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Banias用チップセット「Odum」などIntelのチップセットロードマップが明らかに


●IntelのCPUロードマップが一変し、チップセットにも変化が

 Intelのチップセットロードマップが大きく変わりつつある。最大の理由は、CPUロードマップが一変したからだ。また、2002年と2003年のチップセットの姿も徐々に見えてきた。目立つのは、Intelがモバイル専用CPU「Banias(バニアス)」に、モバイル専用に開発するチップセットを組み合わせることだ。これは、「Odum」と「Monterra」と呼ばれるチップセットだと言われている。今回は、こうした新情報を反映したチップセットロードマップを別途アップした。


●一変したデスクトップ用チップセット

 すでにレポートした通り、IntelはPentium 4の普及を一気に加速、その代わりPentium IIIを今夏で事実上打ち切りにする。また、Celeronの0.13μmシフトを前倒しした。そのため、ドミノ式にチップセットも大幅変更になる。

 まず、Pentium 4普及のカギとなるSDRAMベースチップセットIntel 845(Brookdale:ブルックデール)。これは6月のComputexで、Intel自身がデモを公開、マザーボードベンダーも一斉にサンプルを顧客に見せていた。Intelが、パフォーマンスデスクトップセグメントをPentium 4で置き換えるため、845は815ファミリを一気に置き換えることになる。また、845マザーボードは、ほとんどが新しいPentium 4のソケットである「Socket 478」向けとなる。つまり、Pentium 4のパッケージも世代交代する。

 パフォーマンスデスクトップ市場では815は駆逐されるが、その代わり、815ファミリはCeleron用に追いやられる。これは、もちろんCeleronが秋冬商戦時期から0.13μm化するためで、Tualatin(0.13μm版Celeron)対応のBステップ版815が一気に浸透する。

 Intelは、Celeron向けに815の廉価バージョンである、AGPインターフェイス抜きの内蔵グラフィックスしか使えない「Intel 815G」と「Intel 815EG」を用意していたが、これも最初からTualatinサポートになった。また、「Intel 810E」と「Intel 810E2」のTualatin対応版もローエンドに投入する。これらの新しいTualatin対応チップセットは、8月の終わりまでに提供される予定になっているという。一気にTualatin対応のUniversal Motherboardへと突っ走ることになる。


●DDR266サポートは来年中盤のBrookdale-G待ちか

 次のフェイズは来年の頭で、ここでIntelはDDR対応の845「Brookdale-D」を投入するようだ。もっとも、マザーボードベンダーによると、実際にはDDR対応のサンプルとマザーボードのデザインガイドはずいぶん前から提供されていたという。実際、一部の情報筋はDDR版の投入が早まる可能性があると伝えていた。

 ただし、複数のDRAM業界関係者は、「IntelがRambusとの契約の関係から、2002年までDDR対応チップセットを出せないことになっていたはず」と指摘している。これは、以前からウワサされていたことだが、この問題が本当に存在するとしたら、IntelがDDRを声高に言わない理由も納得できる。

 IntelのDDRサポートは段階的になっている。まず、Brookdale-DでサポートされるのはDDR200(PC1600)だけで、DDR266(PC2100)はサポートされない。DDR266のサポートは、一応、来年のチップセットであるグラフィックス内蔵版845(Brookdale-G)からとなっている。それ以前にDDR266をサポートするかどうかは不明だ。

 IntelがDDR200しかサポートしない理由は明確にはわかっていない。想像できるのは、ひとつは動作検証、もうひとつはチップセット側の技術的な理由だ。動作検証に関しては、Intel関係者は、以前からDDR200は大丈夫だがDDR266は安定したサポートが難しいと説明している。

 技術的な側面ではクロックの同期の問題が想定される。現行のPentium 4のシステムバスはベース100MHzだから、マッチするのはDDR200の100MHzクロックということになる。実際、DDR266をサポートするBrookdale-Gのシステムバスは133MHz(データ転送は533MHz)サポートとなっている。Brookdale-Gの場合は、システムバスとメモリインターフェイスでクロックは一応同期する。ただし、データ転送レートは2倍のギャップとなる。

 Intelは、Brookdale-Gに関しては、すでにOEMメーカーにスケジュールやデザインガイドの提供時期などをかなり明確に示しているという。IntelがPentium 4アーキテクチャをCeleronに持ってくる時には、Brookdale-Gがプラットフォームとなるだろう。

 Intelはこのほか、850チップセットのSocket 478対応版も提供する。また、来年にはRDRAM対応の次世代チップセット「Tulloch(タラク)」も持ってくる。ただし、Tullochについてはどうなるのかまだわからない。Platform Conferenceでも、DRAMベンダー各社はデスクトップ市場でのRDRAMの可能性についてはもうかなり懐疑的になっていた。それは、SDRAMの価格暴落が続いているため、RDRAMが競争力のある価格に来る可能性が限りなく小さくなっているからだという。このあたりのバックグラウンドは、また来週あたりにレポートしたい。


●当面は830Mファミリ一色になるモバイルチップセット

 モバイルのチップセットはIntel 830M(Almador-M:アマドール)ファミリ一色になる。Intelは、先日発表したIntel 830MPに加えて、内部グラフィックスを使える830Mファミリである「Intel 830」と内蔵グラフィックスのみの「Intel 830MG」もすぐに投入する。この830Mファミリは、A4フルサイズノートから薄型ノート、バリューノート、B5ファイルサイズノート、サブノートのすべてに浸透する計画だ。

 もっとも、フルサイズノート向けには、モバイルPentium 4が来年第1四半期に投入されるため、そこで845チップセットもモバイルスペースに入ってくる。Intelは、モバイル版845では最初からDDRで来るつもりで、そのためにDDRのSO-DIMMサポートにも動いているという。また、おそらく、Brookdale-Gもかなり早い時期にモバイルへ持ってくるだろう。

 Intelは、意外と830Mファミリの消費電力が低いことから、最小のフォームファクタへも適用できると考え始めたようだ。そのため、最初はサブノートでは440MXを残すとしていたのを、つい最近、440MXも完全に置き換える予定に切り替えた。ただし、実装面積では440MXの方が小さくできるため、この提案が歓迎されるかどうかはわからない。

 Intelは、当面は440MXの後継となるモバイル専用に開発するチップセットの計画を持たない。830Mも、もともとはデスクトップ用に開発されたチップセットで、ICH-3Mも本来はデスクトップ用のUSB 2.0対応チップセットとして開発(現在はUSB 2.0のファンクションは殺されている)された。つまり、845/830/815と、Intelのモバイルチップセットは全てデスクトップ向けの流用品になってしまう。

 だが、2003年になるとモバイルに特化して設計された新チップセットが登場する。これは、「Odum」と「Monterra」と呼ばれるチップセットで、Intelのモバイル専用CPU「Banias(バニアス)」用だ。これらのチップセットについては、じつはつい最近までワンソースからの不確かな情報しかなく、確信が持てなかった。しかし、現在は、別なソースでもこうしたチップセットが存在することだけは確認できている。ただし、綴りが正しいかどうかなどはまだわからない。

 ちなみに、現在の情報では、これらのチップセットは2003年春の登場だという。つまり、Baniasの登場もその時点になるということだ。BaniasとOdum、Monterraについての詳細は、また別にレポートしたい。

□関連記事
Intel チップセットロードマップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/intel/chipmap.htm

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(2001年8月2日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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