元麻布春男の週刊PCホットライン

発売が開始されたDVD-RAM/Rドライブ「LF-D321JD」を試す


●DVD-Rの使用用途はDVD-Videoのみ!?

LF-D321JD
 7月9日、予定されていた発売日より1日早く、初のDVD-RAM/RドライブであるLF-D321JDが発売になった。毎週水曜日に更新されるこのコラムでは、さすがにスケジュールが厳しいところだが、簡単にファーストインプレッションをお届けすることにしたい。

 ATAPI内蔵型のLF-D321JDは、DVD-RAMドライブにDVD-R(for General)ライティング機能を加えたもの。DVD-RWメディアへは対応していない。書き換えを伴う使用、たとえば一般のPCデータの記録やバックアップといった用途には、DVD-RAMを使うことが前提のようだ。

 注意しなければならないのは、本製品においてはDVD-Rの利用目的は、DVD-Video互換の映像ディスクの作成に絞られており、MPEG-2ストリーム以外のデータを書き込むソフトウェアはバンドルされていない、ということだ。本製品でDVD-Rメディアへの書込みを行なうソフトはDVDオーサリングソフトであるDVDit!のみであり、汎用のライティングソフト(PrimoDVDのような)は付属していない(DVDit!のみでの書込みは、追記ができないということでもある)。サードパーティのDVD-Rライティングソフトを別途購入することでPCデータの書込みが可能になる可能性は高いものの、購入時点ではDVD-Rの用途が限定されることに気をつける必要がある。

パッケージ 同梱物

 LF-D321JDの発売元である松下電器としては、普段の使用はDVD-RAMだが、特に民生用のDVDプレーヤーと互換性を求められる場合に「ボーナス」としてDVD-Rが使える、というあたりが本製品の狙いだと思われる。DVD-RAMの本家だけに、やはり売りたいのはDVD-RAM、ということなのだろう。それでもDVD-Rをサポートした理由には、既存のドライブやプレーヤーとの互換性に加え、DVD+RWだけは阻止したい、という思惑があるのかもしれない。DVDフォーラムの有力メンバーとして、一応DVDフォーラムの正式規格であるDVD-Rの方が、DVD+RWよりは乗りやすいからだ。


●わかりにくいドライブ構成とフォーマット

 さて前置きが長くなってしまった。早速インストールしてみよう。といっても作業自体は通常のATAPI CD-ROMドライブ等と同じ。特に難しいことは何もない(マニュアルでは、セカンダリチャネルのマスタデバイスとしてインストールすることが推奨されている)。システムを起動して気づくのは、LF-D321JDが2つのデバイスとして認識されていることだ。つまり、CD-ROM、DVD-ROMなど読み出し専用デバイスとしてドライブレターを1つ、書込み可能なDVD-RAM/Rデバイスとしてドライブレターを1つ、それぞれ占有する。

 この仕様はPDドライブ以来の伝統?で、今も受け継がれているわけだが、ユーザーから見ると同じドライブなのに、入れるメディアでドライブレターが変わるというのは、わかりにくい。Microsoftもホワイトペーパーで、複数論理ユニットで構成されるデバイス(1台で複数のドライブレターを占用するデバイス)を設計しないよう求めている( http://www.microsoft.com/hwdev/dvd/multiLUN.htm )のだが、DVD-RAMドライブはみなこうした仕様になっているようだ。

LF-D321JDはWindows上では2ドライブとして認識される

 もう1つわかりにくいのは、DVD-RAMメディアのフォーマットとOSサポート関係だ(表1)。1つのメディアなのに、5種類もフォーマットが存在する、ということだけで十分ややこしいのに、OSによってサポートできないフォーマットが存在する。特に問題なのはWindows 2000でUDF 2.0フォーマットができないことで、これに対応しなければ、民生用のDVD-RAM録画機やDVD-RAMカムコーダーとの完全な互換性をとることができない(Windows 2000でもUDF 2.0の読み出しは可能。できないのは書込みのみ)。

【表1: DVD-RAMメディア(4.7GB)のフォーマットとOSサポート】
フォーマット形式Windows 98/MeWindows 2000
UDF1.5
UDF2.0×
FAT32
FDISK FAT16 2.0GB
FDISK FAT16 4.0GB×

