本命登場!? RIVA TNT2 Ultra搭載カードの実力は



 4月から5月にかけて、Voodoo3搭載カードやNVIDIA RIVA TNT2搭載カードなど、多数のビデオカードが登場し、市場を賑わせている。そして、ようやく本命と目されているグラフィックスアクセラレータ、NVIDIA RIVA TNT2 Ultraを搭載するビデオカードが登場した。そこで今回は、RIVA TNT2 Ultraを搭載するビデオカードのパフォーマンスを検証することにしよう。



■ 高クロック版TNT2

 RIVA TNT2を搭載するカードは、5月頭から市場に登場しており、既に5月7日のHotHotレビューでもとりあげている。RIVA TNT2の詳細については過去の記事を参照していただくとして、ここではRIVA TNT2 Ultraがどういったものなのか紹介することにしよう。

 RIVA TNT2 Ultraは、RIVA TNT2の高クロック動作バージョンだ。動作クロック以外の仕様はどちらも全く同じだが、RIVA TNT2 Ultraのほうが高いクロックで動作するため、描画パフォーマンスも高くなるというわけである。先に登場したRIVA TNT2は、デフォルトではコアの動作クロックが125MHz、メモリの動作クロックが150MHzとなっているのに対して、RIVA TNT2 Ultraではコアの動作クロックが150MHz、メモリの動作クロックが183MHzとなっている。

 ただ、この数字はNVIDIAが公式に発表しているものではない。実際、RIVA TNT2を搭載するビデオカードでも、メーカーによってはデフォルトよりも高い動作クロックに設定されて発売されているものも多数ある。そのため、RIVA TNT2 Ultraでも同様のことが考えられるが、現在発売されているRIVA TNT2 Ultra搭載ビデオカードに関しては、どれもデフォルトの動作クロック設定はコア150MHz/メモリ183MHzとなっているようだ。


■ 製品によって価格、機能に幅がある

 先週末に発売されたRIVA TNT2 Ultra搭載のビデオカードは、カノープスの「SPECTRA 5400 Premium Edition」、マザーボードでおなじみのASUS「AGP-V3800 Deluxe」、クリエイティブメディアの「3D Blaster RIVA TNT2 Ultra 32MB AGP」の3製品だ。3製品ともビデオメモリを32MB搭載し、チップ上にファンを備えたAGPバス用のカードである。

●SPECTRA 5400 Premium Edition

カノープス SPECTRA 5400 Premium Edition
SSEやDFSなど独自の高画質化技術が取り入れられている
 SPECTRA 5400 Premium Editionは、ビデオカードベンダーとしておなじみのカノープスが発売するRIVA TNT2 Ultra搭載カードだ。ビデオメモリに200MHz動作をサポートする高速SDRAMを採用し動作に余裕を持たせているだけでなく、メイン基板とディスプレイ出力コネクタを分離してノイズの影響を受けにくくする「SSH(Signal Super Highway)テクノロジー」や、ディスプレイの特性に合わせたフィルタを選択できる「DFS(Dual Filter System)テクノロジー」など、独自の高画質技術が取り入れられている。また、BNCコネクタを装備したコネクタボードやBNCケーブルをオプションとして用意するなど、画質に対するこだわりはかなりのものだ。販売価格は4万円前後とRIVA TNT2 Ultra搭載カードの中で最も高いが、付属ソフトにソフトウェアDVDプレーヤーの「WinDVD」、フォトレタッチソフト「PaintShop Pro」、ゲーム「Tomb Rader III」が含まれており、お買い得感は高い。

 ちなみに、RIVA TNT2を搭載する下位モデルSPECTRA 5400も同時に発売されている。

●AGP-V3800 Deluxe

ASUS
AGP-V3800 Deluxe

TV出力、ビデオキャプチャ機能が搭載されるほか、3Dグラスが付属する
付属の3Dグラス
前面にはASUSのロゴが入る
 マザーボードベンダーとしておなじみのASUSのAGP-V3800 Deluxeは、標準でTV入出力端子を備え、ビデオキャプチャ機能が搭載されるAGP-V3800シリーズの最上位モデル。販売価格は3万円台半ばと、3製品の中で中間に位置している。また、DirectX対応のゲームを立体視で楽しめる液晶シャッター方式の3Dグラスが同梱されている。3Dグラスは、単体でも発売されている下位モデルのAGP-V3800で利用可能なものと同じ。ほかに「Turok2」と「XG2」の2つのゲームソフトも付属しているので、ゲームユーザーで立体視を楽しみたいという人に適している。

