多和田新也のニューアイテム診断室

ついに4000+へ到達した「Athlon 64 4000+」と「Athlon 64 FX-55」




 今年6月にデビューしたSocket 939のAthlon 64に、新たな製品が登場した。1つはハイエンド向けとなるAthlon 64 FX-55。そしてもう1つがAthlon 64 4000+である。ついに登場した4GHzクラスのCPU。そのパフォーマンスを見ていくことにしたい。

●Athlon 64 4000+の正体はFX-53 ?

 6月のデビューから5カ月足らずで新製品が登場したSocket 939向けCPU 2製品。そのスペックについては、従来製品との比較も含めて表1にまとめてあるので、まずは参照されたい。

【表1】CPUスペック

CPU Athlon 64 FX-55 Athlon 64 FX-53 Athlon 64 4000+ Athlon 64 3800+
L1キャッシュ 64KB(データ)+64KB(命令)
L2キャッシュ 1MB 512KB
T.Case MAX 63度 70度
動作クロック 2.6GHz 2.4GHz
動作電圧 1.50V
TDP MAX 104W 89W
Icc MAX 67.4A 57.4A


【お詫びと訂正】初出時に、Athlon 64 FX-55のIcc MAXを80Aとしておりましたが、その後AMDの資料が訂正され67.4Aであることが判明しましたので、訂正させていただきます。

 まず「Athlon 64 FX-55」について紹介しおくと、2.4GHz駆動のAthlon 64 FX-53から動作クロックを2.6GHzへとアップと、従来からもっとも一般的に使われてきたパターンでの進化である。

 ただし、TDPが大幅に上昇し、ついに100Wを超えた。そして、Tcaseが70度から63度へと引き下げられた。つまり、発熱が増える一方で許容されるコアの温度が下げられた、ということになるわけで、かなりピーキーなCPUになったという印象だ。

 少し話は飛躍するが、こうしたスペックになってしまった原因として、そろそろSledge Hammerのクロック上昇に限界がきたのではないかと思われる。ステッピングの変更でこうした点が改善される可能性がゼロではないが、来年前半には90nm SOIプロセスのSan Diego、メインストリームでは今年中にも同じ90nm SOIのWhinchesterが控えていることはAMDのロードマップで明らかにされており、現行プロセスの改善よりも新しいプロセスの開発に力を投入するほうが自然に思う。つまり、次に登場するAthlon 64 FXからは、いよいよSan Diegoが投入される可能性もあるわけだ。

 もう1つの「Athlon 64 4000+」であるが、こちらはクロックを上げる方向性ではなく、従来のAthlon 64 3800+のL2キャッシュを1MBへアップするという手法でパフォーマンス向上を図った。動作クロックは2.4GHzで据え置きである。ここで注目したいのが、Athlon 64 4000+の外見上のスペックがAthlon 64 FX-53と酷似している点である。

 ここで、Athlon 64 FX-55/FX-53、Athlon 64 4000+/3800+の各CPUIDを画面1〜4に示している(FX-53は以前の記事で紹介したものを流用したので、旧バージョンのCrystalCPUIDにおける結果になっている)ので見ていただきたい。このなかで、Athlon 64 4000+のCodeName欄がClaw Hammerになっているのは新製品ゆえに正しく認識しなかったものだと想像できるが、問題はFamily-Model-Steppingが「F7A」となっている点である。Athlon 64 FX-55とFX-53は「F7A」、Athlon 64 3800+は「FF0」である。

【画面1】CrystalCPUIDの「Athlon 64 FX-55」における結果 【画面2】同じく「Athlon 64 FX-53」における結果
【画面3】同じく「Athlon 64 4000+」における結果 【画面4】同じく「Athlon 64 3800+」における結果

 このようにCPUID、スペックのいずれからしても、Athlon 64 4000+はSledge HammerコアのAthlon 64 FX-53そのものである、と想像することができる。先にAthlon 64 3800+のL2キャッシュを増やしたと述べたが、そうではなくAthlon 64 FX-53をメインストリームに降ろしたアプローチと見るのが正解というわけである。ただし、今回情報が得られていない部分で、Athlon 64 FX-53とAthlon 64 4000+に違いがある可能性は残されている。

