多和田新也のニューアイテム診断室

最新Prescott Eステッピング採用の「Pentium 4 570J」




 11月15日、IntelはPentium 4の最高クロック製品となる「Pentium 4 570J」を発表した。動作クロックは3.8GHzとなる。すでに報じられているとおり、Intelは4GHz製品のリリースを断念しており、この先しばらくは最高の動作クロックを持つ製品として名が残るCPUとなる予定だ。また、新たなステッピングへと切り替えられて登場する最初の製品でもあり、このステッピングの特徴なども含めて紹介していきたい。

●Eステッピングで提供される3つの機能

【写真1】Pentium 4 570J(3.8GHz動作)の表面 【写真2】同裏面。Pentium 4 560とまったく同じだ

 今回発表された「Pentium 4 570J」は、3.8GHzで動作するPentium 4の最高クロックとなる製品だ。主なスペックは表1のとおりで560と大差はない。価格は1,000個ロット時で70,660円となる。

【表1】Pentium 4スペック比較
  Pentium 4 570J Pentium 4 560 Pentium 4 Extreme Edition 3.46GHz
コードネーム Prescott Gallatin
FSB 800MHz 1,066MHz
実クロック 3.80GHz 3.60GHz 3.46GHz
L1データキャッシュ容量 16KB 8KB
L2キャッシュ容量 1MB 512KB
L3キャッシュ容量 なし 2MB
VID 1.25〜1.4V 1.525〜1.6V
ICC(max) 119A 84.8A
TDP 115W 110.7W


 しかし、表にない部分で多くの変更点ある。まず、大きな特徴として挙げられるのが、末尾に“J”が付けられていることでも分かるとおり、Pentium 4として初めてNX機能をサポートしている点だ。CrystalCPUIDで確認してみても、「NX」の欄が正しく認識されていることが分かる(画面1)。

 画面2はPentium 4 560でCrystalCPUIDを実行した結果なのだが、画面1と比較すると、Model-Stepping欄が異なっていることが見て取れる。実は、このPentium 4 570Jでは、新たにPrescottのEステッピングが採用されているのだ。

【画面1】CrystalCPUIDにおける「Pentium 4 570J」の結果 【画面2】同じく「Pentium 4 560」の結果。画面1と比べると古いステッピングであることが分かる

 Eステッピングで提供される主な新機能は、

・NX機能
・C1Eステート
・Thermal Monitor 2

の3つである。NX機能については、先述のとおりだ。

 CPUは、OS動作中に実行すべき処理がない状態になるとHALT命令が出され、電力を抑える状態へ移行する。従来のPrescottでは、この電力を抑えた状態をC1ステートとしていた。Eステッピングでは新たにC1Eステートとして新たな動作が設定されており、HALT命令が出されると、CPUのコア電圧が下がり、C1ステート以上の省電力効果を得られる(画面3、4)。

 Eステッピングでは、DynamicVIDと呼ばれるコア電圧の可変機能が盛り込まれており、この機能を使ってC1Eステートのような動作を実現している。ちなみに、このDynamicVIDによって変化する電圧は、CPUの個体によって異なる。というのも、個体の歩留まり次第で、どの程度まで電圧を下げてもOKか、などの特性が違ってくるため、製品個々に別の値が設定されているという。なおC1Eステートは、Pentium 4限定の機能であり、同じくPrescottコアを使うCeleron Dでは利用できない。

 Eステッピングで提供されるもう1つの機能、Thermal Monitor 2も、このDynamicVIDを利用した機能だ。Pentium 4では、CPUファンが壊れるなどして、CPU温度が一定値を超えた場合に動作クロックを3分の1程度にまでダウンさせ、それによりCPUの故障を防ぐ機能が実装されている。

 これをThermal Monitorというが、これはあくまでクロックを変化させるのみであり、コア電圧は変更していない。Thermal Monitor 2では、クロックは大きく落とさずにコア電圧を下げることで、パフォーマンスを落とさずに発熱を抑えることができる(画面5)。一般にはメリットは少ないが、24時間稼働しているサーバーなどで効果を発揮する。

 ちなみに、C1EステートやThermal Monitor 2はBIOSに依存する機能のため、利用の際にはマザーボードのBIOSを最新のものに更新しなければならない可能性がある。これについては利用するマザーボードベンダーのホームページ等で確認した方がいいだろう。

【画面3】これはOS上でSandraを回している状態。CPU Core欄が1.318Vとなっている 【画面4】OS上で何も作業をしないと1.176Vまで下がる。これがC1Eステートの状態である 【画面5】データシートより抜粋したThermal Monitor 2の概念図。Ttm2で規定された温度に達すると、CPUクロックをftm2の値まで下げ、さらにコア電圧もVtm2で規定された値まで段階的に下げる

 このほか、Eステッピングになって3.8GHzの製品が登場したように、従来のDステッピングに比べると熱発生が抑えられているのも特徴となる。これにより、従来TDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)が115Wとなっていた3.4GHz(Pentium 4 550)も、84Wへ抑制される可能性があるという。もし、TDP 84WのPentium 4 550が市場に投入されると、両方のタイプが混在することになる。

