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長期記憶でOpus 5超えをうたう「Hy-Memory-30B-A3B」、無償公開

 AIエージェントの記憶の質は、会話のどの部分を書き残すかで決まる。その判断に特化した小型AIモデルが「Hy-Memory-30B-A3B」だ。TencentのAI開発チームTencent Hunyuanが10月16日(日本時間)、オープンウェイト(モデルの重み)としてHugging Faceで公開した。会話から記憶を作成して保存する性能の平均スコアは、同社の計測でAnthropicの「Claude Opus 5」を上回った。ライセンスはApache 2.0で、商用利用・改変・再配布が無償で認められる。

 Hy-Memory-30B-A3Bは、AIエージェントに長期記憶を持たせる外部の仕組み「メモリフレームワーク」の中で、会話の内容を記憶データとして保存する処理だけを専門に担うAIモデルである。会話の何を記憶するか、どの程度細かく書き残すか、新しい情報で過去の記憶をどう更新するか。保存にまつわるこの3つを判断する。

 「Mem0」や「MemOS」、「Hy-Memory」といったメモリフレームワークは、この判断を外部のAIモデルに任せる設計で、どのモデルに任せるかは利用者が設定で指定する。AIエージェントを自分で構築・運用する人なら、「DGX Spark」のような大容量VRAMを使える環境で本モデルを動かし、設定で指定するだけで汎用AIモデルから置き換えられる。

 役割を保存に絞ったことで、モデル自体は小型だ。内部を役割の異なる小さなネットワークに分割し、必要な部分だけを動かすMoE(Mixture-of-Experts)型で、総パラメータ数は30B(300億)。1回の処理で動くアクティブパラメータ数は約3B(30億)にとどまる。

Tencent Hunyuanが公表した4フレームワーク平均のベンチマーク比較。Hy-Memory-30B-A3Bは総合55.49で、Claude Opus 5の54.62を上回った

 Tencent Hunyuanが公表したベンチマークでは、4種のメモリフレームワーク上で6指標の平均スコアを比較した。総合は55.49で、Claude Opus 5の54.62、オープンウェイトの「DeepSeek-V4.1-Flash」の53.64を上回った。本モデルの学習に使っていないフレームワーク「EverMemOS」上でも、56.89対54.04でClaude Opus 5を引き離している。

 個別の指標では、Claude Opus 5に届かない項目もある。Mem0上の会話記憶テスト「LoCoMo」は59.54で、Claude Opus 5の69.47に大差で及ばない。Hy-Memoryフレームワーク上の平均も60.55対60.53の僅差で、優位はあくまで全体平均での水準だ。

Hy-Memory-30B-A3Bの2段階学習の概要。蒸留(OPD)と強化学習を、実運用と同じメモリフレームワーク上で実行する

 性能を支えるのは、Tencent Hunyuanがこのモデルに施した2段階の学習だ。第1段階の「Memory On-Policy Distillation(OPD)」では、実運用と同じフレームワーク上で、教師役である自社の大型モデルの判断を手本として学習(蒸留)する。第2段階の「Attributed Memory RL」は強化学習で、書き残した記憶のどの部分が回答の正解に貢献したかを採点し、モデルを更新する。実際に使われる環境の中で学習させるため、未学習のフレームワークにも性能が引き継がれるという。

 フレームワーク側の「Hy Memory 2.0」も、10月16日にまとめて公開された。本モデルとの組み合わせは必須ではなく、OpenAI互換のLLMであれば書き込み役に指定できる。Hy Memory 2.0は、雑談・事務作業・コーディングの3種類の場面ごとに記憶の持ち方を変えるPython製の記憶エンジンで、pipコマンドで導入できる。

 その上に構築されたのが、デスクトップ/CLIツール「MemHub」だ。「Claude Code」や「Cursor」など複数のAIツールが別々に残す会話履歴や作業記録を、利用者が許可した範囲で手元の1カ所に集約する。あるツールでの作業の記憶を別のツールから参照できるようにするもので、集約したデータは手元のディレクトリで管理するローカルファーストの設計をうたう。