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ET2008レポート【x86編】
Atomボードが大量に展示、Nanoボードも顔見せ

会期:11月19〜21日

会場:パシフィコ横浜

入場料:1,000円(事前登録者は無料)



 組み込み機器の開発技術に関する総合展示会「ET2008 (Embedded Technology 2008/組込み総合技術展)」のレポートを引き続きお届けする。今回はx86アーキテクチャのマイクロプロセッサとCPUボードを主に取り上げる。

 さてx86アーキテクチャと言えば当然、Intelである。これまでIntelは、特定のPC向けマイクロプロセッサを対象に、使用温度範囲を広げたり、長期供給保証を実施するといった形で組み込み分野に提供してきた。言い換えると、大半の組み込み機器開発が要求するレベル「低い消費電力」には、まったくと言ってよいほどIntelは対応してこなかった。このため大半の32bit CPU搭載組み込み機器は、x86以外のアーキテクチャによる消費電力の低いマイコンを採用してきた。

 しかし2008年に、小さくて消費電力の低いマイクロプロセッサ「Atom」を組み込み分野向けに投入したことで、Intelを取り巻く雰囲気はかなり変わってきた。Atomプロセッサは消費電力が2W前後と低い。このため、組み込み機器への適用範囲が大幅に広がる可能性を秘めている。2008年5月に開催された、ETと並ぶ組み込み技術の展示会「組込みシステム開発技術展(ESEC)」では、Atomプロセッサ搭載製品が数多く出品された

 ET2008でも、Atomプロセッサ搭載ボードが数多く展示されていた。その一部は実際に動作し、高性能な組み込みアプリケーションに十分対応できることや、動作温度がある程度以下に収まっていることなどを披露していた。

 そのAtomプロセッサだが、組み込み向けには大別すると2種類の製品系列(プラットフォーム)が存在する。1つは「Embedded Navy-Pier(エンベデッドネイビーピア)」と呼ばれている製品系列であり、もう1つは「Embedded Menlow(エンベデッドメンロー)」と呼称される製品系列である。Embedded Navy-Pierは1.6GHz動作のAtom N270に既存のチップセットを組み合わせたプラットフォームで、消費電力はそれほど低くないものの、ある程度の性能を必要とする組み込み機器に向けている。これに対してEmbedded Menlowは、低い消費電力を強く要求する組み込み機器に向けだとIntelは説明している。Embedded MenlowのプロセッサはAtom Z530とZ510の2種類があり、高い性能を求める場合はZ530を選び、それほど高い性能を要求しない場合はZ510を選べるようになっている。

「Embedded Navy-Pier」と「Embedded Menlow」。Embedded Navy-PierはAtom N270と既存のチップセットの組み合わせであり、全部で3チップ構成となる。Embedded MenlowはAtom Z530またはZ510と新開発チップセットの組み合わせであり、全部で2チップ構成となる。2008年10月に台湾で開催されたIDF(Intel Developer Forum)の講演スライドから引用 左上が「Embedded Menlow」のパッケージと消費電力、右上が「Embedded Navy-Pier」のパッケージと消費電力。2008年10月に開催されたIDF台湾の講演スライドから引用
組み込み用Atomプロセッサの概要。N200、Z530、Z510に組み込み用のバージョン(「Intel Atom Processor for Embedded Computing」)が用意された

 x86系ボードのベンダーからは、Embedded Navy-PierはPCIバスを要求する場合に選ばれること(Embedded MenlowにはPCI Expressのみ用意)、Embedded Navy-Pierの消費電力は15Wくらいあること(IntelはEmbedded Navy-Pierの消費電力を10W程度と表明しているので、ブースの説明員が誤解している可能性は残る)、プラットフォームの価格は既存のチップセットを使うEmbedded Navy-Pierの方が新開発のチップセットを使うEmbedded Menlowよりも安いこと、Embedded Menlowはグラフィックス性能と動画処理性能が非常に高いことなどのコメントがET2008では得られた。

Embedded Navy-Pierの構成。2008年10月に開催されたIDF台湾の講演スライドから引用 Embedded Menlowの構成。2008年10月に開催されたIDF台湾の講演スライドから引用 Embedded MenlowとEmbedded Navy-Pierの応用分野。2008年10月に開催されたIDF台湾の講演スライドから引用

 ET2008の展示会場では、Embedded Navy-Pierを搭載したボードをユニダックス、ポートウェルジャパン、ディエフアイなどが実物展示していた。Embedded Menlowを搭載したボードは、オムロン、ポートウェルジャパン、ユニダックス、ビデオメール・ジャパンなどが出品。その中でユニダックスとビデオメール・ジャパンは、ボードを実際に動かしながらの展示であった。

N270プロセッサ搭載開発ボード上でWindows Embedded Standard 2009を動作させたデモ。マイクロソフトブース内に設けられたユニダックスのミニブースで撮影 Embedded Navy-Pierを搭載したETXボード「PEM-E200VLA」。インテルブース内に設けられたポートウェルジャパンのミニブースで撮影 Embedded Navy-Pierを搭載したCOM Expressボード「NP900-B16C」。ディエフアイが2009年第1四半期に出荷の予定。ボードはインテルブース内に設けられたAtomプロセッサボード展示コーナーで撮影
Embedded Menlowを搭載した超小型CPUボード「E50」。ボードの外形寸法は54mm×85.6mm。インテルブース内に設けられたオムロンのミニブースで撮影 Embedded Menlowを搭載したQsevenボード「PQ7-M100G」。インテルブース内に設けられたポートウェルジャパンのミニブースで撮影 Embedded Menlowを搭載したCPUボードでフルHDビデオを実際にデコードさせたデモ。Atomプロセッサ(Z530)の温度をセンサで計測し、62〜63℃と比較的低い温度に収まっていることをアピールしていた。インテルブース内に設けられたユニダックスのミニブースで撮影
Embedded Menlowを搭載したCPUボードでパチスロ模擬機の液晶ディスプレイにカラー動画像を表示したデモ。ビデオメール・ジャパンとNECシステムテクノロジーが共同で開発した。インテルブース内で撮影 パチスロ模擬機のCPUボード「EX6」を拡大したところ。自然空冷で動作している。ボードの外形寸法は160×120×20mm(幅×奥行き×高さ)。ボードの上部に配置してあるのはIntelのSSD。インテルブース内で撮影