●3D Blaster TNT2 Ultra 32MB AGP

クリエイティブメディア
3D Blaster TNT2 Ultra 32MB AGP

低価格が魅力のRIVA TNT2 Ultra搭載ビデオカード
 クリエイティブメディアの3D Blaster TNT2 Ultra 32MB AGPは、標準でビデオ出力機能は備えているものの、特別な機能は搭載せず、オーソドックスな仕様となっている。そのかわりRIVA TNT2 Ultra搭載カードの中で販売価格が2万円半ばから後半と最も安く、その点が大きな特徴といっていいだろう。また、Voodoo3に対抗して、クリエイティブメディアのRIVA TNT/TNT2搭載カードで利用可能なオリジナルのGlideラッパー「Unified」を同社のWebで配布しており、Voodoo系チップを搭載するカードを用意せずにGlide対応ゲームを楽しめるという点も特徴のひとつ。これはGlideの命令をDirect3Dの命令に変換し、Direct3Dに渡すということでGlideゲームをプレイ可能にするというものだ。もちろんUnifiedを利用した場合のグラフィックの再現度は100%ではないものの、ゲームユーザーにとっては気になる存在ではないだろうか。

 ちなみに、Unifiedドライバをダウンロードするためには、カードのシリアルナンバーを入力する必要があるが、6月3日現在では、3D Blaster RIVA TNT2 Ultraのシリアルナンバーを入れても番号が違うと言われてはじかれてしまい、ダウンロードできないので注意(シリアルナンバーの登録が間に合っていないのだろう。Graphics Blaster RIVA TNTのシリアルナンバーなら大丈夫のようだ)。



■ ベンチマーク結果

 今回入手した3種類のRIVA TNT2 Ultra搭載カードについて、2Dおよび3Dの描画パフォーマンスを、いくつかのベンチマークテストを利用して測定してみた。利用したベンチマークソフトやベンチマークテストをおこなう上でのハードウェア環境は、HotHotレビューでRIVA TNT2およびSavage4を扱ったときと同じだ。そのため、その時の測定結果もあわせて掲載することにする。

1.2D描画パフォーマンス

 2D描画パフォーマンス測定には、Ziff-Davis,IncのWinBench 99 Version1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark 99を利用した。これらのベンチマークテストでは、ワープロや表計算、フォトレタッチソフトなど実在するアプリケーションの描画コードを再現することで、総合的な2D描画パフォーマンスを測定できる。解像度は1,024×768ドットで、16bitカラーモードと32bitカラーモードにおいて測定した。

 SPECTRA 5400 PEAGP-V3800 Deluxe3D Blaster
RIVA TNT2
Voodoo3 3000Viper V770
Business Graphics WinMark 99/16183187185182185
High-End Graphics WinMark 99/16525532526528522
Business Graphics WinMark 99/32178184181179178
High-End Graphics WinMark 99/32522527518517515

 結果を見ると、今回用意した3製品ともに完全に横並びとなっている。また、RIVA TNT2およびVoodoo3搭載カードと比較してもほとんど変わらない。2D描画パフォーマンスに関しては、最近登場したビデオカードであればほとんど差がないといっていいだろう。

2.Direct3Dパフォーマンス

 Direct3Dは、今やWindows対応ゲームの3D APIとしてほぼ標準の地位を獲得しつつある。そこで、Direct3D環境での総合的な3D描画パフォーマンスを、FutureMarkの3DMark99 Maxを利用して測定してみることにしよう。今回は、Savage4の時と同様に、解像度は800×600ドット、1,024×768ドット、1,280×1,024ドットの3種類で、それぞれについて16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。

 SPECTRA 5400 PEAGP-V3800 Deluxe3D Blaster
RIVA TNT2
Voodoo3 3000Viper V770
800x600ドット16bit4,9544,925 4,889 5,002 4,808
800x600ドット32bit4,8314,780 4,797 d/s3,978
1,024x768ドット16bit4,4994,496 4,471 4,631 4,083
1,024x768ドット32bit4,0614,015 3,886 d/s2,802
1,280x1,024ドット16bit3,1133,091 3,085 3,314 2,463
1,280x1,024ドット32bit2,3062,265 2,256 d/s1,610
※d/sはその解像度を元々サポートしていないことを意味しています。

 結果を見ると、こちらも今回用意した3製品の間に大きな差は見られなかった。Voodoo3 3000の結果にはやや劣るものの、その差はほとんどなく、体感できるほどではない。Direct3D環境ではRIVA TNT2 Ultra搭載カードとVoodoo3 3000のパフォーマンスはほぼ横並びと考えていいだろう。

3.3Dゲーム(Direct3D,Glide対応)のパフォーマンス

 次に、実際にDirect3DおよびGlideに対応する3Dゲームを用意し、そのゲームに用意されているフレームレート計測機能を利用してパフォーマンスを測定してみよう。利用したゲームは、これまで同様Direct3D/Glide両方の3D APIをサポートしたTurok2:Seeds of Evilである。

 ところで、Creative Technologyが配布しているGlideラッパーUnifedだが、その構造上、描画パフォーマンスがDirect3Dモードでのパフォーマンスを上回ることはあり得ない。また、Glideのみに対応というゲームソフトはほとんどなくなったことを考えると、Unifiedにはあまり意味が見いだせないため、今回はテストはおこなっていない。