 この2種類の同製品を見分けるときに参考にしたいのが、「Platform Compatibility Guide(PCG)」と名付けられた3桁の英数字だ(写真3)。現在「04A」、「04B」の2つが存在する。2004年のAタイプ、Bタイプという意味合いなのだが、04AがTDP 84W、04Bが同115Wの製品を表しており、LGA775のPentium 4では全製品にこのPCGを記したシールが外箱に貼られている。

 マザーボード側にも同様のPCGが記載されており、このマザーボードでは、このCPUが使えます、ということを示している(写真4)。PCGが記載されたマザーボードは、現在ではIntel製品のみに留まっているが、他社にも貼付してもらうよう呼びかけているそうだ。

 ユーザーには便利なことではあるものの、“04A”を示すということは「このマザーボードはTDP 84WのPentium 4のみ対応」とわざわざ謳うことになるわけで、他社が追随するにしても04B対応(つまりTDP 115WのCPUが使えること)のPRに利用されるに留まる可能性が高いのではないだろうか。個人的には、04Aのみに対応することを記載してくれるようなメーカーは信頼できると思うが。

【写真3】Pentium 4 550のパッケージに貼付されたシールにPCGの記載がある。ここではTDP 115Wを示す“04B”が記載されている 【写真4】これはIntel D915XECV2のパッケージだが、同様にPCGが記載されている。これは04A/04Bの両方のCPUで利用できることを示す

●PC4300 DDR2のCL=3の効果も含めて570Jをテスト

 それでは、Pentium 4 570Jのベンチマークテストを行なっていきたい。なお、従来より本連載で使用しているPC4300 DDR2 SDRAMは、Micron製チップを搭載したCL=4の製品である。このメモリの各メモリパラメータは画面6のとおりで、DDR2-533MHzとして使用した場合のtCL−tRCD−tRP−tRASminは“4−4−4−12”となる。今回、Corsair製のCL=3のメモリを入手できた(写真5)。こちらのパラメータは画面7のとおりで、DDR2-533として使用した場合でも“3−3−3−8”の動作となる。

【写真5】Corsair Memoryの「XMS2」シリーズ。製品の型番は「CM2X512-4300C3PRO」である 【画面6】Micron製チップを使ったCL=4のメモリ。533MHz動作を示す266MHzの欄を見ると,4-4-4-12のパラメータが割り当てられている 【画面7】Corsair製のCL=3メモリのパラメータを見ると,533MHz動作で3-3-3-8が割り当てられているのが分かる

 今回のテストでは、Pentium 4 570Jと前々回にテストしたPentium 4 XE 3.46GHzの2つの環境で、このCL=3のメモリを使用したテストを追加している。これでどの程度のパフォーマンス向上が見られるかも確認してみたい。なお、環境は表2のとおりだ。

【表2】テスト環境
CPU Pentium 4 570J
Pentium4 Extreme Edition 3.46GHz
Pentium 4 560 Athlon 64 FX-55 Athlon 64 4000+
チップセット Intel 925XE Intel 925X K8T800 Pro
マザーボード Intel D925XECV2 Intel D925XCV MSI K8T Neo 2(MS-6702E)
メモリ PC4300 DDR2 SDRAM 512MB×2(CL=3/CL=4) PC4300 DDR2 SDRAM 512MB×2(CL=4) PC3200 DDR SDRAM 512MB×2(CL=2)
ビデオカード NVIDIA GeForce 6800 GT(256MB/PCI Express x16) NVIDIA GeForce 6800 Ultra(256MB/AGP) NVIDIA GeForce 6800 GT(256MB/AGP)
ビデオドライバ ForceWare 61.77
HDD WesternDigital WD Raptor WD360GD×2(RAID0) WesternDigital WD Raptor WD740GD×2(RAID0) WesternDigital WD Raptor WD360GD×2(RAID0)
RAIDコントローラ 「ICH6R」内蔵 Promise Technology「PDC20579」
OS Windows XP Professional(ServicePack2/DirectX 9.0c)


●CPU性能

 では、いつもどおり最初に「Sandra 2004 SP2b」の「CPU Arithmetic Benchmark」(グラフ1)と、「CPU Multi-Media Benchmark」(グラフ2)を見ていくことにしたい。結果を見るとSSE2を使った浮動小数点演算を除いてはPentium 4 570Jが、いずれもトップスコアをマークした。

 Pentium 4 560との比較では、各テストで約7%の向上。動作クロックは約5.5%の上昇であり、意外に伸びているな、というのが印象である。ただし、マザーボードが異なるあたりに理由があるのかも知れない。

【グラフ1】Sandra 2004 SP2b(CPU Arithmetic Benchmark) 【グラフ2】Sandra 2004 SP2b(CPU Multi-Media Benchmark)

 続いては「PCMark04」の「CPU Test」の結果を見てみたい(グラフ3、4)。こちらは全体の傾向としては、これまでPentium 4 560が強かったテストが順当にスコアを伸ばした形の結果になっている。

