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鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第87回:7月26日~7月30日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


7月26日

■■週刊スタパトロニクス スタパ齋藤
  「買わざるを得なかったわたくし ~VAIO PCV-R70~」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990726/stapa55.htm

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 Iomegaが'97年にリリースした(発売は米'98年、日'99年)、小型のリムーバブルドライブ。

 同社のZipを超小型化したような製品で、50.1×54.9×1.95mm(幅×奥行き×厚さ)のカートリッジに納めた1.8インチの磁気ディスクを使用。サイズ的には、PCカードにスッポリ収納できる大きさであり、PCカード型のドライブもリリースされている。

 容量は、フラッシュメモリを使った小型メモリカード並みの40MB。ターゲットもこれらと同じ携帯端末やデジタル機器で、コンパクトフラッシュやスマートメディアからダイレクトにデータをコピーできるカードリーダも用意されている。磁気メディアならではの安価な価格設定が強みである。

□Clik!ホームページ(Iomega)
http://www.iomega.co.jp/product/clik/index.html


7月28日

■■松下、DVDオーディオプレーヤーを11月発売、12万円から
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990728/pana.htm

DVD Audio
ディーブイディーオーディオ

 DVDフォーラムが'99年に策定した、オーディオ専用のDVD規格。

 AV向けの規格であるDVD Videoと同じ12cmのDVD-ROMメディアに、オーディオ信号を記録するためのアプリケーション規格で、既存のオーディオCDやDVD Videoと同じオーソドックスなリニアPCMを使用。より高い音質での収録をサポートする。主として周波数特性に影響するサンプリング周波数は、CDの44.1kHzと、DVD VideoやDAT、デジタル放送などで使われている48kHzをベースに、それぞれの2倍と4倍の計6種類をサポート。ダイナミックレンジに影響する量子化ビット数は、CDと同じ16bitのほかに、20bitと24bitをサポートする。

 収録チャンネルは、CDが2チャンネルのステレオ一系統、DVD Videoが、Dolby Digitalによる6チャンネル(5.1)のオーディオトラックを最大8ストリーム(選択可能な8種類)までとなっているが、DVD Audioでは、リニアPCMでの完全に独立した6チャンネルまでのマルチチャンネルをサポート。最大転送レートである9.6Mpbsの範 囲内であれば、これらを自由に組み合わせたフォーマットで収録(※1)することができるほか、静止画や動画を組み合わせることもできる。

(※1)最高音質である192kHz/24bitの収録は2チャンネルまで。逆に6チャンネルをフルに使用する場合には、16bitなら96kHz、20bitや24bitの場合は48kHzがリミットとなる。収録時間はビットレート次第だが、片面単層のメディアを使用した場合、最高音質でCDと同等。CDクオリティの2チャンネルステレオなら約8時間の収録が可能。

【参考】
□DVD-ROM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-rom
□DVD Video
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981029/key52.htm#DVD_Video
□サンプリング周波数/ダイナミックレンジ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990318/key69.htm#sampling_rate

スーパーオーディオCD(Super Audio CD[SACD])

 ソニーとフィリップスが共同で開発し'99年にリリースした、新しいオーディオCDの規格。

 メディアは従来のCDと同じ12cmだが、4.7GBと高密度化されており、単層構造のディスク(シングルレイヤーディスク)のほかに、DVDと同じように高密度層を2枚貼り合わせて大容量化した2層のディスク(デュアルレイヤーディスク)や、CD互換の記録層を貼り合わせ、CDプレーヤーでも再生できるようにしたハイブリッドディスクも用意されている。

 SACDの最大の特徴は、CDなどに使われているオーソドックスなPCM方式ではなく、DSD(Direct Stream Digital)と呼ばれる新しい量子化記録方式が採用されている点である。アナログ信号のレベルを1秒間に44,100回測定し、それをそのまま16bitのデジタル値に変換していくのが、CDのPCM方式の概念である。が実際には、よりシンプルな回路で高い音質を実現できる、オーバーサンプリングという技法が一般に使われている。

 アナログ信号をデジタル信号に変換する際には、連続的であるはずの時間やレベルの変化が「一定の間隔」に丸められてしまう。したがって、本来のアナログ信号と量子化されたデジタル信号の間には、どうしても誤差が生じ、この誤差がデジタル化特有の雑音や歪みの原因となっている。「一定の間隔」を狭めれば狭めるほど誤差を減らし、量子化に伴うノイズを抑えることができる。量子化ビット数を上げれば相対的なノイズレベルは下がり、サンプリング周波数を上げれば可聴帯域内に残る相対的なノイズの量は減少するのである。

