やじうまミニレビュー
1万円台のAIメガネ「BV300」を試したら、最大の難点は“顔”だった
2026年10月23日 06:04
AIスマートグラスといえばMetaとRay-Banが組んだ製品が有名だが、価格は気軽に試せる金額ではない。だが巷では1万円程度の製品もあり、Blackviewの「BV300」もそのうちの1つだ。800万画素カメラとオープンイヤー型スピーカー、マイクをメガネに仕込み、音声アシスタントや翻訳、カメラで見たものの解説までこなすという。それでいてAliExpressでの価格は1万円台だ。
今回、実機を試す機会を得たので、どこまで実用になるのかを見ていきたい。
ディスプレイはない。音声とカメラに特化した「AIメガネ」
最初に断っておくと、BV300にディスプレイ機能はない。ユーザーや外界とグラスをつなげるインターフェイスはカメラ、マイク、スピーカーだけ。処理の多くはペアリングしたスマートフォンで行なっており、その結果はスマートフォンの画面に表示されるか、テンプル(つる)に内蔵されたスピーカーから音声で返ってくる。
「スマートグラス」というと映像が半透過に映るARグラスのようなものを想像するが、そこに期待すると肩透かしを食らうので、低価格製品なりの割り切りが必要だ。
主な仕様を見ると、カメラがソニー製の800万画素センサーで、3,280×2,464ドットの静止画撮影のほか、1200Pの動画撮影に対応する。通信はBluetooth 5.4および2.4GHz帯のWi-Fiを備え、音声周りは左右のデュアルスピーカーとデュアルENCマイクを搭載。バッテリは260mAhで、音楽再生で最大10時間、動画撮影では24分間となっている。IP54準拠の防塵防滴性能を備え、重量は約42gだ。レンズは調光レンズと、サングラスレンズの2種類が付属する。
AI機能はスマートフォン用専用アプリ「Da Echo」で処理する仕組み。というより、大半がクラウドで処理している。つまりメガネ単体で賢いわけではなく、あくまでスマートフォンの耳と目を顔に移植した、と考えるのが正しい。
ペアリングは2段階。アプリを先に、Bluetooth設定は後
セットアップで注意したいのはペアリング手順だ。BV300はBluetooth LEによる制御系の接続と、オーディオ用のBluetooth接続を別々に持っている。そのため、スマートフォンのBluetooth設定から先に接続してしまうと、シャッターを押すといった制御系の機能が使えない。必ず専用アプリのDa Echoから先にペアリングしてLEを掴ませ、その後にスマートフォンの設定画面でオーディオ側をペアリングする、という順番を守る必要がある。
この順序はアプリ側でも案内されるのだが、Bluetooth機器に慣れている人ほど「設定からつなげばいいんでしょ」と手が勝手に動いてしまうので要注意だ。
Bluetoothは、音声には十分な帯域を提供するが、撮影した写真や動画の転送には不足気味だ。そこでBV300対応アプリのDa Echoでは、BV300に2.4GHz帯のWi-Fiホットスポットを一時的に立てるコマンドを投げ、スマートフォンをそこに接続してダウンロードする仕組みを採用する。
なお、使われているチップセットはJieLiの「JL7018F3」とAllwinnerの「V821L2」とされている。前者はメインのコントローラで、音声の処理やBluetooth接続も兼ねている。一方、後者はカメラのISPに加えWi-Fi転送などを担う。
プロセッサとしてはV821L2のほうがRISC-V内蔵で強力だ。しかし本製品は消費電力を最小限に抑えないとあっという間にバッテリが空になってしまう。そのため、JL7018F3がメインの処理を担い、必要に応じてV821L2を起こす仕組みのようだ。
装着感は普通のメガネに迫る。ただしレンズが大きく夏は蒸れる
装着感については、正直思った以上に良い。約42gという数字は一般的なプラスチックフレームのメガネより少し重い程度で、テンプルにバッテリやプロセッサといった電子部品が詰まっている割には、重心の偏りも気にならない。あえてディスプレイ機構を省いたのが功を奏しているのだろう。たまにしかメガネをかけない筆者でも違和感はなかった。
ただし、レンズ部分が大きく、かつカメラやスピーカーを収めるためフレーム全体が太く、顔との隙間が少ない。夏場に試した限りでは、筆者が普段かけているメガネと比べて明らかに蒸れる印象だった。汗をかくシーンでは、IP54の防滴性能が逆に頼もしい。
幸いなことに、レンズはユーザー自身で取り外し/付け替えができ、後ろから押し出すと簡単に外れるので、伊達メガネとして使うことが可能なのだ。今回は標準でクリアタイプのレンズが装着済みの状態で送られたが、付属のサングラスレンズに付け替えれば、屋外用のAIサングラスに早変わりする。
翻訳と「見ているものの解説」はなかなか楽しい
スマートフォン側のDa Echoアプリでは、うたい文句通りいろいろなAIアプリが利用できる。1つずつ詳細には紹介しないが、以下のような機能となっている。
AIアシスタント
テンプル左のボタンや「Hello Echo」で起動、音声で質問するとスマートフォン側で処理してテキスト(スマートフォン画面)か音声で返ってくる。「今写っているものは何」と聞くか、右テンプルボタンのダブルクリックで撮影して、シーンを認識して回答する。
