な立体にしてみましたが、その時にタスクマネージャーで見てみると、CPUよりもメモリの方が圧迫されてしまい、描画が遅くなってしまうことがありました。こちらは、オブジェクトの数を極端に増やしてみたバージョンですが、この時もメモリが一杯になってしまって、描画がちょっと遅くなることがありました。

【パソコン工房】そのメモリを少し使い切ってない状態っていうのは、Photoshop側で制限をかけている状況だと思うので、逆にメモリを増やせば増やすほどもっとPhotoshopが利用して、余裕が出てくるのではと思いますね。

【岩島】メモリ使用量が100%までいかないように、Photoshop側で止めているということですね。

敢えて重くした3Dデータでの編集時のタスクマネージャーの様子。メモリは逼迫しているが、100%まではいかない。CPU負荷は低い

【パソコン工房】そうですね。抑えているというところでしょうか。ディスクアクセスも発生しているので、完全にメモリが足りなくなっています。これは、おそらくスワッピングですね。メモリが足りなくなった分をディスクで補っているという予想なんですが。メモリ増やしてスワッピングが減れば、メモリが足りなかったという話になりますし。

【司会】すると今回は、結構メモリ容量が重要なのかもしれないですね。メモリを増やすとスワッピングがなくなるので、瞬間的に重くなる現象が減ることが期待できますから、意外とCPUを高速にするよりも効果的かもしれませんね。

【パソコン工房】そういう印象は確かにありますね。

【司会】データサイズはどのくらいですか?

【岩島】Photoshop形式で保存されているデータサイズですよね。先ほどお見せしたスマートフォンケースの方ですと、データサイズは26.1MBで、それをSTL形式に書き出すと3.9MBになっています。

【司会】では、作業をするのにそんなに大きなストレージがいるという感じではないですよね?

【岩島】そうですね。

【司会】それで、スワップ、ディスクアクセスが多いのであれば、やっぱりHDDだと厳しいというか、SSDで大容量はいらないという気がします。また、最後にSTL書き出しをする時には、CPUをガンガン使って計算すると思いますが、そこはモデリングが完了した最後の段階なので、その間はほったらかしにしてご飯を食べるなり、ほかのことをするなりしてもいいのではないでしょうか? そういう意味では待ち時間にならないですよね。それなら、そこがCPUの使いどころであっても、編集がある程度スムーズに動くのであれば、コストパフォーマンスを追求するっていう意味ではいいのかと思います。

Photoshopでは手書き文字をスキャナで取り込んで3D化できる

【司会】今回初めて3Dモデリングに挑戦する方に対しては、オリジナルスマホスタンドを作ってみようということなのですが、ケースデザインコンテストにも、Photoshopでチャレンジできるよと促したいところです。その辺はいかがでしょうか?

【横井】それを見越した、フォーマットデザインをしています。2Dデータの押し出しで作っただけでも、オリジナリティを感じられるような、楽しめるようなコンセプトでケースをデザインしています。だから、そこはあんまり気にする必要はないと思います。

 この前、子ども向けのワークショップでPhotoshopを使いました。Illustratorを使ってパスを描くのではなく、もっとプリミティブな遊び方として、子どもたちに手書きでいろいろ書かせてそれをスキャンして、3Dプリンタで名札を作ろうというイベントです。これは、単純に白黒で手書きで書いてもらって、それをスキャンしてパスに変換して、Photoshopで3Dに起こして、それを我々の方で準備した名札のフォーマットデータの上に載せました。こういう手書きは、Fusion 360などの3D CADでは絶対できないところですし、味という点でも、3Dに新しいニュアンスを吹き込めますので、PhotoShopでやる場合は、そういう楽しみ方もあるのではないかと、それも見越したPCケースのデザインにしています。

 子どもの手書きだけでなく、例えばどこかの書道家の書とかも3Dにできます。Photoshopを使えば、楽しみながら自分の作品を3D化して、日常使うPCのデザインの一部にできる、そういったことを考えています。

カブクが行なった子ども向けワークショップの様子
まず子どもが手書きでネームプレートのデザインを描く
それを写真撮影し、画像の輪郭をベクターパスに変換
そのデータを元に3Dプリントするとオリジナルネームプレートができる

【司会】これは面白いですね。この例だとスキャナでスキャンしていますが、スキャナ持ってない人でも、デジカメで撮った写真を取り込んで3Dにすることもできますよね。

【横井】はい、もちろん。

【司会】その手順は、子どもでもできるくらい簡単ですか?