 とくにCool'n'QuietのP-Stateは、Athlon 64 FX-53では2.4GHz/1.2GHzの2段階だが、メインストリーム向けであるAthlon 64 4000+ではより細かく設定されていると思われる。この情報は、製品のリリース後に更新されるであろう「AMD Athlon 64 Processor Power and Thermal Data Sheet」から知ることができるので、こちらで確認してほしい。

●評価機材を使ってのパフォーマンスチェック

 それでは、パフォーマンスの検証に移りたい。テスト環境は表2のとおりである。今回は、Athlon 64 FX-55とAthlon 64 4000+の評価機材をAMDから借用している。ただし、Athlon 64 FX-55はPCとして完成した状態で構成変更が認められていないキット(写真1)。Athlon 64 4000+はCPU、メモリ取り付け済みのマザーボードとなっている(写真2)。そのため、環境ごとに構成機器の差が生じてしまっているが、このことが影響したと思われる結果については本文中で随時触れていくことにしたい。

【表2】テスト環境

CPU Athlon 64 FX-55 Athlon 64 4000+ Athlon 64 3800+ Pentium 4 Extreme Edition 3.40GHz
Pentium 4 560
チップセット K8T800 Pro Intel 925X
マザーボード MSI K8T Neo 2(MS-6702E) ASUSTeK A8V Deluxe Intel D925XCV
メモリ PC3200 DDR SDRAM 1GB(512MB×2/CL=2) PC3200 DDR SDRAM 1GB(512MB×2/CL=3) PC2-4300 DDR2 SDRAM 1GB(512MB×2/CL=4)
ビデオカード NVIDIA GeForce 6800 Ultra(256MB) NVIDIA GeForce 6800 GT(256MB/AGP) NVIDIA GeForce 6800 GT(256MB/PCI Express x16)
ビデオドライバ ForceWare 61.77
HDD WesternDigital WD Raptor WD740GD×2(RAID0) WesternDigital WD Raptor WD360GD×2(RAID0)
RAIDコントローラ Promise Technology「PDC20579」 Promise Technology「PDC20378」 「ICH6R」内蔵
OS Windows XP Professional(Service Pack 2/DirectX 9.0c)

【写真1】Antec製ケースに収められたAthlon 64 FX-55の評価キット 【写真2】こちらはAthlon 64 4000+の評価キット。CPUクーラーはヒートパイプが使われた、従来よりも一回り大きいタイプになっている

●CPU性能

 それではベンチマークの結果を順に紹介していくことにしよう。最初は「Sandra 2004 SP2b」の「CPU Arithmetic Benchmark」(グラフ1)と、「CPU Multi-Media Benchmark」(グラフ2)だ。

【グラフ1】Sandra 2004 SP2b(CPU Arithmetic Benchmark) 【グラフ2】Sandra 2004 SP2b(CPU Multi-Media Benchmark)

 まずAthlon 64 4000+について見てみると、全テストにおいてAthlon 64 3800+と同等程度の成績に収まっている。これは動作クロックが同じであるため、コアアーキテクチャが同じCPUであれば演算性能に差が出ないのは当然である。Athlon 64 FX-55はクロックが上がっているぶん、演算性能も向上したというわけだ。

 Athlon 64とPentium 4という構図で見てみると、iSSE2が働くテスト、浮動小数点演算テストでPentium 4勢が優れた結果を出す傾向にあるが、これらは過去に行なったAthlon 3800+のテストの時と傾向は同じであり、このテストのクセである。その意味では、グラフ2にあるiSSE2を使った整数演算テストでAthlon 64 FX-55がPentium 4を追い詰めた点などは高く評価していいだろう。

 もう1つのCPUテストとして、「PCMark04」の「CPU Test」を見ておきたい(グラフ3、4)。グラフ3で示した4項目はマルチスレッド動作によるテストなので、ここはHyperThreadingを持つPentium 4が優勢である。

【グラフ3】PCMark04(CPU Test 1) 【グラフ4】PCMark04(CPU Test 2)

