一ヶ谷兼乃の

~ 無線LANでもっと“ごろごろ”インターネット ~


■ノートPCで、“ごろごろ”インターネット

 現在の住まいは1LDKである。その内のK(キッチン)の部屋には、オーディオセットやTV、家庭用ゲーム機などを置いて普通のリビングとして使っている。ただそれ以外にも、部屋に遊びにきた人に触ってもらえるようにiMacを設置しているほか、サーバーになっているブックタイプのPCとMacintosh LC475、モバイル用のノートPCといったパソコンも置いている。

【Let's note mini/M32】
 モバイル用のノートPCは、大きさと重量、ポインティングデバイスにトラックボールを装備しているという点で、松下の「Let's note mini/M32」を使っている。ただ、モバイル用とはいっても、外で使うのは出版社との打ち合わせの時がほとんど。部屋の中で、リビングでごろごろしながらインターネットを楽しむときなどに活躍している。いろんな姿勢でも使える手軽さは、小型軽量なノートPCならではである。しかし、電源は内蔵バッテリでまかなえるのでいいのだが、LANケーブルだけはくっついたまま。それほど広い部屋ではないので、今は手近にあるLANケーブルにその都度差し替えて使っているが、この作業が結構うっとうしい。

 そこで、“もっと”ごろごろしたインターネットをするために考えたのが、無線LANシステムの導入である。無線LANといえば、数年前までは数十万円もしたり、ゲートウェイ用のPCを用意しなければならないということで、個人が気軽に手を出せないシロモノであった。しかし、現在では安いとはいえないまでも、なんとか個人でも手をだせる価格の製品が登場してきた。



■個人で買える無線LAN「AIRCONNECT」

 そこで選択したのが、メルコの無線LANシステム「AIRCONNECT」だ。AIRCONNECTは、2.4GHz帯の電波を使った無線LANシステムで、無線LANの標準プロトコルであるIEEE802.11に準拠している。2つのアンテナを使って通信を行なうダイバシティ方式を採用しており、安定した無線通信ができるのが特徴となっている。

 また、現在構築しているEthernetのLAN上に、各パソコンから無線でアクセスするための基地局「AIRCONNECT アクセスポイントWLA-T1(以下アクセスポイント)」を接続するだけで、簡単に無線LANを既存のネットワークに加えることができる。

 今回はアクセスポイント1セットと、クライアント側で使用するPCカード型の無線LAN用ネットワークカード「WLI-PCM」2枚がパッケージになっている「AIRCONNECT 簡単導入パック」を使ってみることにした。

AIRCONNECT 簡単導入パックには、左の写真のアクセスポイント「WLA-T1」1セットと、右の写真のクライン用のPCカード「WLI-PCM」2枚が1つのパッケージとなっている。

アクセスポイントの背面には、WLI-PCM用のスロット、10Base-T、電源コネクタ、電源スイッチがある。 アクセスポイントにWLI-PCMを挿したところ。クライアント用に使われるものと同じものだ。
 アクセスポイントは、同社のHUBのデザインを継承。背面には、無線LAN用のネットワークカードWLI-PCMを挿すためのスロットや10Base-Tのコネクタ、電源スイッチなどが配置されている。ちなみに型番を見てわかるとおり、アクセスポイントで使用する無線LAN用ネットワークカードとクライアントで使用するものは、まったく同じものだ。

 アクセスポイントの設置は、ネットワークカードを挿入して、10Base-T用のケーブルで既存LANに接続、後は電源を繋ぐだけと簡単だ。設置が終わると、添付の設定ユーティリティでアクセスポイントのIPアドレスを設定する。この設定ユーティリティは、TCP/IPでなくMACアドレスで管理しているようで、アクセスポイントが既存のネットワーク以外の設定になっていても、この設定ユーティリティでIPアドレスの設定を行なうことができる。

 この後の設定は、Webブラウザで簡単にできる。もちろん、パスワードが設定できるので、不用意に設定が変更されることも防ぐことが可能だ。基本的にアクセスポイントは、IPアドレスの設定さえしていれば、とりあえず通信を行なえる。なお、この1つのアクセスポイントで管理できるのは最大253台、推奨で32台の無線端末となっている。

Let's note mini/M32にWLI-PCMを挿したところ。スロットから少しとび出す形になる。
 アクセスポイントの設定の次は、クライアント側の設定を行なう。まず、ノートPCのPCカードスロットにWLI-PCMを挿入して、付属のFDからドライバをインストールする。ここまでの手順は、一般のPCカード型NICをインストールする時とまったく同じである。しかし、ドライバに加えてFDから専用ユーティリティをインストールする必要のある点が、一般のPCカード型NICとは異なる。この専用ユーティリティを使って、アクセスポイントと通信するためのID「ESS-ID」を設定する。ESS-IDを使うことで、複数のアセスポイントの中から、目的のアクセスポイントと通信できる。

 なお、アクセスポイントとクライアントには、それぞれ固有のIPアドレスを設定しなければならない。もちろんDHCPサーバーがネットワーク上に存在すれば、IPアドレスを自動的に取得できるため、設定はいたって簡単に行なうことができる。今回もDHCPサーバーを使ったため、アクセスポイントとクライアント1台の設定は、15分程度で完了した。


