組込みシステム開発技術展レポート
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会場のビッグサイト |
会期:5月14日~16日
会場:東京ビッグサイト
組み込み関連のハードウェア/ソフトウェアの展示会である、「第11回組込みシステム開発技術展」が東京ビッグサイトにて、5月14日~16日の会期で開幕した。組み込み系製品の展示やデモのほか、専門セミナーも行なわれている。
入場料は5,000円。無料招待券の発送は終了しているが、オンラインで招待券引換証に入力/印刷の上、持参すると無料招待券と引き換えてくれる。
テーマがテーマだけに直接、コンシューマ製品とは関連しないものが多いが、Intelが先だって発表した、MID(Mobile Internet Device)向けプロセッサ「Atom」を搭載したものが数多く展示され、注目を集めている。
なお、会場ではソフトウェア開発環境展、データウェアハウス & CRM EXPO、データストレージEXPO、情報セキュリティEXPO、RFIDソリューションEXPO、ダイレクト マーケティングEXPO、Web 2.0マーケティングフェアも同時開催されている。
会場の全棟を使い、8つの展示会が同時開催されている | 組込みシステム開発技術展が一番規模が大きく、受付は順番待ちの列ができるほど |
Atom搭載製品の展示は、予想より遙かに多い。展示内容は、大きく分けると、コンシューマ向けが期待されるPC的製品、特定用途端末、システムモジュール/開発基板系の3種類があった。
コンシューマ向けでAtom搭載製品というと、UMPC(Ultra Mobile PC)やULCPC(Ultra Low Cost PC)、MID(Mobile Internet Device)などの携帯型小型端末が想像されるが、超小型デスクトップPCの形で展示しているメーカーが意外と多い。
この手の製品を展示していたのは、エムエスアイコンピュータージャパン、ダックス、ポートウェルジャパンなど。いずれも、Mini-ITX大のマザーボードを小さなケースに収めたもの。実際にこの形で販売するのか、また、小売りに流通させるのかといった点は不明だが、Atomであれば、小型でファンレスな低消費電力PCを実現できるので、自宅に置く個人Webサーバーとして一定の需要はあると思われる。
クラリオン、パナソニックは、インテルのAtom発表会でも参考展示されていた、携帯型端末をインテルブースで展示している。なお、Atomとは関係ないが、エムエスアイは「Centrino2」用Intel GM45 Expressチップセットを搭載したMini-ITXマザーボードなども展示している。
NECは注文/生産管理/医療診断などの用途を狙ったタッチパネル液晶一体型端末、NEXCOMは携帯型医療向け端末、旭エレクトロニクスは在宅医療向け端末を展示している。こういった用途ではこれまで、Celeron Mなどのプロセッサを使っていた。Atomでは、チップセット(システム・コントロール・ハブ)のグラフィックス性能が高められたので、単に小型化/消費電力化するだけでなく、動画表示などあらたな機能/価値を加えることが可能になった。
NECのタッチパネル搭載業務向け端末「12PNC」 | NEXCOMの携帯型医療端末「MTC2100」 | 旭エレクトロニクスの健康予防ステーション「NC3000」に採用予定のAtom搭載基板 |
このほか、「COM Express」と呼ばれる10cm四方大のシステム基板や、開発環境などを各社が展示している。
PFUのシステムモジュール。右のCore 2 Duo搭載品と比べ、左のAtom搭載品は一回り小さく、ファンレスになっている | ICAのシステムモジュール | NaganoのAtom開発ボード |
AdvantechのCOM Express準拠製品 | ADLINKのCOM Express準拠製品 | オムロンのCPUスタックボード |
コーデックなどの仕様こそ異なるものの、HD動画に関連した製品を展示しているメーカーも多く見受けられた。
NECは14日付けで発表したQXGAやXGAクラスの動画をHD解像度にアップスケールする「1枚超解像技術」を使ったLSIによるデモを行なっている。ブロックノイズやモスキートノイズ削減といった処理は行なっていないが、画像のボケや粗さを改善して高精細化している。ワンセグコンテンツなどを高解像度のTVなどでも鮮明に表示させるのが主な目的。NECでは、IPコアとして外販していく。
東芝は、アクトイマジンが開発した動画コーデック「モビクリップ」による滑らかで高精細な動画の再生デモを行なっている。モビクリップは、携帯電話や携帯端末など、非力な機器で高画質な動画を再生することを目的に開発されたソフトウェアコーデック。エンコード後のファイルサイズはH.264と同等だが、CPU負荷は1/4しかなく、5MbpsのフルHD動画も700MHz程度のCPUでフルフレーム再生できるという。実際にブースでは、Eee PCを使って、H.264とモビクリップによる比較デモを行なっている。
Freescale、富士通マイクロエレクトロニクス、アルファシステムズは、共同開発したリアルタイムトランスコード機能付きデジタルメディアサーバーを展示。これは、MPEG-2 HD動画を、H.264にリアルタイム変換し、デジタルメディアプレーヤーなどで再生させることを目的としたもの。ソースがMPEG-2なのは、日本のデジタル放送のコーデックにあわせたもので、H.264への変換はiPodなどでの再生を見据えている。ただし、DTCP-IP機能などは実装されておらず、利用する際には別途、著作権保護技術を組み込む必要がある。
そのほか、サイレックスのIEEE 802.11b/gに対応したUSB Hubなど、おもしろかった展示をまとめて写真で紹介する。
□組込みシステム開発技術展のホームページ
http://www.esec.jp/
□関連記事
【4月2日】インテル、Atomでモバイルインターネットを推進
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0402/intel.htm
□ESC SV 2008レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/esc.htm
(2008年5月15日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]