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FSBクロック133MHzをサポートした810E搭載マザーボード登場



 FSBクロック133MHz版のPentium III 533B/600B MHzがアキバのショップの店頭に並んでから約3週間が経った。本来、FSBクロック133MHzで動作するPentium IIIと同時に発表されるはずであったIntel 820チップセット(コードネーム:Camino)が、出荷直前でメモリ周りにトラブルが見つかって発表が延期になったことで、CPUは登場したものの、FSBクロック133MHzを公式サポートするIntel純正チップセットが存在しないという妙な事態になってしまった。Intel 810Eは、FSBクロック133MHz版のPentium III 533B/600B MHzと同時に発表されたビデオ機能統合型チップセットで、Intel初のFSBクロック133MHzを公式にサポートしたチップセットでもある。CPUの登場からはやや遅れたが、ようやくIntel 810E搭載マザーボードがアキバの店頭に登場したので、早速その実力を検証してみたい。


●ビデオ機能統合型チップセットIntel 810Eとは?

 Intel 810Eチップセットは、その型番からもわかるように、Intel 810チップセットのマイナーチェンジ版だ。'99年4月に発表されたIntel 810チップセットは、Intel初の統合型チップセットで、2D/3Dビデオ機能をチップセットに統合していることが特徴だ。統合型チップセットは、ビデオカードのコストを削減できるため、いわゆる1,000ドルPCなどと呼ばれる低価格PCに向いている。Intel 810搭載マザーボードについては、本連載でも以前取り上げているので、詳しくはそちらを参照していただきたい。

 Intel 810/810Eチップセットは、GMCH(Graphics Memory Controller Hub)とICH(I/O Controller Hub)、FWH(Firmware Hub)と呼ばれる3つのチップから構成される。GMCHは、その名前の通り、グラフィックスやメモリ、キャッシュ周りの制御を担当するチップで、従来のチップセットではノースブリッジと呼ばれていたチップに相当する。ICHは、PCIバスや周辺機器周りの制御を担当するチップで、従来はサウスブリッジと呼ばれていたチップに相当する。Intel 810チップセットでは、GMCHとICHにそれぞれ機能の異なる2つのバージョン(GMCHとGMCH0、ICHとICH0)があり、その組み合わせによって、上位から順にIntel 810-DC100、Intel 810、Intel 810-Lという3つの製品バリエーションが存在している。

Intel 810EのGMCH(82810E) Intel 810EのICH(82801)

 Intel 810Eは、Intel 810-DC100と機能的にはほぼ同等だが、FSBクロック133MHzのサポートが追加されたことが特徴だ(ICHやFMHは、Intel 810-DC100と同じチップを採用)。FSBクロック133MHzを公式サポートしたチップセットとしては、VIA TechnologiesのApollo Pro133/133Aが既に登場しているが、Intel製チップセットとしては、Intel 810Eが初の製品となる。また、Intel 810-DC100では、4MBのディスプレイキャッシュ(3D描画の際に、Zバッファを展開する領域などに使われる)を利用できるが、Intel 810Eでは、ディスプレイキャッシュのインターフェイスのクロックも100MHzから133MHzに向上している。ただし、メモリバスクロックは100MHzのままなので(PC100対応)、メモリバスクロック133MHzをサポートしているApollo Pro133/133Aに比べると、システム全体の性能向上の割合は、それほど大きくないようだ。また、初期のIntel 810には、Pentium IIIで追加されたストリーミングSIMD拡張命令に含まれるある命令を実行すると、システムがハングアップしてしまうというバグがあったが、Intel 810Eではそうした問題も解消されている。


●最初に登場したIntel 810E搭載マザーボード「PIIISED」

 SUPERMICROのPIIISEDは、Intel 810Eを搭載したマザーボードとして、最初に秋葉原のショップの店頭に登場した製品である。PIIISEDは、ATXフォームファクターに準拠したマザーボード(Slot 1対応)で、DIMMスロット×2、PCIスロット×6、AMRスロット×1を備えている。ATXフォームファクターのマザーボードとしては、標準的な仕様である。ただし、Intel 810/810Eは、ビデオ機能を内蔵しているため、AGPスロットは備えていない。

 FSBクロックはマザーボード上のジャンパーによって設定できるが、66/100/133MHzの三段階のみであり、マニアに人気のAX6BC Proなどのように細かくFSBクロックを設定したり、コア電圧を変更したりする機能は持っていない。ただし、クロック倍率の変更は、BIOSセットアップ画面上から行なえる。仕様的には、いわゆる低価格PC向けのマザーボードという印象が強い。