 オーバーサンプリングは、文字どおり高いサンプリング周波数で処理する技法で、その代表的なものとしてデルタシグマ型変調器が広く使われている。これは、1ビットのコンバータと積分器を組み合わせた回路で、アナログ入力を積分器にかけ、その出力をコンバータでビットストリームに変換していく。その際、デジタル出力をアナログ変換して積分器にフィードバックをかける。積分器には入力信号と先行する出力信号との誤差が入力されることになり、最終的にはこの誤差が常に最小になるようなビットストリームが生成される。例えば信号が急激に立ち上がれば1が延々と続くが、変化量に応じて、途中に誤差を補正するために0が挿入される(下がればこの逆だし、変化の無い平坦な波形なら、0と1が交互に現れてバランスをとることになる)。

 このビットストリームをそのまま記録しておくと、誤差を最小限に抑えてアナログ信号にストレートに逆変換できるのだが、従来のCDはあくまでPCM方式であるため、これをデジメーションフィルタ(decimation filter~間引きフィルタ)などのデジタルフィルタにかけて、規定のサンプリング周波数と量子化ビット数のフォーマットにして記録。再生時には、今度は逆にデータを補間し、オーバーサンプリング処理の続きを再開するような方法をとっている。

 DSDはこのデルタシグマ型変調器の出力を直接扱う方式で、SACDではサンプリング周波数2.8224MHz、1bitのデータストリームをそのまま記録。120dBのダイナミックレンジと100kHzを越える周波数特性(いずれも論理値)を実現している。

 収録時間は、単層の高密度メディアで2チャンネルのソースを最大109分。収録可能なトラック数は、最大255で各トラックに255ポイントまでのインデックスが設定可能である。著作権保護の機構としては、物理的な複製を困難にするウォーターマーク(※1)やデータそのものを保護する暗号化機能も用意されいている。

 ちなみに、CDファミリーの規格は、規格書のカバーの色で呼ばれることが多いが、SACDの場合には、スカーレットブック(Scarlet Book)である。

(※1)ディスクに物理的に記録される透かしで、採用が義務づけられる見えないタイプ(インビジブル・ウォーターマーク)と、絵柄などを埋め込んだ見えるタイプ(ビジブル・ウォーターマークとがある。

【参考】
□オレンジブックほか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981007/key49.htm#Orangebook_part3
□CD-DA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981015/key50.htm#CD_DA
□PCM(Pulse Code Modulation)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980917/key46.htm#PCM


7月29日

■■法林岳之のTelecom Watch 第28回 '99年6月編
  「お手軽メール端末がモバイルを変える?」 ほか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990729/telw28.htm

自営標準

 ARIBによって標準化された、PHS端末と基地局のインタフェース規格「第二世代コードレス電話システム標準規格(RCR STD-28[※1])」に規定されている、自営用PHSの規格。

 PHS(Personal Handy-phone System)は、デジタルコードレス電話を発展させたシステムで、'93年に、ARIBの前身であるRCR(Research and Development Center for Radio Systems~電波システム開発センター)が、子機にあたるPHS端末(PS~Personal Station)と、親機となる基地局(CS~Cell Stations)間の無線インタフェースを標準化。各社のサービスは、この「RCR STD-28」準拠のインターフェイスを使用しており、キャリアを問わない相互接続が可能となっている(※1)

 この規格には、一般的な通信に使われている公衆用の規格と、オフィスや家庭内で利用するための自営用の規格とがあり、自営標準は後者の方の規格のことを指す。この規格はRCR STD-28の第2版(Version 2.0)で標準化されており、これに準拠することによって、自営モードにおいても機種を問わない親子の接続が可能となる。

 PHSの基地局や親機のバックボーンには、一般のISDN回線を使用している。ISDNの通話モードが、64kbpsのPCM(μ-Law)なのに対し、PHSは32kbpsのADPCM(Adaptive Differential PCM)を使用しているが、通常はこれを相互変換し整合をとる。第2版からは、この変換機能を停止させ、非制限デジタル(データモード)を利用する機能(32/64kbpsの速度変換だけ行なう)を追加。公衆/自営ともに、32kbpsのデータ通信もサポートしている。'97年にリリースされた第3版では、自営用付加サービスの規格が追加されるとともに、PHSの2チャンネル(スロット)を使用する64kbpsのデータ通信も規格化(仕様上はPHSの4チャンネルとISDNの2チャンネルを使った128kbpsまで対応可)。最新の3.2版では、空きチャンネル数に応じて32/64kbpsを切り替えるスロット可変型の通信も盛り込まれている。

(※1)市販の端末は、各社が提供する様々な付加サービスをサポートしているため、実際にはキャリア別のラインアップとなっている。しかし、基本サービスに関しては、機種を問わない接続が可能である。

□ARIB(Association of Radio Industries and Businesses of Japan ~社団法人電波産業会~アライブ)
http://www.arib.or.jp/
【参考】
□PHS(Personal Handy-phone System)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990423/key74.htm#PHS
□ADPCM(Adaptive Differential PCM [Pulse Code Modulation])
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990617/key80.htm#ADPCM
□PCM(Pulse Code Modulation)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980917/key46.htm#PCM

[Text by 鈴木直美]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp