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Intelの2005年のデュアルコアCPU「Smithfield」




●ようやくベールが1枚はがれたSmithfield

 Intelが2005年に投入するデスクトップ向けデュアルコアCPUは「Smithfield(スミスフィールド)」。同社は、これまで“名無し”だった、この新デュアルコアCPUについて、多少の情報をアップデートし始めた。

図:CPUデスクトップ新フォーマット
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 まず、明らかになったのはSmithfieldが90nmプロセスで製造されるCPUで、2005年中盤に登場すること。チップセットは、2005年の「Glenwood(グレンウッド)」と「Lakeport(レイクポート)」がサポートする。パッケージは90nm版Pentium 4(Prescott:プレスコット)同様にLGA775が予定されている。

 2005年中盤というのが正確にいつ頃を指すのかは明らかではない。しかし、2005年前半の発表になるとしているソースもあるため、中盤といっても、それほど遅い時期ではないと見られる。

 デスクトップカテゴリとしては、パフォーマンス向けだけでなく、メインストリーム向けにも投入される。パフォーマンス向けで1スキュー、メインストリーム向けで2スキューの提供になりそうだと言われている。このことは、SmithfieldがPentium 4 Extreme Edition(XE)のような限定された高価格製品ではないことを示している。おそらく、400ドル台でも提供され、さらに時とともに200ドル台、さらに200ドル以下へと降りてくる可能性があると推測される。

 焦点のひとつであるTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)についても言及されている。それによると、パフォーマンス向けのSmithfieldは、2005年のマザーボード設計ガイドラインとしてIntelが以前にOEMに伝えた「2005 Performance FMB(Flexible Motherboard)」に合致。同じくメインストリーム向けのSmithfieldは「2005 Mainstream FMB」に合致するという。つまり、TDPは、従来の予定の枠を超えないというわけだ。

 ちなみに、2005 Performance FMBのTDP枠は125W、2005 Mainstream FMBのTDPは84Wとなっている。つまり、Smithfieldはコアをデュアルにして、その分トランジスタ数を増やしながらも、高クロック版で今のPrescottより10W大きい程度、低クロック版では84W以下にまでTDPを抑えることができるとIntelは言っているわけだ。

●90nmプロセスでデュアルコア化

 Smithfieldで最大のポイントは、このCPUが90nmプロセスであることだ。Intelの以前の計画では、デスクトップへ本格的にデュアルコアCPUを投入するのは65nmプロセス以降になる予定だった。しかし、Intelはデュアルコア計画を前倒しにし、それと同時に90nmでのデュアルコア化に踏み出すことにしたようだ。

 じつは、しばらく前に、IntelのデュアルコアデスクトップCPUには90nm版と65nm版があり、Intelはまず90nm版を投入、その後65nm版を2006年頃に投入するという情報があった。Smithfieldの概要は、この情報を裏付けている。

 Intelが90nmでデュアルコアにしたのは、投入時期を早めるためだと見られる。実績のあるプロセスで立ち上げた方が、新CPUを迅速に投入できるからだ。ライバルAMDも、90nmプロセスでデュアルコア化し、2005年中盤にOpteronで投入してくる。IntelはSmithfieldを90nmで製造することで、ちょうどAMDと同じタイミングに持ってくることができる。実際には、AMDだけでなく、CPU業界全体が雪崩を打ってマルチコアに向かっている。Intelは、そのトレンドに追いつくために、90nmでデュアルコアを急ぐ必要があったと推測される。

 このコラムでは、IntelのデスクトップデュアルコアCPUは、デュアルコア化で先行するモバイルCPU系のアーキテクチャを使う可能性があると推測していた。モバイル系CPUでは、2005年後半の「Yonah(ヨナ)」からデュアルコアを採用する。最初のYonahは、90nm版Pentium M(Dothan:ドタン)相当のCPUコアを2個搭載すると言われている。そのため、時期的に考えれば、Yonahをデスクトップに持ってくる可能性が高いと推測した。

 しかし、Yonahについては、非常に確度の高い情報筋が65nmプロセスだと語っており、90nmであるSmithfieldとは合致しない。また、その後、あるソースからデスクトップデュアルコアは、当面はNetBurst(Pentium 4)系アーキテクチャになるという情報も入っていた。

●はたしてNetBurst系かPentium M系か

 現在のところ、SmithfieldがNetBurst系なのかPentium M系なのか、確実な情報はない。しかし、Smithfieldが90nmプロセスであることは、同CPUがNetBurst(Pentium 4)系アーキテクチャである可能性を示唆している。それは、CPU開発サイクルを考えると、Smithfieldのベースには既存のCPUコア、あるいは既存コアに多少手を加えたを使った程度のCPUコアを使う可能性が高いからだ。

 IntelがSmithfieldへの方向転換を最終決定したのは今年前半だと見られる。それ以前からSmithfieldはバックアッププランとして存在したと推測されるが、Intelがメインのプランとしてリソースを投入してからそれほど時間は経っていないはずだ。つまり、開発期間は非常に短いと見られる。

 Intelの場合、CPUをフル開発する場合のサイクルは4年以上。そのため、1年半程度の短期間で製品を投入するためには、物理設計からすでに実証されているコアを使うのがベストな方法となる。最先端CPUでは、RTLがある程度固まってからの性能チューニングに膨大な時間がかかるからだ。

 その場合、Intelとしてもっとも使いやすい90nmプロセスのCPUコアは、Tejas(テハス)を破棄してしまった現在、PrescottとDothan(ドタン)の2種類ということになる。