 また、FDISK互換のフォーマットが残っているのは、おそらくハードディスク互換に見えないデバイスには直接書込みを許さないビデオキャプチャカード等があるため、それを回避するためだと思われる。ユーザーの利便性を考えてのことかもしれないが、こうしたフォーマットの乱立が、同時にユーザーにわかりにくい印象を与えているのではないだろうか。

 ちなみに今年のWinHECでは、Windows XPでのDVD-RAMドライブサポートについてのプレゼンテーションが行なわれた。それによれば、ファイルシステムとしてはFAT32だけをサポートし(UDFはリードのみ)、FDISK互換フォーマットはサポートしない方針であるという。もちろん、実際にドライブを売るベンダーが、OSの標準サポートに対し付加価値を加えることは「あり」だと思うが(特にUDFの書込み)、なぜサポート可能なフォーマット(FDISK互換)であるにもかかわらず、敢えてサポートをしないのか、ということも考慮すべきではないかと思う(残念ながら、今回は実際にWindows XPのベータ版で評価する時間がなかった。また別の機会にでも取り上げようと思う)。

UDF、FAT32のほかFDISK互換フォーマットもサポートされる WinHECでのプレゼンテーション。Windows XPではFAT32のみサポートされるという


●CD-Rとの書き込み速度比較

 ではいよいよLF-D321JDで書込みを行なってみよう。今回はテストに用いたプラットフォーム(表2参照)のOSにWindows 2000を用いたため、UDF 2.0での書込みは断念した。また、FDISK互換フォーマットも試していない。実行したのは、DVD-RAMメディアでUDF 1.5とFAT32の両方、DVDit!を使ったDVD-Rへの書込み、そして比較の対象までにCD-R(12倍速)の4種類である。

【表2: テストに用いたシステム】
 CPU: Pentium 4 1.7GHz
 マザーボード: Aopen AX4T (i850)
 メモリ: 128MB PC800 RDRAM
 HDD: IBM Deskstar 60GXP 30GB
 ビデオカード: WinFast GeForce3 TD
 LAN: Intel 82557
 サウンドカード: YAMAHA YMF744
 OS: Windows 2000 SP2

 書込んだデータは、前回取り上げたNECのSmartVision Pro2 for USBで作成したMPEG-2データだ。Webページの情報( http://www.panasonic.co.jp/dvdram/connect/kend300mpeg2.html )によると、現在LF-D321JDにバンドルされているDVDit!で使用できるMPEG-2ファイルを作成可能なキャプチャカードは、GV-MPEG2/PCI(アイ・オー・データ機器)、MEG-VC2(メルコ)、MVR-D2000(カノープス)の3種となっている。あいにく、筆者の手元にはどれもないのだが、発売元であるソニックのDVDit!サポートページ( http://www.sonicjapan.co.jp/dvdit/compatibility/compatibility_mpeg.html )によると、NECプログラムストリーム(m2pファイル)も互換性があるという。試したところ、ビットレートを6Mbps固定のデフォルト状態でキャプチャしたデータならDVDit!で書き込めることがわかった(新バージョンのソフトウェアでビットレートを下げると途中でエラーになる)。また、WinDVRでキャプチャしたMPEG-2ファイルは、最初からはじかれて、用いることができなかった。

 実際に用いたのは、6Mbpsでキャプチャした30分の動画(解像度720×480ドット)で、ファイルサイズは1.70GB。ただし、このデータではCD-Rに焼くことができないので、別に694MBのデータ(こちらはビットレート3Mbps、解像度352×480ドットでキャプチャした30分の動画。こちらはDVDit!が受け付けない)も用意して、DVD-RAMとCD-Rの比較を行なった。

 その結果が表3だ。DVD-RAMに対する書込みは、フォーマットが異なってもほぼ同じ。おおよそ1.16MB/secという結果になっている。マニュアルによると、小さいファイルを大量に書く用途にはFAT32の方が有利とのことだが、大きいファイルを少量書いたからといって、FAT32が顕著に遅くはなっていない。

【表3:データの書込みに要した時間】
1.70GB694MB
DVD-RAMUDF1.525分5秒1.16MB/sec10分3秒1.15MB/sec
DVD-RAMFAT3225分6秒1.16MB/sec10分05秒1.15MB/sec
DVD-RDVDIt!45分39秒*1N/AN/A
(1.97GB)(28分59秒)1.16MB/sec
CD-R12倍速N/AN/A10分25秒1.11MB/sec
(7分12秒)1.61MB/sec
*1 計算上の数値は0.64MB/secとなりますが、レンダリング時間を含むため除外してあります。メディアへの書き込み速度は等速です(7月12日追記)

 DVDit!によるDVD-Rメディアへの書込みだが、これにはちょっと説明が必要だろう。DVDit!での書込みは、当然DVD-Video互換フォーマットとなるが、書込み対象のMPEG-2ファイルをそのまま書けるわけではない。PCで作成されたMPEG-2のデータは、必ずしもDVD-Video互換ではないからだ。そこでDVDit!では、書き込むMPEG-2ファイルをいったん動画と音声に分離し、それぞれをDVD-Video互換にコンバージョンし、それを再び1つにして、それを書き込む、という動作を行なう。こうした作業には時間がかかるし、データサイズも変わってくる。

筆者が作成したメニュー

 また、DVDit!は簡単なオーサリングができるので、筆者もメニューを1つ作ってみた。といっても、シンプルなもので、単にPlayというテキストをクリックすれば、動画の再生が始まるという、ただそれだけのもの。DVDit!の項の45分39秒という書込み時間には、MPEG-2ファイルのコンバージョンや、作成したメニューの処理なども含まれている(こうした処理に要する時間は、ドライブではなくCPUパワー等に依存すると思われる)。

 そこで、書込み以前の時間を排除すると同時に、実際に書き込まれたデータ量(1.97GB)を用いて、データ転送レートを出してみた。するとあら不思議、DVD-Rへの書込みも1.16MB/secになってしまった。これはDVD-RAMが書き込み時にライトベリファイを行なっているためだ。

【お詫びと訂正】  初出時に「ドライブとしての、メディアに対するデータ転送速度は一定なのかもしれない。」と記載しておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正いたします。

 当初は30分のビデオを書くのに45分もかかっては、と思ったが、実際の書込みが30分を切っているのを見て、まぁこんなもんかな、と思った次第だ。

 CD-Rへの書込みは、筆者の仕事マシン(Pentium III 600EB MHz)に取り付けられたリコーのMP9120A(DVD-ROMとCD-R/RWとのコンボドライブ)を用いたものであり、LF-D321JDのシステムと同じではない(すべての点において、仕事マシンの性能が低い)。あくまでも参考ということだが、表に示したデータのうち、上はCDイメージを作成する時間も含めたもの、下はそれを除外したものだ。実質的にはDVD-RAM/Rより12倍速のCD-Rの方が高速、という結果となっている。今や最速のCD-Rドライブが24倍速になっていることを考えると、速度差はもっとあると思った方が良いだろう。

 というわけで、そろそろ現時点での筆者の結論と、感想めいたことを述べることにしよう。ハッキリしているのは、書き込むPCデータが700MB以下なら、CD-Rを使った方が絶対に良い、ということだ。表4に書込み可能なDVD関連メディア(一般用途用のみ)の価格をまとめておいたが、今や1枚数十円で買えるCD-Rメディアに対して、かなり割高である。それで書き込み速度が遅いのだから、勝負にならない。

【表4:本稿執筆時点でのDVD関連メディア価格(すべて4.7GBタイプ)】
DVD-R1,280円~1,500円
DVD-RW1,280円~1,980円
DVD-RAM(カートリッジ入り)1,980円~2,280円
DVD-RAM(カートリッジなし)1,680円~1,980円
*上記価格は7月9日に秋葉原の大型店数店舗で1枚売りパッケージの価格を調査・購入した価格です

 ではどこに書込み可能なDVDのチャンスがあるかというと、700MBを超えるPCデータを一括保存したい、あるいは高画質の動画を民生用のDVDプレーヤーで再生可能な形にしたい、という2点だと思われる。まず前者だが、LF-D321JDでは必然的にDVD-RAMメディアを用いることになる。この用途にDVD-RAMを用いるメリットは、ドラッグ&ドロップで簡単にデータの書込みができる、書き込んだデータを消すことができる、表4でわかる通り現時点ではメディア価格の点でことさら不利ではない、といったところだろう。DVD-R/RWドライブは、現時点ではパケットライトがサポートされておらず、マスタリングソフトがなければデータを書き込むことができない。使い勝手の点では、ドライブレターが2つになるというデメリットを差し引いても、DVD-RAMの方が上だ。


●DVD-RAMの将来性やメディアの価格など不安や不満も残る

 逆にDVD-RAMで不安なのは、DVD-RAMというメディアの将来性だろう。現時点での直接のライバルであるDVD-R/RWドライブは、後発であるにもかかわらず、AppleやCompaq、ソニーといった大手PCベンダをOEMに抱えることに成功している。その一方で、DVD-RAMドライブを標準採用するPCベンダが、DVD-RAMの盟友である日立以外、現われないというのは、将来に対する不安材料だ。DVD-RにPCデータが書けないという、おそらくはマーケティング上の制約も、不安要因かもしれない。

 一方、動画の記録用途だが、今回DVDit!で作成したDVD-Rは、手持ちの民生用DVDプレーヤーと、PlayStation 2で再生可能であることを確認した。ドライブは直接画質に関係しないが、6Mbpsの固定レートによる動画の品質は良好で、SmartVision Pro for USBでもこんなにきれいな動画がとれるんだ、と思ったくらいである(もちろん、その大きな理由の1つは、PCディスプレイではなく、TVに表示したせいだが)。

 逆に不満を感じたのは、DVDit!と互換性のあるキャプチャデバイスが必ずしも多くない、ということ(ただし、これはDVD-RAM/Rドライブだけでなく、同じソフトを用いるDVD-R/RWドライブにも該当するハズ)、6Mbps固定は確かに画質が良いが、このレートではさすがに4.7GBも決して大容量ではない、ということだ。理想を言えば、可変ビットレートのエンコーダを用いて、少しでも長い時間、動画を記録したいところだが、安価なMPEG-2キャプチャカードは固定ビットレートの製品がほとんど。仮に可変ビットレートをサポートしていても、DVDit!と互換性がなければ使えない(DVDit!によるフォーマットコンバージョンができないため)。そうでなくても、書込み可能なDVDは、プレスされた通常のDVD-Videoに比べ、2層のメディアが利用できないという点で、大きな容量上のハンデを負っている。この点はいかんともしがたい。

 また、メディア代の高さも、ちょっと不満だ。表4に示した価格は、PC用ストレージとしては決して高いとは言えないが、ビデオを記録するメディアと考えると、ちょっと高いように思う。特に、消去できないDVD-Rの場合、失敗すると1,300円余りを捨てることになり、CD-Rと同じ感覚で書き潰すことはできない。DVD-Videoの場合、オーサリングに失敗しても、使えないメディアになってしまうため、より注意が必要だ。DVD-RAMならその心配はないが、対応する民生用DVDプレーヤー、PC用のDVD-ROMドライブが極めて限定されてしまう。やはりDVD-RWのサポートが欲しいように思った。

 もう1つ、最後に触れておきたいのは、民生用の録画機の存在だ。松下電器からDVD-RAMとDVD-Rに対応した、民生用の録画機「DMR-E20(Dream)」を発売されている。標準価格は135,000円だが、すでに11万円を切る価格で予約が始まっている。LF-D321JDの価格が約5万円、仮にキャプチャカードを4万円(カノープスのMTV1000の価格。ただし、MTV1000のデータがDVDit!互換かどうかは試していない)とすると、もう差額は1万円そこそこだ。DMR-E20は可変ビットエンコーディングできるのは当然のこと、アナログBSチューナ、リモコン、アナログ映像出力(D1端子含む)、デジタルとアナログの音声出力など、LF-D321JDとMTV1000にはない機能を多く備える(タイムシフトも可)。購入に際しては、用途をしっかり確認する(PCデータを書きたいのか、動画を記録したいのか)ことに加え、この民生用録画機の存在を忘れないようにするべきだろう。

【お詫びと訂正】初出時にE20が発売予定としておりましたが、すでに7月1日に発売されています。お詫びいたします。

□松下電器産業のホームページ
http://www.matsushita.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn010529-2/jn010529-2.html
□製品情報
http://www.pcc.panasonic.co.jp/p3/products/drive/dvdram/lfd321jd/index.html
□関連記事
【7月9日】松下のDVD-RAM/Rドライブが5万円を切って登場
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/20010714/newitem.html#dvdramr
【6月8日】松下、世界初のDVD-R/DVD-RAM兼用ドライブ「DVD-RAM/R」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010529/pana.htm

バックナンバー

(2001年7月11日)

[Text by 元麻布春男]


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