パソコンの高速化・3Dグラフィック化に伴って、もっとも劇的な進化を遂げたのがフライトシミュレータだ。数年前まではカクカクしたコマ送り状態だったソフトが、ここしばらくの間に見違えるほど美しくなった。機体のディテールはもちろん、背景の美しさやテクスチャの細かさ、描画速度まで、驚くほど改善されている。
というわけで、今回は最近発売されたばかり、もしくはまもなく発売される新作フライトシミュレータの中から、特に秀逸な4本、
なおいずれのソフトも、プレイにはある程度のハードウェアスペックを必要とする。巻末に今回筆者が試用したマシンのスペックを載せたので、プレイする前にぜひ、そちらを参考にしていただきたい。CPUや搭載メモリが条件を満たしていれば、あとはビデオカードさえ十分なものを用意すれば、思いのほか気持ちよく遊べるだろう。
逆に言えば、Voodoo BansheeやVoodoo2、RIVA TNTなど最新のチップを搭載したビデオカードを持っているのなら、これらのソフトは素晴らしく快適に遊べるはずだ。
■ネットを通じて友達と遊覧飛行を楽しめる
~「Microsoft Combat Flight Simulator WW II EUROPE SERIES」
Microsoft Combat Flight Simulator
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プレーヤーはイギリス空軍、ドイツ空軍、アメリカ空軍のパイロットとなって、史実に沿ったミッションを体験。用意されているシナリオに添って飛ぶことはもちろん、時刻や天候、場所を個別に指定して好みの相手と戦うことも可能だ。搭乗できる機体は、スピットファイアMk.IやP-51Dムスタング、メッサーシュミットBf109G、フォッケウルフFw190A8など、大戦の歴史に残る8機の名戦闘機。各機の性能は、大戦当時のエースパイロットたちのテストプレイによって実証済みとのことで、こだわり方も半端ではない。 さて、実際にプレイしてまず最初に感じたのが、ため息が出るほど美しい機体のデザインと背景である。DirectX 6を駆使した描画エンジンはビデオカードの許す限りの解像度に対応し、細部まで綺麗に再現してくれる。今回は1,024×768ドットの解像度でプレイしたが、コクピットからの風景はもちろん、視点を機体の外に置いて眺める飛行風景も、まるで映画のような雰囲気だった。今回プレイした他の作品と比べても頭抜けた美しさで、戦闘機そのものにこだわって遊びたいのなら、このソフトが一番だと思う。 ただし、操作の基本がMFSであるだけに、機体の操縦はかなり難しい。空中戦はもちろんだが、指定されたコースを飛んだり、滑走路に着陸することでさえ相応の練習(というか訓練)が必要だ。
まったくの余談だが、Microsoftは'79年に発売した初代の「Flight Simulator(APPLE II版)」以降、20年近くも改良を積み重ね、フライトシミュレータの開発に全力を傾けてきた。OSやビジネス用アプリケーションで市場を席巻する同社が、なぜここまでフライトシミュレータにこだわるのかはわからないが、力の入れ方がタダモノではないことは、このソフトを見ても明らか。フライトシミュレータの開発は、ビル・ゲイツ会長自身の命令による肝入りプロジェクト……との話も耳にするが、さて?
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/default.asp
□マイクロソフト ゲーム関連プロダクツのページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□Microsoft Combat Flight Simulatorのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/cfs/
□関連記事
【10月22日】「マイクロソフト、Combat Flight Simulatorなど最新ゲーム一挙発売」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981022/ms.htm
(c)1998 Microsoft Corporation. All right reserved.
