元麻布春男の週刊PCホットライン

DVDレコーディング規格に対応した「DVD-Movie Album」を試す


●現時点ではWindows XPに対応しない

 前回のコラムの最後で、DVD-RAMのビデオレコーディング規格に対応したPC用ライティング/オーサリングソフトウェアが、LF-D321JDに添付されているDVD-Movie Albumなど、ごく限られたものしかないことについて触れた。今回は、このDVD-Movie Albumについて取り上げてみたいと思う。

 まず、現時点におけるDVD-Movie AlbumのWindows XP対応だが、公式には以下のURLの通り。

・Windows XPの対応について
http://www.panasonic.co.jp/dvdram/whatsnew/xp.html

 すなわち、将来Windows XPに対応させる予定はあるものの、現時点では正式サポートしていない、ということである。これはWindows 2000に対応した最新のバージョンがWindows XPで動く、動かない、ということとは意味合いが異なる。

 たとえば、DVD-Movie Albumが唯一サポートしている(あるいはDVD-Movie Albumを唯一サポートしている)リアルタイムMPEG-2キャプチャカードであるアイ・オー・データ機器のGV-MPEG2/PCIが、現時点においてWindows XPでの動作確認作業が終了していないこと( http://www.iodata.co.jp/support/xp/index.htm )も含めて、動作保証はできない、ということである。そこで、ここではとりあえずWindows 2000を用いてテストした。

 上述のようにDVD-Movie Albumは、DVD-RAMメディアに対し、ビデオレコーディング規格1.1に準拠したフォーマットで動画データを書き込むソフトウェアである。動画データはルートフォルダの下にあるDVD_RTAVフォルダに書き込まれる(DVD-VideoではVIDEO_TSフォルダ)。片面4.7GBのDVD-RAMメディアに、高画質モード(XPモード:約10Mbps)で1時間、標準モード(SPモード:約5Mbps)で約2時間、長時間モード(LPモード:約2.4Mbps)で約4時間の録画が、それぞれ可能だ。


●とりあえずリアルタイムキャプチャで動画を取り込み

 DVD-Movie Albumに動画データを入力する方法は、大きく分けて2つある。1つは検証済みのDVキャプチャーソフトによりキャプチャされたDV CODECのAVIファイルを用いる方法、もう1つがサポートされたキャプチャ/エンコーダカードを用いてリアルタイムキャプチャする方法だ。

 前者でサポートされているDVキャプチャーソフトは、LF-D321JDにも添付されている純正のMotionDV Studioのほか、UleadのVideoStudio 3.0および4.0、RatocのRsDvCap/CompressAVIの4種類。MotionDV Studioは、上記のURLでも示したとおり、将来のバージョンアップでWindows XPに対応する予定だが、現時点ではWindows 98/Me以外のOSでは動作しない。

 今のところ筆者は、手元にDVDで残したくなるようなカメラ撮りしたDVデータは持っていないので試していないのだが、意外と対応したソフトが限られている、と感じた人も多いかもしれない。筆者が何より不便に感じたのは、MPEG-2ファイルをインポートしてビデオレコーディング規格に書き出す機能がないことだ。MPEG-2に対応したTVチューナーカードも増えている昨今、この機能があればもっと手軽に使えるように思う。

 さて、今回筆者が実際に試したのが、後者の方法。つまりキャプチャ/エンコーダカードによるリアルタイム記録だ。要するに、キャプチャしたビデオデータをリアルタイムでDVD-RAMメディアに書き出す方式であり、いちいちハードディスクにディスクイメージを作ったりしなくて済む。可能ならば、一番手っ取り早い方式だ。


