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今後の3Dグラフィックスシーンを変えるか!?
GeForce 256搭載ビデオカード登場



 最近のPCパーツ、特にビデオカードの製品サイクルはあまりにも速い。ほんの数カ月前に登場した最新ビデオカードが、もう旧世代になってしまうほどである。技術の進歩には目を見張るものがあるが、はっきり言って付いていけないというのが正直なところだろう。

 そんな中、またもや新しいビデオカードが秋葉原に登場した。コンシューマー向けビデオチップとして初のハードウェアジオメトリエンジンを備えたNVIDIAの最新ビデオチップ「GeForce 256」を搭載するビデオカードがそれだ。今後のPCにおける3Dグラフィックスシーンを大幅に変えてしまう可能性を秘めていることもあって、発売前からかなり注目を集めており、もちろん発売開始から好調なセールスを記録しているようだ。今回はそのGeForce 256を搭載する初のビデオカードとして秋葉原に登場した「3D Blaster GeForce」を取り上げることにする。


■初のGeForce 256搭載ビデオカードは、クリエイティブメディアの3D Blaster GeForce

 9月1日に発表されたNVIDIAの最新ビデオチップ「GeForce 256」。ハードウェアジオメトリエンジンをコンシューマー向けビデオチップとして初めて搭載することにより、これまで考えられなかったほど高い3D描画能力が実現されていることは、PC Watchなどで既に報じられているとおりで、読者のみなさんも多くの方がご存じのことと思う。

 AGP 2X/4Xサポート、256bitのコアインターフェイス(メモリバスは128bit)、4パイプラインのレンダリングエンジン、ジオメトリ演算の大部分を占めるトランスフォーメーションとライティングの処理を行なうハードウェアジオメトリエンジンの搭載などにより、15Mトライアングル/秒、フィルレート480Mピクセル/秒という、従来を大幅に上回る3D描画能力が実現されている。チップに関する詳しい解説はIDFレポートなどを見ていただくとして、ここではGeForce 256を搭載するビデオカードとして秋葉原に初登場した製品の概要を紹介していこう。

 先週末秋葉原に登場した、初のGeForce 256搭載ビデオカードは、クリエイティブメディアが発売する「3D Blaster GeForce」である。

 3D Blaster GeForceは、GeForce 256搭載ビデオカードとしてほぼ標準的な仕様の製品であると考えていいだろう。搭載されるGeForce 256のコアクロックは120MHz、メモリクロックは166MHz。これは、RIVA TNT2 Ultraと比較して遅くなっている(RIVA TNT2 Ultraのコアクロックは150MHz、メモリクロックは183MHz)。しかしGeForce 256に搭載されるトランジスタ数が2300万個とRIVA TNT2の倍近くになっていることにより、消費電力が高く、発熱量も増えているため、チップにはファンが取り付けられている。

従来の3D Blasterシリーズ同様、ドライバの「Tweak」オプション内でビデオメモリのクロック調整が可能となっている。標準では166MHzに設定されているが、150MHz~183MHzの間で1MHz刻みで設定可能だ
 ビデオメモリとしては、SDRAMを32MB搭載している。GeForce 256自体は最大128MBのローカルメモリをサポートしているが、ビデオメモリの増設は不可能で、32MB以上のビデオメモリを搭載する製品も用意されていない(エルザジャパンからは、ビデオメモリを64MB搭載するワークステーション向け製品が発売される)。ちなみに搭載されるSDRAMチップは5nsのもので、最大200MHzまで対応できる。つまり、ある程度のオーバークロック耐性があるものと考えられる。実際、ドライバにはメモリクロックユーティリティが用意されており、最大183MHzまでオーバークロックが可能となっている。

 製品に付属するソフトウェアは、ドライバおよびユーティリティが含まれるCD-ROMと、ソフトウェアDVDプレーヤーの「WinDVD」のみとなっており、ゲームソフトなどは付属していない。

 販売価格は、メーカー希望小売価格が34,800円、実売価格は3万円前後となっている。

 ところで、この製品が「3D Blaster GeForce」の製品名で発売されるのは日本のみで、アメリカでは「3D Blaster Annihilator」という製品名で発売される。実際、3D Blaster GeForceに同梱されるドライバCD-ROMには「3D Blaster Annihilator」とプリントされている。もちろん製品の仕様はどちらも全く同じである。また、アメリカではビデオメモリとしてSDRAMではなくDDR SDRAMを搭載する「3D Blaster Annihilator Pro」の販売も予定されているが、こちらの日本での販売は未定のようだ。


■現状のDirect3Dソフトでは、GeForce 256のパフォーマンスを最大限に引き出せない

 今回も、これまでビデオカードを扱った場合と同様のベンチマークテストを行なってみた。ただし、今回からOpenGLベースのゲームソフトを利用したベンチマークテストについては、QUAKEシリーズの最新作であるQUAKE III ARENAのデモ版、QUAKE III TEST Ver1.80を利用することとした。もちろん、テスト環境については従来と同じである。

 また、3D Blaster GeForce用ビデオドライバは、製品に付属しているものではなく、近々配布が予定されている最新ドライバのβ版を利用している。この点はあらかじめご了承願いたい。

・2D描画パフォーマンス

 2D描画パフォーマンスの測定は、従来通りZiff-Davis,IncのWinBench 99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を利用した。1,024×768ドット、リフレッシュレート85Hz、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定してある。

【WinBench 99 Ver1.1】
Business Graphics WinMark 99High-End Graphics WinMark 99
1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp
3D Blaster
GeForce
189190544545
RAGE
MAGNUM
174161520511
SPECTRA
5400PE
183178525522
Millennium
G400 MAX
194190550541
Voodoo3
3500TV
180177520511

 結果は、これまで扱ったビデオカードと比較しても大きな差は見られなかった。2D描画パフォーマンスは既に飽和状態にあるため、この結果自体に違和感を覚えることはなく、十分納得できる。

・Direct3D描画パフォーマンス

 次に、Direct3D環境での総合的な3D描画パフォーマンスを、FutureMarkの3DMark99 Maxを利用して計測した。800×600ドット、1,024×768ドット、1,280×1,024ドットのそれぞれの解像度について、16bitカラーモードと32bitカラーモードで計測を行なった。

【表1:3DMark99 Max】
800×600 16bpp800×600 32bpp1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp
3D Blaster
GeForce
4,6704,6754,6554,628
RAGE
MAGNUM
4,5173,3582,7712,186
SPECTRA
5400PE
4,9544,8314,4994,061
Millemmium
G400 MAX
5,0024,9754,8734,487
Voodoo3
3500TV
4,940d/s4,789d/s

1,280×1,024 16bpp1,280×1,024 32bpp
3D Blaster
GeForce
4,6593,349
RAGE
MAGNUM
1,8001,312
SPECTRA
5400PE
3,1132,306
Millemmium
G400 MAX
4,0633,063
Voodoo3
3500TV
4,762d/s

 結果は、低解像度では結果が悪くなっているものがあるが、高解像度になるにつれて従来のビデオカードを凌駕している。しかし、ハードウェアジオメトリエンジンを搭載しているにもかかわらず大幅なパフォーマンスアップには至っていない。

 もちろん、これには理由がある。GeForce 256に搭載されるハードウェアジオメトリエンジンは、DirectX 7環境下において、DirectX 7が提供するジオメトリ演算モジュールを利用しているソフトウェアでなければ利用できない。しかし、テストに利用した3DMark99 MaxはDirectX 6.1ベースのソフトである。つまり、GeForce 256のハードウェアジオメトリエンジンは利用されていないため、このような結果になっているというわけだ。

 ところで、表1の結果はDirectX 6.1環境下で測定したものであるが、DirectX7を導入した状態で測定した場合、表2に示すとおり、結果が非常に悪くなってしまう。これはドライバ、ソフト、DirectXのいずれかに問題があるためと思われるが、実際の原因は定かではない。しかし、非常に興味深い結果であることは間違いないだろう。

 ちなみに、結果の数字はあまり良くなかったが、実際にテストを行なっている場合の画面を見る限り、3D Blaster GeForceのほうが比較用に用意したビデオカードよりも描画が遅いと感じることはなかった。つまり、この数字は実際のパフォーマンスを示していないといっていいだろう。GeForce 256搭載ビデオカードの正確なパフォーマンスを測定するためには、DirectX 7ベースのベンチマークソフトが登場するまで待つ必要があるといえる。

【表2:3D Blaster GeForce DirectX 7】
800X600 16bpp4,665
800X600 32bpp3,983
1024X768 16bpp4,148
1024X768 32bpp3,241
1280X1024 16bpp3,344
1280X1024 32bpp2,327

・Direct3Dベース3Dゲームの描画パフォーマンス

 では、Direct3Dベースのゲームソフトでの描画パフォーマンスはどうだろう。Direct3Dベースのゲームは、いつものとおり「Turok2:Seeds of Evil」を利用した。

【Turok2:Seeds of Evil】
800×600 16bpp800×600 32bpp1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp
3D Blaster GeForce55.3 55.4 55.7 54.4
RAGE MAGNUM 58.4 56.5 50.5 41.3
SPECTRA 5400PE60.1 58.3 58.7 54.3
G400 MAX56.9 59.2 58.6 57.0
Voodoo3 3500TV58.8 75.3 53.4 72.0

1,280×1,024 16bpp1,280×1,024 32bpp
3D Blaster
GeForce
53.8 41.8
RAGE
MAGNUM
32.8 22.4
SPECTRA
5400PE
53.3 36.3
Millemmium
G400 MAX
54.2 47.8
Voodoo3
3500TV
39.4 53.2

 先ほどの3DMark99 Maxと同様、ほかのビデオカードと比較して結果に大幅な違いは認められず、場合によっては結果が劣るものもある。これも、3DMark99 Maxと同様に、Turok2がDirectX 6ベースのソフトであることが原因と思われる。

・OpenGLベース3Dゲームの描画パフォーマンス

 最後に、OpenGLベースのゲームソフトを利用してパフォーマンスを測定してみよう。ちなみに、前述のとおり、今回から従来まで利用していたQUAKE IIにかわり、QUAKEシリーズの最新作、QUAKE III ARENAのデモ版、QUAKE III TEST Ver1.80を利用してテストを行なうこととした。

【QUAKE III TEST Ver1.80】
800×600 16bpp800×600 32bpp1,024×768 16bpp1,024×768 32bpp
3D Blaster
GeForce
89.3 74.9 74.8 48.5
RAGE
MAGNUM
35.7 30.2 23.0 18.6
SPECTRA
5400PE
66.9 57.5 50.0 40.7
Millemmium
G400 MAX
46.3 45.9 43.2 39.3
Voodoo3
3500TV
69.2 d/s51.1 d/s

1,280×1,024 16bpp1,280×1,024 32bpp
3D Blaster
GeForce
62.9 38.3
RAGE
MAGNUM
18.8 14.5
SPECTRA
5400PE
38.3 28.7
Millemmium
G400 MAX
39.0 32.7
Voodoo3
3500TV
41.4 d/s

 結果を見ると、これまでのDirect3Dベースのベンチマークソフトやゲームソフトとは違い、ほかのビデオカードとの明らかな差が見て取れる。つまり、ほかのビデオカードと比較して大幅なパフォーマンスアップが認められたのだ。

 OpenGLはDirect3Dと違い、既にハードウェアジオメトリエンジンの利用がサポートされている。そして、3D Blaster GeForceに付属しているビデオドライバに含まれるOpenGL ICDは、GeForce 256のハードウェアジオメトリエンジンを利用するように最適化されている。そのため、現状のソフトでもハードウェアジオメトリエンジンによる効果が現れるというわけだ。

 もちろん、QUAKE IIIのようなゲームだけでなく、OpenGLベースの3Dグラフィックスソフトを利用した場合でも同様にハードウェアジオメトリエンジンの効果が発揮されるだろう。

 とはいっても、パフォーマンスアップは思ったほど大きくなく、RIVA TNT2 Ultra搭載のSPECTRA 5400PEと比較しても2倍に達していない。ハードウェアジオメトリエンジンが利用されているにもかかわらず、パフォーマンスの差がこの程度に収まっているのは、QUAKE IIIがGeForce 256のハードウェアジオメトリエンジンに最適化されていない、画面描画以外にかなりのCPUパワーを使っている、といったことが考えられる。

 3Dゲームに限らず、ゲームでは画面描画以外にも、敵キャラの行動を制御したり、プレイヤーが操作するキャラの制御、キャラ同士の当たり判定など、様々な処理をCPUで行なわなければならない。また、現状の3Dゲームではハードウェアジオメトリエンジンの利用を想定せずに作られているため、極力ポリゴン数を抑える方向で画面描画がなされている。そのため、ハードウェアジオメトリエンジンが利用されたとしても、CPUでジオメトリ演算を行なった場合との差があまり出ないのだろう。このあたりは、次のCPUパワーの違いによるパフォーマンス測定でも検証してみることにする。


■CPUパワーによる描画パフォーマンスの違い

 GeForce 256に搭載されるハードウェアジオメトリエンジンを利用できるソフトでは、CPUが非常に重い処理であるジオメトリ演算から解放されるため、CPUパワーに依存せずに高い3D描画パフォーマンスを発揮できると思われる。そこでここでは、OpenGLベースのゲームソフト「QUAKE III TEST Ver1.80」と、NVIDIAが用意するベンチマークソフト「TreeMark」(NVIDIAのホームページで入手可能)を利用し、いくつかのCPUを利用してテストを行なってみた。

 ちなみにTreeMarkは、平均表示ポリゴン数が35,800の場合の平均フレームレートを測定する「Simple Mode」を利用した。

【QUAKE III CPU別】
3D Blaster GeForceSPECTRA 5400PE
1024x768 16bpp1024x768 32bpp1024x768 16bpp1024x768 32bpp
Celeron
333MHz
61.147.844.939.6
Pentium
II 450MHz
74.148.449.941.0
Pentium
III 600MHz
76.248.550.240.7

G400 MAX
1024x768 16bpp1024x768 32bpp
Celeron
333MHz
31.930.8
Pentium
II 450MHz
42.039.0
Pentium
III 600MHz
46.540.9

【TreeMark】
Celeron 333MHzPentium II 450MHzPentium III 600MHz
3D Blaster GeForce
42.16 
42.25 
42.25 
SPECTRA 5400PE
 4.90 
 6.39 
 9.17 
G400 MAX
 4.17 
 5.70 
 7.50 

 結果を見ると、TreeMarkの結果は、比較用に利用したSPECTRA 5400PEやMillennium G400 MAXと比べて5~10倍という大幅な差が見られる。また、SPECTRA 5400PEやMillennium G400 MAXではCPUパワーに応じてフレームレートの向上が見られるが、3D Blaster GeForceではCPUパワーの違いによらずほぼ同じ結果となっている。これこそがハードウェアジオメトリエンジンによる効果である。

 これに対しQUAKE IIIでは、3D Blaster GeForceでもほかのビデオカードと同じようにCPUパワーによってフレームレートの向上が見られた。これはやはり前述のとおり、QUAKE IIIの画面が大量のポリゴンを利用して描画されておらず、また画面処理以外でもかなりのCPUパワーが使われているためと考えていいだろう。

 とはいっても、Celeron 333MHzを利用した場合でもフレームレートはほかのビデオカードでPentium III 600MHzを利用した場合を大きく上回っており、処理能力の低いCPUを利用した場合でも、GeForce 256のパフォーマンスを十分に発揮できることは間違いない。


■現状ではパフォーマンスを100%引き出すことはできないが、おすすめのカードであることに変わりはない

 ベンチマークテストの結果を見るまでもなく、OpenGLベースのソフトやGeForce 256に最適化されたソフトのように、ハードウェアジオメトリエンジンを利用できるソフトでなければ、GeForce 256が持つ強力な3D描画パフォーマンスを十分に引き出すことができない。現在あるほとんどのDirect3Dベースの3Dソフトでは、GeForce 256の持つパフォーマンスが100%発揮されることはないのである。

 とはいっても、3D Blaster GeForceをはじめ、今後登場してくるであろうGeForce 256搭載ビデオカードが現状ではまだ買いではないかというと、そうではない。

 GeForce 256だけでなく、S3 Savage 2000など、今後登場する最新ビデオチップの多くがハードウェアジオメトリエンジンを搭載してくることとなる。そうなると、ソフト側の対応も今後間違いなく進んでいくはずだ。ハードウェアジオメトリエンジンを搭載するビデオカードを用意することで、非常に高度なグラフィックが実現されるようなソフトや、ハードウェアジオメトリエンジン搭載ビデオカードが前提となるソフトの登場も十分考えられる(もちろん既に多数のソフトメーカーがサポートタイトルを表明している)。そういった意味では今後の3Dグラフィックスシーンを変えると言っても過言ではなく、今からそれに備えておくというのも悪くはないはずだ。

 また、少なくとも、現状のソフトを利用した場合でも、RIVA TNT2 UltraやMillennium G400 MAXに匹敵または凌駕する高い3D描画パフォーマンスが得られるという点では、GeForce 256搭載ビデオカードを敬遠する必要はないといえる。

 真の実力はまだまだ未知数ではあるが、一部のソフトを利用すればその片鱗を確認することは可能で、先行投資のつもりで買っておいても損はないだろう。また、OpenGL環境下では現状でもハードウェアジオメトリエンジンのパフォーマンスが発揮されることから、ハイエンド3Dグラフィックスマシン用ビデオカードとしても活躍できるだろう。

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[Text by 平澤 寿康@ユービック・コンピューティング]


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