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■P&Aがこの夏の新作ゲームを発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980710/pa.htm
●遂に完成した3Dアクションシューティングの進化形
「SiN(シン:罪)」。ファン待望の、という言葉が似合うタイトルだ。思えば、この種のゲームとの付き合いもずいぶん長いことになる。id Softwareの「ウルフェンシュタイン3D」に始まり「DOOM」の爆発的ヒットで定着した3Dアクションシューティングというジャンル。一頃は“DOOMライク”と呼ばれたこのジャンルはその後、続編を含み幾多のタイトルを輩出してきた。「HEXEN」「Quake」「BLOOD」「STARWARS:DARK FORCES」等々……。中でも「Quake」は、id Software自身が新しい3Dエンジンを搭載して発表した作品で、そのクオリティの高さに多くのファンが酔いしれた。前述の“DOOMライク”というジャンルが、最近では“Quakeライク”と呼ばれていることからも、その質と人気の高さは理解していただけるものと思う。
そして、その「Quake」の拡張3D描画エンジンを使用したのが、この「SiN(シン:罪)」。現在のスタンダードを築いたエンジンを採用しているということで、そのクオリティに関しては疑問を差し挟む余地はないだろう。しかし、他方ではこのジャンルに対する難易度の異常なまでの上昇も気になるところ。最近多くなってきている「一見さんお断り」の部類に入っていなければいいのだけれど……。期待と不安を半分ずつ抱きながら、早速プレイしてみた。
ゲーム開始直後から厳しい戦いが始まる | 変化に富んだステージがかなり用意されている | 視点を切り替えることでプレーヤーキャラが登場することも |
ゲームの舞台となるのは、近未来の地球。フリーポートシティと呼ばれる町で始まる。この町に蔓延し始めたドラッグ「Fyforsanide」通称“U4”は、通常の麻薬のように人体に悪影響を与えるだけでなく、遺伝子レベルにまで影響を及ぼしモンスター化させるという、おそるべきものだった。そして、その影には妖艶にして美しき遺伝子工学者、エレクシス・シンクレアの姿が……というのが基本ストーリー。ちなみにこのシンクレア、ゲームのインストール時に水の中から顔出してる女性がそうなのだけれど……やはり欧米系の“美人”の基準は、日本人の感覚からはかなり外れているように感じる。
ゲームは、銀行を襲撃した強盗団を追って、プレーヤーがヘリで銀行上空に到達するところから始まる。ヘリの側面に設置された機銃で、いきなり掃射! めちゃめちゃハデな始まり方だ。敵もミサイルランチャで反撃してくるので、これを迎撃しつつ掃討していく。このシーンでは弾数に制限はないので、とにかく乱射しまくること。1発でも敵のミサイルをくらえば、即座にゲームオーバーになってしまう。そして、破壊された屋根から内部に進入し、制圧していく。ここからは従来の「Quakeライクな」ゲームと同様。視点を変えれば「トゥームレイダー」のように主人公を画面内に確認することもできる。狭い足場を渡っていったり、ジャンプを多用するところがあるなど、かなりアクション性の高いゲームなので、状況に応じて視点を切り替えながらプレイしていくように心がけるといいだろう。
●強化されたアドベンチャー要素
字幕は英文で表示される。ちょっとした英語力は必要かも |
ゲームの中では、銃の扱いを練習するトレーニングモードもある。クレー射撃やライフルによる狙撃、街中でのダミーを使った早撃ちの練習など、内容もさまざまだ。それぞれのモードについて、訓練後にスコアが表示され、ハイスコアはプレーヤーの名前とともに保存されるようになっている。これだけでも独立したゲームとして立派に楽しめるので、本編に入る前に訓練を積み、本番でも能力を発揮できるようにしておこう。もしかしたら、こちらのスコアアタックに燃えてしまって、本編そっちのけでプレイ、なんてことになるかもしれないけれど、それはそれでいいと思う。ぜひ、自分なりのプレイスタイルを見つけてほしい。
このゲームには、ステージごとに任務が与えられていて、プレイ中にTABキーを押すと、現在プレーヤーに与えられている指令が表示される。任務はいくつか存在するとともに優先順位があり、各ステージのクリア時にどれを達成し、どれが達成できなかったかによって先の展開が変化していくようになっている。裏を返せばプレーヤーはどう行動しても構わないわけだ。もちろん体力がなくなればそこでゲームオーバーだけれど、与えられた任務をこなしてもよし、そんなものは無視してひたすら思うままに進めてもよし。ストーリーは、プレーヤーの行動によって作られていく。また、プレイ中にサポートメンバーから通信が入ったり、ステージの合間にはデモシーンが挿入されたりと、かなり物語重視の作りになっているのも特徴のひとつ。メッセージは音声と、画面下の字幕で表示されるが、もちろんどちらも英語なので、最初は少し戸惑うかもしれない。けれど、プレイしていれば徐々に理解できるようになるだろう。かくいう自分も英語はからっきしだけれど、しばらくやっていたらそれなりに理解できるようになった。もちろん、なんとなくだけれど、プレイする上ではそれで十分だ。
