多和田新也のニューアイテム診断室

GeForce 6シリーズのノート向けGPU
「GeForce Go 6800」




 11月8日(米国時間)、NVIDIAはノートPC向けGPU「GeForce Go 6800」を発表した。PCI Expressインターフェイスの採用やShader Model 3.0、ビデオのエンコード/デコード支援機能など、デスクトップ向けのGeForce 6シリーズのアーキテクチャが、ノートPCでも享受できる製品である。このGeForce Go 6800を搭載したSager Midern Computerの「NP9860」シリーズを利用し、そのパフォーマンスを検証してみたい。

●デスクトップのコンポーネントを多用するSager NP9860

 概要については、説明会のレポートを参照していただくとして、ここではGeForce Go 6800を搭載した「Sager NP9860」(写真1)の外観からチェックをしていきたい。

 Sager NP9860は、CPUにはLGA775のPentium 4、チップセットはIntel 915P+ICH6と、デスクトップ向けのパーツを利用したパフォーマンス重視のノートPCである。同社のホームページにある製品情報ページを見ると、3種類の推奨モデルが提示されているが、今回借用したのは、このどれにも該当しない。もっとも近いのが「NP9860-C」で、このメモリを1GBへと増量した仕様となっている。

 その前背面および両側面は写真2~5のとおりだ。特徴的なのは、薄型の光学ドライブを2台搭載できる点や、カードリーダーの搭載、PCの電源がOFFの状態でも音楽CDなどを再生できるAudio DJボタンの搭載など。液晶パネルは1,680×1,050ドットの表示が可能な17型ワイド液晶となっている(写真6)。

【写真1】GeForce Go 6800を搭載するSager Midern Computerの「NP9860シリーズ」 【写真2】フロント部にはAudio DJボタンと呼ばれる、電源OFF時でも音楽CDなどを再生できるコントロールボタンが用意されている 【写真3】本体背面。左から順に電源、シリアル、パラレル、DVI、PS/2、モデム、Ethernetとなる。D-Sub15ピンのディスプレイ出力は用意されていない
【写真4】本体左側面。左からSビデオ出力、USB 2.0×4、IEEE 1394×2、S/PDIF出力を含むサウンド入出力、PCカードスロット(上)、カードリーダ(下)、赤外線ポートとなる 【写真5】本体右側面。上部にDVD-ROM/CD-RWコンボドライブが搭載されているが、その下のスペースにもう一台搭載できる 【写真6】本体液晶は17型のワイド型で、最大1,680×1,050ドットを表示可能

 本体サイズは約393.7×298.5×49.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約5.7kgとかなり大型であり、ノートPCとはいえ、基本的に据え置きで使うことを前提としている。

 次に本製品の底面に目を向け、ドライバーで外せるパネルをすべて外してみることにする(写真7、8)。

 写真9の最上部はCPUクーラーで、このクーラーを取り外すとLGA775のPentium 4が取り付けられていることを確認できる。クーラーはヒートパイプ5本を使った銅製のものが採用されており、脇に設置された2個のファンを使って冷却する仕組みだ。ただし、2個のファンのうち1個は平常時は稼動せず、CPU温度が高くなったときのみ稼動するようになっている。

【写真7】本体底面。ファンが4つ付いており、左2つがCPUとチップセット、中央がメモリ、左下がGPUの冷却に使われる 【写真8】主なパネルを開いた状態。写真最上部がCPU、中央がメモリ、下部中央がHDD、下部右がGPUであるる 【写真9】CPUはLGA775のPentium 4 530を搭載。大型の銅製ヒートシンクを使って冷却される

 本体のちょうど中心あたりの個所には、メモリスロットが設けられている。ここにはDDR2 SO-DIMM用ソケットが2基設けられており、今回の借用品では512MBのエルピーダメモリ製チップを搭載したメモリが2枚装着されていた(写真10、11)。

 そのメモリの下部にあるのがHDD用のスペースである。今回の構成では富士通のシリアルATA HDD「MHT2060BH」が1台のみ搭載される構成となっている。ここには2.5インチ/9.5mm厚のHDDを2台を重ねて装着することもできる(写真12)。さらに、本製品ではマザーボード上にPromise Technologyの「PDC20378」を搭載しているので、この2台のHDDを使ってRAID 0またはRAID 1を構築することができる(画面1)。

【写真10】メモリは、ApacerのDDR2-533 SO-DIMMモジュールを搭載 【写真11】メモリチップにはエルピーダメモリの「EDE5108AB」シリーズを搭載する
【写真12】HDDは専用のパーツに取り付けて収納されているが、このパーツには2台のHDDを取り付けることができる 【画面1】ノートPCとしては珍しくPromise製RAIDコントローラの「PDC20378」を搭載しており、HDDはこちらへ接続される。写真12で紹介したとおりHDDは2台収納できるのでRAID 0/1を構築できる

 さて、写真9の右下部分にはファンに隠れたコンポーネントがあるが、このファンの下に、GeForce Go 6800が搭載されている(写真13、14)。そのモジュールはシールドに包まれていて分かりづらいのだが、マザーボードとの接続部分を見るに、「MXM」とは異なるモジュールのように思われる(写真15、16)。

 インターフェイス部の形状はどちらかというとATIが提唱している「AXIOM」に似た印象すら受けるが、これはおそらくMXMのコネクタ部分もまとめてモジュール化し、コネクタ自体を脱着する形状にしているのだと思われる。インターフェイスが2つあるが、短いほうは電源供給のためのものだろう。ただ、NVIDIAのホームページにあるMXMの資料を見ても、こうした形状のものは規定されていないようであり、詳しいことは現時点で不明である。

【写真13】クーラーを取り外すとGPUが顔を覗かせる。周りのシールドは取り外しができないが、4つの窪みはメモリチップが搭載されている個所だろう 【写真14】コアは剥き出しの状態になっているが、GeForce Go 6800であることを示すマーキングは見られない
【写真15】GPUが搭載されたモジュールの裏面。インターフェイスの形状のほか、2カ所のコネクタがある点もMXMとは異なる。MXMをベースとしたオリジナルなのか、詳しいことは不明 【写真16】このGPUのモジュールとのインターフェイスコネクタはマザーに直付けされている。なお、写真中央のLSIはPCカードのコントローラである

 このGeForce Go 6800はPCI Express x16インターフェイスを内蔵しているが、Windows XP上でも、そのように正しく認識されている(画面2)。ちなみにドライバはSagerのWebサイトからダウンロードできるForceWare 67.50を使用している。

 このほかに、取得できる情報としては、コアクロックは2D時で125MHz、3D時で275MHzとなり、メモリクロックはどちらも330MHz動作となっている(画面3、4)。デスクトップ向けのGPUとは異なり、ACアダプタ駆動時、バッテリー駆動時でパフォーマンスを変化させる「PowerMizer」機能がドライバでサポートされる(画面5)。

【画面2】ドライバはForceWare 67.50を使用。PCI Express x16接続、メモリ256MBである点などを確認できる 【画面3】レジストリのCoolbitを立ててクロックを確認。2D時はコア125MHz/メモリ330MHz動作となる
【画面4】3D描画時はコア275MHz/メモリ330MHz 【画面5】PowerMizer機能では、ACアダプタ/バッテリ駆動時それぞれでパフォーマンス重視かバッテリーライフ重視かを調節できる。今回のベンチマークはMaximum Performanceに設定して測定している

●GeForce 6800 GTとのパフォーマンス比較

 それでは、このSager NP9860を使って、GeForce Go 6800のパフォーマンスを見てみたい。ただ、このクラスのGPUとなると、従来のノートPCとの比較よりも、デスクトップ向けのビデオカードに比べてどの程度のパフォーマンスとなるか、の方が重要であると考え、今回はGeForce 6800 GTのPCI Express x16接続版とのパフォーマンス比較を行なうことにした。環境は表のとおりである。

【表】テスト環境
GPU GeForce Go 6800 GeForce 6800 GT
ビデオドライバ ForceWare 67.50 ForceWare 66.93
CPU Pentium 4 530(3GHz)
チップセット Intel 915P Intel 915G(GIGABYTE GA-8I915G-MF)
メモリ PC4300 DDR2 SDRAM 1GB(512MB×2) PC3200 DDR SDRAM 1GB(512MB×2)
HDD FUJITSU MHT2060BH Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS)
OS Windows XP Professional(ServicePack2/DirectX 9.0c)

 まず、今回の環境におけるグラフィック以外の部分でのパフォーマンス差を、Sandra 2004 SP2bとPCMark04を使ってざっくりと見ておきたい(グラフ1~4)。

 CPU、メモリの差はどちらもGeForce 6800 GT環境が勝るものの、この差はそれほど大きくない。ただ、メモリに関してはキャッシュメモリが思いのほか伸びず、実メモリもスペックでは劣るPC3200 DDR SDRAMのほうが勝っており、Sager NP9860のBIOSはあまりアグレッシブなチューニングが施されていないように思われる。それ以上に差が付いているのがHDDだが、ここはサイズからしてまったく異なるスペックのパーツであるため、致し方ない部分ではある。

【グラフ1】Sandra 2004 SP2b(CPU Arithmetic/Multi-Media Benchmark) 【グラフ2】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ3】Sandra 2004 SP2b(File System Benchmark) 【グラフ4】PCMark04

 さて、それでは本題のグラフィック性能を見ていくことにしたい。なお、本連載でビデオカードなどを取り上げる際は、基本的に1,024×768/1,280×1,024/1,600×1,200ドットの各解像度をテストしているが、今回はノート向けGPUということもあり、800×600/1,024×768/1,280×1,024ドットを基本にテストを行なっている。ただしUnreal Tournamentは4:3の比率でないと正しくスコアが出ないため1,280×1,024ドットではなく1,280×960ドットでテストを行なっている。

 では、まずはDirectX 9ベースの各テスト結果を見ていこう。実施したテストは3DMark05(グラフ5)、3DMark03(グラフ6)、AquaMark3(グラフ7)、DOOM3(グラフ8)である。

