鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第172回:6月25日~6月29日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


6月25日

■■ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
   秋葉原に登場したTualatinは512KB L2キャッシュのサーバー版
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010625/kaigai01.htm

FC-PGA2(Flip-Chip PGA[Pin Grid Array] 2)
 エフシーピージーエーツー

 Intelが2001年にリリースした、0.13μmプロセス版のPentium III(コード名:Tualatin)に採用した、IHS(Integrated Heat Spreader)が付いた、Socket 370用のCPUパッケージ(チップの筐体)。

 PGAは、パッケージの裏面にピンを並べた、剣山のような形のパッケージのことで、ピン数の多いチップに広く用いられている。Intelは、'97年にリリースしたPentium IIから、パッケージを全てスロットスタイルに切り換えたが、'99年にリリースされた366/400MHzのCeleron(コード名:Mendocino)で、従来のPGAスタイルのパッケージを追加。対応ソケットは、「Socket 370」あるいは「PGA370」と呼ばれ、再びソケットが主流となっている(スロット版のPentium IIIは2001年に製造終了)。

 Mendocinoのパッケージは、かつてのMMX Pentiumなどと同じPPGA(Plastic PGA)と呼ばれるタイプだったが、その後のCoppermineコアのPentium IIIやCeleronでは、ピンの付いた基板に小さなチップ本体を直接表面実装したパッケージに移行。この新しいパッケージを「FC-PGA」というが(※1)、物理的なソケットは、従来のPGA370と同じである。

 「FC-PGA2」もまた、ソケットの物理仕様には変更は無いが、ヒートシンクに効率よく熱を伝導するよう、チップ本体がヒートスプレッダで覆われているのが特徴である。

※1 一般には、このようなチップの実装方法をフリップチップという。

【参考】
□FC-PGA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991216/key102.htm#FC-PGA
□Socket 370
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990210/key64.htm#Socket_370
□Slot 1
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980202/key16.htm#Slot1
□Slot 2
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980930/key48.htm#Slot2


6月27日

■■ Maxtor、ATA HDDの「137GBの壁」を越える「Big Drive」技術をサポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010627/maxtor.htm

Big Drive
 ビッグドライブ

 ATA/ATAPIに採用が予定されている、48bitのLBA(Logical Block Address)。

 ATA/ATAPI(AT[Advanced Technology] Attachment/AT Attachment Packet Interface)は、ANSIで標準化された、いわゆるIDE(Integrated Device [またはDrive] Electronics)の正式名称である。

 IDEはもともと、ハードディスクドライブに取り付けられたコントローラーチップを、PC側から制御するためのインターフェイスとして設計されたものである。ST506を代表とする初期のインターフェイスは、ディスクコントローラに相当する機能がアダプタ側に置かれ、アダプタ-ドライブ間は、デバイスレベルの信号をやりとりしていた。ちょうどフロッピーディスクと同じような感じで、アダプタ側から直接ドライブ本体を操作したり、ドライブヘッドとの間で、信号をやりとりしていたのである。そんなディスクコントローラをドライブ側に持たせ、このコントローラチップに対するレジスタレベルのインターフェイスとしたのがIDEである(※1)。簡単にいうと、デバイス側のコントローラチップのレジスタを直接読み書きしながらデバイスを制御する仕様である。例えばディスクを読み書きする際には、制御線を使ってレジスタを指定し、コマンドやシリンダ、ヘッド、セクタといったディスクの物理的なパラメータを、直接コントローラのレジスタにセットするのが基本となっている。

 シリンダレジスタは16bit、デバイス/ヘッドレジスタは8bit(うちヘッドは4bit)、セクタレジスタは8bitあり、古いHDDでは、実際にこれらドライブの物理パラメータをそのまま指定していた。いわゆるEnhanced IDEと呼ばれるようになってからは、ディスクのセクタに付けた連番で扱うLBA(Logical Block Address)や、BIOSのCHSパラメータをドライブ側でLBAに変換する機能などがサポートされ、ドライブの物理仕様に依存しないアクセスが可能になっている。

 現在のLBAは、CHSの全レジスタ28bit分を使ってアドレスを指定するので、2の28乗……268,435,455セクタまで扱えることになる。HDDの1セクタは512Byteなので、137,438,952,960Byte……約137GBというのが、現行のATA/ATAPIで扱うことのできる最大容量となっている。

 Big Driveは、現在のレジスタセットをそのまま使い、48bitのLBAを扱えるようにする拡張規格で、ATA/ATAPI-6に採用される予定である。具体的には、セクタとシリンダ用のレジスタ24bit分を使い、48bitのLBAの上位と下位を2回に分けてセットする。LBAが48bitに拡張されることにより、扱えるセクタは281,474,976,710,656セクタ。144,115,188,075,855,360B……約144PB(PetaByte)と大幅に拡張される。ただし、現在の拡張INT13(LBAを扱えるPCのBIOSサービス)では、LBAが32bitの仕様になっているため、当面はこちらの制約を受ける。BIOS仕様上は、4,294,967,295セクタ(2,199,023,255,040B……約2TB[TeraByte])がATA/ATAPIの次の上限であり、WindowsのFAT32ファイルシステムも、扱えるセクタ番号はこれが限界である(NTFSは64bit仕様)。

