S3の巻き返しなるか? Savage4搭載ビデオカードが登場!



 最近のパーツ関連のホットな話題といえば、やはりVoodoo3やRIVA TNT2を搭載したビデオカードであろう。どちらも、高い3D描画性能を誇るビデオチップであり、重い3Dゲームを存分にプレイしたいというヘビーゲーマーから熱い注目を集めている。しかし、そこまでの3D描画性能は必要ないというユーザーもいるだろう。今回は、エントリーユーザーからミドルレンジユーザー向けのビデオチップとして期待を集めていたS3のSavage4を搭載したビデオカードを入手したので、その実力を検証してみたい。



■ 起死回生を狙って登場したSavage4

最初に発売されたSavage4 PRO搭載カード「3D Blaster Savage4」のパッケージ 3D Blaster Savage4。基板パターンはシンプルですっきりとしている。ヒートシンクは小さめだ
 S3は、古くからのPC/AT互換機ユーザーなら、911/924/928などポルシェと同じ型番がつけられた高速ビデオチップを次々発表していたことを御存じだろう。Windows 3.1時代は、市場でもトップシェアを誇っていたが、3D描画性能向上レースに遅れをとったことで、最近ではすっかり影が薄くなってしまった。昨年投入されたSavage3Dも、やや期待はずれにおわった感がある。

 Savage 4は、Savage3Dの後継として、'99年2月に発表された最新ビデオチップであり、S3が起死回生をかけて開発した製品だ。Savage4ファミリーには、Savage4 PRO+(Savage4 PRO 143)、Savage4 PRO、Savage4 GT、Savage4 LTという4つの製品がある。これらは、描画エンジンは同一だが、メモリインターフェイス周りやコアクロックの仕様が異なる。最上位となるSavage4 PRO+は、メモリクロック143MHz、コアクロック125MHzで動作するのに対し、Savage4 PROは、メモリクロック125MHz、コアクロック110MHzで動作する。Savage4 PRO 143とSavage PROは、最大32MBのビデオメモリをサポートしているが、Savage4 GT/LTでは、16MBまでのサポートとなっている。また、Savage4 PRO 143/Savage 4 PROでは、AGP 4Xモードをサポートする(Savage4 GT/LTでは、AGP 2Xモードのみサポート)。

 S3TC(S3 Texture Compression)と呼ばれる機能を備えていることも特徴のひとつだ。S3TCは、S3独自のテクスチャ圧縮技術であり、テクスチャデータを最大6分の1に圧縮できる。S3TCは、MicrosoftのDirectXにも採用され、S3TCを利用すればメモリを消費せずに、大きなテクスチャを格納することが可能になる。Unreal/Unreal Tournament、Quake3 Arena、Half lifeといった、S3TCに対応したゲームタイトルも多数アナウンスされている。全てのレンダリング処理を32bitで行なうことで、高い画質を実現している。また、DVD再生支援機能も充実している。第2世代動き補償エンジンの搭載により、DVDソフトウェア再生におけるCPU負荷を大幅に下げることができる。

 Savage4ファミリーは、Voodoo3やRIVA TNT2、RAGE 128などが狙っているハイエンド市場ではなく、実売価格が1万円台半ば程度のミッドレンジ向けビデオカードをターゲットに開発された製品だ。ミッドレンジ向けビデオカードで、特に重視されるのがコストパフォーマンス(価格性能比)である。ハイエンド市場では、ある程度価格が高くなっても、絶対的な性能が重視されるが、ミッドレンジ向け製品では、必要な性能をより低価格で提供することが重要になってくる。


■ 最初に登場したクリエイティブメディア製3D Blaster Savage4

箱に貼られたシール。近日中に日本語版ドライバが公開されるとのことだ
 多くのビデオカードメーカーから、Savage4を搭載した製品がリリースされる予定だが、最初に市場に登場したのがクリエイティブメディアの3D Blaster Savage4だ。3D Blaster Savage4は、4種類あるSavage4ファミリーのうち、上から2番目の製品であるSavage4 PROを搭載している。AGP版とPCI版が存在するが、先に出回ったのはAGP版のほうだ。ビデオメモリとして、32MBのSDRAM(Mosel Vitelic製:V54C365164VBT8PC)が実装されている。64Mbitメモリチップが採用されているため、基板上にはメモリチップが4個しか実装されておらず、シンプルですっきりとしている。また、ビデオチップには、ヒートシンクが装着されるが、ヒートシンクのサイズは、比較的小さめだ。Savage4 PROは、DFP(デジタル液晶インターフェイス)にも対応するが、3D Blaster Savage4では、出力端子は通常のアナログRGBのみとなっている。

