A5完全版(A列車で行こう5)
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写真左:永浜達郎アートディンク代表取締役社長 写真右:小原祐一ゲームディレクター |
■【12/4】Weekend Summary:
究極の経営シミュレーション「A5完全版」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971204/game.htm
昨年12月に「A列車で行こう5」が発売された。これは'96年末に発売されたPowerVR版をDirectXに対応させたものだが、ヘリコプターなどを操作できる「パイロットモード」や資材がなくても自由に建設できる「フリービルドモード」など数多くの要素が追加され、新作といっても過言ではない出来となっている。今回は「A列車」シリーズの生みの親とも言える、アートディンクの永浜達郎社長とプロデューサーの小原祐一氏にお話を伺った。
■「A5完全版」はこうして生まれた!
グラフィックの発達には目をみはるものがある。 |
永浜氏 「パイロットモードやフリービルドモードがPowerVR版に入らなかったのは、開発期間がなかったということもありますが、あの時は、PowerVR上であのクオリティのグラフィックを描くだけで精一杯だったんです。今回は改めて作り直すということで、前述のモードを作ることができました。ただし、今度はPowerVRを使わないであのグラフィックを動かすということで、それはそれでまた大変だったのですが。
だいたい、DirectX版開発の開始時点では、PowerVRを使わないで本当にできるのか? 表現する方法があるのか? といった疑問だらけだったんです。最初は不可能だという意見のほうが多かった。だから、プロジェクト開始の時点で大変もめましたね(笑)。」
社長命令ですか?
永浜氏 「私はやりたいと(笑)。でも、これまでの作品でも同様に数多くの困難に対して挑戦してきましたから、今回もやろうとおもえたんだと思います。何もない所からはできなかったと思いますよ」
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永浜氏 「特殊というより、3D表現の発想が根本から違うんです。ある意味ポリゴンより有利とも言える。平面は三角形に比べて指定する数値が少ないですから、計算が圧倒的に速いんです。もちろんデータ量も少ないですから、影をつけるとか、フォグ(霧)の処理ですとかずっと楽。もちろん、デメリットもありますから、ゲームを作る上で向き不向きが出てきますが、たとえば「A列車」に出てくるような、地平線まで消え入るような風景は、すごく描きやすいんです。ビルがズラッと建ち並んでいる風景などもそうですよね。水平線に船が浮かんでいるといった絵もすごく綺麗です。
技術的にまったく違うものですから、PowerVRからDirectX版に変わるということは、見た目は同じでも内部処理的にまったく違うということなんです」
小原氏 「さらにDirectX(特にDirect3D)に関連する部分の開発が難しかったですね。というのも、DirectX自体まだ仕様として固まっていないものですから、安定度に問題があったり、解説書もそれほど多く存在しないものですから、自分達で調べていかなければならないことが数多く存在したんです」
永浜氏 「ハードも、OSも、アプリケーションもすべてが未完成のまま同時に開発が進んでいっているわけですよ。そんな時、どこかに変更が生じると、すべてを変更せざるをえないわけです。新しい技術を使って、ゲームを作るのは本当に難しいことなんです。だから、DirectXをフルに使ったゲームが多く存在しないのも、仕方がないのかもしれませんね」
■「A列車で行こう」の基本コンセプトとは
今回新しく採用されたフリービルドモード。「A5」は限られた資源を運用するゲームですが、フリービルドモードはこの大前提を超えた存在となっています。ともすればゲーム性を破壊しかねないこのモードを今回用意した理由は?
永浜氏 「限られた資源を上手く運用していくことで、街を発展させ線路を伸ばしていくのが「A5」の“ゲーム性”ですよね。でも、それとは別に自由に街を作りたいという意見が、けっこうあるんですよ。本当はマップからユーザーさんに自由に作ってもらうというのがよかったのかもしれませんが、3Dマップをユーザーさんに作ってもらうのは、マップ作成アプリケーションも含めて技術的にちょっと無理があるので、今回はフリービルドモードというモードの追加に落ち着いたんです。
「A5」の基本コンセプトのひとつに、「自分の見た風景をゲームの中に再現して、その街のなかを体験する」というのがあるんです。自分の作った街並みを見て、現実の世界と通じるなにかを感じることができれば、それは気持ちいいことだよね……って思うんです。さいわい「A5」は、グラフィッククオリティがかなりアップしてきているので、実際に街角で見た風景を再現、そして体験できるようになっています。そういう意味では、別にゲーム性に縛られることなく自由に建物を建てて、線路をひけばいいんですよ。ゲーム的にはちょっと離れるけど、テーマ的にはそれほど違ったシステムとは思いませんね」
これだけでも十分楽しいパイロット モード |
そういった意味合いから、第3作目よりゲーム性の大きな部分を占めはじめた都市育成シミュレーション的な側面。都市育成シュミレーションといえば「SimCity」が有名だが、両者の違いについてどのように考えておられるのだろうか?
永浜氏 「よく言われるのは、「SimCity」は道路があって街が発展していく。「A列車シリーズ」は線路を引いて、そこに駅ができて街が発展していく。それが日本的な発展の仕方だという意見です。たしかにそのとおりだと思います。でも「SimCity」と「A列車シリーズ」の違いというのは、個人的には“行政の目から見た町作り(SimCity)”か、列車が走るのが気持ちいいという“感性のほうからくる町作り”なのかの違いなのではという気がしています。それに、「SimCity」ではゲームの中に税金や消防署などの行政機関が登場します。それらの要素が「A列車」にはないのです。別に意識的に排除してるわけではなく、「A列車」の世界観に必要ないんですよ。
そうですね、「A列車」というゲームを簡単に言いば「西武鉄道の堤氏を体験できる」ということなんです。線路引いて、野球場作って、デパートを建ててお金儲けする、ということなんです」
【永浜達郎社長】 |
じゃ、鉄道会社を経営するのが夢だったとか?
永浜氏 「それも違うんです。(笑)」
それではなぜ?
永浜氏 「むしろ個人的にはコンピュータそのもののほうが好きですね。何でも実現できそうじゃないですか? その可能性に惹かれますね。で、その可能性を実現できる中のひとつが“現実の街を再現する”という「A列車」のコンセプトにつながっていくわけです。」
■進化していく「A列車シリーズ」
ということは、コンピュータの進化に合わせて「A列車シリーズ」も際限なく進化するということなのだろうか? すでにかなりの完成度を誇る「A列車で行こう5」。パイロットモードなど通常のゲームであれば別パッケージになってもおかしくないほど充実しているゲームだが、まだ付け加える部分があるのだろうか?
2Dマップでレイヤー操作をして線路を引いていく |
なるほど。「A5」をじっくり遊びながら「A6」へのヒントを探し出すのもまた楽しいかもしれない。
Interviewer 田中利昭
Txte by PC Watch編集部
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