●対応キャプチャ/エンコーダカードはGV-MPEG2/PCIのみ

 だが、ここで最初の問題が浮上する。前述した通り、対応したキャプチャ/エンコーダカードがGV-MPEG2/PCIしかない、ということだ。

 GV-MPEG2/PCIは、C-Cube製のエンジンを搭載したハードウェアMPEG-2キャプチャ/エンコーダカードだが、残念ながらTVチューナーユニットを搭載していない。つまり、EPGを使った番組予約録画等はできない、ということになる。せっかくリアルタイム記録ができるのに、番組予約録画ができないのでは、魅力も半減である。カノープスのMTV-1000のような、ハードウェアMPEG-2エンジンを搭載したTVチューナーカードのサポートが望まれるところだ。

 また、GV-MPEG2/PCIにはもう1つ、大きな問題がある。それはNVIDIA製のビデオチップでうまく動かない、という問題だ。GV-MPEG2/PCIに添付されている純正アプリケーションであるMPEG Creator(MPEG-2キャプチャソフト)は、とりあえず動作したものの、かなり挙動が不安定であった。DVD-Movie Albumに至っては、プレビュー画面の表示さえ不可能で、ビデオキャプチャすることはできなかった。

 アイ・オー・データ機器のWebサイト( http://www.iodata.co.jp/lib/product/g/gvmp2110a.htm )には、サポートソフトウェアVer 1.10の注意事項として「NVIDIA社製RIVA TNT2搭載グラフィックボードを搭載した機種ではキャプチャが出来ない、プレビューが出来ない等、本製品が正常に動作しない場合があります」と書かれているが、今回筆者が用いたのはGeForce2 MX。 どうもNVIDIAのビデオチップ全般で、この問題が生じるようだ(GV-MPEG2/PCIの最新のサポートソフトウェア Ver 1.20βも試したが、やはりうまくいかなかった)。現在トップシェアのビデオチップとの間に相性問題があるというのは、かなり痛い。ちなみに筆者はビデオカードをSiS315ベースのものに交換して、この問題を回避した。


●DVD-Movie AlbumとMPEG Creatorでの連携機能が望まれる

 さて、DVD-Movie AlbumとGV-MPEG2/PCIを組み合わせることで、確かにアナログビデオをそのままリアルタイムでDVD-RAMに記録できるのだが、その使い勝手にはいくつかの疑問符がつく。

 中でも最もフラストレーションがたまるのは、画質調整やオーディオのゲインコントロールといった、細かな調整をDVD-Movie Albumから行なうことができない、ということだ。つまり、ちょっと画が明るすぎると感じた場合は、いちいちDVD-Movie Albumを終了し、MPEG Creatorを起動して画質を調整し、MPEG Creatorを終了させた後で、またDVD-Movie Albumを立ち上げなおさねばならない。

 基本的には、まずMPEG Creatorで画質等の調整を完全に行なった後、DVD-Movie Albumを使え、ということなのだろうが、ソースによってちょっと修正したい時など不便であることに変わりはない。やはりDVD-Movie Albumから調整ができるべきだし、それが不可能なら、せめてDVD-Movie AlbumとMPEG Creatorの同時起動をサポートして欲しい。

 こうして苦労してDVD-Movie Albumが動作する環境を構築したが、環境さえできてしまえば、それなりに魅力があることは間違いない。ハードディスクにイメージを作らず、そのままDVD-RAMに動画を記録できるというのは、やはりお手軽だ(かえすがえすも、TVチューナーカードがサポートされていないのが惜しまれる)。しかし、問題はこうして記録したメディアの再生にも潜んでいた。


●PowerDVDでは再生時にトラブルが……

 DVD-Movie Albumは、記録するだけでなく、ビデオレコーディング規格準拠のメディアの再生も可能だ。が、その再生品質は、市販されているソフトウェアDVDプレイヤーには及ばない印象がある。ならば、ソフトウェアDVDプレイヤーで再生すればいいではないか、というのは誰しもが思うところ。早速ビデオレコーディング規格に対応したソフトウェアDVDプレイヤーであるPowerDVDで再生を試みた。

