第121回:期待できる2台のバイオ



●Windows MeがPCへの不信感をあおった

 昨年はあまり期待していなかったWindows Me搭載機が驚くほど多くの販売台数を記録した。しかし、今から思えば昨年末、各社は頑張りすぎたのかもしれない。Windows 95以降では、Windows Meは最も不安定で、もっとも脆弱なプラットフォームと言うと言い過ぎだろうか? 筆者のまわりには、Windows MeでPCを始めたばかりに、PCとPC業界に対する信頼感を無くしてしまった人が数多くいる。パワーユーザーであれば、Windows 2000あるいは互換性を重視してWindows 98SEへとOSを入れ替える手も使えるだろうが、Windows Me搭載機でスタートしたユーザーはたまったものではなかっただろう。

 そうしたPC業界に対する失望感が、なかなか盛り上がらないWindows XPの足を引っ張っているのかもしれない。しかし、Windows XPはコンシューマ向けの実用に耐える、初めての安定した信頼感のあるOSだ。PC業界はWindows XPに向かってもらわないと困るハズなのだ。それはWindows XPを口実にコンシューマにPCを売りつけるといったレベルの話ではない。

 コンシューマ向けのPCには、様々な機能やインターフェイスが追加され、数多くの使い方を提案するべく様々なソフトウェアがインストールされている。家電との接続性も、少しづつだが向上してきている。しかし、そのおかげで常駐するエージェントソフトウェアは増加し、脆弱なOSではその基盤となる部分が耐えきれなくなってきている。その最も顕著な例が、VAIOシリーズかもしれない。Windows 2000を搭載したコンシューマPCはVAIOが先陣を切ってきたが、その理由はソニーが考えるPCを作るためには、Windows Meでは基盤として弱すぎたためだと思う。


●期待できるバイオC1とSR

 ソニーが先週末に発表したバイオは、いずれも実際に使うユーザーの立場に立った製品になっている。機能を寄せ集めただけのスペック思考ではないところが、もっとも大きく異なるところだ。中でもフルモデルチェンジとなったバイオノートC1とSRに注目したい。

ソニー バイオC1 バイオC1のポートリプリケーター

 実はバイオノートC1に関しては、初代モデルを試用した時、初期状態であるにもかかわらずWindowsのブルースクリーンが連発し「なぜ、たかだかPCカードを抜き差ししただけでWindowsが落ちるのか?」と憤慨したことがある。その後、どうやらソニーが独自に書き起こしたカメラ用の仮想ドライバが原因らしいとわかったのだが、それ以来どうも敬遠してきた。縦方向のドット数が480ピクセルというのも、文章を扱う身には少々厳しかったということもある。

 しかし、改めて3代目となるC1はBluetoothを搭載し、ポートリプリケーター経由ながらEthernetも利用できるようになり(ポートリプリケーター用コネクタからLANに接続するケーブルが用意されていれば、もっといいと思うのだが)、何よりMPEG-2エンコードチップが搭載され、内蔵カメラや外部ビデオ入力を最大4MbpsのMPEG-2ストリームとして記録できる。画面解像度も1,280×600ピクセルとなり、縦方向の解像度が実用的な数字になった。

 果たしてそんなものが必要なのか? と聞かれれば、必要な人が買えばいいとしか答えられないが、MPEG2-エンコードチップを搭載し、カメラを最大限に活かそうとしている点が、なんとも意気を感じるではないか。こんな小さいPCでMPEG-2エンコードチップを内蔵させ、映像で遊ぼうというのだから。

IEEE 802.11a無線LANシステムのアクセスポイント「PCWA-A500」(左)と無線LANカード「PCWA-C500」。

 以前、ソニーのVAIO開発部隊の“偉い人”と食事をした時、「我々がやりたいことはずっと前から変わっていない。ソニーが得意な映像の世界を、PCを通じて様々な形で楽しんでもらう。そのためにこれまで様々な製品を作ってきた。それぞれがバラバラなアプローチに見えるかもしれないが、すべては同じところに向かっている」と話してくれた。C1もそのアプローチのうちの1つとして、徐々に本来の目的に近づいてきたということか。

 ソニーはVAIO Gearに、IEEE 802.11a準拠の高速無線LAN装置をコンシューマ向けとしていち早く発表したが、これもワイヤレスで映像を扱うためには802.11bでは力不足と思うからこそ、先行して802.11aへの道を急いでいるわけだ。

ソニー バイオSR 電源付きiLINKポート(Etherポートの左)

 もっとも、今回のソニーの新製品ラインナップの中で、もっともバランスが取れ、実用度と遊び感覚をうまくミックスしているのが、新型VAIOノートSRだと思う。奥行きが小さくなったり、重量が軽くなったこともニュースだが、Bluetoothと802.11b、そして有線のEthernetポートまでを同時に搭載したことが、この製品の価値を大きく高めている。これだけの機能がB5クラスでもっとも小さいサイズに収め、その上で6セルの大容量バッテリを背負わせているのもいい。

 あえて不満点を挙げるとすれば、USBポートが1本のみであることと、電源付きiLINKポートが6ピンの標準コネクタではないことだろうか。電源をサポートするならば、業界標準のコネクタにするべきだろう。また、ソニーだから仕方がないのだが、メモリスティックスロットはソニーで機器をそろえているユーザー以外には、あまりメリットがない。仕方がないが、そんなところに欠点を求めるほど、基本の仕様は文句なしだ。

 さらに単に機能を追加しただけでなく、使いやすさをきちんと考えた細かい部分での配慮がいい。たとえば、ワイヤレススイッチ。ユーティリティでBluetoothと無線LANのいずれか、もしくは両方との連動を設定しておくと、スイッチ1つでワイヤレスデバイスのオン/オフを行える。こうした細かい使い勝手は、きちんと利用する場面を想定し、実際に使った時の使いやすさを考えて作っているからだと思う。

 まだ発売されてもいない、まともに1日使ったこともない製品だけに、あまり褒めちぎるだけにはしたくない。業界全体のことを考えれば、NEC、富士通、そして最近精彩を欠いているように見受けられる東芝あたりが、もっともっと元気になってもらわなければ困る(富士通に関しては、World PC Expoで話題になった新LOOXが、先代モデルで得たユーザーの声を反映させた好印象の製品となっているが)。あぁ、ソニーばかりか、ではなく、テクノロジーをリードする製品と総合メーカーならではのソリューションをうまくかみ合わせた製品が登場することを祈ろう。何も製品としてのVAIOのマネをしろというのではない。ただ、ベンダーがPCをプラットフォームとして、何をコンシューマに提供したいと考えているのかを、はっきりとわかるようにしてくれるだけでいい。


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【10月12日】ソニー、1,280×600ドット液晶とMPEG-2エンコーダチップを搭載したバイオC1
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011012/sony2.htm
【10月12日】ソニー、有線/無線LANを搭載した新「バイオノートSR」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011012/sony1.htm

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(2001年10月16日)

[Text by 本田雅一]


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