SUPERMICROのIntel 810E搭載マザーボード「PIIISED」 FSBクロック設定用のジャンパー


●FSBクロック133MHz化によるパフォーマンスの向上はほとんどない

 Intel 810Eに対するユーザーの関心は、やはりFSBクロックが133MHzになったことで、どれだけパフォーマンスが向上するかということであろう。現在のIntelの主力チップセットであるIntel 440BXを搭載したマザーボードでも、FSBクロックを133MHzやそれ以上に設定できる製品は多いが、Intel 440BXで公式サポートされているのはあくまで100MHzまでなので、それ以上のFSBクロックに関しては、ユーザーの自己責任において試すことになる。Intel純正チップセットで、FSBクロック133MHzを公式サポートしている製品は現時点ではIntel 810Eしかない。

 そこで、FSBクロック133MHzとFSBクロック100MHzのパフォーマンスの違いを見るために、Pentium III 600B MHz(133MHz×4.5)とPentium III 600MHz(100MHz×6)を使って、コアクロックが同じでも(600MHz動作)、FSBクロックが100MHzから133MHzに向上することで、どれだけ性能が変わるかをテストしてみることにした。テスト環境は、以下に示したとおりだ。

 ベンチマークテストプログラムには、Ziff-Davis Inc,のWinBench 99 version 1.1に含まれるCPUmark 99とBusiness Graphics WinMark 99、High-End Graphics WinMark99、同じくZiff-Davis Inc,の3D WinBench 99 version 1.2の3D WinMark 99、FutureMarkの3DMark99 Max、およびゲームソフトのTurok2:Seeds of Devilを利用した。ベンチマークテストプログラムは、基本的に1,024×768ドット16bitカラー/リフレッシュレート85Hzで実行した(3DMark99 Maxは、800×600ドット16bitカラーで計測。Turok2は、800×600ドット16bitカラーと1,024×768ドット16bitカラーで計測)。なお、FSBクロック100MHzとFSBクロック133MHzのそれぞれについて、メモリのCAS Latencyの設定を2と3に変更して、ベンチマークを行なった。

 結果は、以下の表に示したとおりだが、FSBクロックを100MHzから133MHzに上げても、CPUmark 99やBusiness/High-End Graphics WinMark 99、Turok2のフレームレートは全くといっていいほど変化がない。なお、今回のテストでは、コアを600MHzで動作させた場合、3DMark99 Maxを実行させると、いつも途中でハングしてしまい、正常にベンチマークをとることができなかった。PIIISEDでは、チップセットに一切ヒートシンク類が装着されていないが、ハングアップした状態のGMCHを触るとかなり高温になっているため、熱暴走の可能性が高い。そこで、小さなチップセット用ヒートシンクを装着して、クロック倍率を変更できるEngineering Sample品(ES品)のPentium III 600MHzを利用して、100MHz×4の400MHz動作と133MHz×3の400MHz動作でテストしてみたところ、無事に3DMark99 Maxを実行することができた。Intel 810/810Eチップセットでは、Intel 740の後継であるIntel 752(幻になってしまったが)相当の描画コアを内蔵しているが、Intel 740もかなり発熱が大きいビデオチップであったことを考えると、Intel 810/810Eにもやや発熱に関して不安がある。3DMark99 Maxは、特にビデオチップに対する負荷の高いベンチマークプログラムではあるが、やはり途中でハングしてしまうのは問題である。ヒートシンクを装着して欲しかったところだ。

【WinBench 99】
FSBクロック×倍率動作クロックCAS LatencyCPUmark 99Business Graphics WinMark 99High-End Graphics WinMark 993D WinBench 99
100MHz×6600MHzCL=343.0153466380
100MHz×6600MHzCL=243.3156470385
133MHz×4.5600MHzCL=343.1154468379
133MHz×4.5600MHzCL=243.3155467385

【3DMark99Max & Turok2】
FSBクロック×倍率動作クロックCAS Latency800×600ドット
16bitカラー
800×600ドット
16bitカラー
1024×768ドット
16bitカラー
100MHz×6600MHzCL=3測定不可42.527.6
100MHz×6600MHzCL=2測定不可42.827.9
133MHz×4.5600MHzCL=3測定不可42.727.6
133MHz×4.5600MHzCL=2測定不可42.828.0