 以前も述べたがグラフ3はマルチスレッド動作となるテストをまとめているので、ここはHyper-Threadingを持つPentium 4勢が強いのは当然である。一方、グラフ4を見てみると、これまでPentium 4 560/XE 3.46GHzが、Athlon 64 FX-55に対して苦戦したテストでも性能を詰める、または追い越すものが見られるあたりは、素直に評価していいだろう。

【グラフ3】PCMark04(CPU Test 1) 【グラフ4】PCMark04(CPU Test 2)

●メモリ性能

 ここからは、メモリ性能を見ていきたい。利用するテストは、Sandra 2004 SP2bの「Cache & Memory Benchmark」で、グラフ5に全結果、グラフ6に一部テストを抜粋している。キャッシュ性能についてはセオリーどおりで、同じアーキテクチャであるPentium 4 560と570Jは、似たような傾向のグラフを描き、クロックが高い分、570Jがやや上の位置でラインを描く傾向にある。

 それよりも、ここで見ておきたいのはCL=4とCL=3のメモリを使った場合の差だ。これはグラフ6の256MBの項が参考にできるが、Pentium 4 570J、Pentium 4 XE 3.46GHzともに、メモリレイテンシが減ることで約7〜8%程度の速度向上が見て取れる。570Jのほうが性能が良いのはSSE3が影響しているためである。PC4300 DDR2 SDRAMの現時点における弱点の1つはレイテンシであったが、それが削減されることで、確実なアクセス速度向上へつながっている。これがアプリケーションにどう影響するか、次の項から見ていくことにしたい。

【グラフ5】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark) 【グラフ6】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark)

●アプリケーション性能

 それでは、実際のアプリケーションを使ったベンチマークとして、「SYSmark2004」(グラフ7〜9)、「Winstone2004」(グラフ10)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ11)を見てみたい。

 ここはPentium 4 570Jのパフォーマンスの高さが際立つ結果となった。例えば、Hyper-Threadingの効率のよさやSSE3によりPrescottで好結果が出やすいSYSmark2004やTMPGEncでは、Pentium 4 560とXE 3.46GHzは一長一短のスコアであったのが、Pentium 4 570Jは頭ひとつ抜け出した印象だ。Winstone2004にしてもPentium 4同士の傾向は、前述2つに似ているが、MultiMedia Content Creation WinstoneでAthlon 64 4000+を上回るあたりに、このCPUのポテンシャルを感じることができる。こうした結果から、Pentium 4 XE 3.46GHzはちょっと影が薄くなった印象も受ける。

【グラフ7】SYSmark2004 【グラフ8】SYSmark2004 - Internet Content Creation
【グラフ9】SYSmark2004 - Office Productivity 【グラフ10】Winstone 2004
【グラフ11】TMPGEnc 3.0 XPress

●3D性能

 最後に、3Dベンチマークの結果を見ておきたい。「Unreal Tournament 2003」(グラフ12)、「Unreal Tournament 2004」(グラフ13)、「DOOM3」(グラフ14)、「3DMark05」(グラフ15)、「3DMark03」(グラフ16)、「AquaMark3」(グラフ17)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」(グラフ18)の7つのテスト結果を示している。

 ここでは、Pentium 4 XE 3.46GHzが底力を見せており、Pentium 4 570Jは一歩劣る結果となった。もちろん、Pentium 4 560との比較であれば、パフォーマンスは向上している。

 また、3D描画時にCPU側の負担が大きめのアプリケーション、例えばUnreal Tournamentの2つやFF Benchなどでは、メモリレイテンシの削減効果が見られるのも面白い結果といえる。

【グラフ12】Unreal Tournament 2003 【グラフ13】Unreal Tournament 2004
【グラフ14】DOOM3 【グラフ15】3DMark05
【グラフ16】3DMark03 Build340 【グラフ17】AquaMark3(Average FPS)
【グラフ18】FINAL FANTASY Official Benchmark 2

●Extreme Editionをも凌ぐパフォーマンス

 ということで、Pentium 4 570Jのパフォーマンスを見てきたが、もともと悪くない性能を持っていたPentium 4 560から動作クロックがアップしたということもあって、かなり良好なパフォーマンスを示している。

 これにより、Extreme Edition 3.46GHzのインパクトが弱まっているのも確かで、Pentium 4で3Dゲームの最高性能を求めるならExtreme Edition、そうでないなら570J、を選ぶのが良策といえそうだ。もっとも、NX機能や、そのほかEステッピングで提供された機能を持つメリットも見逃せない。このあたりを魅力に感じる人にとっては、570J導入のメリットはさらに増すことになる。

 またPentium 4 570J自身とは関係ないが、今回のテストではメモリレイテンシの削減の効果も随所に見て取れた。CL=3のDDR2-533は現時点で入手が難しいが、今年末から来年にかけて秋葉原などでも見られることになるだろう。さらに、次のDDR2-667も控えており、対応チップセットが登場すれば、こちらのメモリを活かした、さらなるパフォーマンスアップも期待できそうだ。

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(2004年11月16日)

[Text by 多和田新也]


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