-LBAモード
レジスタCHSモード28bit LBA48bit LBA
セクタナンバー8bitS(7:0)LBA(7:0)LBA(31:24) (7:0)
シリンダLow8bitC(7:0)LBA(15:8)LBA(39:32)+(15:8)
シリンダHigh8bitC(15:8)LBA(23:16)LBA(47:40) (23:16)
ヘッド/デバイス4+4bitH(3:0)LBA(27:24)

(7:0)は7から0ビットという意味

※1 SCSIやUSB、IEEE 1394などの今様の汎用インターフェイスは、デバイス間で通信を行なうための機械的電気的な仕様と、通信手順(プロトコル)を規定したもので、その上で、デバイス(あるいはチップ)を制御するためのコマンドやレスポンスを、パケットを使ってやりとりする。この発想をATAに採り入れ、ATA上でさまざまなデバイスを扱えるようにしたのがATAPIである。

パソコンでは「1K=1,024」が一般的だが、この項は全て「1k=1,000」、「1M=1,000k」……で計算している。

【参考】
□CHS(Cylinder Head Sector)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990708/key83.htm#CHS
□LBA(Logical Block Address)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010531/key167.htm#LBA
□IDE
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980805/key41.htm#IDE
□拡張INT13(Interrupt 13 Extensions)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980610/key33.htm#Int13


6月28日

■■ 松下、デジカメ画像をTVで閲覧可能にする「デジタルフォトポケット」
   --画像をスーパーディスクにバックアップ、FD32MBにも対応
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010628/pana2.htm

FD32MB

 松下寿電子工業が2000年に開発しスーパーディスクドライブに搭載した、3.5インチ2HDフロッピーディスクを用いて32MBのデータを記録する大容量化技術。  3.5インチフロッピーディスクドライブは、ソニーが'80年に開発したもので、一般的な135tpi(tracks per inch~1インチあたりのトラック数)のメディアは、片面80トラック、両面で160トラックの仕様になっている。1トラックを9セクタで利用する標準密度タイプのメディアを2DD(2 side Double density Double track)、18セクタで利用できる高密度タイプを2HD(2 side High density Double track)といい(※1)、フォーマット後の容量はそれぞれ、737,280Byte(通称720KB)、1,474,560Byte(通称1.44MB)となる(※2)

 FD32MBは、重ね書きによるトラック密度の向上と、ZBR(Zone Bit Recording)、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)による線記録密度の向上によって、同じ2HDメディアに32MBを記録する。

 FD32MBの要となるのが、ヘッドを少しずつずらしながらトラックを重ね書きして行き、トラック数を飛躍的に増やす技術である。2HDディスクのトラックピッチ(※3)は、187.5μmと規定されている。すなわち、隣のトラックへの移動は、ヘッドを半径方向に187.5μm動かすということである。FD32MBでは、2HDと同じヘッドを使って書き込むが、次ぎのトラックへはヘッドを18.8μmだけ動かす。2HDのヘッドは、115μm幅のトラックを読み書きするように作られているので、ずらした18.8μm分を残して、前のトラックは重ね書きされることになる。こうしてFD32MBは、片面あたり777トラックの書き込みを実現しているわけだが、2HD用のヘッドは、実質複数のトラックにまたがってしまうことになるため、前のトラックに戻って書き込むことはできない(必要な内側のトラックまで上書きされてしまう)。CD-Rと同じような追記メディアとして利用することになる。また、2HDのヘッドでは当然、書き込まれたディスクを読み出すこともできないのだが、こちらは、2HD用の125μmに対し8μmと非常に微細に作られている、スーパーディスクドライブ用のヘッドを使って読み出すことを前提としている(※4)

2HDFD32MB
面/ディスク22
トラック数/面80777
セクタ数/トラック1853~36
容量/トラック9KB26.5~18KB
総容量1.44MB32MB



※1 メディアの違いをハードウェア的に認識できるようになっており、ライトプロテクトスイッチの対称位置に識別孔が開いているメディアが2HD、孔の無いメディアが2DD。

※2 実際のメディアでは、ファイルシステムが利用する領域(主にルートディレクトリ領域)があるため、データ領域はこれよりも若干少なくなる。また、Microsoft製品のFDなどでは、21セクタのフォーマットが用いられることがあり、こちらはDMF(Distribution Media Format)と呼ばれている。DMFの容量は、1,720,320B。1.44MB式に換算すると1.68MBとなる。

※3 トラックの中心線の間隔のこと。2HDの最初のトラックは、ディスクの0面が半径39.5mm、1面が38mmの位置から始まり、内側に向かって187.5μm間隔で80本のトラックが形成される。

※4 誤ってデータを書き込んでしまわないために、通常のFDDからはディスクフル状態のFDとして見えるようになっている。

【参考】
□スーパーディスクドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971118/key7.htm#superdisk
□ZBR(Zone Bit Recording)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001027/key141.htm#ZBR
□PRML(Partial Response Maximum Likelihood)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001027/key141.htm#PRML

[Text by 鈴木直美]


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