一ヶ谷兼乃の

~ ボンダイブルーiMacユーザーの嘆きを解消!? ~


 この連載ではパソコンに関連する“デジタル”な製品のトピックを、月1回第4週火曜日にレポートします(編集部)。


■iMacユーザの嘆き!?

 現在、売れているデスクトップパソコンの筆頭が、AppleiMacであることは間違いないだろう。昨年夏に発売されてからというもの、これまでのMacintoshとは比べ物にならないほど出荷台数を伸ばしている。そんなiMacは、これまでに何度かバージョンアップされ、現在発売されているものは4代目にあたる。

 初代から2代目の大きな違いは、ビデオチップがATI 3D RAGEIIcからATI 3D RAGE PROに変更され、VRAM容量が2MBから6MBに増えたこと。OSもMac OS 8.1から8.5にバージョンアップされている。またそれ以外でも、メイン基板上のFDDコネクタなどが削除されている。

 初代iMacに装備されていたFDDコネクタは、むろん正式サポートされたものではないが、FDDを接続すればそのまま使用できた。まさに裏技的な機能だがファームウェアや、ROMデータをバージョンアップしてしまうと、このFDDコネクタは使用できなくなるので注意が必要だ。

【Mezzanineスロット】
 次の2代目から3代目へのメジャーバージョンアップは、大きな波紋を呼んだ。目に見える大きな変更点は、本体色がボンダイブルー1色だったものが5色へと増えたことだ。性能もMPUが233MHzから266MHzになり、HDDの容量が増え、赤外線ポートが省略された。価格が178,000円から158,000円に引き下げられたことも注目された。実は変更点はそれだけでなく、2代目まではメイン基板上にあった「Mezzanine(メザニン)スロット」と呼ばれる拡張端子が省略されてしまった。この拡張端子についてAppleは正式にサポートを表明していない。しかし、コネクタの形状は異なるものの、PCIバスと同様な信号が出ているといわれている。

 そして最近、3代目から4代目になった。この変更点は僅かで、単純にCPUの動作速度が266MHzから333MHzに速度アップされたのみである。

 以上のようにiMacのバージョンアップの歴史を振りかえると、新機種が出るとそれまでのユーザーは残念に感じたり、もっと待って買えばよかったなぁといったある種の後悔を感じてしまう。ただ、購入時期に関する問題に関しては、Windowsパソコンのユーザーでも同じではあるが……。



■ボンダイブルーiMacを何とかしたい

 昨年のiMacブームに乗じて、筆者もボンダイブルーのiMacを購入した。しかし、現在、主に使用しているパソコンはWindowsパソコンだ。Macintoshも使用しているのだが、その場合はPower Macintosh G3 266DTを使っている。

 そのため購入したiMacを使い込まないうちに、世間のiMacはどんどん進化していって、なんとなく寂しい思いをしていた。そこで、旧世代になったボンダイブルーiMacをなんとかパワーアップして、新世代のiMacと差をつけたいと考えていた。

 パワーアップといっても、様々なアプローチがある。CPUのクロックアップなどは、その最たる方法のひとつだ。しかし、233MHzでの動作であまり不満を持つことがなかったために、リスクを省みずCPUのクロックアップを施すことは止めることにした。

 そして目をつけたのが、初代と2代目に装備されていたMezzanineスロットだ。ここに何か拡張できないだろうかと、製品を探したところ2つの製品を見つけることができた。1つはシリアルポートと外部ディスプレイ端子を拡張できる「iPort」、もう1つはSCSI機器を接続できるようにする「iProRaid」である。

 今回は、iMacのウィークポイントである拡張性の低さを克服するため、iProRaidを選択した。iMacの場合、何か機器を接続しようとするとUSBポートを利用することになる。USB対応機器も増えてはきたものの、現在所有している1.3GB MOドライブやCD-Rドライブといった拡張機器をiMacでも利用するには、SCSIが必要である。早速取り寄せてボンダイブルーiMacに組み込んだ。


■iProRaidとは?

iProRaidのパッケージ内容。カードの他、フルピッチアンフェノール50ピンへの専用変換ケーブル、日本語マニュアル、CD-ROMが同梱される。
 iProRaidは前述のとおり、Mezzanineスロットを利用するSCSIホストアダプタである。しかし、単なるSCSIホストアダプタにとどまらず、RAID 0/1やデータ圧縮機能なども持っている高機能な製品だ。

