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第120回:“自分で考える”PC選び |
たとえば、この連載の中でもそうした評価を行なう記事やモノ選びに関する話題も取り上げてきたが、一貫して“僕の場合には”との注釈を付けてきた。前にも書いたことがあるが、モバイル機器選びにとって重要なことは、使う本人のUsage Model、すなわち利用形態に強く依存するからである。性能の良し悪しは数字で表現できても、すべての人にとっての利用形態を想定することはできない。
ただ、どういった部分に目を向けるべきか、見落としがちなポイントを紹介することはできそうだ。自分自身が年末に向けて投入される新機種を購入検討する際、特に留意しようと考えている点について紹介することにしよう。そして最終的には、自分で選ぶための参考にしていただければ幸いだ。
●カタログからはわかりにくいこと。たとえば……
1台だけで様々な業務をこなしつつ、さらに出張やちょっとした外出時の用途にも利用できるなど、適用範囲の広さから言えば12.1インチクラスのB5ファイルサイズノートPCは、仕事でノートPCを利用しているモバイルユーザーにとって、なかなか便利なフォームファクタだ。
IBM ThinkPad X21 |
このクラスは1スピンドルと2スピンドルの製品が両方あるが、1スピンドルの代表格と言えば日本IBMの「ThinkPad X20/X21」が真っ先に挙げられるだろう。コンパクトフラッシュType2スロットを備えるうえ、各種のサポートオプションなど、仕事と趣味の両方でノートPCの利用頻度が高いユーザーにベストな製品だと思う。省電力性に優れ、バッテリ持続時間が長く、キーボードやポインティングデバイスといった入力系の質感が高いのも人気の理由だ。当初は高価なイメージがあったが、今では20万円を切ることも少なくない。またWindows Meでいいならば、「iシリーズ1620」を選ぶことで価格を抑えることができる。
実はこのPC、筆者も実際に反射型液晶パネルが使えない場面や出張取材用に利用している。他にライバルあれど、実質的な使いやすさでこれを上回るものはないと思っていた。
コンパクトフラッシュスロットが、デジタルカメラ用、通信カード用として重宝するのはもちろんだが、そうしたカタログからでは見えない部分が気に入っているからだ。たとえば、パームレストの下には熱源となるプロセッサやヒートシンクなどがない。パームレスト下はバッテリになっているのだが、パームレストとバッテリパックの間には十分な間隔があるため、充電時にもほとんど熱さを感じないのだ。また、仕事に使っていると音量を手早く変更したり、消音したい場合があるものだが、これらにも独立したボタンが割り当てられている。扱いやすい省電力設定ツールもポイントが高い。
コンパック Evo N400c |
もちろん、これらは今でも気に入っているが、同クラスで気になっていたもうひとつの製品、コンパックの「Evo N400c」を使う機会を得て利用してみると、こちらもなかなか優れたポイントが多いのだ。
パームレスト下は、メモリモジュールとミニPCIモジュール、そしてハードディスクであり、ハードディスクの熱が若干気になる。しかし、その代わりに起動時のBIOS初期化やハイバネート/レジューム、サスペンド/レジュームが、X21よりも遙かに速い。特にWindows XPをインストールしてみるとその差は顕著である。サスペンド/レジューム時の復帰時間は長い場合でも2秒以内。BIOSはRapid Bootモードを持っており、ハイバネート/レジューム時も快適だ。
また、コンパックはビジネス向けモデルのドライバやBIOSのアップデートが細かく行なわれている(この点はIBMも同じ)。Windows XPへの対応も、β2の頃から限定的ながら対応ソフトウェアが提供されてきた。Windows 2000用ソフトウェアのうちWindows XPで動作するものなどを合わせると、Windows XPを元からあったプリインストールOSと同程度の使い勝手にするために必要なソフトウェアモジュールは、全部Webから入手できた。
意外と言えば、ドッキングステーションの音質を挙げたい。N400cにはDEC時代のモバイルマルチメディアモジュールから面々と続く、ステレオスピーカー付きドッキングステーションがある。今回はコレの音質が、(決して良いとは言わないが)なかなかどうして、ノートPCとしてはまともな音が出てくるのだ。長期出張が多い僕としては、ホテルでヘッドホンなしで、ある程度マシな音楽が聴けるというのはうれしいところ。
他にも液晶パネル裏に無線LANやBluetoothのモジュールを取り付けられる点や、キーボードの扱いやすさ、スタンドにもなるセカンドバッテリなど、いくつかの点も気に入っている。コンシューマモデルではないだけに、普段、店頭で使い勝手を確認できないのが残念だが、カタログからは見えない部分での良さを痛感している。