■史実に基づいた熱い戦いの場
~「EUROPIAN AIR WAR」
EUROPIAN AIR WAR
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画面写真を見てもらえばわかるように、全体にドラマチックな演出で、BGMやサウンドも大戦当時のイメージを彷彿とさせる。たとえば、プレーヤーがドイツ空軍を選べばゲーリングの言葉でミッションブリーフィングが始まり、アメリカ空軍を選べばマーシャルの激励が表示されるという具合。ハンガーや兵舎の雰囲気もそれらしく、国による違いがしっかり表現されているところもおもしろい。
ゲームにも、独自のアイデアが盛り込まれている。空中戦はあくまでもミッションの一部であり、目的達成のための手段でしかない。プレーヤーには地上攻撃や爆撃機の護衛など様々な使命が与えられ、敵機の撃墜よりもその達成のほうが重要となるわけだ。ミッションの達成率によって微妙にその後の歴史も変わり、たとえばドイツ工業地帯の早期爆撃に成功すれば、その後イギリス本土を襲ったV1による空爆が遅れるなど、シナリオ全体に影響が生じる場合もある。
最大解像度640×480ドットはやや粗く感じるものの、そのぶん動きはスムーズで、画面も滑らかに表示される。地上からの激しい対空砲火や、最大256機(!)が入り乱れて戦う空中戦は「EUROPIAN AIR WAR」ならではの特長だ。敵機と遊軍機が木の葉のように舞う戦場に突入するときの緊張感は、言葉ではにわかに表現しがたい。目の前で砲弾が炸裂する“恐怖”や、どこから撃たれるかわからない空中戦の“恐さ”をここまでリアルに再現したゲームは、おそらく他にないだろう。
ゲームそのものは英語版だが、パッケージには日本語ガイドが添付されるほか、もちろんメディアクエストによるユーザーサポートも行なわれている。
□メディアクエストのホームページ
http://www.mmq.co.jp/top/top_0.html
□「EUROPIAN AIR WAR」の製品情報
http://www.mmq.co.jp/hot/air_c.html
□MICROPROSEのホームページ(英文)
http://www.microprose.com/
□「EUROPIAN AIR WAR」の製品情報(英文)
http://www.microprose.com/gamesdesign/eaw/index.html
□「EUROPIAN AIR WAR」デモ版ダウンロードページ(英文)
http://www.microprose.com/gamesdesign/eaw/demoframe.html
(c)1998 MicroProse, Inc. All rights reserved. 1942: The Pacific Air War and MicroProse are U.S. registered trademarks and European Air War is a trademark of MicroProse, Inc. or its affiliated companies. Dolby and the double-D symbol are trademarks of Dolby Laboratories Licensing Corporation. All other trademarks are the property of their respective holders.
■戦闘機同士の空中戦が楽しい
~「WORLD WAR II FIGHTERS」
WORLD WAR II FIGHTERS
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このソフトの最大の特徴は、やはり戦闘機同士の空中戦、格闘戦の醍醐味だろう。他のフライトシミュレータに比べて機体の扱いは容易なものの、それゆえに高度な操縦テクニックが求められる。コンピュータが操る敵機の動きも実に狡猾で、ターゲットスコープの中心に納めるのは至難の業だ。今回プレイした4本の中で、もっとも実戦に近い(と思われる)動きで敵機が移動・攻撃してくるのが、このソフトだった。単調な旋回や攻撃では、生き残ることはできないだろう。
またユニークなのが、急な加速や反転をしたときに起るブラックアウトやレッドアウト。多くのシミュレーションゲームはシミュレーションであるがゆえにこうした人間くさい部分をおざなりにしがちだが、「WORLD WAR II FIGHTERS」は違う。このソフトをプレイしていると、戦闘機はパイロットという「人間」が操縦するものであるということを、痛烈に感じさせられる。
グラフィックも最高だ。機体の描画、背景の描き込み、霧やもやのかかり方など、どれをとっても現時点で最高のクオリティで、十分満足のいく仕上がりだと思う。
□エレクトロニック・アーツ・スクウェアのホームページ
http://www.ea.com/eav/
□Jane's COMBAT SIMULATIONSのホームページ(英文)
http://www.janes.ea.com/
□「WORLD WAR II FIGHTERS」の製品情報(英文)
http://www.janes.ea.com/legends/
□「WORLD WAR II FIGHTERS」デモ版ダウンロードページ(英文)
http://www.janes.ea.com/legends/ww2demo.html
(C)1998 Electronic Arts.
(C)1998 Jane’s Information Group Limited.
■最新の戦闘機で大空の覇者となる
~「F-22 トータル・エア・ウォー 完全日本語版」
F-22 トータル・エア・ウォー
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プレーヤーはF-22の新米パイロットとして、地上攻撃や迎撃、戦闘爆撃など様々なミッションを戦わなくてはならない。一方ターゲットとなるのは、F-14、F-15、F-16などの戦闘機にアパッチ、コブラなどの戦闘ヘリ、果てはギャラクシーやアントノフ、ボーイング747まで60機を越える機体が用意されている。このほかに戦闘車両や艦船など様々な兵器が登場し、その数は120種類を越える壮大なスケールだ。ポリゴンの作り込みも職人芸的なレベルで、翼の長いU-2偵察機や偉容を誇るB-2ステルス爆撃機などは必見だ。もちろん各機の違いは単にデザインだけに留まらず、装備できる武器の制限はもちろん、最高速度や運動性能、加速、ステルス性までしっかりとパラメータ化されている。
近代兵器、とりわけ最新鋭のジェット戦闘機同士の戦いはレーダーと誘導兵器に頼るところが多いため、第二次世界大戦中の戦闘機のような激しいドッグファイトとは無縁と思われがちだが、このソフトをプレイすればそんな先入観も消し飛ぶに違いない。敵を射程内に追い詰めトリガーを引き絞る感覚は、まさに格闘戦のそれで、ミサイル1発で落とせるほど楽ではないことをたっぷりと実感できるはずだ。相対速度が速いために勝敗は一瞬で決まることが多く、また対地攻撃もレシプロ機より格段に難しく感じる。なにより、敵機の運動性能が高いぶん、よいポジションを維持すること自体が困難だ。
Direct3Dのほか、3DfxのGlideにも対応し、最大解像度は800×600ドット。機体や背景には軽くシェードとアンチエイリアスが加えられ、自然な色合いが美しい。キャノピーに移り込む太陽光や翼の輝き具合まで緻密に再現され、これがパソコンゲームかと思うほど見事なグラフィックである。
□イマジニアのホームページ
http://www.imagineer.co.jp/
□「F-22 トータル・エア・ウォー」の製品情報
http://www.imagineer.co.jp/imagi_n/pc/f22taw/index.html
□「F-22 TOTAL AIR WAR」の製品情報(英文)
http://www.did.com/tawguide/index.htm
(c)1998 Infogames United Kingdom Limited. Ocean is a registered trademark of Infogames United Kimgdom Limited. http://www.ocean.co.uk
(c)1998 Digital Image Design Limited. Desined and developed by Digital Image Design Limited. All right reserved.
■各ソフトの特徴を押さえて選ぼう
……と、やや駆け足になってしまったが、4本のソフトについておおまかな紹介をさせていただいた。ひとことにフライトシミュレータといっても、各ソフトの持ち味はまったくベツモノであり、その凝り方や歴史に対するアプローチも大きく違っている。
本文中でも書いたように、第二次世界大戦当時の戦闘機を美しいグラフィックでリアルに操縦したいのなら、「Microsoft Combat Flight Simulator WW II EUROPE SERIES」。キャンペーンモードで史実を添った戦闘を追体験したいのなら、「EUROPIAN AIR WAR」。シザースやロールなど操縦技術の粋を尽くしたドッグファイトを楽しみたいのなら、「WORLD WAR II FIGHTERS」。各国の戦闘機からヘリ、爆撃機まで最新鋭の機体を乗り回したいのなら、「F-22 トータル・エア・ウォー」……という位置づけになるだろうか。
ただし、いずれのソフトも操縦は難しく、思うように機体を扱えるようになるまでには相当な時間がかかる。プレイ序盤は苦い撃墜(もしくは墜落)を繰り返し味わうことになるが、そこがまたフライトシミュレータの「深い」ところ。操縦者の腕によってシビアに勝敗が別れるからこそ、対戦モードでも盛り上がるというわけだ。
なお、最後に筆者からの推奨アイテムとして、マイクロソフトのSideWinder Force Feedback Proを挙げておこう。この手のソフトを楽しむためにジョイスティックは必要不可欠なインタフェースだが、中でも機体の動きに連動して操縦桿の「重さ」や衝撃を再現するSideWinder Force Feedback Proは逸品だ。急旋回するときの荷重や、ストールして操縦不能になったときの細かい振動まで、実にリアルに再現してくれる(もっとも、筆者は本物の操縦桿を握ったことはないのだけれど)。これから大空に飛び立とうとしているパイロットたちに、フライトシミュレータを10倍楽しむためのアイテムとして、SideWinder Force Feedback Proの導入をぜひお薦めしたい。
※このレビューはプレβ版を使用してのものです。製品版では若干仕様が変更される場合もあります。
【筆者紹介】
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