認識精度はそこそこでレスポンスもいいが、日本語の発音は期待しないように。トイレのリモコンを認識させたところ、「ビデビデ洗浄!!」と強く発音され鼻水を吹いてしまった。また、履歴削除もないようなので注意したい。
翻訳機能は使えそう
翻訳機能は2つある。1つはいわゆる同時翻訳で、スマートフォン側で音声を拾い、それを翻訳してからBV300のスピーカーで再生するもの。これは主に話者がプレゼンテーションや講義をするシーンで役立つものだ。
もう1つはトーク通訳で、スマートフォンで1つの言語、BV300で1つの言語を指定。スマートフォンを相手に渡しておき、相手がスマートフォン側のマイクに向かって喋ると翻訳後の音声がBV300で流れ、BV300をかけている自分が喋るとスマートフォン側に翻訳後のテキストを表示する。簡単に中国語と日本語で翻訳してみたが、反応がちょっと遅いものの精度はまずまずという印象だった。
そのほか
このほか、AIにメモを記憶させたり、複数の写真を組写真にしてキャプションを付けたりする機能が搭載されている。
もちろん、こうした機能はすべてスマートフォンとインターネット接続があってこそ動く。メガネ側には音声の入出力とカメラしかないため、スマートフォンを家に忘れたら、撮影だけが可能なメガネになってしまう(そんなケースはめったにないが)。
そしてちょっといただけないのが、製品販売ページでうたわれているGPTやGemini、ClaudeといったAIモデルが明示的に選択できないこと。試しにAIアシスタントに聞いたら、「小可」という中国電子科技集団が開発したモデルだという回答だった。
画質は「至って普通」。記録用・メモ用と割り切る
肝心のカメラの画質だが、一言でいえば「至って普通」だ。800万画素という画素数から想像される通り、20年前のコンパクトデジカメ並みだ。フォーカスは固定のパンフォーカスで、ピントが迷うことがないのは撮り損ねが減るという意味で歓迎できる。意外だったのは夜間の撮影性能で、暗所でも思いのほか写る。
ちなみに、実際に出てくる写真は、Da Echo側が超解像処理をしたと思われる、6,560×4,928ドットのものとなっていた。
一方で、明暗差の大きいシーンでは若干白飛び気味になり、画面内に照明や街灯が入ると盛大にフレアが発生するので、逆光気味の構図は苦手と考えておいたほうがいい。加えて、撮影時にプレビューを確認する手段がないため、フレーミングはどうしても適当になる。水平が傾いていたり、狙った被写体が端に寄っていたりすることが多い。他人に見せる作品を撮るカメラではなく、「今見ているものを残しておく」ための記録用と割り切ったほうがいい。
動画も同様で、手ブレ補正……というより頭ブレ補正が弱い。歩きながら撮ると画面がかなり揺れるので、移動しながら撮影するより、立ち止まって周囲を見渡すように撮るほうが見やすい映像になる。また、自分が意識しないうちに「あ、俺はあのときそっち向いていたのか」と後から気付かされるシーンも多い。一人称視点の映像という性質上、頭の動きがそのまま映像になる点は常に意識しておく必要がありそうだ。ちなみに写真および動画撮影中は左手側のLEDが光るようになっており、周囲に撮影中であることを通知する。
スピーカーについても触れておこう。まずいえるのは音漏れがかなり激しく、電車や会社内では音声再生用として使わないほうがいいという点。そして音質的にも高音寄りで、低音はスカスカなので、音楽鑑賞用には向かない。車通りが多い道路や電車内で聞くのにも適さず、どちらかといえば室内向けだろう。
ちょっと気になったのが、起動音の「Power On」と終了音の「Power Off」の発音がなぜかかなり似ていて、ノイズがある環境では特に識別しにくいこと。電源をオンにしたのかオフにしたのか区別がつかない。これは次期モデルで真っ先に改善してもらいたいポイントだ。
割り切れば1万円の価値はある。ただし最大の問題は……
弱点や不足はあるが、音声とカメラだけという構成を理解したうえでBV300を使うぶんには、低価格に見合った体験を提供してくれる。オープンイヤー型のBluetoothイヤフォンとしても機能し、ハンズフリーで一人称視点の写真や動画が撮れ、翻訳や画像認識といったAI機能も一通り試せる。「AIスマートグラスとは何か」を体験する入門機としては及第点だ。
ただ、筆者が最後に指摘しておきたい最大の「問題」は、実は機能でも性能でもない。「装着した人のキャラが変わる」ことだ。大ぶりなレンズとボリュームのあるフレームは、普段細身のメガネをかけている人間がかけると、同じ人物とは思えないほど印象が変わる。子どもに装着時の印象を聞いてみたところ、「なんか宮川大輔さんみたいだ」と言われてしまった。
購入を検討している方は、まず自分がこのフレームの似合う顔かどうかを、価格や機能よりも先に考えてほしい。そこさえクリアできれば、1万円台で手に入るAIメガネとして十分に楽しめる製品だ。







































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