 実際に製品が届くまでは、ノンサポートのMezzanineスロットを利用するので勝手に一種の怪しいグッズ系のイメージを抱いていた。しかし、iProRaidが届きパッケージを見ると、日本の代理店経由で、ちゃんと代理店の保証も受けられる製品だった。デキのいい日本語マニュアルも付属していて、まったく期待していなかったので、非常に得した気分になってしまった。なお、筆者が発注したのは「PLUS YOU」のインターネットショップで、32,800円だった。

 カードはドイツ製。カード上は部品点数も少なくすっきりしたレイアウトで、部品搭載面の裏側には、iMacと接続するためのコネクタが配置されている。また、基板上にはコネクタこそないものの、Wide SCSI用68ピンとNarrow SCSI用50ピンのパターンがあった。

 このカードには、SCSI機器を接続するために外部接続用のコネクタを1つ装備している。コネクタはあまり見かけないミニ68ピン Wide SCSIタイプで、専用ケーブルが付属する。専用ケーブルには、一般的なフルピッチのアンフェノール50ピンタイプのコネクタが付いている。フルピッチのアンフェノール50ピン以外のコネクタを持つSCSI機器を接続するには、別途変換コネクタなどが必要となる。なお、AdaptecのSCSIホストアダプタ「AHA-3940UWD」には、このミニ68ピン Wide SCSIタイプのコネクタを装備しているものもあるが、それと仕様が同じかどうかは未確認である。

カード裏面にMezzanineスロット用のコネクタがある。ここでiMacと接続される。 カードに搭載されているのは、あまり見かけないミニ68ピン Wide SCSIタイプのコネクタ。専用のフルピッチのアンフェノール50ピンタイプ変換ケーブルが付属する。


■iProRaidの取り付け

 iMacへの機器増設は、メモリを増設するにもメイン基板を取り外さなければならないなど、Windowsパソコンに比べると多少手間がかかる。このiProRaidも、Mezzanineスロットがメイン基板の裏側にあるため、メイン基板を取り外さなくてはならず、取り付けには結構手間がかかる。ただ、付属のマニュアルに分解手順も細かく記載されているため、落ち着いて作業を行なえば、それほど戸惑うこともないだろう。実際には、デジタルカメラで撮影も行ないながら、のんびり作業を行なったところ元の状態に組み上げるまでに約30分ほど要した。

 組み込み後、動作を確認するためにフルピッチのアンフェノール50ピンタイプのコネクタが付いている機器を接続してみた。接続したのは、汎用のSCSIケースに収めてあるCD-ROMドライブと、CD-Rドライブだ。これらのドライブは、なんなくiMacから認識された。Mac OS上から利用するにはCD-ROMドライバが必要となるので、FWB CD-ROM Toolkitをインストール。CD-ROM Toolkitインストール後は、外付けのCD-ROMドライブやCD-Rドライブに入れたメディアを何の問題もなくリードすることができた。


iMac本体のMezzanineスロットに装着したカードの外部コネクタが出るところ。初期状態では板で塞がれている。 Mezzanineスロットにたどり着くためには、メイン基板まで取り外して裏返す必要ある。 iProRaidを装着すると、本体横にSCSIコネクタが並ぶ。

■ボンダイブルーユーザーには、iProRaidはお勧め!

 デスクトップ機であるPower Macintoshのように複数の拡張スロットはないものの、多少なりともiMacの拡張性を広げるMezzanineスロットは筆者にとって非常に魅力的な存在だ。特に、iProRaidは、現在所有している様々なSCSI機器をWindowsパソコンや、Power Macintoshと共有できるのでありがたい。今回は購入目的が「ボンダイブルーiMacにしかないMezzanineスロットに何か拡張したい!」ということで、実用性はあまり考えていなかった。しかし、実際に使ってみると、インターネット専用端末となっていたiMacが、CD-Rにデータを書き込むといった作業も行なうことができるようになり、意外と便利になった。確かに価格的には、デスクトップMacintosh用のPCIバス対応SCSIカードより割高ではあるが、個人的にはかなり満足できる製品だ。

 iProRaidは現在、ボンダイブルーiMacのユーザーで、ドンドン発売される新しいiMacを悔しく思っている人や、MOドライブやCD-Rドライブ、HDD、スキャナといったSCSI機器をつなげたいと考えている人には、文句なくお勧めの一品である。

[Text by 一ヶ谷兼乃]

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