BIOS対応の履歴やドライバアップデートに対する姿勢は、どのPCベンダーも持っているWebサイトのサポートページである程度把握できるものだ。どの程度、エンドユーザーに情報を提供し、新しい環境やデバイスに素早く対応しようという姿勢があるかどうかは、カタログスペック以上に製品を選ぶ上で重要なポイントだ。そうした意味からすれば、少々割高でも安定志向の企業向けモデルを敢えて選ぶことがあってもいいと思う。実際、僕が購入するノートPCは、これまでほとんどが企業向けに開発されたものだった。
●マンマシンインターフェイスはカタログではわからない
コンパックのEvo 400cが気に入ったのは、それまで色々なPCにインストールしてきたWindows XPが、一番快適に動作し、一番楽にドライバやユーティリティを入手できたからだったが、X21のところで挙げたちょっとした使い勝手や快適性、言うなれば「マンマシンインターフェイス」の部分も、同じぐらいに重要な点だ。そして今後は、プロセッサのMHzよりも、複数機種から1台を選ぶ上で重要になっていくハズだ。
たとえば液晶パネルの表現できる色域や視野角、キーボードの使いやすさ、熱処理の方法(快適さ)、ファンの音など。さらには手で抱えた時の重量バランスの良さや、バッテリ管理ユーティリティの使い勝手や、利用形態に合わせてハードウェアを適切に設定できるようなユーティリティ(たとえばプレゼンテーションを行なう際に、簡単に省電力モードやCRT出力を設定するツール)などなど、人とPCの間をつなぐための工夫や技術に、どれだけコストがかけられているかを見極めることができれば、良い買い物ができると思う。
もちろん、ギリギリまでコストが削られた現在のPCでは、すべての面において優れたPCを選ぶのは難しい。ポイントを押さえて妥協点を見つける必要がある。しかし、個人でPCを購入する場合、どうしてもカタログのスペックや、派手な機能にだけ目が行きがちだ。
無論、そうした機能面での楽しさを重視したいのであれば、ある程度はマンマシンインターフェイスの部分で気に入らないところがあっても、予算的に目を瞑らなければならないこともあるだろう。しかし、検討する上で、一度は扱いやすさや快適性などにも目を向けてみてはいかがだろう。必要以上の機能性よりも、必要十分な機能に加えて快適性に上回る方がいいという判断もあるはず。
これから11月以降、年末商戦が本格化してくる。これから様々な雑誌で、年末商戦向けのバイヤーズガイドが特集記事として掲載されるだろう。その一部には僕自身も仕事として関わることになるが、それらはあくまで参考意見でしかない。選ぶのも、お金を支払うのも、あなた自身なのだから。
●おまけ:So-netの海外ローミング
ところで、以前に海外からのローミングに向いたISPとして「So-net」を紹介した。So-netのベーシックサービスで利用できる海外ローミングは、XO Communicationsの他、GRICの提供するワールドワイドのローミングネットワークがある。そのGRICは世界各国でのダイヤルアップ接続をサポートするための専用ダイヤラとして「GRICdial」を http://www.gric.com/ で無償配布しているが、その新バージョン3.2.0は、なかなかの使い勝手だ(ただし現在のところ英語版のみ)。
GRICの場合、専用ダイヤラでも、ダイヤルアップネットワークアイコンを手動設定する方法でも接続できるが、GRICdial 3.2.0は海外ではもちろん、国内で利用する場合でも、なかなか便利なツールに仕上がっている。世界中のアクセスポイントから、国名と都市名でアクセスポイントを絞り込みできるのはもちろん、回線種別による検索もできる。
回線種別にはアナログ、ISDNの他、DoPaやPIAFSといった日本独特の接続方法も選べるため、出先近くのアクセスポイントを調べ忘れた場合でも、簡単に近くのアクセスポイントを探すことができる。新バージョンは英語版のみのため、国内のISPでは新ダイヤラのアナウンスをしていないようだが、GRICのユーザーは前記サイトから直接ダウンロードして試してみるといいだろう。
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【4月11日】IBM、企業向けノートPCのラインナップを一新
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010411/ibm.htm
【5月22日】コンパック、19mmキーピッチのB5ノートなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010522/compaq.htm
【12月26日】本田雅一の「週刊モバイル通信」
第82回:身近になった海外ローミングでISPを選ぶ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001226/mobile82.htm
(2001年10月9日)
[Text by 本田雅一]