 またEmbedded Menlowのプロセッサとチップセットのパッケージを拡大した「Embedded Menlow LX」を搭載したボードも、イノテックやディエフアイなどがいち早く参考展示していた。なお初回のET2008レポートで報じたように、Embedded Menlow LXではFCBGAパッケージのボールピッチを1.0mmに広げたバージョンである。このためパッケージの外形寸法も併せて拡大されている。

Embedded Menlow LXを搭載したCPUボード「MX-4020」。MPEG-4 AVCビデオのデコード動作をさせていた。ボードの外形寸法は125×140mm。イノテックの展示ブースで撮影 Embedded Menlow LXを搭載したECXボード「ML936-B16」。ボードの外形寸法は105×146mm。インテルブース内に設けられたディエフアイのミニブースで撮影

●VIA Techologiesも組み込みx86に積極的

 x86プロセッサのベンダーといえば、台湾のVIA Technologieがある。同社はET2008に出展するとともに、11月19日に展示会場近くのホテルで記者会見を開催して最近の状況を解説した。本レポートではまず、記者会見の模様をお届けする。

 VIA Technologiesでエンベデッドグループ取締役副社長を務めるDaniel Wu氏が始めに登壇し、組み込み端末が人々の日常生活に入り込んでおり、同社は組み込み分野に向けて半導体とボードの小型化に積極的に取り組んでいると述べた。

VIA Technologiesでエンベデッドグループ取締役副社長を務めるDaniel Wu氏 VIA Technologiesの会社概要
VIA Technologiesの事業部門。左端の「VEPD」がWu氏の担当であるエンベデッドグループ VIA Technologiesにおけるプロセッサとチップセット、ボードの小型化推移

 続いてVIA Technologiesでエンベデッドグループ日本担当マネジャーを務めるSonia Chen氏が、具体的な製品展開を説明した。すでに笠原氏がレポートしているように、同社は低消費電力(TDPは5W〜25W)で小型(パッケージは21mm角)のx86互換プロセッサ「Nano」を開発済みである。

 Chen氏はNanoの組み込み向けバージョンである「E」シリーズを2009年に市場に投入することや、Nanoのデュアルコア版のサンプル出荷を2009年末までに始める計画であることなどを公表した。

VIA Technologiesでエンベデッドグループ日本担当マネジャーを務めるSonia Chen氏 x86互換プロセッサのロードマップ。組み込み用Nanoである「E」シリーズのサンプル出荷を2009年3月に、量産を2009年6月に始める

 ET2008のVIAブースでは、拡張性を備えた小型ボード「Pico-ITXe(Pico-ITX Express)」の概要と実物を展示していた。Pico-ITXeはPico-ITXと同じ外形寸法100×72mmのボードだが、小型の拡張ボード(「SUMITモジュール」とVIAは呼称)を積層できるように取り付け孔とコネクタを装備している。また組み込みボード・ベンダーのイノテックは、Nanoを搭載したボードを参考出品した。展示ブースではボードを実際に動かし、MPEG-2の動画再生などを披露していた。イノテックの説明員によると、Nanoプロセッサボードの動画デコード性能はAtomには劣るものの、かなり良好だという。

拡張性を備えた小型ボード「Pico-ITXe(Pico-ITX Express)」の概要。VIA Technologiesの展示ブースで撮影 Pico-ITXeに準拠したCPUボードの例。C7プロセッサを搭載した「EPIA-P710」。VIA Technologiesの展示ブースで撮影 Nanoプロセッサを搭載したCPUボード「CX-3020N」。イノテックの展示ブースで撮影

 組み込み機器でも最近はグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)が3次元化するとともに、凝ったグラフィックスを表示することや、動画再生機能が求められるようになってきた。AtomとNanoに共通して言えるのは、グラフィックス処理性能と動画デコード性能の高さである。これはプロセッサではなく、チップセットにアクセラレータのハードウエアを組み込んでいることが大きく寄与している。プロセッサにアクセラレータを組み込まない。これは非常に重要なことだ。ET2008のデモを見るかぎり、Embedded MenlowではMPEG-4のデコード動作を実行してもAtomプロセッサの作業負荷は16〜18%程度と相当に低いレベルにとどまっていた。リアルタイムOSを載せる組み込み機器では、割り込みを何重にもかけることが珍しくない。このとき動画再生にCPUのリソースが食われていては、肝心の制御系の処理が危うくなってしまう。この問題を回避している点で、AtomとNanoのアーキテクチャは上手くできていると感じた。

□ET2008のホームページ
http://www.jasa.or.jp/et/
□Intelの組み込み機器向け製品のホームページ
http://www.intel.co.jp/jp/products/embedded/index.htm
□VIA Technologiesのホームページ(英文)
http://www.via.com.tw/en/index.jsp
□関連記事
【11月25日】【ET2008】Windows Embedded StandardとAtomプロセッサが握手
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0402/intel.htm
【2007年11月15日】組込み系技術展の「Embedded Technology 2007」が開催〜エプソンの無接点電力転送のデモなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1115/et.htm

(2008年11月26日)

[Reported by 福田 昭]

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