【WinBench 99】
FSBクロック×倍率動作クロックCAS LatencyCPUmark 99Business Graphics WinMark 99High-End Graphics WinMark 993D WinBench 99
100MHz×4400MHzCL=329.5119321381
100MHz×4400MHzCL=229.7119320386
133MHz×3400MHzCL=329.5118 320381
133MHz×3400MHzCL=229.7119321386

【3DMark99Max & Turok2】
FSBクロック×倍率動作クロックCAS Latency800×600ドット
16bitカラー
800×600ドット
16bitカラー
1024×768ドット
16bitカラー
100MHz×4400MHzCL=33,06838.927.2
100MHz×4400MHzCL=23,13439.327.5
133MHz×3400MHzCL=33,06738.827.2
133MHz×3400MHzCL=23,12439.327.4

【テスト環境】
CPU:Pentium III 600BMHzまたは600MHz
メモリ:133MHz対応SDRAM 128MB(133MHz時:CL=3)
HDD:IBM製 DHEA-34330(Ultra ATA/33対応:4.3GB)
OS:Windows 98+DirectX 6.1

 普通に考えると、FSBクロックが100MHzから133MHzに向上することによって、CPUとチップセットのノースブリッジ(Intel 810Eの場合はGMCH)を結ぶバス(Front SideBus)のバンド幅が広がる(800MB/秒→1.064GB/秒)ので、コアクロックが同一でもシステム全体のパフォーマンスは多少向上すると予想されるのだが、今回のテストの結果からはそうした傾向は見えてこない。以前、本連載でApollo Pro133搭載マザーボードをテストしたときには、FSBクロックを100MHzから133MHzに上げることで、わずか2~3パーセント程度ではあるがベンチマーク結果が向上したことからも、今回の結果には疑問が残る。メモリバスクロックが100MHzのままであることや、L2キャッシュの効果が大きい(L2キャッシュにベンチマークプログラムの大半のコードが入る)ために、FSBクロックの向上が結果に影響しにくいといった原因もあるだろうが、詳しい理由は不明である。やや期待外れの結果に終わったといえる。もちろん、BIOSのアップデートなどによって、さらに性能が引き出される可能性もあるだろうが、今回のテスト結果から判断する限りにおいては、Intel 810E搭載マザーボードをわざわざ選択するメリットはほとんどないといえる。

 Intel 810Eの統合ビデオ機能のパフォーマンスについても、基本的にはIntel 810と変わらないようだ。2D描画性能は通常のビジネスアプリケーションを動かすには十分だが、3D描画性能は、最新の高速ビデオチップに比べるとかなり劣る。それでも、Turok2の結果をみればわかるように、800×600ドットモードまでなら快適に遊べる目安である30フレームを超えているので、ちょっとゲームを楽しむ程度ならそれほど不満はない。


●133MHz対応マザーボードならApollo Pro133/133A搭載マザーボードがお薦め

 FSBクロック133MHzを公式にサポートしているマザーボードとしては、Intel 810E搭載マザーボード以外に、Apollo Pro133/133A搭載マザーボードが市場に既に出回っている。どちらも、本連載で取り上げているが、FSBクロック133MHz版のPentium IIIと組みあわせて利用するなら、Intel 810E搭載マザーボードよりもそちらのほうが向いている。Intel 810Eは、ビデオ機能を内蔵した統合型チップセットであるため、描画性能に不満があっても、AGP対応の高速なビデオカードを利用することはできないのに対し、Apollo Pro133/133Aなら、AGP 2XモードやAGP 4Xモード(Apollo Pro133Aのみ対応)のビデオカードを利用することができるからだ。やはり、Intel 810Eは、FSBクロック66MHzのCeleronと組みあわせて、低価格PCやスモールフォームファクターPC(小型PC)を実現するのに向いたチップセットであり、FSBクロック133MHz版のPentium IIIと組みあわせるには、力不足である。

 Intel製チップセットの本命は、やはり延期になったIntel 820チップセットである。Intel 820チップセットの登場もそう遠くないといわれているので、FSBクロック133MHz版のPentium IIIや近日中に登場が予定されている新Pentium III(コードネーム:Coppermine)と組みあわせて最速マシンを作りたいのなら、しばらく様子を見るほうが賢明であろう。

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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp