NTT DoCoMo MobileWarrior |
NTT DoCoMo SeaLion |
NTT DoCoMo SeaLion背面 |
NTT DoCoMoのブースで、まず最初に目についたのは、デジタル携帯電話を内蔵したPC『Mobile Warrior』、PHSを内蔵したPC『SeaLion』の2機種だ。昨日のレポートでも紹介されているように、Mobile Warriorが東芝製、SeaLionがNEC製だが、実はソフトウェア面でもNTT DoCoMoらしい工夫が見られる。たとえば、Mobile Warriorではメールを作成した場所が圏外であっても圏内に移動したときにメールを自動送信したり、あらかじめ設定した時間帯に自動的にサーバからメールをダウンロードするといった機能が搭載されている。
一方のSeaLionは、NEC製のミドルウェア『Mobilenet』と連携することにより、電波状態をユーザーに意識させることなく、バックグラウンドで自動的にメールの送受信をしたり、メールの着信通知などの機能を実現させている。機能的にはそれほど難しいことではないのかもしれないが、ユーザーのニーズに確実に応えているという姿勢は高く評価できる。他のPCメーカーにもぜひ見習ってもらいたい。
NTT DoCoMo NAVIEWN:ナビューン |
NTT DoCoMo P-doco? |
また、位置情報サービスに対応した端末としては、米SnapTrachkのGPS技術を応用した『NAVIEWN:ナビューン』、PHSを応用した『P-doco?』の2種類を展示していた。NAVIEWNはGPS機能に、デジタル携帯電話によるデータ通信機能、アドレス帳やスケジュール帳を含むPIM機能、PCとのリンク機能を搭載したPDAだ。エプソンが販売するLocatioに近い製品とも言えそうだが、どちらかと言えば、企業向け製品という位置付けだろう。ちなみに、データ通信はPDCデータ通信インターフェイスを内蔵し、POP3/SMTPによるメール送受信、HTML3.2対応Webブラウザを搭載している。液晶ディスプレイは240×320ドットのSTN液晶だ。
ブルーのスケルトンデザインを採用したP-doco?は、子どもなどに持たせることを考慮した工夫が見られる。電源のON/OFFを電池の着脱で実現し、操作ボタン類もなければ、アンテナも内蔵という徹底ぶり。充電お知らせ機能で、電池切れは事前に確認でき、電池のみを外して充電することもできる。JIS防滴4級(生活防水)に対応し、重量もわずか43gに抑えるなど、非常によく考えられた製品だ。来年あたりはこれを下げた子どもたちが通学路を行き来するのだろうか(笑)。
この他にも、NTT DoCoMoのブースでは、64Kデータ通信サービスに対応したPHSの新製品やブラウザボードなどのモバイル製品も数多く展示され、なおかつ実機を触れるようにしている。
松下電器産業 Let's note CF-A1R |
まず、先月発表された松下電器産業のLet's note CF-A1Rは、個人的にも非常に注目している製品だ。今回も松下電器のブースのメインストリートに面した側でデモンストレーションが行なわれていた。このCF-A1Rで採用されているワイヤレス通信モジュール(内蔵子機)とワイヤレスステーション(親機)は『自営標準第3版』(RCR-STD28)に準拠し、PIAFS2.0による64kbpsワイヤレス通信を実現している。CF-A1Rに付属のワイヤレスステーションには56kbpsモデムとシリアルポートが搭載されているため、アナログ回線やISDNターミナルアダプタと接続することにより、離れた場所からのデータ通信が可能になる。つまり、家庭内モバイル環境を容易に実現できることが他製品にない特徴というわけだ。松下電器によれば、今回のCF-A1Rの反響を見て、他のラインアップへの展開も検討したいとしている。
一方、自営標準第3版というキーワードですぐに思い出されるのは、NECのワイヤレス対応ISDNターミナルアダプタのAtermIW50だ。今回、NECのブースにもAtermシリーズが展示されていたが、そのすぐ近くで面白い製品を見つけることができた。NECが先日、『Simplem』というホーム向けPCを発表したのは既報の通りだが、このオプションを紹介するコーナーに、ワイヤレス通信カードがAtermIW50とともに出品されているのだ。
NEC ワイヤレス通信カード |
このワイヤレス通信カードは自営標準3版に準拠したもので、SimplemのPCカードスロットに内蔵することにより、PIAFS64kbpsによるワイヤレス通信を実現する。つまり、屋内配線の引き込み口のある居間にAtermIW50、書斎のSimplemにワイヤレス通信カードを内蔵して、ワイヤレスでインターネットに接続するといった使い方が可能になるわけだ。もちろん、PCカードスロットを搭載したノートPCであれば、ワイヤレス通信カードを装着することにより、同様の使い方ができる。これも家庭内モバイルを意識した製品ということだ。
ところで、AtermIW50については、PIAFS64kbpsに対応したNTT DoCoMoのパルディオ611SやドッチーモSH811、MobileCard P-inなどと、64Kbpsワイヤレス通信ができないことが同社のWebサイトでも公表されている。CF-A1Rについても筆者が個人的に試した範囲では、64kbpsワイヤレス通信を実現することはできなかった。しかし、NECによれば、現在、各社間で相互接続性を確保するための調整をはじめており、そう遠くない時期に解決策を提示できるとしている。
単純に、通信速度のみを重視するのであれば、確かにAirPortのような無線LANが有利かもしれないが、現時点では事実上、異なるメーカー間での相互接続性が確保されていないのが難点だ。また、接続する回線速度があまり高速ではないことも考え合わせれば、実は自営標準第3版によるワイヤレス通信の方がコストパフォーマンスが高く、現実的という見方はできないだろうか。あくまでも噂の段階だが、今秋以降、自営標準第3版に準拠したワイヤレス関連製品がいくつか登場すると言われており、家庭内モバイルが日本のPCマーケットの新しいトレンドを生み出すことになるかもしれない。
TDK USB携帯電話アダプタ |
TDK cdmaOneアダプタカード |
まず、デジタル携帯電話のデータ通信カードなどが好調なTDKは、最近流行りのUSB携帯電話アダプタとcdmaOne対応のデジタル携帯電話カードを参考出品していた。USB携帯電話アダプタの方はサン電子製やオムロン製と同様のもので、基本的なスペックに違いはない。しかし、実績のある同社がこういった製品を出品してきたということは、ノートPCのデジタル携帯電話の接続の主流は、完全にUSBポート経由に移行することになりそうだ。
また、cdmaOne対応デジタル携帯電話カードは、純正品以外では初の商品化となる。cdmaOneのレポートでもお伝えしたとおり、純正品はWindows 95/98の設定ファイルすら提供されない(意図的に提供していないという説もあるが……)状況を考えると、最大手のTDKから販売されるのはユーザーとしてもうれしいところだ。ただ、64kbpsパケット通信サービスの開始が今秋に迫っていることを考慮すれば、このサービスに対応した製品も早く投入してもらいたいところだ。
東芝 αDATA64対応データ通信カード |
また、PHS関連では東芝のブースで、DDIポケット電話のαDATA64に対応したデータ通信カードが出品されていた。αDATA64対応のデータ通信カードとしては、セイコーインスツルメンツから発売されているが、新しい選択肢が加わったことはユーザーにとってもうれしいことだろう。
ただ、東芝のPHSデータ通信カードについては若干、不安な面もなくはない。実は同社が販売していたαDATA32対応のデータ通信カードで、Windows 98へ移行するとき、Windows 98へのアップグレードした環境なら利用できるが、Windows 98がプリインストールされたノートPCでは動作しないという不具合があったからだ。ノートパソコンの東芝を名乗るのであれば、こうした細かい部分での対応もしっかりしてもらいたいところだ。今回の製品がWindows 2000で動作しないなどという事態にならないことを願いたい。
アイ・オー・データ機器 Lan-Egg for HomePNA |
アイ・オー・データ機器 Symphony |