 マニュアルは日本語化されているが、初期出荷品では、ドライバ自体は英語版が収録される。箱には、日本語版ドライバは近日中にWebページで配布される予定と書かれたシールが貼られているので、いずれ日本語版ドライバが同梱された形で出荷されるようになるのだろう。


■ 通常の用途なら必要にして十分な性能を持つ

 早速、3D Blaster Savage4のベンチマークテストを行なってみた。テスト環境やベンチマークプログラムは、HotHot REVIEW!で、RIVA TNT2搭載ビデオカードをレビューしたときと同じである(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990507/hotrev09.htm)。そこで、比較のために前回のテスト結果も、併せて掲載することにした。なお詳しくは後述するが、出荷時の状態以外にコアクロックやメモリクロックを変更した状態でもテストを行なったので参照してほしい。

テストは、

の4項目について行なった。

1.2D描画パフォーマンス

 2D描画性能の測定には、Ziff-Davis,IncのWinBench 99 Version1.1に含まれる、Business Graphics WinMark 99とHigh-End Graphics WinMark 99を用いた。解像度は1,024×768ドットで、リフレッシュレートは85Hzに設定した。
 2D描画性能テストの結果は、RIVA TNT2やVoodoo3などに比べると1~2割程度低い値となっているが、体感できるほどの差ではない。ワープロや表計算ソフトといった、ビジネスアプリケーションを使うのなら、まったく不満はない性能を持っているといえる。

【WinBench 99】
WinMark 99
Business GraphicsHigh-End Graphics
16bit32bit16bit32bit
3D Blaster Savage4
(コア110MHz/メモリ125MHz)
156104489417
3D Blaster Savage4
(コア143MHz/メモリ135MHz)
168143487426
ATI RAGE MAGNUM174161520511
Magic TNT186181531519
WinFast S320II185179530523
WinFast S320V180112528506
SPECTRA 3200R2180172521514
GraphicsBlasterd/sd/sd/sd/s
Voodoo3 3000182179528517
Voodoo3 2000182177522s516
・d/sはその解像度を元々サポートしていないことを意味しています。
・n/aはその解像度はサポートしているはずだが、ビデオメモリ不足などで動作しないことを意味しています。


2.Direct3D対応ゲーム

 最近の3Dゲームでは、3D APIとしてDirect3Dをサポートしているものが増えてきている。ゲームユーザーなら、やはりDirect3D環境での3D描画性能は気になるところだ。ここでは、RIVA TNT2のときと同様に、FutureMark社の3DMark99 Maxを利用してテストを行なった。前回は、1,600×1,200ドットでも計測を行なったが、今回は、1,600×1,200ドットモードが選べなかったので(本来は1,600×1,200ドットモードもサポートしているはずなのだが、原因は不明)、測定は1,280×1,024ドットモードまでとした。
 Direct3D環境での3D描画性能テストの結果は、RIVA TNT2やRAGE 128に比べるとかなり劣る。しかし、クロックアップ(後述)を行なえば、RIVA TNT2にも迫るパフォーマンスを実現できるので、必ずしも性能が低いといい切れるわけでもない。

【3DMark99 Max】800×6001024×7681280×10241600×1200
16bit32bit16bit32bit16bit32bit16bit32bit
3D Blaster Savage4
(コア110MHz/メモリ125MHz)
282427592316165814081075n/an/a
3D Blaster Savage4
(コア143MHz/メモリ135MHz)
447240924023363733893182n/an/a
ATI RAGE MAGNUM4517335827712186180013121295875
Magic TNT49404461431733982732176018791233
WinFast S320II49294648434335182923n/a1972n/a
WinFast S320V412726232881n/an/an/an/an/a
SPECTRA 3200R245183774309722201902n/a1310n/a
GraphicsBlaster4600d/s3744d/sd/sd/sd/sd/s
Voodoo3 30005002d/s4631d/s3314d/s629d/s
Voodoo3 20005012d/s4229d/s2825d/s558d/s
・d/sはその解像度を元々サポートしていないことを意味しています。
・n/aはその解像度はサポートしているはずだが、ビデオメモリ不足などで動作しないことを意味しています。