 グラフ4を見てみると、こちらはテストによりマチマチな結果である。ちなみにGrammarCheckについてだが、これは以前からAthlon 64 FX-53/3800+で動作しなかったテストである。今回Athlon 64 FX-55/3800+では動作したのだが、Athlon 64 4000+では動作しなかった。これについてはまったく原因が分からず、結果のとおりとしか言いようがない。

 CPU Test全体に渡って見てみると、こちらもCPUコンポーネントベンチであるため、Athlon 64 3800+と4000+では大きな差はないが、エンコード系テストを中心にAthlon 64 4000+がアドバンテージを持った結果が出ている。フレームという比較的小さなデータを細かくやり取りしつつ演算自体の処理が重いという性格のエンコード系テストでは、演算性能に関するアーキテクチャが同じであれば、キャッシュやメモリの速度/容量が大きく影響する。今回メモリのCAS LatencyもAthlon 64 4000+環境のほうが速いため、余計に目立った差が出たものと思われる。

 逆にいえば、Athlon 64 4000+は3800+と動作クロックが同じであるため、キャッシュ容量の差が活きない場面では3800+から大きな性能向上は期待できないともいえるわけだ。一方のAthlon 64 FX-55に関しては、キャッシュ容量よりも動作クロックを上げるアプローチを取っているので、こちらのほうが従来製品からの性能向上という面では安定しているといえる。

●メモリ性能

 では、続いてメモリアクセス速度を見ていきたい。テストはSandra2004 SP2bの「Cache & Memory Benchmark」で、グラフ5に全結果、グラフ6に一部結果を抜粋して数字を提示している。

【グラフ5】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark) 【グラフ6】Sandra 2004 SP2b(Cache & Memory Benchmark)

 まずグラフ5の方からだが、これはクロック、キャッシュ容量ともにセオリーどおりの結果といっていい。2.4GHz動作のAthlon 64 4000+/3800+は、キャッシュメモリの範囲内ではほぼ同じ速度で動作。Athlon 64 FX-55はクロックが速いぶん、キャッシュの速度も優れている。また、Athlon 64 FX-55/4000+は1MBのテストまでキャッシュの範囲となるが、Athlon 64 3800+は512KBで止まる、といった点である。

 グラフ6で具体的な数字を見ても、その傾向はよく分かる。Athlon 64 FX-55はAthlon 64 4000+に対して、動作クロックで約8%のアドバンテージがあるが、キャッシュのアクセス速度もきっちり8%前後高速となっている。

 しかしながら、気になるのが実メモリ領域の速度である。Athlon 64 FX-55がAthlon 64 4000+/3800+と比較して飛び抜けた値を出しているが、メモリクロックは動作クロックとは関係ないので、ちょっと不可解である。とくにAthlon 64 4000+はメモリが同じCAS Latency=2で動作しており、理論上はほぼ同等な結果となってもおかしくない。新しいCPUが出るときには、こうした状況が起こりやすいが、BIOSのチューニングの問題だろう。現時点ではAthlon 64 FX-55のほうが高速化のチューニングが進んでおり、Athlon 64 4000+は安定性を重視した方向に振っている可能性が高い。今後、BIOSの更新が進めば、このあたりは改善されるのが一般的である。

●アプリケーション性能

 さて、ここからは実際のアプリケーションを利用したベンチマークを実施することにしよう。テストは「SYSmark 2004」(グラフ7〜9)、「Winstone2004」(グラフ10)、「TMPGEnc 3.0 XPress」(グラフ11)の3本である。

【グラフ7】SYSmark2004 【グラフ8】SYSmark2004 - Internet Content Creation
【グラフ9】SYSmark2004 - Office Productivity 【グラフ10】Winstone 2004
【グラフ11】TMPGEnc 3.0 XPress

 これらを実施して気になった点が、以前に紹介した記事に比べると、どの環境の結果もやや低めの値が出るのだ(TMPGEncは当時は別バージョンを使っていたので該当しないが)。当時の環境と大きく違う点はビデオカードとService Pack 2であり、どちらかというとService Pack 2を適用したのが大きな理由だと想像している。

 このような状況を踏まえつつ、結果を見てみると、まず目に留まるのはAthlon 64 FX-55のパフォーマンスの高さである。SSE2/SSE3の性能やマルチスレッドの効果が大きいSYSmark2004のInternet Content CreationやTMPGEnc 3.0 XPressではPentium 4に及ばない結果も出ているが、それ以外はほぼ完勝といっていい。

 Athlon 64の2つについては、演算速度以外のファクターが影響するアプリケーションベンチということもあり、さすがにAthlon 64 4000+が優れた性能を発揮している。SYSmark2004のOffice Productivityに含まれるCommunicationテストで極端に低い値が出ているが、これは何度再計測してもこの程度の値しか出なかった。おそらくはCPU以外の要素(チップセットやマザーボードのドライバなど)が影響したのだろう。

 なお、こちらのテストにおけるAthlon 64 3800+とFX-53の比較以上の差が開いているのは、メモリのレイテンシの差があるためと思われる。このほかでは、キャッシュ差以上に演算性能の方が活きるテストなら、同等の結果が出る可能性があるが、そうした結果も一部に見られる。

●3D性能

 最後に3Dベンチマークをいくつか実行しておきたい。テストは「Unreal Tournament 2003」(グラフ12)、「Unreal Tournament 2004」(グラフ13)、「DOOM3」(グラフ14)、「3DMark05」(グラフ15)、「3DMark03」(グラフ16)、「AquaMark3」(グラフ17)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」(グラフ18)である。

【グラフ12】Unreal Tournament 2003 【グラフ13】Unreal Tournament 2004
【グラフ14】DOOM3 【グラフ15】3DMark05
【グラフ16】3DMark03 Build340 【グラフ17】AquaMark3(Average FPS)
【グラフ18】FINAL FANTASY Official Benchmark 2

 今回、Athlon 64 FX-55環境のみGeForce 6800 Ultraを使っているため、それだけで他の環境に対するアドバンテージを出すはずだが、過去に行なったGeForce 6800 GTとUltraの比較を参考にすると、フィルタ適用なしの場合の差はほとんどが5%未満、解像度が上がってもせいぜい10%となるはずのところ、結果を見るとビデオカードの性能差だけとは言い切れない大きな差がついている。

 当然ながらCPU側の性能差が結果に大きく影響するUnreal Tournament 2003のBotmatchや同2004の結果は軒並み10%前後の性能向上を見せており、3D性能については群を抜いたパフォーマンスを持っているといって差し支えないと思う。

 また、同じビデオカードを使っている環境でAthlon 64 4000+が抜きん出ているのも特筆できる点だ。Athlon 64シリーズは以前より3Dゲームにおけるパフォーマンスに定評があるが、今回の新製品では、さらに高いパフォーマンスを期待できるといえる。

●現時点で最高性能を持つといっていいAthlon 64 FX-55

 ということで、Athlon 64新製品のパフォーマンスを検証してきたわけだが、とくにAthlon 64 FX-55は見事としかいいようのない結果である。SSE2/SSE3やマルチスレッドなどIntel製品がアドバンテージを持つテストではさすがに苦しさを見せているが、そうした条件がないテストでは完勝といった雰囲気である。

 Athlon 64 4000+については、テストによってAthlon 64 3800+と同等かそれ以上というセオリーどおりの結果といえる。3Dゲームのベンチマークでは大幅な性能向上が見られるあたりは、うれしく思う人も多いのではないだろうか。

 価格だが、リテールパッケージの1,000個ロット時でAthlon 64 FX-55は827ドル、Athlon 64 4000+は729ドルとなっている。Athlon 64 FX-55の827ドルというのは発表日前のAthlon 64 FX-53と同じ価格であり、同価格で素直なパフォーマンスアップが期待できる意味で魅力的な価格付けだ。

 ちなみにAthlon 64 FX-53の今後については現時点で情報がないのだが、おそらくラインナップから消えるのではないかと思われる。価格改定という線もあり得るが、同スペックのAthlon 64 4000+が729ドルとより安い価格で登場するわけで、同じデスクトップ向けにブランド名以外に差がないCPUを売っていく理由はない。いずれにせよメインストリームセグメントの上限価格を引き上げてきたことは事実である。ということは、Athlon 64 FXとの差別化がしづらくなるわけで、この先AMDがどういった手を打ってくるか、まだまだ興味は尽きない情勢である。

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(2004年10月19日)

[Text by 多和田新也]


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