 SPECTRA 5400 PEAGP-V3800 Deluxe3D Blaster
RIVA TNT2
Voodoo3 3000Viper V770
800x600ドット16bit60.16059.760.258
800x600ドット16bit/Glided/sd/sd/s73.7d/s
800x600ドット32bit58.359.357.4d/s53.2
1,024x768ドット16bit5859.157.257.954.5
1,024x768ドット16bit/Glided/sd/sd/s65.5d/s
1,024x768ドット32bit54.354.353.3d/s38.9
1,280x1,024ドット16bit53.353.752.745.640.6
1,280x1,024ドット16bit/Glided/sd/sd/s45.9d/s
Turok2 1,280x1,024ドット32bit36.335.434.4d/s20.6
※d/sはその解像度を元々サポートしていないことを意味しています。

 結果を見ると、RIVA TNT2 Ultra搭載カードのパフォーマンスは、Direct3Dモードでは、800×600ドット16bitカラーモードおよび1,024×768ドット16bitカラーモードはVoodoo3 3000とほぼ同じ結果となっており、1,280×1,024ドット16bitカラーモードではVoodoo3 3000を大きく上回っている。これは、RIVA TNT2搭載カードの結果と同じ傾向であるが、全ての点でRIVA TNT2の結果を上回っており、Voodoo3 3000との差も小さくなっている。ただし、Voodoo3のGlideモードでのパフォーマンスにはまだ追いついていない。

 ちなみに、RIVA TNT2 Ultra搭載カードの場合、32bitカラーモードでも全ての解像度で30fps以上という十分なフレームレートが出ている点は注目すべきポイントといえる。やはりRIVA TNT2 Ultra搭載カードは、高解像度・多色モード時において力を発揮するといっていいだろう。

4.OpenGL対応ゲーム

 最後にOpenGL対応ゲーム、Quake IIを利用したベンチマークテストの結果だ。こちらももちろんRIVA TNT2搭載カードの結果を大きく上回っているものの、Voodoo3 3000の結果にはまだ届いていない。その差は縮まったものの、OpenGL対応ゲームにおいては、相変わらずVoodoo3優位という図式は変わっていない。

 SPECTRA 5400 PEAGP-V3800 Deluxe3D Blaster
RIVA TNT2
Voodoo3 3000Viper V770
800x600ドット16bit87.682.688.1117.279.1
1,024x768ドット16bit62.653.363.582.151.9
1,152x864ドット16bit51.144.850.967.241.2
1,600X1,200ドット16bit26.824.727.135.221.6

【テスト環境】
マザーボードASUSTeK Computer P2B
CPUPentium III 500MHz
メモリ128MB(PC/100)
ハードディスクQuantum Fireball EX6.4A

【テスト条件】
各テストでのドライバ設定は基本的にはデフォルト。Turok2とQuake IIに関しては V-SYNCの設定は基本的にオフ。
WinBench99:基本的にデフォルト設定のまま
3DMark99 Max:Z-Buffer:16bit
        FrameBuffer:Triple
        SSE利用
Turok2:基本的にデフォルト設定のまま
Quake2:3dfxのカード以外はDefault OpenGLを選択し、3dfxは3dfx OpenGLを選択。それ以外はデフォルト設定。



■ Voodoo3 3000と並び現状最速だ

 以上の結果を見ると、RIVA TNT2 Ultra搭載カードは、これまで最速といわれてきたVoodoo3 3000に匹敵する高いパフォーマンスが実現されていると言って差し支えないだろう。数字を見ると負けている部分もあるが、その差はベンチマークテスト上で現われるだけで、実際の使用上では体感できるものではない。確かに単純にクロックアップだけによるパフォーマンスアップではあるが、RIVA TNT2搭載カードではVoodoo3の後塵を拝していただけあって、この成果はかなりの意味を持っている。

 また、高解像度や32bitカラーモードにおいても十分なパフォーマンスを示すという点にも注目すべきだ。今後より高解像度化・多色化していくと思われる3Dゲームをプレイするためにも、32bitカラーモードでの3Dレンダリングは不可欠であり、この点はVoodoo3にはない優位点である。

 そして、今回は入手できなかったが、今後ダイアモンド・マルチメディア・システムズのViper V770 UltraやELSAのSynergy IIなど、まだまだ多数のベンダーからRIVA TNT2 Ultra搭載カードの発売が予定されており、Voodoo3にはない選択肢の豊富さも魅力のひとつ。現在はまだ初物ということもあってやや高めの価格設定となっているが、流通量が増えれば価格競争が起きるのは必至で、今後は価格の面でもこなれていくと思われる。そうなると、価格の面でもVoodoo3に十分対抗できるようになってくるだろう。

 ただ、NVIDIA陣営もこれで安心してはいられない。7月にはVoodoo3の最速モデル、Voodoo3 3500が市場に投入されることが決まっている。そうなると、またもやVoodoo3 3500にパフォーマンスの点で引き離される可能性が高い。この先も3dfx vs NVIDIA陣営の戦いはまだまだ続きそうだ。

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[Text by 平澤 寿康@ユービック・コンピューティング]


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