多和田新也のニューアイテム診断室

FSBが1,066MHzとなったIntel 925XE+Pentium 4 XE 3.46GHz




 LGA775プラットフォームのリリースから4カ月余りが経過した11月2日、IntelはFSBを1,066MHzへと向上させた「Pentium 4 Extreme Edition 3.46GHz」(以下、Pentium 4 XE 3.46GHz)と、対応チップセットとなる「Intel 925XE」を発表した。800MHz FSB対応CPU&チップセットからのマイナーバージョンアップとなる本製品のパフォーマンスを検証していきたい。

●メモリ帯域幅とのバランスをとるFSB向上

 今回発表されたPentium 4 XE 3.46GHzとIntel 925XEは、どちらも1,066MHz FSBに対応した点が最大にして唯一の変更点と言って差し支えない。

 まず、Pentium 4 XE 3.46GHzについて紹介していくと、主なスペックは表1にまとめたとおりである。従来モデルのPentium 4 XE 3.4GHzと比較してみても、ベースとなるコアがGallatinである点やL1~L3の各キャッシュ容量に変更はない。ただし、PrescottコアのPentium 4 560ほどではないにせよ、最大消費電流(ICC Max)と熱設計電力(TDP)が上昇してしまっている。

【表1】Pentium 4スペック比較
CPU Pentium 4 Extreme Edition 3.46GHz Pentium 4 Extreme Edition 3.40GHz Pentium 4 560
コードネーム Gallatin Prescott
FSBクロック 1,066MHz 800MHz
実クロック 3.46GHz 3.40GHz 3.60GHz
L1データキャッシュ容量 8KB 16KB
L2キャッシュ容量 512KB 1MB
L3キャッシュ容量 2MB なし
VID 1.525~1.6V 1.25~1.4V
ICC(max) 84.8A 83.9A 119A
TDP 110.7W 109.6W 115W

 新製品でFSBクロックが引き上げられた理由は、メモリ帯域幅との差を埋めるためである。Intel 925XではDDR2-533に対応したデュアルチャネルメモリインタフェースを装備していた。この最大帯域幅は8.5GB/secとなるが、800MHz FSBの帯域幅は6.4GB/secに留まっており、CPU-メモリ間のアクセスにおいて、FSBがボトルネックとなってしまう。

 FSBを1,066MHzに引き上げれば、その帯域幅は8.5GB/secとなり、メモリの最大帯域幅とマッチする。これによりFSBがボトルネックになることなく、メモリの性能をフルに引き出せるのである。また、来年にはさらに高速なDDR2-667の導入も開始される予定で、FSBを引き上げて、少なくとも現時点におけるボトルネックを解消しておくことは当然のアプローチといえるだろう。

 Pentium 4 XE 3.46GHzの外観は写真1、2のとおりだ。今回借用したのはエンジニアリングサンプル品のため、刻印や背面には1,066MHz FSB版であることを示す特徴は見当たらない。ただし、製品版では表面に「3.46GHz/2MB/1,066」といった刻印がなされることになるだろう。

【写真1】Pentium 4 XE 3.46GHzの表面 【写真2】Pentium 4 XE 3.46GHzの裏面

 ステッピングの情報も従来の3.4GHz品と変わりなく、FSBを1,066MHzに引き上げて内部倍率の設定を変更しただけ、ということが伺える(画面1)。画面1を見ると分かるとおり「NX」(Execution Disable Bit:XD bit)のフラグが立っていない。実際にService Pack2で提供されるDEP(データ実行保護機能)の設定画面を開いてみても、非サポートであることが分かる(画面2)。

 チップセットであるIntel 925XEについても、Intel 925Xを1,066MHz FSBに対応させるのみの変更に留まっている。PCI Express x16インタフェースを持つ点、対応するメモリ、メモリ最適化機能が組み込まれている点など、主要な仕様については変更されていないので、詳しくはIntel 925Xについての過去の記事を参照してほしい。なお、組み合わされるICHも「ICH6」または「ICH6R」に変わりない。

 今回試用した搭載マザーボードは、Intelの「D925XECV2」(写真3)。Intel 925Xを搭載した「D925XCV2」のチップセットを変更したモデルであり、チップセット上にヒートシンクが載っていることもあって、外観ではまったく区別がつかない製品となっている。

【画面1】CrystalCPUIDにおける「Pentium 4 XE 3.46GHz」の結果 【画面2】NXには非対応のため、Windows XP Service Pack2でサポートされるDEP機能を利用することはできない 【写真3】Intel 925XEを搭載する「D925XECV2」

●FSBクロック向上の効果は?