 ところがPowerDVDはビデオが記録されたDVD-RAMメディアを見つけることができない。前回も述べたとおり、LF-D321JDに添付のデバイスドライバは、Windows 2000環境においてDVD-RAMドライブを、CD-ROMとリムーバブルディスクの2つに分けてしまう。デバイスドライバは、DVD-RAMへの書込みをサポートするため、UDF 2.0でフォーマットされたDVD-RAMメディアをリムーバブルディスクのドライブレターで扱おうとする。

 しかし、PowerDVDがまずメディアを見に行くのはCD-ROM(DVD-ROM)ドライブであるため、ただ再生ボタンを押すだけでは、DVD-RAMに記録された動画の再生ができない、というわけだ。

 この問題を回避するため、PowerDVDにはディスクモードとファイルモードに加え、ビデオレコーディング規格のためにIFOモードが用意されている。このモードを選択し、リムーバブルディスクのDVD_RTAVフォルダのファイルを指定することで、ビデオレコーディング規格メディアの再生が可能だ。

 だが、DVD-RAM互換のDVD-ROMドライブ(日立GD-7500)をインストールした別のシステムでは、初期状態(ディスクモード)のまま、単にプレイボタンを押すだけで、ビデオレコーディング規格メディアの再生が可能だったし、DVD-RAMが1つのドライブレターで扱われるWindows XPなら、DVD-RAMドライブであってもプレイボタン1つで再生可能である。

 やはりドライブレターは1つであるべきだと思う(ちなみに、Windows XP用デバイスドライバと同時にリリースされた最新版のWindows 2000用デバイスドライバでもドライブレターは2つのままである)。


●DVD-RAMに限らずソフトウェア環境の整備が早急に必要(お詫びと訂正)

 なお、前回筆者は日立や東芝のDVD-RAMドライブでも、基本的にドライブレターは2つになる、と書いたが、どうやら日立製のドライブに添付されているデバイスドライバは、Windows 9xやWindows 2000でもDVD-RAMドライブを1つのドライブレターで扱えるようだ。ここにお詫びして訂正したい。

 一方、東芝のドライブだが、筆者の手元にあるものにはWriteDVD!が添付されており、ドライブレターは2つに見える。どなたからも指摘がなかったということは、おそらくこのままの仕様なのであろう(初期には日立製のドライブにもWriteDVD!が添付されていたと記憶するのだが、それがずっと続いていると思っていた筆者のミスである)。

 というわけで、DVD-Movie Albumだが、率直に言って現時点での完成度は、DVD-RAMドライブにバンドルされる付属ソフトの域を出ないように感じる。特に汎用性の乏しさ(対応するキャプチャハード/ソフトの少なさ)は、使い勝手を大きく損なっている。将来予定されるWindows XP対応は、単にWindows XPで動くというだけでなく、Windows XPで汎用に使えるものへの大幅なアップグレードを期待したいところだ(それにはある程度の時間が必要だろうが)。

 ただ、こうしたソフトウェア環境の不備は、何もDVD-RAMに限った話ではない。DVD-RWにおいても、ビデオレコーディング規格に対応したPC用ライティングソフトは存在しない(民生用のDVDレコーダーは実現しているが)。

 DVD+RWにしても、当初はビデオを追記してもDVD-Videoとの互換性が維持される、というのがウリだったハズだが、現実にはそのようなソフトウェアは今のところ存在しない。つまり、民生機(その数や種類は問わず)と互換性を持ち、ビデオを追記可能なPC用アプリケーションで、高い実用性を持つものは、事実上存在しないというわけだ。そんな状況で、ビデオを追記可能なアプリケーションとしてかろうじて動作しているのが、DVD-Movie Albumなのである。前回と同じ結びになってしまうが、サードパーティの参入を含め、ソフトウェア環境の改善が強く望まれる。

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(2001年11月14日)

[Text by 元麻布春男]


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