ストーリー性と並行し、このゲームはアドベンチャーの要素も付加されている。例えば、閉ざされたドアを開くために鍵が必要になる程度は「DOOM」の頃からあったけれど、金庫のドアを開けるためにセキュリティ・コンピュータにアクセスしたり、敵の組織に拉致されている人物に会ってヒントを得たりするのは、このゲームならではだろう。ちなみに、上記のコンピュータにアクセスするときに、MS-DOSの知識があると預金者の暗証番号などを閲覧することができる。もちろん知らなくてもゲームの進行には影響ないのだけれど、こうしたお遊びも用意されているのがうれしい。演出というのはゲームの骨子には決してならないけれど、雰囲気作りにはなくてはならないものだ。銀行のコンピュータには個人情報がある。スラムには浮浪者やネズミがいる。工事現場には建設機械がある。そんな当たり前のことがどこまで再現されているかが、リアリティを高めるためには重要な事柄のなのだ。
さて、多少話がずれてしまった。この「SiN」でも、多くのユーザーが期待しているのがネットワーク対戦だろう。もちろん、LANやインターネットを用いての通信対戦にも、このゲームはしっかり対応している。残念ながら、今回プレイに使用したβ版ではテストできなかったが、シングルプレイでの感触をみるかぎりでは十分に期待してよさそうだ。現在、ネットワーク対戦の3Dアクションシューティングといえば「Quake II」や「Unreal」などがスタンダードになっているけれど、「SiN」がその座に取って代わる日は、そう遠くないかもしれない。シングルプレイで使用できた武器が全て対戦プレイでも使用できるなら(おそらくできるだろう)、無線によるリモコン爆弾(「DUKE NUKEM 3D(GT Interactive)」などでも有名)や、スコープを使って遠くから狙撃するスナイパーライフル(「OUTLAW[ Lucas Arts ]」にも登場)などの特殊な武器をいかに使いこなすかが勝敗を分けることになるはずだ。また、階段や小窓、瓦礫など、複雑な地形に身を潜め、相手の接近を待つといったテクニックも使える。相手の裏を読み、先手を取りという、頭脳戦になるだろう。
癖のあるキャラが数多く登場する | 登場する女性キャラが美人かどうかは各自判断して欲しい | ガンガン撃ちまくれ……が、壊してはいけないものもフィールド上にはあるのでよく考えて行動しよう | 敵の攻撃はかなりシビアだ。用心しながら進めていこう |
最後になるけれど、気になった点についても併記しておこう。最も気になったのは操作面。キーボードとマウスを併用するシステムは、最近ではスタンダードになってきているので仕方ないのかもしれないけれど、馴れない人にとっては相当煩雑で、負担の大きいシステムなのは否めないところだ。キーボードだけでもプレイは可能だけれど、そうすると今度は照準の細かい移動や上下方向が操作しづらく、なかなか相手に当たらない。また、デフォルトのキーボード設定はかなり使いづらいので、早めに自分なりにアレンジして、使いやすいように変更することをお奨めする。次に、これも操作面に関わること。「SiN」は海外で開発されたゲームなので当然といえば当然のことなのだけれど、日本語キーボードには100%対応していない。というか、海外の101キーボードと、国内で使用されている106や109といったキーボードでは仕様が違い、同じキーを押しても違う文字が出ることがある。そのため、アイテム変更の“{”や“}”を押したときに、ちゃんと押しているつもりでも反応しないというケースがあるのだ。これを回避するには、101キーボードを使うか、キー配置の変更をするしかない。前述の操作性のこともあるし、わざわざ101キーボードを買ってくるよりも、配置をカスタマイズしてプレイしやすい環境を作ることをお勧めしたい。
ただの3Dアクションシューティングに留まらず、さまざまな要素を取り込んだ「SiN」。不満点も全くないわけではないが、それをおぎなってなお余りあるだけの魅力を、このゲームは持っている。新しい世代のスタンダードは、このゲームの中にこそあるのではないか。そんな気がした。
Sin is a trademark of Ritual Entertainment. (C) 1998 Ritual Entertainment. Published and distributed by P. & A., Inc. Quake(R) is a registered trademark and Quake IITM is a trademark of Id Software, Inc. All rights reserved. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners.
※このレビューはプレβ版を使用してのものです。製品版では若干仕様が変更される場合もあります。
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