たとえば、HomePNAパビリオンもそのひとつだ。HomePNAは家庭内で利用されている電話配線を利用したネットワークで、'98年のNetWorld+Interop LasVegasのレポートで紹介した米TutSystemsのHomeRunに端を発し、現在はHomePNAで規格の標準化が行なわれている。今回は日本AMDなどが出展していたが、アイ・オー・データ機器の『Lan-Egg for HomePNA』という製品を実際に見ることができた。
Lan-EggはHomePNA1.0/1.1準拠のアダプタで、PCとはUSBポートで接続する。もちろん、バスパワーモードで動作するため、外部電源などは必要ない。周波数帯は5.5~9.5MHz帯を利用し、通常のアナログ電話やISDN、ADSLとも干渉しない。さらに、ネットワークを接続中に電話を使うこともできる。PCIバス用の内蔵アダプタも開発しており、いよいよ本格的にHomePNAが利用できる環境が整ってきたという印象だ。
アイ・オー・データ機器は、この他に自社のブース内で新しい無線LAN製品を展示していた。この製品は見てもわかるとおり、米Proximが開発した『Symphony』という家庭向け無線ネットワーク製品を日本向けにローカライズしたものだ。2.4GHz帯を利用した無線ネットワークシステムで、見通しで45m程度の距離で、最大は1.6Mbpsでの通信が可能だ。PCカードスロット用とPCIバス用の他に、56kbpsモデムを内蔵したコードレスモデムもラインアップしている。また、Windows 98 Second Editionでインターネット接続共有がサポートされたが、SymphonyではWindows 95環境でもほぼ同等の機能を実現することが可能だ。難点があるとすれば、既存のEthernetによるネットワーク環境と相互接続ができないことだ。
ザーコムジャパン PortStation |
また、個人的に興味を持ったのがつい先日、ザーコムジャパンが発表したPortStationだ。PortStationはノートPC用ポートリプリケータのマルチ版とも言えるもので、パラレル、シリアル、USBハブ、10Base-T準拠Ethernetポート、56kbpsモデム、PS/2マウス&キーボードなどをユーザーにニーズに合わせて自由に拡張することができる。PCとの接続はUSBポートを利用し、各機能はすべてモジュール化され、自由に組み合わせることができる。価格は組み合わせによって異なるが、最もシンプルな『シリアル×1、パラレル×1、Ethernet×1』という構成で2万8600円を予定している。対応OSはWindows 95(OSR2.1以降)/98/NT4.0/2000となっている。サブ/ミニノートPCのポートリプリケータは基本的に各機種専用となっているため、PCを買い換えるとポートリプリケータも買い換えなければならないが、PortStationなら基本的に使い続けることができ、なおかつ自分に必要なモジュールのみで構成できるというメリットがある。これはなかなか期待できそうな製品だ。
NTTサテライトコミュニケーションズ 衛星ルータ |
MegaWaveは上り方向の通信にアナログ回線やISDNを利用し、下り方向の通信に衛星を利用している。最大1Mbpsというダウンロード速度は個人ユーザーにとって大きな魅力だが、現状では受信ボードがPCIバス用とISAバス用に限られているため、Windowsが動作するデスクトップPCでしか利用できなかった。
今回の出展では、以前から噂になっていたネットワーク接続が可能な『衛星ルータ』を出品し、注目を集めていた。この衛星ルータは既存のEthernetによるLAN環境からMegaWaveを利用できるようにするもので、ICカードスロットも本体に内蔵する。展示していた衛星ルータは56kbpsモデムを内蔵するものだが、ISDNターミナルアダプタなどと接続できるように、シリアルポートを備えた製品も企画しているという。これが発売されれば、ノートPCやMacintoshなどでもMegaWaveが利用できるようになるわけだ。
ただ、現時点では価格や発売時期とも未定で、どのような形でサービスを提供するのかも決まっていないそうだ。しかし、NTTの定額制サービスなどと組み合わせれば、かなり強力なインターネット環境が構築できるはずだ。今後の正式発表を期待したい。
[Text by 法林岳之]