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インテル、Atomでモバイルインターネットを推進

1円玉とAtom(中央)、およびシステム・コントローラ・ハブ(右)の比較

4月2日 開催



Atomを手にする代表取締役共同社長 吉田和正氏

 インテル株式会社は2日、上海で行なわれているIntel Developer Forum(IDF)で発表された「Atom」プロセッサの記者説明会を都内で開催し、Atomの詳細やターゲットとする市場を解説した。

 冒頭では、同社 代表取締役共同社長 吉田和正氏が挨拶。同氏は、「我々は世界に明るい話題を提供することを目標に掲げ、さまざまな事業を展開してきた。本日、Atomを発表することで、世界に新たな、明るい話題をもたらせることを嬉しく思う」と語った。

 「我々は過去40年間、半導体を進化させることにより、PC、またはネットワーク環境の進化を支えてきた。そして近年、PCの普及に伴いインターネットの利用者が急速に増え、インフラの整備やコンテンツの拡大により、インターネットの利用形態が変わった。Atomを発表することにより、変わりつつあるインターネットの利用形態に対応できると自負している」と述べた。

 その理由として、Atomによって、優れた性能、Webページやソフトウェアの互換性、および高いワイヤレスの接続性を持ったデバイスがポケットに入るサイズで実現でき、いつでもどこでも“フルのインターネット機能”が利用できるデバイスが生まれるためだとした。

 Atomの最大の特徴は小型という点が挙げられるが、吉田氏によれば、最新の45nmプロセスにより、300mmウェハで約2,500個採取できるという。また、チップセットもノース/サウスブリッジ、およびGPU機能を搭載し、集積度を高めて小型化に成功した。

インターネット利用形態の変化 Atomで実現できる3つの特徴 Atomプロセッサとシステム・コントローラ・ハブのパッケージサイズ

 Atom搭載製品はPCメーカーから今夏にかけてリリースされるが、ここで同氏は参考出品したクラリオンの車載向けMID、富士通のLOOX U後継、パナソニックのハンドヘルド式TOUGHBOOK、東芝製のMIDを紹介。実機はいずれも稼働しており、完成品に近いレベルまで来ていることが伺えた。

Atomによって実現できるMID製品 搭載製品はメーカー各社から今夏以降順次リリース予定 クラリオンの車載向けMID。ストレージはSSDで、OSにLinuxを搭載。無線LANのほかにBluetooth、WiMAX、3Gに対応する
富士通のLOOX Uの後継と思しき製品。キー配列も一部変更されている パナソニックのTOUGHBOOK新製品。片手に持って操作することを前提としたデザイン 東芝のAtom搭載MID。OSにはWindows Vistaを採用している

 また、インターネット接続形態を増やすために、通信事業者とも緊密に提携していく。ここでNTTドコモの青山幸二氏、UQコミュニケーションズの片岡浩一氏、ウィルコムの喜久川政樹氏が登壇し、各々がAtom搭載MIDに対応したサービスを順次開始させるとの意向を示した。

モバイルインターネットを実現するのに欠かせない通信事業者とも協業を広げる ゲストとして招かれた通信事業者の各代表。右から順にUQコミュニケーションズ 取締役執行役員副社長の片岡浩一氏、NTTドコモ プロダクト&サービス本部 ユビキタスサービス部長 青山幸二氏、ウィルコム 代表取締役社長 喜久川政樹氏

●優れた低消費電力と高い互換性

同社 技術部長 土岐英秋氏

 続いて、同社 技術部長 土岐英秋氏が、Atomの詳細について解説した。

 Atomは同社史上最小のx86プロセッサであり、45nmプロセスにより4,700万トランジスタをダイサイズ25平方mm以下に集積。3W以下の市場セグメントにおいて最速であり、HyperThreadingテクノロジなどを搭載している。また、TDPも同社過去最低の0.65~2.4W、アイドル時の消費電力は80~100mWに抑えた。その一方で、Core 2 Duoと同等の命令セットを持ち、仮想化技術などをサポートする。

 同氏が特に強調したのは低消費電力と性能のバランス。これまでのCPUは1%の性能を向上させるために3%の消費電力の増加が伴ったが、Atomでは1%の消費電力増加に抑えたという。これにより、高性能と低消費電力を両立させたとした。また、電力管理機能においても優れるとし、C6ステートの追加により、アイドル時の消費電力をフルロード時の6%に抑えられ、デバイスの長時間駆動に貢献できるとした。

 一方、絶対的な性能においても、Atom 1.1GHzはARMが開発したCortex-A8 600MHzの2倍、HTをONにしたAtom 1.6GHzはCortex-A8 1GHzの2倍と、いずれのセグメントにおいても他製品に対する優位性があるとした。

 Atomのコンパニオンチップとなる「システム・コントローラ・ハブ」は、前述の通りノース/サウスブリッジ/GPU機能を統合しているほか、SDIO/MMCコントローラなどを内蔵。また、1080iまたは720pフォーマットのHDコンテンツ再生支援やDirectX 9対応の3Dエンジンを内蔵し、さまざまな機能を実現できるMIDへの搭載に最適とした。

Atomの主な仕様 1%の消費電力で1%の性能向上が見込めるアーキテクチャ 絶対性能においても同セグメントにおいて優れる
C6ステートのサポートによりアイドル時の消費電力を削減 コンパニオンチップとなるシステム・コントローラ・ハブの主な仕様

 また、x86アーキテクチャの採用により、インターネット利用における互換性を確保できるとアピール。ARMアーキテクチャ採用製品はプラグインやプログラムの開発がx86と比較して遅いため、最新の技術を採用したWebサイトなどでは表示できないことがあるが、Atomはx86アーキテクチャを採用しているため互換性が高く、これらの問題が発生しないという。

 また、WebサイトとLinux OSの互換性を高めるために、IntelはMoblin.orgというサイトを立ち上げ、ここから得たフィードバックを複数のLinux OSベンダーに提供することで、Linux OSにおける互換性を向上させるとした。

 ここで同氏はAtom開発キットを利用してデモンストレーションを行ない、ブラウザ上でGoogle Mapが動く様子や、HDコンテンツをサーバーからダウンロードして再生する様子を紹介した。

 最後に、2009年~2010年に投入予定の製品については、現在のAtomと比較してアイドル時の消費電力をさらに10分の1以下に削減するほか、携帯電話などにも搭載可能な小型/低消費電力化、SoC(System On a Chip)化を進めるとした。

 質疑応答では、MIDとUMPCの違いについての質問がなされ、吉田氏は、「MIDはどちらかというと“ポケットに入る”ものをイメージし、UMPCは“ノートPCをさらに小型化した”ものをイメージしてもらえばわかりやすいだろう」とした。土岐氏はこれに「ユーセージの違いから、ディスプレイサイズの違いに表われるだろう」と付け加えた。

同社が実施した各種デバイスにおけるWebページ表示のエラー。x86アーキテクチャにLinuxを搭載した製品は発生エラーが少なく互換性が高い Linux OSにおけるWebページの互換性を向上するためにサイトを公開 Atom搭載デバイスにおけるGoogle Mapの動作デモ
2009年~2010年の製品はアイドル時の消費電力をさらに削減 Atomのウェハ

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/20080401comp.htm?iid=pr1_releasepri_20080401m
□関連記事
【4月2日】【後藤】Intel、IDFでAtomプロセッサを正式発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0402/kaigai432.htm
【3月3日】インテル、Silverthorneの正式名称を「Atom」に決定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0303/intel.htm

(2008年4月2日)

[Reported by ryu@impress.co.jp]

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