 まず、Dothanの場合、すでにYonahの設計が進んでいるため、Dothanコアをデュアルにすること自体は難しくはないだろう。Intelにとって、開発という側面では、もっとも近道だ。ただし、問題もある。90nmのDothanをデュアルにして、果たしてターゲットとする性能レンジに届くのかどうか。65nm版のYonahになれば、トランジスタ自体が高速になるため、パフォーマンスレンジを上げることができる。しかし、90nmのDothanの場合、TDP枠を引き上げても、Intelの目指す性能レンジに達するかどうかは不鮮明だ。

 ただし、SmithfieldがDothanベースである可能性を示唆する材料もある。興味深いことは、サーバー&ワークステーション向けのDPクラスCPUに、Smithfieldに相当するCPUが登場していないことだ。Dothanベースだとしたら、当然、64bit拡張である「EM64T」はサポートされない。そうすると、サーバー&ワークステーションエリアには投入できず、PCエリアだけに止められるというのは、納得できるストーリーだ。ただし、実際には製品計画の変更がまだ顧客に伝えられていないだけというケースも考えられる。そのため、まだ不鮮明だ。

 Prescottコアをデュアルにした場合は、性能や機能面での懸念や問題は発生しない。性能と機能の両面で、現在のシングルコアPrescottを引き継ぐことができる。また、Prescottも、コア自体はすでに完成しているため、デュアル化のための開発はかなり短縮できる。

 しかし、この場合は、現状のシングルCPUコアで115Wに達しているTDPを、どうやって125W以下に押さえ込むかという問題が生じる。Intel CPUは、熱についてはかなりクリティカルな状況なので、NetBurst系デュアルにも疑問は残る。ただし、Intelが回路設計技術の改良などにより、TDPを引き下げることに成功した可能性もある。

 もちろん、この他にも、さまざまな可能性は想定できる。だが、いずれの場合も、それなりに困難が待っている。また、基本的な問題として、デュアルコアにした場合にはダイサイズ(半導体本体の面積)が大きくなるため、歩留まりが低下して製造コストが上昇する。

●縮小したPrescott 2MBの役割

 Smithfield登場を受けて、IntelのデスクトップCPUロードマップは再び大きく変わった。最近では、ほぼ1~2カ月置きに、Intelロードマップは揺れている。ロードマップから、Intelが苦しんでいる様子がありありとわかる。

 Pentium 4ラインでは、まず、FSB(フロントサイドバス) 1,066MHzの時期が後退した。当初は第3四半期中に投入されるはずだったPentium 4 Extreme Edition(0.13μm)のFSB 1,066MHz版(3.46GHz)は、第4四半期にまでずれ込んだ。そのため、第4四半期中盤遅くに投入される2MB L2キャッシュ版のPrescott(Prescott 2MB) 3.73GHzとの時間差がほとんどなくなってしまった。

 Prescott 2MBの位置づけも大きく後退した。以前の計画では、Prescott 2MBは「Pentium 4 7xx」シリーズとして今年第4四半期に登場。当初はPentium 4 Extreme Editionと同じ価格帯で提供されるものの、その後はやや下の価格向けにまで降りてくる予定だった。つまり、700番台のProcessor Numberと2MB L2キャッシュとFSB 1,066MHzがより価格的に手頃な技術やブランドになるはずだった。

 だが、現在のIntelのロードマップでは、Prescott 2MBも依然としてPentium 4 Extreme Editionブランドのままで、Processor Numberはつけられていない。価格帯もPentium 4 XEランク、つまり1,000ドルラインのままだ。IntelはPrescott 2MBを中継ぎとしてプロモートする意欲を失ったように見える。その結果、700番台のProcessor Numberは、デスクトップでは当面欠番となることになった。

 Pentium 4 XEとPrescott 2MBのこうした位置づけの変更は、IntelがSmithfieldを差別化するポイントを増やすための方策かもしれない。すなわち、Smithfieldはデュアルコアというだけでなく、FSB 1,066MHzを備え、新しい700番台のナンバーをつけることができる。総合的に見て魅力的なCPUになるというわけだ。また、Prescott 2MBの役割縮小は、Smithfieldが順調に行く気配が見えてきたため、Prescott 2MBの中継ぎの重要性が薄れたとIntelが判断したためかもしれない。

●Prescott 4GHzも来年に延期

 Prescottの周波数向上も、後ろへずれた。Intelは年内に4GHzのPentium 4 580を投入する予定だった。だが、4GHzは1四半期後ろの2005年第1四半期へと遅れた。これによって、IntelデスクトップCPUの周波数向上は年1.25倍から1.19倍へとペースダウンした。Prescott 2MBの周波数向上も、不明瞭になってしまったため、Intel CPUの4GHz以降の周波数ロードマップはまったく見えなくなった。

 この変化も、Smithfieldのためである可能性がある。Smithfieldがどんなアーキテクチャを採るにせよ、動作周波数はある程度低くなる。Yonahベースなら、もちろん高クロックは達成できないだろうし、NetBurst系だった場合もTDPを下げるためにクロックを抑える必要がある。コアが2倍になりトランジスタ数が増える分、消費電力を一定枠に納めるには、クロックと電圧を下げる必要があるからだ。

 つまり、Intelは動作周波数を上げることができないSmithfieldが控えているために、Prescott系の周波数を上げられないのかもしれない。この時期になれば、Smithfieldの動作周波数は、ある程度目処がついているはずなので、その可能性も考えられる。

 まだまだ謎が残るSmithfieldとIntelのロードマップ。おそらく、今年9月のIntel Developer Forum(IDF)では、Smithfieldについて何らかのアップデートがあると推測される。

図:Intel PC向けCPU推定ロードマップ
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(2004年8月5日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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