■無線LANってとっても便利

【専用ユーティリティ】
 各種設定が終わると、ノートPCのWLI-PCMにIPアドレスが割り当てられて通信ができるようになる。まずは、専用ユーティリティでちゃんと通信ができるのかを確認してみた。このユーティリティでは実際にパケットを投げて、その結果で判断している。筆者の部屋は、鉄骨マンションであるが、それほど広い部屋でもないため結果は「良好」。アクセスポイントの設置してある部屋とは別の部屋に持っていって調べてみても、結果は「良好」だった。これだったら「ごろごろ」だけでなく、トイレの中でも、ベッドの中でも、ケーブルにとらわれずに部屋の中でノートPCを持ち歩いて、ネットサーフィンができそうだ。

 これで通信ができることが確認できたので、早速Intenet Explorerを起動して、いくつかのホームページにアクセスしてみた。AIRCONNECTの通信速度は仕様上2Mbpsということになっているが、実効速度は1.3~1.4Mbps。これはインターネットアクセスを行なうのであれば、十分すぎる速度なので、無線LANだからといって通信が遅いと感じることはまったく無い。

 これで、完全に無線LAN環境がととのったわけだが、AIRCONNECT 簡単導入パックのパッケージ開梱後、1時間もかからなかった。なお、今回はアクセスポイントを使って既存のLAN環境に無線LANを追加したが、AIRCONNECTはアクセスポイントを使わなくても、2台のクライアントでPeer To Peerネットワークを構築することもできる。


■自前インターネットカフェが実現

 さて、部屋中を持ち歩いて電波のデッドポイントを探してみたが、無線LANが使えなくなる場所は見つけられなかった。そうなると、戸外での接続が気になってくる。早速、ノートPCを持って、近所を散歩してみた。このときアクセスポイントは、表の通りに面した窓に近いところに移動した。

 まず建物の表の通りでは、問題なく通信できた。専用ユーティリティでも通信状態は「良好」となる。ここまで電波が届くとなると、つぎの目標はちょっと離れたところにあるコンビニだ。このコンビニは、ミニストップなので、店先で軽食を取れるコーナーが用意されている。このコーナーでインターネットができるだろうか?

 このコンビニと部屋の位置関係だが、直線距離で約100m、その間には鉄筋コンクリートのビルが1棟存在する。AIRCONNECTのカタログでは戸外での有効通信範囲は150mとなっているので距離的には範囲内だが、遮るようにビルが建っているため、通信できるのかどうかは実際に試してみないとわからない。

 早速、ノートPCを抱えてミニストップに向かった。ハンバーガーのセットとコーヒーを注文して、ノートPCを広げて、専用ユーティリティを起動。接続のテストを行なったところ、電波状態は最良とまではいかないが、実際にパケットを使った通信状態は良好となり、あっけなくインターネットにアクセスができた。しばらくすると注文したものが届き、それを食べながらのネットサーフィン。“自前インターネットカフェ”が実現した。

 ここまでAIRCONNECTが使えるとは予想していなかったので、多少の驚きを感じた。無線LANだから電波さえ届けば通信できるのは当然ではあるが、既にOCNやDIONなど常時接続サービスを受けていればPHSや携帯電話を使った通信と違い通話料金もかからずに、より高速で快適な通信ができる。


■他にもある無線LANのメリット

 無線LANには今まで書いてきた以外にも大きなメリットがある。それは筆者自身の環境では生かされていないが、ケーブルのトラブルの影響を受けないということだ。現在、Ethernetで主流な配線形態である10Base-Tでは、カテゴリ5やカテゴリ3に準拠したネットワークケーブルが利用されている。このネットワークケーブルは、8本もしくは4本の細い導線がある規格でねじってあり(ツイスト)、このねじることで周辺のノイズを打ち消し、正常な通信を行なうことができるようになっている。そのため、ネットワークケーブルにモノを乗せて圧迫すると断線しなくても、ねじった部分が変形し、外部ノイズを拾って正常な通信が行なえなくなるのだ。このようなネットワークケーブルが原因でのトラブルというのが、現状では意外と多い。無線であれば、もちろんこのようなケーブルが原因となるトラブルは避けることができる。

 また、AIRCONNECTはクライアントPC側の設定を変更するだけで、複数の基地局を切り替えて通信することができる。まだ試していないが、自宅でAIRCONNECTを使用しているユーザーが、AIRCONNECTを設置している出先で、そこの基地局に一時的に接続して利用するというケースもある。また、企業などで機構改革や席替えが行なわれる時に、AIRCONNECTであれば再配線の費用も手間も抑えることできる。

 このようにメリットの多い無線LANも問題がないわけではない。それは価格である。AIRCONNECTシリーズは、確かに無線LANとしては最も価格帯の低い製品ではある。しかし、PCカード型のNICで実売価格25,000円程度。これは通常のPCカード型NICの約5倍近い価格である。なんとか個人でも購入できる価格になってきたとはいえ、有線のLANと比べるとまだまだ高価である。ただ、この程度の価格差であれば、無線LANのメリットの方が魅力的であると感じるユーザーも多いだろう。

 筆者自身も一度無線LANの快適さを体験してしまうと、なかなか元に戻れない。部屋のどこでも、思い立ったときにノートPCを持ち運んでネットワークを使うことができる便利さは、“ちょっと”無理をしてでも手に入れる価値は十分あると判断した。

□「AIRCONNECTシリーズ」のページ
http://www.melcoinc.co.jp/product/musen.html
□関連記事
【1月28日】メルコ、1クライアント3万円を切る無線LAN
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990128/melco1.htm

[Text by 一ヶ谷兼乃]

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