3.Glide対応ゲーム

 Glideは、Voodooシリーズの開発元3dfx社の独自3D APIであり、特にゲームに向いているため、かつてはGlide専用ゲームも多数存在した。しかし、最近では、Glide/Direct3D両対応のゲームが増えてきているので、Glideの重要性もだんだん低くなってきている。そこで、Glide/Direct3Dの両方のAPIをサポートしたTurok2:Seeds of Evilを用いて、パフォーマンスを比較してみることにした。
 結果は表の通りで、Voodoo2(SLI)やVoodoo3のGlideモードに比べると値は低くなっているが、1,024×768ドット16bitモードまでなら、34フレーム/秒以上は出ているので(一般にスムーズにゲームを行なうには、30フレーム/秒以上が必要とされる)、それほど不満はない。
 なお、Creative Technologyでは、「Unifed」と呼ばれるGlideエミュレートドライバの提供を開始した。現在のところ、RIVA TNT/TNT2用のβ版ドライバのみがリリースされているが、Savage4への対応も行なわれる予定だ。Unifedが提供されれば、従来はVoodooシリーズがないとプレイできなかったGlide専用ゲームも利用できるようになるので、ホビーユーザーには魅力的であろう。

【TUROK2】800×6001024×7681280×1024
16bit16bit
Glide
32bit16bit16bit
Glide
32bit16bit16bit
Glide
32bit
3D Blaster Savage4
(コア110MHz/メモリ125MHz)
46.3d/s32.934.1d/s23.219.7d/s13.6
3D Blaster Savage4
(コア143MHz/メモリ135MHz)
57.5d/s38.537.5d/s26.122.1d/s14.4
ATI RAGE MAGNUM58.4d/s56.550.5d/s41.332.8d/s22.4
Magic TNT59.4d/s55.957.2d/s45.647.6d/s24.6
WinFast S320II59.1d/s56.557.8d/s48.148.3d/s26.9
WinFast S320V54.6d/s33.543.1d/sn/a25.1d/sn/a
SPECTRA 3200R259.8d/s50.651.1d/s30.233.8d/s16
GraphicsBlaster60.774.8d/s55.161.9d/sd/sd/sd/s
Voodoo3 300060.273.7d/s57.965.5d/s45.645.9d/s
Voodoo3 200060.472.3d/s55.260d/s39.640d/s
・d/sはその解像度を元々サポートしていないことを意味しています。
・n/aはその解像度はサポートしているはずだが、ビデオメモリ不足などで動作しないことを意味しています。



4.OpenGL対応ゲーム

 OpenGLは、本来は3D CG用APIとして開発されたものだが、OpenGLに対応しているゲームも少なからず存在する。その代表が、Quake2である。Quake2を利用してベンチマークテストを行なうにも、いくつかの方法があるが、ここではQuake2に標準で含まれているdemo1.dm2というデモファイルを利用してテストを行なった。
 解像度が高くなると、当然フレームレートは落ちていくが、1,024×768ドットでも31フレーム/秒以上は出ているので、十分快適にプレイできる範囲だ。Voodoo3にはさすがに及ばないが、RAGE 128搭載カードやRIVA TNT搭載カードに近い性能は持っているようだ。なお、1,024×768ドットの上の解像度である1,280×960ドットモードを選択しても、実際には640×480ドットの部分しか描画されなかった。

【Quake2】800×600
16bit
1024×768
16bit
1152×864
16bit
1600×1200
16bit
3D Blaster Savage4
(コア110MHz/メモリ125MHz)
49.931.223.7n/a
3D Blaster Savage4
(コア143MHz/メモリ135MHz)
62.338.929.5n/a
ATI RAGE MAGNUM56.936.830.316.7
Magic TNT85.156.946.123.3
WinFast S320II90.364.152.127
WinFast S320V60.336.630.6n/a
SPECTRA 3200R261.339.531.516.6
GraphicsBlaster101.260.4d/sd/s
Voodoo3 3000117.282.167.235.2
Voodoo3 2000105.470.357.529.9
・d/sはその解像度を元々サポートしていないことを意味しています。
・n/aはその解像度はサポートしているはずだが、ビデオメモリ不足などで動作しないことを意味しています。