 それでは、Pentium 4 XE 3.46GHz+Intel 925XEのパフォーマンスを見ていきたい。テスト環境は表2のとおりで、Athlon 64 FX-55&4000+についてのこちらの記事に、今回の新製品を加えた格好で検証していきたい。

【表2】テスト環境
CPU Pentium4 XE 3.46GHz Pentium4 XE 3.40GHz/
Pentium4 560
Athlon 64 FX-55 Athlon 64 4000+
チップセット Intel 925XE Intel 925X K8T800 Pro
マザーボード Intel D925XECV2 Intel D925XCV MSI K8T Neo 2(MS-6702E)
メモリ PC2-4300 DDR2 SDRAM 1GB(512MB×2/CL=4) PC3200 DDR SDRAM 1GB(512MB×2/CL=2)
ビデオカード NVIDIA GeForce 6800 GT(256MB/PCI Express x16) NVIDIA GeForce 6800 Ultra(256MB) NVIDIA GeForce 6800 GT(256MB/AGP)
ビデオドライバ ForceWare 61.77
HDD WesternDigital WD Raptor WD360GD×2(RAID0) WesternDigital WD Raptor WD740GD×2(RAID0) WesternDigital WD Raptor WD360GD×2(RAID0)
RAIDコントローラ 「ICH6R」内蔵 Promise Technology「PDC20579」
OS Windows XP Professional(ServicePack2,DirectX 9.0c)

●CPU性能

 では、始めにCPU性能を見るベンチマーク結果を紹介していくことにする。テストは「Sandra 2004 SP2b」の「CPU Arithmetic Benchmark」(グラフ1)と、「CPU Multi-Media Benchmark」(グラフ2)である。

 このテストは同じアーキテクチャであれば動作クロックに比例するような結果がでる傾向にある。今回Pentium 4 XE 3.4GHzと3.46GHzのクロック差は約1.7%である。結果もそれに伴い1~2%増と、わずかな増加ではあるが、ほぼセオリーどおりの結果が出ている。

【グラフ1】Sandra 2004 SP2b(CPU Arithmetic Benchmark) 【グラフ2】Sandra 2004 SP2b(CPU Multi-Media Benchmark)

 次に「PCMark04」の「CPU Test」の結果を紹介する(グラフ3、4)。こちらはSandra 2004よりもアプリケーションの実行性能に近いテストとなるのだが、結果はSandra 2004と同様で、微増ながら全体に性能アップが見て取れる。しかしながら、3.4GHz版に劣る結果が出たり、まったく数値が伸びないテストも見られる。

 とくに気になるのがエンコード系のテストで、このあたりはもう少しCPUの動作クロックやFSBクロックが向上した恩恵を受けてもいい状況なのだが、WMVのエンコードテストではまったく成績が伸びていない。性能向上が見られたDivXエンコードについても、Athlon 64 4000+に勝るのが精一杯という結果であり、Extreme Editionのセグメントを考えると、寂しい結果と言える。

【グラフ3】PCMark04(CPU Test 1) 【グラフ4】PCMark04(CPU Test 2)

●メモリ性能

 続いてメモリアクセス速度を見ていく。テストはSandra2004 SP2bの「Cache & Memory Benchmark」で、グラフ5に全結果、グラフ6に一部結果を抜粋したグラフを作成、提示している。

 まずグラフ5から全体の傾向を掴んでみたいが、1MBでの結果を見ると、ここは3.46GHzが3.4GHzのわずか上に位置する格好となっている。1MB以下のテストでは、L1~L3キャッシュの容量に収まるためCPU内だけでデータ処理を行えるわけで、FSBやメモリの帯域幅が影響することはなく、素直にクロックどおりの性能向上が出た。

 その先の実メモリが絡むブロックサイズのテストについては、線が重なって分かりづらいので、グラフ6で見ていくことにしたい。

 ここで補足が必要なのだが、Sandra 2004で実施できるテストは、1MBのブロックサイズの次は4MBとなる。グラフ6を見ると、1MBのところでL2キャッシュが使えるPentium 4 560が非常に良い成績を出しているが、ここから先はすぐに実メモリへのアクセスになる。一方、Extreme Editionの2製品は2MBのL3キャッシュを持つので、1MBを超えても2MBのサイズまでは速度を維持できることになる。このグラフからは、それが読み取れないのが残念だが、こうした点は実際のアプリケーションで大きく活きてくることになる。

 さて、実メモリ領域へのアクセス速度に話を移すが、Pentium 4 XE 3.46GHzは、同一コアを用いるPentium 4 XE 3.4GHzの約2.6GB/secから、約2.8GB/secへと向上しているのが見て取れる。メモリのオーバーヘッドの大きさのほうが際立っている印象は受けるものの、確実に効果は得られているようだ。

【グラフ5】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark) 【グラフ6】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark)

●アプリケーション性能

 さて、ここからは実際のアプリケーションを利用したベンチマークの結果を紹介していこう。テストは「SYSmark 2004」(グラフ7~9)、「Winstone2004」(グラフ10)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ11)の3種類である。

 Pentium 4 XE 3.4GHzとの比較で見ると、ここは動作クロック、メモリアクセス速度ともに順当に性能が伸びている。その差はテストにもよるが、おおむね2~3%。実クロックの差以上のスコア向上を見せており、これはFSBクロックを引き上げたことによるメモリとのアクセス速度の向上が、良い方向に影響していると想像できる。

 しかしながら、Pentium 4 560との比較になると少し事情が変わっており、SYSmark2004のInternet Content Creationのテストがとくに顕著だが、コンテンツ作成系のアプリケーションで弱さを見せている。

 同セグメントで争うことになるAthlon 64 FX-55との比較では、これまでのPentium 4 XE 3.4GHzでは引き離されていたテストで、肉薄または追い越すスコアも見られるところは評価したい点だ。

【グラフ7】SYSmark2004 【グラフ8】SYSmark2004 - Internet Content Creation
【グラフ9】 SYSmark2004 - Office Productivity 【グラフ10】Winstone 2004
【グラフ11】TMPGEnc 3.0 XPress

●3D性能

 最後に3Dベンチマークを実行しておく。テストは「Unreal Tournament 2003」(グラフ12)、「Unreal Tournament 2004」(グラフ13)、「DOOM3」(グラフ14)、「3DMark05」(グラフ15)、「3DMark03」(グラフ16)、「AquaMark3」(グラフ17)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」(グラフ18)である。

 なお、Athlon 64 FX-55&4000+の記事と同様に、Athlon 64 FX-55のみGeForce 6800 Ultraを使用しているので、それ以外の環境に対して数%のアドバンテージを持っていることになる。

 結果を見ると、3DMark05以外のテストでPentium 4の3製品中、最高の成績を収めた。前述のアプリケーション性能と異なり、パフォーマンスの向上ぶりは一定して安定している。

 同一ビデオカードを使っているAthlon 64 4000+との比較で見ると、DOOM3、3DMARK03、AquaMark3で同等の性能は発揮できているものの、同一セグメントであるAthlon 64 FX-55に対しては、ビデオカードの性能差以上のスコア差をつけられている。これまでもAthlon 64シリーズの3Dパフォーマンスは最高レベルにあったが、今回もそれを覆すほどのパフォーマンスは出せていない。

【グラフ12】Unreal Tournament 2003 【グラフ13】Unreal Tournament 2004
【グラフ14】DOOM3 【グラフ15】3DMark05
【グラフ16】3DMark03 Build340 【グラフ17】AquaMark3(Average FPS)
【グラフ18】FINAL FANTASY Official Benchmark 2

●Athlon 64 FX-55に追いすがる1,066MHz FSB

 まとめると、アプリケーション性能を測るベンチマークでは約2~3%のスコア向上が見て取れ、Pentium 4 XE 3.4GHzとは実クロックの差以上のパフォーマンスを発揮している。FSBを1,066MHzに向上した効果が少なからずあるといえるだろう。

 同セグメントに位置付けられるAthlon 64 FX-55と比較してみると、Pentium 4 XE 3.46GHzは得手不得手が顕著な上、一定の差をつけられている。とはいえ、これまでのIntel CPUよりその差が縮まっているのも事実で、IntelとAMDのパフォーマンス競争が、これまでより熾烈さを増してきたといえる。

 1,066MHz FSBは今後もExtreme Editionのみで展開される予定。お勧めできる人はかなり限定されることにはなるが、この価格帯の製品を求める人は、常にその時点における最高性能を求めるであろうし、1,066MHz FSB対応のIntel 925XE導入は無駄にならないだろう。その意味で、ハイエンド向けCPUを求める人にとっては有力な選択肢が登場したといえる。

□関連記事
【10月19日】【多和田】ついに4000+へ到達した「Athlon 64 4000+」と「Athlon 64 FX-55」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1019/tawada32.htm
【6月22日】【多和田】LGA775プラットフォームがいよいよ始動
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0622/tawada22.htm

バックナンバー

(2004年11月2日)

[Text by 多和田新也]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
個別にご回答することはいたしかねます。

Copyright (c) 2004 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.