【横井】そうですね。今回、ワークショップが2時間しかなかったので、流れだけは口頭で伝えましたが、オペレーションは大人の方でやりました。でも、子ども的には、Photoshopは、インターフェイスも含めて取っつきやすかったのかなと思います。Fusion 360だと、業務的な感じになってしまいますが、Photoshopならこういう状態で取り込まれていくので、イメージもすごくしやすいのかなと。2Dから3Dになるってことはどういうことなんだろうというのが、頭の中で認識しやすい。XYZとか全然しらなくてもできるので、Photoshopでの3Dは、魅力的だと思います。

【パソコン工房】スキャンする場合の解像度はどれくらいですか?

【横井】これは基本的に原寸で、150とか200dpiくらいでスキャンしています。もちろん300dpiとかでスキャンすれば、そのあと例えば拡大縮小したいとか、そういうニーズに応ええられるので高解像度で取っておきたいですけど、200dpiくらいあれば、ベストかと思います。

【パソコン工房】その画像からパスを抜き出して、3Dにして保存した時のファイルサイズってどれくらいだったのでしょうか。

【横井】約8.3MBですね。Fusion 360とかの3D CADのデータと比べると、3Dデータ形式としてはちょっと重いかなという感じです。結構いろいろなレイヤーを持っているので。

【司会】PCケースのデザインコンテストも、ケース全体ではなくて、ケースの一部を差し替えるような形なので、Photoshopを使ってパスを持ち上げたものとか、手書きとか、筆とかで書いたやつを取り込んで持ち上げたものでも、PCケースには合う感じですよね。

【横井】はい、そうです。

画面の解像度よりサイズが重要

【横井】このやり方なら、写真を白黒にして飛ばして、人の顔とかを3Dデータにするとか、そういうことも可能かなと思います。あと、重さに関しては、スキャンしたものをパス化する作業のところで、ちょっと重さを感じましたが、それ以外は快適でした。選択範囲から作業パスを作成というコマンドがありますが、その時に許容値を選べます。それを0.5ピクセルとか0.7ピクセルにしてましたが、このパス化作業は重かったですね。MacBook ProをBTOで最高スペックにしたものでも10秒以上はかかりました。だから、MacBook Airならもっと時間がかかると思います。

【司会】ただそれも、パスを作成する時にかかるというだけであって、できたものを編集する分にはそんなに重いわけではないですよね。

【横井】そうですね。はい。

【司会】パソコン工房さんの方は、すでに今回の想定スペックみたいなものは決まりましたか? 例えば、ノートPCにしようかなという話もあったりするのでしょうか?

【パソコン工房】今、それをふと思って、ノートPCでもこれができるのであれば、ノートPC版も用意してみるのもちょっと面白いのかなと思いました。

【司会】これをきっかけに初めてPCを買うっていう人がどれだけいるかは分からないですが、ほかの用途にも使えて、将来的な拡張を考えるのであればデスクトップPCが有利ですが、たぶん今回はそんなにハイスペックである必要はないので、ミドルレンジくらいのスペックで必要に応じて、将来的にアップデートできるようなものがいいでしょうか?

【パソコン工房】メモリを多めに積めるものがいいと思います。メモリ2枚で16GBくらいが、おそらく手が出しやすいノートPCの上限になると思います。ただ、それくらいでも軽く動くようであれば、そこからエントリーモデルとかもやってみたいですね。

【司会】もし、ノートPCから、今回のラインナップを出すとした場合に、こういう作業をする際に、画面解像度が低くてやりにくいこととかはありますか?