 結果を見ると、3DMark05/3DMark03の傾向はわりと似通っている。どちらもGeForce Go 6800はGeForce 6800 GTに対して60~70%程度のスコアである。低解像度時は70%近いスコアとなるが、解像度およびフィルタを適用することで60%程度まで落ち込む傾向となる。ただ、落ち込むといっても、それほど顕著ではないといえるだろう。

 AquaMark3はもう少しパフォーマンス差が小さく、800×600ドット/フィルタなしの状態で84%のスコアを出している。ただ、このテストでは異方性フィルタを適用したときのパフォーマンス低下が大きいのが特徴だ。異方性フィルタを適用しない場合は解像度により差はあるものの、80%前後を維持できているのに対し、適用した途端5%ほどのスコア低下が生じている。

 解像度やフィルタの影響がもっとも大きかったのはDOOM3だ。800×600ドット/フィルタなしの場合は約94%のスコア差であるのに対して、もっとも負荷の大きい1,280×1,024ドット/4xAA/8x異方性フィルタの状態だと約56%ほどのスコアとなってしまう。ただ、1,024×768ドットのフィルタなし程度であれば実用に耐え得るフレームレートは出しており、ノートPCでも、このクラスの3Dゲームを楽しめるという点では大きな意味を持ちそうである。

【グラフ5】3DMark05 【グラフ6】3DMark03
【グラフ7】AquaMark3 【グラフ8】DOOM3

 では、続いてDirectX 8.1ベースのテスト結果を見ていきたい。テストは「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」(グラフ9)、「3DMark2001 SecondEdition」(グラフ10)、「Unreal Tournament 2003」(グラフ11、12)、「Unreal Tournament 2004」(グラフ13~17)である。

 これらのテストでは、DirectX 9のテストに比べるとGeForce Go 6800が健闘している印象だ。ただし、3DMark2001 Second EditionやUnreal Tournament 2003のFlybyなどでは、1,280×768ドット/4xAA/8x異方性フィルタリングのテストで、一気にスコア差が開く傾向が見て取れる。

 また、CPU処理が多めとなるUnreal Tournament 2003/2004のBotmatchテストでは、ほとんどテストで90%以上のスコアを出しているが、1,280×768ドット/4xAA/8x異方性フィルタリングのテスト条件でスコアが急に落ち込む(とくに顕著なのがグラフ15だ)。

 これは、デスクトップ向けであるGeForce 6800 GTに比べ、メモリクロックが制限されている点が大きく影響しているのだろう。転送するテクスチャ量が多くなれば、こうしたスコア低下は当然問題になってくる。

 GeForce Go 6800はコアクロック、メモリクロックを、ある程度ベンダー側の自由にできるようになっており、コア450MHz、メモリ600MHzといった仕様も提示されている。つまり、ノートPC製品によっては、もう少しパフォーマンスがアップしたり、逆にダウンの可能性もあるわけで、ここで紹介した結果は1つの例であることに留意した方が良いだろう。

【グラフ9】FINAL FANTASY Official Benchmark 2 【グラフ10】3DMark2001 SecondEdition
【グラフ11】Unreal Tournament 2003 - Flyby 【グラフ12】Unreal Tournament 2003 - Botmatch
【グラフ13】Unreal Tournament 2004 - Botmatch rankin 【グラフ14】Unreal Tournament 2004 - Botmatch convoy
【グラフ15】Unreal Tournament 2004 - Botmatch torlan 【グラフ16】Unreal Tournament 2004 - Botmatch colossus
【グラフ17】Unreal Tournament 2004 - Botmatch bridgeoffate

●デスクトップ向けビデオカードに比肩する性能

 さすがにGeForce 6800 GTを上回るスコアは見られなかったが、ハイエンド向けとなるデスクトップ用ビデオカードと直接比較できるレベルのパフォーマンスにあるというのは、ノートPC向けとしては驚くべきパフォーマンスであるといえるだろう。

 ちなみに、3DMark05で60~70%程度のスコア差であることを紹介したが、過去に行なった3DMark05の検証では、GeForce 6800 GTとGeForce 6600 GTが同程度のスコア差となっていた。

 なお、ライバルとなるATIも、すでにノートPC向けのハイエンドGPUである、Mobility RADEON X800を発表している。こちらも機会があればテストを行ないたいと思っている。いずれにしても、いよいよノートPC向けGPUも世代交代がはじまったことになる。今後、こちらのジャンルでも新たな製品におけるパフォーマンス傾向や、付加機能などを注視する必要があるだろう。

□関連記事
【11月24日】ATI、モバイル向けGPU「MOBILITY RADEON X800/X300」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1124/ati.htm
【11月11日】NVIDIA、GeForce Go 6800説明会を開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1111/nvidia.htm
【10月1日】【多和田】Shader Model 2.0完全対応の「3DMark05」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1001/tawada30.htm

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(2004年12月3日)

[Text by 多和田新也]


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