'99年2月18日 開幕(現地時間)
会期:2月18~21日(4日間)
会場:Las Vegas コンベンションセンター
PMAはアメリカのイベントだが、やはりデジタルカメラ系の主役は日本メーカーだ。今回は、その日本メーカー各社の動きを中心にお届けしよう。もっとも、PMAで初登場した国産デジタルカメラはすでに「PMA99前日レポート」と「PMA99初日レポート」で紹介済みなので、追加情報が入ったものや、PMAの直前に発表されたもの、さらにデジタルカメラ周辺アクセサリなどを中心にレポートする。
●ニコン
・安価で超軽快な「COOLPIX700」
ニコンは今回、デジタル系の新製品としてズーム機の「COOLPIX950」と、単焦点タイプの「COOLPIX700」。さらに、今秋発売といわれる本格派デジタル一眼レフの三本柱での展開となった。いずれのモデルも、会場で大人気であり、実際に手にすることができる「COOLPIX950」と「COOLPIX700」に触れるには、かなりの時間待たなければならないケースもあった。
また、今回のPMA取材には「COOLPIX950」を使用したが、注目度が高い機種だけに、会場内でしばしば質問責めになり閉口してしまった。
さて、初日レポートで概要をお知らせした、実販599ドルの「COOLPIX700」だが、今回はじっくりと手にすることができたので、その簡単な印象を紹介しておこう。このモデルは、内部機構的にはまさに「COOLPIX950」そのものといってよく、機能的に異なる点といえば、単焦点レンズで、絞りやシャッター速度優先AE機能が省かれているだけといっていい。
手にした感じは、想像以上に軽快。起動も早く、このクラスのモデルながらも、大容量バッファーメモリーを搭載しているため、記録待ちは実質2秒以下と超高速。また、オートフォーカスの測距時間も早く、シャッターのレスポンス(タイムラグ)もきわめて短い。光学ファインダーも明るくて視野が大きく、とても見やすい。液晶モニターは1.8インチタイプだが、私には高密度LCD搭載のCOOLPIX950よりも明るくキレイで、見やすいものに感じられた。
しかも、ボディがコンパクトカメラ的なデザインで親しみやすいこともあって、「COOLPIX950」よりも軽快に撮影できる点に好感が持てる。残念ながら、ボディの質感はCOOLPIX950のような高級感はなく、プラスチッキーな感じだが、599ドルと安価な点を考えれば納得できるレベル。感覚的には、まさに新時代の“デジタル・コンパクトカメラ”という感じだ。画質はまだ未知数だが、COOLPIX950の完成度を考えると、この点は全く心配はいらないだろう。
現時点ではまだ、日本国内での価格や発売日は未定というが、価格的には599ドルを現状ルートで円換算したものに近い実販価格で登場することだろう。また、他社の動向を考えると、発売時期もさほど遅くはなく、雰囲気的にはゴールデンウィーク前になると思われる。
・いまだ詳細不明の新デジタル一眼レフ
さて、個人的には、今回のPMAでもっとも気になった注目機種が、ニコンの新デジタル一眼レフ。このモデルに関しては、アクリル越しに展示されているだけで、なにひとつコメントはついていない。また、ブースでも一般向けの情報は一切開示されていない。実際には、NDA(機密保持契約)ベースで簡単な情報が関係者向けに流れているようだ。だが、正式にNDAを結んでしまうと、噂レベルのレポートすらできなくなる可能性があるため、私自身はNDAを結んでおらず、いまだに詳細は不明だ。
もっとも、業界内では実にさまざまな噂(情報?)が乱れ飛んでおり、それを集約すると、以下のようになる。まず、ベースモデルは同社の「F100」のようだが、これはメカやファインダー光学系といった部品単位での流用ということで、外装を含めた骨格は新規開発のものといえる。もちろん、外観上からも液晶モニターの搭載やDELキーの新設、ボディ下部には大容量バッテリーとPCカード用スロットルを収納するためと思われる膨らみもあり、それらがきちんと一体化されたボディシェルに収まっている。そのため改造機で心配される、防滴防塵性にも十分気を配った設計になっていることが容易に想像できる。
今回のPMAでは、コダックが「F5」ベースの200万画素デジタル一眼レフを発表しているが、それとは全く別物であり、新規モデルはニコンがいうようにまったくの自社開発モデルで、コダックとの共同開発ではないようだ。
また、縮小光学系は採用していないようで、かなり大型のCCDを搭載した本格派モデルであるようだ。画素数はメーカー側でも200万画素以上とうたっているわけだが、この点に関してはさまざまな噂が飛び交っている。なにしろ、今秋といえば、200万画素パーソナル機が主流になっている時期であり、デバイス的には300万画素クラスのCCDの発表があっても不思議ではない時期だ。その時期に発売される本格派デジタル一眼レフ。しかも、少なくとも数年にわたって、新時代のフラッグシップとして第一線で活躍する機材となると、200万画素モデルであるとは、考えにくい。
現在、存在が公開されているデバイスとしてもっとも可能性が高いのは、なんといっても、フィリップスの35mmサイズの600万画素CCDといえる。だが、このモデルは基本的に同社が高いシェアを誇る報道関係での利用を重視したモデルであることを考えると、むしろ、画素数よりもより高い機動性や実効感度を重視したものになっているかもしれない。しかし、コマーシャル分野までを視野に入れた場合は600万画素クラスは必須であり、報道関係用に、必要に応じて200万画素程度の画像を生成する、軽快な専用モードを設けている可能性も否めない。
もっとも気になるのが、その価格だが、噂で流れている範囲では、5,000~8,000ドルという話が中心だ。これは現行のデジタル一眼レフである「E3」と同程度の価格帯である可能性があることから来ているものだが、多分に希望的観測が入っている。とはいえ、どうやら、100万円以下というラインだけは実現されそうな雰囲気だ。もちろん、このような価格帯で本機が登場すれば、その次世代では、現在の高級一眼レフ+α程度でデジタル一眼レフが入手できる時代になる可能性も十分にあるわけだ。
私自身、35mm一眼レフ育ちであり、このような洗練されたスタイルで、なんとか個人でも購入できるレベルの本格派デジタル一眼レフが登場することを大いに期待している。本機はデジタルに関心のあるカメラユーザーの多くが期待しているモデルであり、もしかすると、デジタルカメラが銀塩カメラと対等の立場で語られ、愛用される時代への起爆剤になる可能性すら秘めた、画期的なモデルになる可能性が高い。
さて、こうなってくると、ニコンの永遠のライバルであるキヤノンの動向が大いに気になるところ。コダックも、これまでのような改造型デジタル一眼レフを高値安定で供給していればいいというわけにはゆかないし、ミノルタもRD-3000+α程度の価格でこのような本格派モデルが登場してくれば、相当な苦戦を強いられるのは目に見えている。
こうしてみると、いよいよ、本格派デジタル一眼レフの世界も、21世紀を生きぬくためのサバイバル戦争に突入する直前の状態だ。一昨年暮れあたりから、ニコンがデジタル分野で大攻勢をかけるという話は流れていたが、私自身は2000年秋のフォトキナが目標だと思っていただけに、この時期に、このようなスタイルで大攻勢をかけてくるとは思わなかった。それだけに、今後の急展開が大いに楽しみだ。
□ニコンのPMA 99 出展情報(和文)
http://www.nikon.co.jp/main/jpn/events/pma99/index.htm
●ソニー
ソニーはいまも、アメリカで40%ものシェアを誇る、全米でのデジタルカメラのトップメーカーだ。そして今回はPMAということもあって、写真市場を強く意識した出展になっている。なにしろ、通常のPC系イベントでは、デジタルマビカがメインだが、今回はどちらかというと、Cyber-shot系がメイン。さらにメモリースティック関連の出展も多く、力の入った展示内容となっている。
・Cyber-shot PROのブラックボディ登場!
ブースを訪れて、まず目に入るのが、アクリル越しに出展されていた「Cyber-shot PRO」のブラックボディ! もちろん、Cyber-shot PROの200万画素モデルだ! と思ったのだが、実際にはCyber-shot PROの業務用モデルであり、中身は従来からの150万画素と同じものという。しかも、業務用モデルだけに、一般向けに発売するというわけでもなさそうで、少々ガッカリ。だが、やや艶消しに近い感じのブラックボディは、オリジナルのシルバータイプより高級感があり、個人的にはぜひともラインナップに加えて欲しいもの。もっとも、当然、登場するであろう、200万画素モデルでこの外装が採用される可能性もゼロではなさそうだ。
・まずまずの人気だったCyber-shot DSC-F55K
米国では事実上、今回のPMAで初お目見えとなった話題の200万画素モデル「Cyber-shot DSC-F55K」。ブースにもCyber-shot PROやデジタルマビカとともに展示されていた。もちろん、ブースでは超人気で手もするのも難しいのでは……と思ったのだが、人気はまずまずという感じにとどまっている。
というのも、アメリカでの価格は899ドル程度とアナウンスされており、同じ200万画素級の単焦点モデルである「COOLPIX700」より300ドルも高価な点がネックになっていると思われる。もちろん、スタイリッシュで動画が撮影できるといった特徴はあるものの、価格に敏感なアメリカ市場でズーム機と同じ価格帯ではソニーブランドといえども苦戦を強いられる感じだ。
・証明写真専用デジタルカメラシステムを出品
ソニーはもともと、米国でのフォトスタジオ(写真館)市場で、かなりのシェアを持つメーカー。それだけに、業務用に特化した分野でも、ユニークな製品が多い。今回は、昨秋のフォトキナでも出品された証明写真専用のデジタルカメラシステムを出品していた。
このモデルはいわゆる証明写真専用機で、露出、ピントともにフルマニュアルのVGA(640×480ピクセル)モデル。液晶ファインダーには顔の位置が決めやすいように十字線が設けられている。もちろん、ここで撮影結果も見られるので、この分野で主流を占めるポラロイドフィルムと違って、眼つぶりなどの失敗もない。
さらに、専用のドッキングステーションにカメラを載せるだけで、指定したサイズのプリントが即座にできる。このあたりのシステムは業務用モデルを長年手がけてきた同社の経験がよく生かされていた。
・注目のメモリースティック関連製品
同ブースでは、話題のメモリースティック関連製品のアピールを積極的に展開していたのが印象的。日本では既に発表された、メモリースティック対応のフォトフレーム。そして、メモリースティックのデータを一時的にストレージする「Memory Stick Bank」、メモリースティックやType2のPCカード、i.Link(IEEE-1394)などの各デバイスを集中管理し、アナログアウトやカードへのデジタル記録をすることのできる「Memory Stick Media Convertor」などが参考出品されていた。
「Memory Stick Bank」は、すでに国内他社ブランドから発売されているCFカード対応のストレージャーのメモリースティック版と考えてよく、記録媒体として140MBのMDデータディスクドライブが内蔵されている。残念ながら、MDデータメディアの交換はできないが、電池での駆動ができる点は便利。PCへの転送はパラレル経由のため、あまり速度は期待できない。もっとも、メモリースティックは現時点で16MBカードまでしかないことを考えると、このような機材も必要になってくるだろう。
ちなみに、このドライブはメモリースティックに記録されたファイルであれば、JPEGやTIFFといった画像ファイルだけでなくEXEファイルを含めたすべてのファイルを記録できる。そのため、アイデア次第ではおもしろい使い方ができる可能性もある。
一方、「Memory Stick Media Convertor」のほうは、結構多機能なデータコンバーターといえる。これは前記のように、メモリースティック、Type2のPCカードといった各種メディアから入力されたデジタル画像データを、アナログ信号に変換し、ビデオやオーディオアウト、S出力したり、i.Link(IEEE-1394)に出力できるもの。さらに、アナログ入力や、i.Linkからの画像データをメモリースティックやPCカードに静止画データとして記録することもできるなど、かなり多機能だ。もっとも、こちらは価格的にかなり高価なものになりそう。まあ、これだけの機能があれば、仕方ない部分もあるが。
□関連記事
【2月18日】ソニー、メモリースティックの著作権対応とロードマップを公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990218/sony2.htm
「PMA99前日レポート」でも紹介したように、ミノルタは「Dimage EX 1500ZOOM」をベースにした3Dカメラを出品した。このモデルは、ミノルタとMetaCreation社が共同で開発した「Meta Flash」と呼ばれる3Dシステムで、ワンショットで3D撮影ができるものという。
会場に展示されていたものは、まだモックアップだったが、開催二日目からはノートPCを使ってのデモも行なわれていた。実写データは現在MetaCreationのホームページで見ることができる(専用プラグインが必要)が、従来のCGっぽい3Dとは違い、とても写真的なリアリティーを備えているのが大きなポイント。さらに、実データもかなり軽く、デモ用の壺の3Dデータなどは約300KBしかなく、インターネット上でも気軽に扱えるレベル。しかも、上下左右360度の3Dデータが、ほんの数カット程度のデータで生成できるというから驚きだ。
この技術は、今後ますます増えるインターネット上での通信販売などにきわめて有効であり、アイデア次第ではネット上ならではの新しいコンテンツになる可能性が高い。
もっとも、本機は業務用機になるため、価格はそれなりのレベル(数十万円単位?)になるというが、今後の展開が注目される新分野といえそうだ。
●価格別実写比較コンテストを開催したDIMA
PMAの一分野でもある「DIMA」(The Digital Imaging Marketing Association )は今回、出展された新旧のデジタルカメラによる実写テストを敢行。DIMA会員の投票による、価格別の最高画質モデルを選出し、PMA会場内で発表していた。
このテストは、PMA前日に会場内の特設スタジオで行なわれたもの。その実写データを米国で唯一のPCカード対応インクジェットプリンターであるレックスマーク社のプリンターでダイレクトプリント。そして、カメラを価格別にクラス分けし、そのプリント結果をもとに、DIMA会員が投票したものという。
もっとも、撮影条件はモデルのカット一種のみで、撮影条件の説明も一切ナシ。また、撮影結果を見ると、内蔵ストロボが発光しているものもあれば、そうでないものもある。おそらく、各機種の標準設定での撮影を行なっているようだが、ライティングが異なるため、画質面で完全なイコールコンディションとはいいにくい部分もある。また、プリントサイズが小さく、解像感が不明瞭な点や、機種によりモデルの大きさや表情が大きく異なる点も、その印象も投票結果を大きく左右している感じもした。
価格別のトップ機種は以下の通り(ワンショットタイプのみ)
■注意■
□PMA99のホームページ(英文)
http://www.pmai.org/
□関連記事
【2月23日】PMA99レポート第3弾「150万画素モデルが続々登場した海外モデル」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990223/pma3.htm
【2月19日】PMA99初日レポート「コニカ、211万画素モデルを発表!」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990219/pma2.htm
【2月18日】PMA99前日レポート「米東芝の超小型214万画素単焦点機など新製品が早くも登場」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990218/pma1.htm
('99年2月25日)
[Reported by 山田久美夫]