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Intelが価格体系を大幅変更--800ドルPentium 4パソコンを実現へ


●IntelがPentium 4の価格をほぼ半額に

 Intelは8月末の段階でPentium 4の大バーゲンに踏み切る。年末商戦時期には、Pentium 4パソコンの価格を800ドル近辺(日本なら10万円)にまで持ってくるつもりだ。

 Intelは、第2四半期にもPentium 4を半額に引き下げたが、それでもPentium 4の浸透は期待ほどではなかった。そのため、もう1回、ダメ押しの半額攻勢に出る。SDRAMベースのチップセットIntel 845との相乗効果で、一気にPentium 4デスクトップのシステム価格を引き下げ、雪崩的な普及を狙う。逆を言えば、Pentium IIIを置き換えるために必要な価格レンジまで、Pentium 4の価格を引き下げる。

 また、Intelは同社の価格&ブランディング戦略を根底から組み替えた。具体的に言うと、Pentium系ブランドのカバー範囲をより下の価格レンジにスライドさせる。これは、Pentium系CPUのローエンドの価格がワンランク下がり、Celeronのハイエンドの価格も下へワンランク落ちることを意味する。そして、それはIntelのデスクトップCPUの平均販売価格(ASP)を下へスライドさせることも意味している。これは、Intelにとってとても危険な賭けだ。というのは、ASPが落ちることは、すなわち利益の大幅減少を意味するからだ。なのに、Intelはそうした戦略変更に出た。それだけIntelは必死なのだ。

 OEM筋によると、Intelは8月の下旬にCPU価格を再び改定すると通知したという。その結果、Pentium 4は1.8GHzでさえ240ドル程度、1.7GHzなら190ドル以下、1.6GHzは150ドル以下、ローエンドとなる1.4/1.5GHzの価格は130ドルを切るところまで落ちるようだ。また、Intelは「夏の終わり頃にはPentium 4 2GHzを出す」(アナンド・チャンドラシーカ、インテル・アーキテクチャ事業本部副社長兼マーケティング統括本部ディレクタ)ことを明かしているが、その価格は500ドルレンジになるという。

 これを従来の予定価格と比べると、2GHzの価格は予定とほとんど変わらないが、ローエンドの価格が190ドル近辺から130ドル近辺へとスライド。その間の価格帯は、1.6/1.8/1.9GHzといった、本来の予定になかったクロックの製品が埋める形となっている。例えば、350ドルレンジだった1.7GHzは、190ドルレンジへと落ちたが、その代わり350ドルレンジには1.9GHzが収まっている。これを見ると、Pentium 4の製品クロックが突然細分化されたのは、この価格大改定のためだったことがよくわかる。


●GHzプロセッサが100ドル以下に

 それに対して、Pentium IIIの価格は0.13μm版Pentium III(Tualatin-DT:テュアラティンDT)の1.2GHzが250ドル程度、1.13GHzが200ドルより少し上。これまでの予定とほぼ変わらない。CPU単体価格では、Pentium 4 1.8GHzの方がPentium III 1.2GHzよりも安くなってしまう。価格面でも、IntelがPentium IIIをPentium 4に置き換えることが明確になっている。

 Celeronの価格も、クロックが一気に上がるためドラマチックに変わる。7月24日のコラム「IntelがCPU戦略を大変更--Pentium IIIを夏で打ち止め、Celeronを秋から0.13μm化」でレポートした通り、Intelは1.1GHzまでのCeleronを計画している。しかし、OEMベンダーによると、1.1GHzのCeleronですら100ドル程度で、1GHzは90ドル以下、950MHzは70ドル台になるという。今のCeleronは買うなと言っているような価格だ。

 以前は、IntelはCeleronのハイエンドの価格を170~190ドル程度からスタートさせていたが、もう今後はそうした価格設定はありえないようだ。つまり、Celeronはほぼ必ず100ドル近辺から始まると思われる。


●Intelが価格体系とセグメント分けを変更

 今回のIntelの価格改定は、これまでの改定とは意味が根本的に異なる。それは、IntelがCPUの価格体系とセグメントを大きく変えたからだ。

 デスクトップPC業界関係者ならだれでも知っているが、IntelはデスクトップPCを勝手に7つのセグメントに切り分けている。下がそのセグメントだ。

・パフォーマンス
・メインストリーム3
・メインストリーム2
・メインストリーム1
・バリュー3
・バリュー2
・バリュー1

 上のセグメントほどPCのシステム価格が高く、下のセグメントほど安い。また、この7セグメントは大きく“パフォーマンスデスクトップ”と“バリューデスクトップ”の2つに分けることができる。パフォーマンス~メインストリーム1がパフォーマンスセグメントでPentiumブランドのCPUがカバーする。バリュー3~バリュー1がバリューセグメントでCeleronブランドがカバーする。そして、Intelは、全CPU出荷のうちパフォーマンスを70%、バリューを30%の比率にできる限りしようとしている。

 Intelは、これまでこの7セグメントを下のようなPC価格レンジに対応すると定義してきた。

 この図では、中の左のバーがこれまでのセグメント分けを示す。左端の目盛りは各セグメントのPCのシステム価格の目安、右端の目盛りがそのPC価格に対応するCPU価格の目安だ。例えば、メインストリーム1の1,000~1,200ドル帯だと、CPU価格は大まかにいって200ドル前後、まあ、100ドル台後半から200ドル台前半程度までとなる。もちろん、CPU価格は完全に対応しているわけではないが、一応の目安にはなる。

 つまり、このセグメント分けはじつはIntelのCPU価格のセグメントでもあるわけだ。実際にIntelのデスクトップCPU価格は、以前は大まかに7つのセグメントに分けることができた。ところが、8月下旬からはこれが右のバーのように変わる。

 見ての通り、パフォーマンスの各セグメントはほぼひとつづつ下の価格レンジへとスライドした。バリューは価格レンジがぐっと圧縮された。その結果、これまで「パフォーマンス=Pentiumブランド」と「バリュー=Celeronブランド」の境界が、1,000ドルから800ドルへと落ちた。つまり、Pentium 4パソコンが800ドル近辺のPCもカバーすることになる。

 もちろんPC価格はCPU価格とも連携しているため、CPU価格も同時にスライドする。つまり、Pentium 4のローエンドを130ドル程度にまで落とすのは、800~1,000ドルのシステム価格を実現するためだ。

 Intelがこうしたセグメント切り分けを改定した理由は2つ考えられる。

 1つ目の理由は、PC市場の現実の姿に合わせるためだ。言い換えると、PC市場全体のボリュームが下の価格レンジへとずれたことをIntelが追認した。つまり、Intelが積極的に市場に対して仕掛けたのではなく、市場の状況にIntelが遅れながら合わせた結果だと思われる。Pentium系70%対Celeron30%の比率を維持できるのは、この切り分けだと判断したのかもしれない。

 2つ目の理由は、AMDの価格&ブランド体系に対応したことだ。AMDのAthlonとDuronブランドのセグメント分けは、およそ100~120ドルのあたりにある。業界関係者によると、実際の価格では、Athlonのローエンドは110~130ドル程度だし、Duronのハイエンドは100ドル近辺だという。ほぼ、今回のIntelの改定セグメント分けと一致している。ちなみに、Athlonはハイエンドでもせいぜい250~300ドルレンジで、Intelの新セグメントでメインストリーム2~3までとなる。

 いずれにせよ、IntelとAMDの戦争はこれで新しい段階を迎えることになる。どちらかが根を上げるまでの価格戦争だ。


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(2001年8月2日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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