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という提言を行なっている。報告書では具体的な金額は提示されていないが、およそ5,000~6,000円がメドになるのではないかという見方もある。しかし、NTTでは「現時点ではその価格で定額制サービスを提供するのは難しい」としており、低廉な料金でのインターネット接続は簡単に実現できないと見られていた。
ところが、ここに来て、NTTが通話料の定額制サービスを試験的に導入する計画であることが明らかになった。今回は、6月29日現在で得られている情報をまとめてお送りしよう。
今回、NTTが試験的に導入を検討している定額制サービスには、画期的な特徴がある。それは定額サービスを提供する対象回線をISDN(INSネット64)に限定している点だ。ISDNはご存じの通り、アナログ回線と同じ屋内配線を利用しながら、やり取りする信号をデジタル化することにより、高速かつ高品質な通話や通信を提供する電話サービス網のひとつだ。従来、ISDNで提供される料金割引サービスの多くは、アナログ回線で提供されたものを後追いする形で提供されてきたが、どうやら今回の定額制サービスはISDN独自のものということになりそうだ。
ISDNで定額制サービスを提供するとは言え、何でも定額になるというわけでもなさそうだ。すでにISDNを導入したユーザーなら、請求書を見てもらえればわかるが、ISDNの料金は『回線使用料』『屋内配線使用料』『付加機能使用料』『INS通話料』『INS通信料』などから構成されている。今回の定額制サービスでは、これらの料金の内、デジタル通信を行なったときに課金される『INS通信料』を定額にすると見られている。
ISDNではISDN機器のアナログポートに接続した電話機やFAX、モデムなどからの発信(音声通話)を『INS通話料』、データ通信ポート(RS-232CやUSB、Ethernetなど)からの発信(デジタル通信)を『INS通信料』として区別して集計している。この後者が定額制サービスの対象になると見られているわけだ。つまり、毎月一定の料金を支払っておけば、ISDNターミナルアダプタやISDNダイヤルアップルータを使い、プロバイダに64/128kbps同期通信モードなどで接続する場合に限り、使い放題になるという考え方だ。ISDN機器のアナログポートに接続したモデムなどで通信をした場合の料金は、音声通話と同じ扱いになるため、定額制サービスの対象にはならない。時間帯や曜日、接続先などは限定されない見込みだが、当面、サービス提供地域は都市圏(関東及び関西)に限られる予定だ。
気になる定額制サービスの料金だが、今のところ、月額1万円程度が有力とされている。現在、プロバイダで提供されている定額料金プランが3,000~5,000円程度であることを考えると、実質的にはトータルで月額1万5,000円程度で、64/128kbpsが使い放題になるというわけだ。OCNエコノミーによる常時接続サービス(最大128kbps)が月額約4万円であることを考えれば、かなり割安と言えるだろう。
非常に単純な計算だが、この定額制サービスは月に50時間以上、インターネットに接続すれば、十分に元が取れることになる。また、ISDNダイヤルアップルータを利用する環境では、クライアントPC側でダイヤルアップネットワークなどのPPPソフトを使わないため、専用線や常時接続に近い感覚で使うことができるが、毎日40分に1回以上の間隔でメールをチェックすれば、ほぼ元が取れることになる(メールチェックを自動に設定し、1回のメールチェックに10円が掛かると計算した場合)。
また、ISDN定額制サービスの1万円という料金は、すべてのユーザーにとって恩恵があるわけでもない。なぜなら、採算分岐点が月に50時間以上ということは、毎日1時間半以上もインターネットに接続しなければならない計算だ。多くのユーザーが月15~20時間のキャップ制料金プランを利用し、それに概ね満足している現状を考慮すれば、このISDN定額制サービスはインターネットのヘビーユーザー向けということになる。
そこで考えられるのが料金割引プランのバリエーションだ。あくまでも筆者の推測でしかないが、現在のINSテレホーダイの時間や曜日を拡大したり、デジタル通信に限って利用できる別の料金割引プランを提供するといった方法が考えられないだろうか。というより、筆者としてはそういったサービスの登場を期待(お願い)したい。
いずれにせよ、低廉な料金でのインターネットの常時接続が可能になれば、インターネットの普及が進むだけでなく、利用のスタイルも大きく変わることになるだろう。また、ISDN普及の面から見ても大きな起爆剤になる可能性が高い。
ただ、最後にお断りしておきたいのは、これらの情報は筆者が独自に取材し、入手したものであり、決して確定的な情報ではない。正式なアナウンスは近く行なわれると予想しているが、それまでは筆者の予測に過ぎないという点に注意していただきたい。NTTが正式に発表次第、続報をお伝えする予定だ。とにかく発表を楽しみに待つとしよう。
[Text by 法林岳之]