【テスト環境】
マザーボードASUSTeK Computer P2B
CPUPentium III 500MHz
メモリ128MB(PC/100)
ハードディスクQuantum Fireball EX6.4A

【テスト条件】
各テストでのドライバ設定は基本的にはデフォルト。Turok2とQuake2に関しては V-SYNCの設定は基本的にオフ。
WinBench99:基本的にデフォルト設定のまま
3DMark99 Max:Z-Buffer:16ビット
        FrameBuffer:Triple
        SSE利用
Turok2:基本的にデフォルト設定のまま
Quake2:3dfxのカード以外はDefault OpenGLを選択し、3dfxは3dfx OpenGLを選択。それ以外はデフォルト設定。



■ クロックアップによって、RIVA TNT2を上回る場合も

BlasterControlのAdvanced Settingsで、コアクロック(下側)とメモリクロック(上側)を変更可能
 ドライバの設定によって、コアクロックやメモリクロックを変更できることも3DBlaster Savage4の特徴だ。鹿山雅志氏の連載「オンラインソフト“つっこみ”レビュー」で紹介されたPowerStripのようなツールを使えば、クロック変更ツールが提供されていないビデオカードでも、ある程度クロックを変更することができるが、メーカー純正のドライバで、クロックの変更が行なえる製品はそれほど多くはない。もちろん、定格を超えたクロックアップは、保証外の行為にあたる。あくまで自己責任において試していただきたい。
 クロックの設定は、画面の設定プロパティにある詳細ボタンをクリックして、BlasterControlを呼び出すことで行なえる。

 コアクロック/メモリクロックは、それぞれを独立して変更できる。デフォルトでは、コアクロック110MHz、メモリクロック125MHzだが、それぞれ最大143MHzまで1MHz刻みで設定できる。実際にどこまでクロックを上げることができるか試してみたところ、筆者の環境では、コアクロックを最大の143MHzに設定しても、メモリクロックが135MHz程度なら安定動作した。コアクロック143MHz/メモリクロック137MHzにすると、ベンチマークテストの途中で画面が固まってハングアップしてしまったので、このあたりが限界なのだろう。143MHzというのは、定格(110MHz)から約3割クロックアップしたことになるので、Savage4 PROのコア自体のクロックアップ耐性はかなり高いと思われる。使われているビデオメモリのアクセス速度は8ns(定格125MHz動作)なので、メモリチップのマージンはそれほど高くはないのだろう。

 コアクロック143MHz/メモリクロック135MHzで、ベンチマークテストを行なったところ、Business Graphics WinMark 99やHigh-End Graphics WinMark 99の値は、クロックを上げてもあまり向上していない。しかし、3DMark99 MaxやTurok2、Quake2といった3D系ベンチマークテストの結果は、2割~最大3倍程度も向上している。クロックアップを行なった状態なら、RIVA TNT搭載カードはおろか、RIVA TNT2搭載カードやVoodoo3搭載カードにも決して負けていない。特に、3DMark99 Maxの高解像度32bitカラーモードでの結果はRIVA TNT2を遙かに上回っている。実売1万円半ばのビデオカードとしては、コストパフォーマンスは非常に高いと言える。

 Savage4は、老舗のS3が起死回生を狙って投入しただけのことはある製品だ。表示品質も高く、幅広い用途に対応できる製品として推薦できる。今回は時間や機材の都合もあり、DVD再生支援機能のテストは行なえなかったが、Savage3DのDVD再生支援機能も優秀だったので、DVD-Videoのソフトウェア再生を行ないたいというユーザーにも向いているだろう。とことん性能を追求したいのなら、今後登場してくるであろうSavage4 PRO+をベースにクロックアップを行なってみるのも面白いのではないだろうか。

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32MBメモリで1万円中盤の格安価格設定
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【5月7日】RIVA TNT2のパフォーマンスを徹底検証する
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990507/hotrev09.htm
【5月20日】鹿山雅志のオンラインソフト“つっこみ”レビュー
グラフィックトータルコントロールユーティリティ「PowerStrip 2.40.01」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990520/ols02.htm


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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


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