【岩島】単純にPhotoshopを扱う時もそうですが、3Dを扱うということになりますと、こちらの属性パネル、レイヤーパネルも結構見たいですね。そうするとどうしても作業エリアが小さくなりますし、こっちの3Dのパネルも見たいのでさらに狭くなります。そうすると確かに、このMacBook Airの解像度(1,440×900ドット)では狭く感じるというのがありました。これは、キャンパスのサイズ自体もそれほど大きくはとっていませんので、もうちょっとサイズが大きいものを扱うこともあるかと思います。ですから、その時には解像度はもっとあった方がいいかなとは思ってます。

【司会】今回も基本的にはそんなにハイスペックなPCは不要で、ただ、メモリはちょっとあった方が良さそうな感じで、GPUはちょっとやってみないと分からないですよね。

【パソコン工房】分からないです。ただ、Fusion 360ほどはいらなそうな雰囲気は感じます。

【司会】内蔵グラフィックスでいいのではないかという感じですね。

【パソコン工房】はい、内蔵グラフィックスいいかと。

【司会】ただ、Photoshopを使っている人が、この3Dデータ作成だけに使うってことは考えにくいので、当然、写真のレタッチや編集にも使うことも想定に入れておいた方がいいと思います。3Dに特化しすぎてスペックをギリギリにすると、今度は写真をレタッチしようかっていう時に、何だか重いなということになると問題かなと。

【パソコン工房】そうですね。

【司会】それでは、パソコン工房さんの方で検証をしていただいて、最終的なスペックは決めていただきたいと思います。

【パソコン工房】岩島さんにお訊きしたいのですが、Fusion 360ではきっちりとした履歴機能があると教えていただいたんですが、Photoshopでは設定次第で戻れる数が違うという仕様になっています。今回のモデリングで、ヒストリーを使って戻っていくとか、そういうことは頻繁にしましたか?

【岩島】操作でそういうことはあまりしなかったです。普通にPhotoshopを扱う上で、ヒストリーバックで戻っていくということは可能ですし、Photoshopで何か3Dの効果を付けた後に、Illustratorに戻ってパスを編集して、また、Photoshopに戻ってくると、そのパスを変更したものが、その3D効果がかかった状態でプレビューできるので、編集する上で便利でした。

【パソコン工房】多分その辺りをどうするかで、メモリを積む量もある程度変わってくると思います。実際はそこはあまり気にされたところはなかったということですよね。お話を伺っていると、Fusion 360みたいに、履歴をがっちりとって後から復元できるようにしておこうという発想はあまりないのかなと感じたので、その点は神経質にならなくてもいいと思っています。

【横井】この用途にはおいては、やはりパス、オリジナルの2Dのパスが残っているというのが一番重要で、極端に言えば、それさえ残っていれば大丈夫という感じです。それで、2Dに戻ってそこだけ少しいじって、それがすぐに3Dに反映されるというのは、なかなかすごくて、ライノセラスなんかはそういう風にはなってないわけです。その辺はすごくありがたいなと思います。

【パソコン工房】高解像度の写真とかで、50セットくらいヒストリーバックできる設定にすると、ものすごくメモリを消費したりしますので。

【横井】はい。そういう点では、メモリがあった方が、ヒストリーがしっかり持てるのでいいと思います。

【パソコン工房】そういう設定って、何か変更したりしていますか?

【岩島】いや、そこは標準のままです。

【パソコン工房】特に作業フォルダを変えたりはされていないということですね。了解です。今回私たちがチャレンジしようとしている3D機能というのは、Photoshopの一機能であって、Photoshopをお買い求めになるお客様の動機が、この機能っていうのはちょっと考えにくいですよね。そういう意味では、Photoshopの本来的な使い方というか、高解像度写真のレタッチなどにも十分に使ってもらえるようなスペックにするというところと、それから今回のテーマである3Dオブジェクトを3Dプリントで出力しましょうというところの2つの切り口から、その最適なスペックを探っていき、弊社で検証をして構成を決めて、また評価していただくという流れでいければと考えております。

【横井】そうですね。まさに今おっしゃったように、Photoshopの3Dに特化するというよりは、Photoshopを持っているお客さんなら、写真や2Dのデータをお手持ちのPhotoshopで3Dにできると、そういったソフトウェア資産をどんどん3Dでも活用できることをアピールするのがいいかなと。そうすると、初めて取り組むお客さんも取っつきやすいと思います。

(石井 英男)